―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は3月16日週に2.39円と、その前の週の2.48円から小幅に縮小した。前週比では0.5円の下落と、5週ぶりにマイナスに。年初来では1.6%高と、3週連続でプラスながら前週の1.9%高を下回った。中東情勢緊迫化と原油先物の高止まりを受け、ドル円は高値圏での推移を維持。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がタカ派的な姿勢を打ち出すと、一時159.90円まで年初来高値を更新した。翌日の日銀金融政策決定会合で植田総裁が4月利上げの示唆を与えると、ドル円は日米首脳会談の最中に約1週間ぶりに158円を割り込み、一時157.51円まで下落。もっとも、FOMCの年内利下げ期待が後退し、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)の間で年内3回の利上げが織り込まれ始めるなか、ドル円の下値も限定的で159円前半で週を終えた。
- 米国とイスラエルがイランを攻撃してから約3週間、イランはホルムズ海峡の事実上の封鎖を継続し、原油高とインフレ圧力が強まっている。トランプ大統領は3月21日、48時間以内の海峡開放を要求し、応じなければ発電所を攻撃すると警告したが、背景には戦争権限法による時間的制約がある。一方、イランの革命防衛隊(IRGC)は報復を示唆。少なくとも、日本時間の23日午前中に時間切れを迎えるなか、エスカレーションを抑止できるか、それとも地域全体を巻き込む不可逆的な衝突へ傾斜するかを左右する分岐点となることは間違いない。
- 米欧英は原油高を受けインフレ警戒を強め、金融政策の方向性が分岐しつつある。米連邦公開市場委員会(FOMC)は3月会合で政策金利を据え置き、SEPでは成長率とインフレ見通しを上方修正し、年内利下げは1回予想を維持。しかし、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、エネルギー高によるインフレリスクを強調し、利下げには明確なディスインフレが必要と説明。労働市場の均衡を認めつつも、インフレの粘着性に強い警戒感を示した。議長人事の停滞も相まって、利下げは一段と後ずれする公算が大きい。
- 欧州中央銀行(ECB) は3月会合で金利を据え置いたが、インフレ見通しを大幅に上方修正し、原油高次第でHICPが4.8%に達する追加シナリオまで提示するなど、物価警戒を一段と強めた。イングランド銀行(BOE) も全会一致で据え置きつつ、声明文から「必要なら行動する」と利上げ余地を明確化し、緩和示唆を削除。市場では両中銀とも4月利上げ開始、年内2~3回の利上げ観測が急速に強まっており、欧英はインフレ抑制を最優先する局面に入った。
- 植田総裁就任後続いてきた「会見アノマリー」は3月会合で崩れ、ドル円は会見後に大幅下落した。日銀は金利を据え置いたが、中東情勢と原油高を受け物価上振れリスクを明確に意識し、委員会内でもインフレ警戒が優勢になりつつある。植田総裁は原油高が基調物価に短期で波及し得ると指摘し、物価指標の拡充方針も示した。これは4月利上げへの布石と市場は受け止めている。米欧がインフレ対応を優先し利上げ観測が強まるなか、日銀も政策金利1%台へ踏み出す局面が近づいている。
- ドル円の日足は、三役好転を維持するだけでなく、ダブルボトムのネックライン(157.66円)を割り込んでも一時的で、引き続きサポートとして機能している。WTI原油先物が100ドルドルを超えて急騰する場面では、引き続き160円超えが視野に入る。一方で、RSIは3月11日に69.72と過熱圏手前まで上昇した後は、上げ渋っている。直近は58.98となり、159円前半から上値余地があるか見極めのタイミングに入ってきた。片山財務相が3月12日に介入前段階の文言となる「断固たる措置」に言及しており、介入警戒も上値の重石となっている側面にも留意したい。
- 3月23日週の主な経済指標をみると、24日は2月全国CPI、ユーロ圏や独英米の総合PMI速報値(製造業・サービス業含む)、25日は英2月CPI、独3月Ifo企業景況感指数。米2月輸入物価指数、26日は日本2月企業向けサービス価格指数、米新規失業保険申請件数、27日は米3月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を予定する。
- その他、政府・中銀関連では、24日に日本40年利付国債入札、25日に1月日銀会合議事要旨公表、ラガルドECB総裁の発言、26日はG7外相会合、27日にユーロ圏財務省会合が行われる。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の161.50円、下値は50日移動平均線が近い156.50円と見込む。
