年明けもドル高が継続
1月20日のトランプ新政権の発足に向けてドル高の流れが続いています。昨年11月の米大統領選で共和党大統領候補のトランプ氏が民主党大統領候補のハリス氏に勝利し、市場ではドル高が進みました。
米経済が好調であることもドル高の一因であるが、トランプ氏が掲げる追加関税が大きな要因となっています。トランプ氏の関税と減税がインフレをあおり、米金融当局の利下げ方針を向こう数カ月にわたり複雑化させるとの見方がドル高を後押ししており、世界の投資家が米国に資金を移すインセンティブとなっています。
ユーロドルの日足
トランプトレードはいつまで続くのか
市場では、米大統領に復帰するトランプ氏の関税引き上げが様々な波及経路でドル相場を支え、今年も強いドルは長続きするとの見方が強いですが、トランプトレードが早くも息切れする可能性も警戒しなければなりません。
トランプ氏は第1次政権時の追加関税とは異なり、今回はすべての輸入品目を対象にする一律の追加関税引き上げを掲げており、その貿易、経済への打撃は甚大となる可能性があります。追加関税引き上げによる物価への影響は比較的一時的な現象である一方、それが明確に経済を悪化させれば、FRBの金融政策はいずれ大幅利下げを強いられ、ドル高は失速します。
トランプ氏が掲げる中国からの輸入品に一律60%の追加関税導入、その他の国からの輸入品に一律10%の追加関税導入、移民流入への強い規制が導入された場合、米国のGDPは2%程度低下する可能性が見込まれています。
また、トランプ氏は大統領がFRBの金融政策に関与すべきだと主張し、法改正を通じて実現することを検討しているとの報道もなされています。FRBへの政治介入は中央銀行及び通貨の信認を低下させてドル安要因ともなります。
ドル離れも警戒
トランプ氏の「威嚇外交」が世界の分断を深めれば、ドル離れが加速する可能性があります。米国が自国中心主義に傾斜すれば、中長期的には各国政府や企業は脱ドル依存を進めることになります。すでに米国と距離を置く国々では構造的な「ドル離れ」が静かに進んでいます。
トランプ氏自身もドル離れを警戒しています。「BRICS諸国によるドル離れの試みを我々が傍観するという考えは終わりだ」とトランプ氏は自身のSNSに投稿しました。
BRICSは、中国やロシア、インドなど新興5か国で構成されていましたが、その後エジプトやイランなど中東やアフリカの国々に拡大し、最近では東南アジアでも参加を希望する動きが相次いでいます。こうしたなか、BRICSのことしの議長国を務めるブラジルは6日、インドネシアが正式に加盟したと発表しました。
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※本記事は2024年1月11日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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