1.ドル円振り返り=FOMC後に159.90円まで年初来高値を更新も、日銀後に上げ幅縮小
目次
【3月16日週のドル円レンジ:157.51~159.90円】
ドル円の変動幅は3月16日週に2.39円と、その前の週の2.48円から小幅に縮小した。前週比では0.5円の下落と、5週ぶりにマイナスに。年初来では1.6%高と、3週連続でプラスながら前週の1.9%高を下回った。中東情勢緊迫化と原油先物の高止まりを受け、ドル円は高値圏での推移を維持。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がタカ派的な姿勢を打ち出すと、一時159.90円まで年初来高値を更新した。翌日の日銀金融政策決定会合で植田総裁が4月利上げの示唆を与えると、ドル円は日米首脳会談の最中に約1週間ぶりに158円を割り込み、一時157.51円まで下落。もっとも、FOMCの年内利下げ期待が後退し、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)の間で年内3回の利上げが織り込まれ始めるなか、ドル円の下値も限定的で159円前半で週を終えた。
16日のドル円は、軟調。前週末にトランプ政権が今週にもホルムズ海峡を航行する船舶の護衛に複数の国が合意したなどの報道が流れ、東京時間に一時159.75円まで本日高値を更新したが、売りが優勢となった。片山財務相が「断固たる措置を取る」と、介入前段階となる文言を言及したことで、介入警戒感が高まった。イランが米国とイスラエルに加担する国にホルムズ海峡の通航を容認しない姿勢を示す一方で、インドなど一部の船舶の航行が確認されたことも、安心感が流れたとみられる。NY時間には、WTI原油先物の下落に加え、米3月NY連銀製造業景気指数の下振れもあって、一時158.85円まで本日安値を更新。ベッセント財務長官やホワイトハウスのレビット報道官が、トランプ大統領の訪中が延期となる可能性に言及したが、影響は限定的だった。
17日のドル円は、引き続き軟調。現地時間のNY引け辺りにトランプ氏がイランとの戦争対応を受け訪中を1カ月延期すると述べたが、反応薄だった。むしろ、WSJ紙が3月FOMCで年内利下げ予想を1回からゼロに修正するとの報道や、仲値にかけての買いの動きもあり159円半ばをトライする展開。片山氏が前日に続き「断固たる措置」に言及したほか、植田総裁が参院予算委員会で基調的な物価上昇率は2%に向け緩やかに上昇などと発言したが、反応薄だった。ロンドン時間にはWTI原油先物につれ一時159.50円まで本日高値を更新。イランの安全保障トップの殺害やイラン最高指導者のモジタバ師が米との緊張緩和案を拒否したと報じられたが、その後はむしろ売りへ傾いた。日本政府がアラスカ産の日米首脳会談でアラスカ産原油の調達要請と報じられるなか売りが続き、NY時間入りに一時158.72円まで本日安値をつけた。その後、トランプ氏が日本やNATOなどイラン軍事作戦に加勢は不要と発言した一方、イランから「近い将来」撤退する可能性に言及したこともあって、ドル円の戻りは限定的だった。
18日のドル円は上昇。東京時間は売りの流れが続き、イラクでキルクーク原油の輸出再開との報道などを受けWTI原油先物が91ドル台へ下落する過程で、一時158.57円まで本日安値をつけた。しかし、NY時間入りにはWTI原油先物が切り返した他、米2月生産者物価指数(PPI)市場予想を大きく上回る加速を示し、ドル円は159円半ばへ上昇。FOMC声明文発表直後は、声明文で利下げバイアスと年内1回の利下げ予想が維持されたため、一時159.29円まで本日安値を更新した。もっとも、WTI原油先物の買いが再燃したほか、パウエルFRB議長が会見でディスインフレを確認できなければ利下げは困難との示唆を与えたため、利下げ予想が後退し、ドル円も上昇が再開。さらに、後任のFRB議長が承認されない間は暫定議長に就任する可能性に加え、刑事捜査中はFRB理事として残留する構えを打ち出すなか、新FRB議長就任でも利下げ困難との見方が強まった。結果、ドル円は上値を切り上げ続け、一時159.90円まで年初来高値を更新した。
19日のドル円は、売り優勢。東京時間の序盤は、前日のタカ派的FOMCの余波から一時159.87円まで本日高値を更新したが、その後は上げ渋りとなり、日銀金融政策決定会合で据え置きが発表されても反応薄だった。植田総裁会見が開始後まもなく、一時159.80円台へ上振れしたものの、むしろ植田氏がエネルギー価格の上昇が基調物価に上方リスクを与えると予想した政策委員が微妙ながら多いと発言したこともあり、売りへ舵を切る展開。会見後に159円半ばへ戻すも上値は重く、むしろNY時間には市場予想を上回る米新規失業保険申請件数や米3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行のタカ派的な据え置きを受けても下落は止まらず、約1週間ぶりに158円を割り込んだ。日米首脳会談が行われるなか、一時は2月9日の高値157.66円も割り込み157.51円まで下落し、週の安値をつけた。
20日のドル円は、上昇。東京時間は春分の日で休場のなか、ロンドン時間から昨日の下落を打ち消す展開となった。ECBやBOEが年3回の利上げを行うとの見方が強まり、クロス円に押し上げられただけでなく、NY時間には1月に利下げ票を投じたウォラーFRB理事が年内利下げに慎重な見解を寄せたため、買いを後押し。トランプ政権がカーグ島制圧に地上軍投入を検討との報道もあり、一時159.39円まで本日高値を更新し、159円を保って週を終えた。
チャート:ドル円、2025年10月以降の日足

2.今週のドル円見通し=トランプ警告の48時間が終了へ、中東リスクで為替は岐路に
【今週のドル円予想レンジ:156.50~161.50円】
トランプ大統領、イランに「48時間」でのホルムズ海峡開放を通告
米国とイスラエルが2月28日からイラン攻撃を開始してから、約3週間が経過した。イランはホルムズ海峡を事実上の封鎖を継続。原油先物が高止まりするなか、米国内でガソリン価格は急騰中で、世界的にもインフレ圧力が強まりつつある。
こうした状況下、トランプ大統領は3月21日にトゥルース・ソーシャルで、「48時間以内にホルムズ海峡を完全に開放しなければ、イランの発電所を破壊する」と警告を発した。最後通牒にもみえるが、背景には米国の戦争権限法が影響したと考えられる。同法は、大統領が武力行使を開始した場合、48時間以内の議会報告と、議会承認なしでは60日を超える継続的軍事行動ができないという制度的制約を課している。すなわち、トランプ政権は長期戦への選択肢を有しておらず、停戦への地ならしを始めたとも捉えられよう。
この投稿の前に、国際海事機関(IMO)のイラン代表は3月20日に新華社とのインタビューで、海峡は「閉鎖されていない」と主張し、通航はイランとの安全面での調整を通じて可能であると述べた。これは国際社会に対して協調的な姿勢を示しつつ、実質的なコントロール権を維持しようとする文民外交の典型である。
しかし、軍事部門である革命防衛隊(IRGC)は全く異なる論理で動いている。IRGC 系の軍事司令部は「イランのエネルギー施設が攻撃されれば、米国およびイスラエルのエネルギー・IT・海水淡水化インフラを報復攻撃の対象とする」と警告した。ペゼシュキアン大統領やアラグチ外相らは、海峡封鎖を全面否定せず、第三国との個別調整を通じて「選別的通航」を認める余地を残す姿勢を示していた。しかし、直近ではペゼシュキアン氏は「脅威は我々を団結させる」と強調。イラン国会議長もイランの発電所が攻撃されれば、中東の重要インフラやエネルギー施設が「不可逆的に破壊される」可能性があると警告した。
以上を総合すると、現在のホルムズ海峡危機は、米国の制度的制約が生む「時間の圧力」と、イラン側の強硬姿勢の急速な収斂がぶつかり合う局面と位置づけられる。これまで一定の抑制を示していた文民指導部までもが、米国の攻撃示唆に対して強い反発を示し、軍事部門と歩調を合わせ始めている点は、情勢の質的変化を示すものだ。少なくとも、日本時間の23日午前中に時間切れを迎えるなか、エスカレーションを抑止できるか、それとも地域全体を巻き込む不可逆的な衝突へ傾斜するかを左右する分岐点となることは間違いない。
原油高でインフレ警戒に傾く米欧英、米は年内据え置き・欧英は3回利上げ予想が浮上
米連邦準備制度理事会(FRB)の責務は、「雇用の最大化」と「物価の安定」で、米連邦準備法に規定されている。一方で、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)は、シングルマンデート、すなわち「物価の安定」のみ課されている。米国とイランが2月28日にイラン軍事攻撃を開始後、WTI原油先物が一時119ドルと2022年6月以来の高値をつけ、欧州の天然ガス価格の指標となるオランダTTF先物が2月27日比で2倍以上も急騰するなか、金融政策はそれぞれの中銀で分岐点に差し掛かりつつある。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は、3月17~18日の会合で、FF政策金利誘導目標レンジを3.5~3.75%で据え置いた。据え置きは2会合連続で、前回に続きミランFRB理事が0.25%の利下げを求め反対票を投じた。しかし、1月FOMCで利下げを求めたウォラーFRB理事は据え置きに反転。3月20日のCNBCインタビューで、ウォラー氏はインフレ警戒重視へシフトしたと説明した。
声明文では、経済活動が引き続き堅調なペースで拡大していることを確認する一方、中東情勢が米経済に与える影響への「不確実性」を明示的に追記した。これは1月の声明文にはなかった文言であり、イラン情勢の緊迫化が政策判断に影を落としていることを率直に認めた格好だ。
同時に公表された経済・金利見通し(SEP)では、成長率とインフレの見通しの上方修正が目を引いた。インフレはエネルギー高が影響したが、成長率についてはパウエルFRB議長いわく人工知能(AI)ではなく「生産性の向上」と説明した。一方で、米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が前月比9.2万人減、失業率が4.4%へ上昇した結果にもかかわらず、失業率見通しは小幅な修正にとどめた。
注目のFF金利見通しは前回と変わらず、年内については1回利下げの予想を維持した。ただし、長期見通しは3.0%から3.1%へ上方修正され、景気を引き締め過ぎず、緩和し過ぎないとされる中立金利が引き上げられた格好だ。
チャート:3月版のSEPでは、成長率とインフレ見通しを上方修正が顕著に

パウエルFRB議長はインフレ重視へシフト、FRB残留の可能性も示唆
ただし、パウエルFRB議長は、記者会見で「何人かの委員が『もしSEPを省略するなら今回がそれだ』と発言したほどだ」と述べ、今回のSEPは重視すべきではないと強調した。
インフレについては、「関税の押し上げ効果は理論上一度きり」との見解を維持しつつ、今回の原油ショックは通常の“一時的”な性質とは異なり、規模と期間が読めない点で特別だと指摘。エネルギー価格がインフレを押し上げるリスクを強調した。スーパーコア(住宅を除くコアサービスインフレ)が依然として粘着的であることを「もどかしい(frustrating)」と表現し、インフレの高止まりへの不満をにじませる場面もあった。また、利下げの前提条件は「関税の押し上げ効果が剥落することによる」ディスインフレだと説明し、インフレ減速が明確化しない限り利下げのハードルは高いとの認識を示した。一方で、スタグフレーションについては「1970年代とは全く異なる。失業率は過去の正常な水準に近く、インフレは目標を1ポイント程度上回るに過ぎない」と明確に否定した。
労働市場については、「過去6カ月の民間部門の雇用増は実質ゼロ」と、厳しい現状認識を示した。ただし、労働力人口の伸びもほぼゼロであるため「ゼロ雇用増の均衡」が成立しているとも付言。労働市場の悪化を意味するものではないとの見方を寄せ、これはSEPでの失業率予想が楽観的だった結果と一致する。「下振れリスクを感じさせる不安定な均衡」とも述べたが、現時点でインフレ警戒を重視したと捉えられよう。
米司法省は、パウエル氏が上院銀行委員会で行ったFRB本部改修工事に関する「偽証」疑惑を捜査している。パウエル氏は捜査が続く限りFRBに留まる姿勢を示した。一方、トランプ氏が次期議長に指名したウォーシュ元FRB理事の承認は米上院が行うが、その前段となる上院銀行委員会で手続きが止まっている。委員会メンバーのティリス議員(共和党)が、パウエル氏への刑事捜査が取り下げられない限り承認を阻止する構えを見せているためだ。
こうした状況を踏まえ、パウエル氏は「任期終了時点で後任が承認されていなければ、法律に基づき暫定議長として職務を続ける」と述べた。つまり、新FRB議長が決まらなければ利下げは遠のき、仮にウォーシュ氏が就任しても、パウエル氏が“影の議長”として影響力を残す可能性がある。これは利下げ時期の後ろ倒しにつながり得る。
以上の結果を踏まえ、FF先物市場ではこれまで下半期に1回の利下げ予想が優勢だったが、年内据え置きの予想に傾いた。利下げ再開を見込む時期は、2027年秋まで後ずれした。
チャート:FF先物市場、年内は据え置き予想が優勢ながら利上げ予想も浮上

ECBとBOE、4月利上げが視野に
3月19日、ECBは定例理事会を開き、中銀預金金利を2.0%で維持した。6会合連続の据え置きとなる。ECBはラガルド総裁が会見で「インフレ見通しのリスクは上方に傾いており、特に短期的に顕著」、「中東での戦争が長期化すれば、エネルギー価格が現在の想定以上に大きく、かつ長期にわたり上昇し、ユーロ圏のインフレをさらに押し上げる可能性あり」と発言。さらに、スタッフ見通しでもインフレ見通しを大幅に上方修正した。それだけでなく、基本シナリオに加え「追加シナリオ」を提示し、原油高次第で統合消費者物価指数(HICP)が前年比4.8%に加速すると警鐘を鳴らした。
チャート:ECBスタッフ見通し、インフレ見通しが軒並み上方修正

BOEの金融政策員会(MPC)でも政策金利を3.75%で据え置きを決定。MPCの委員9人全員が金利据え置きに賛成票を投じており、全会一致は4年半ぶりとなる。声明文では「2%目標達成のため必要に応じて行動する用意がある」と明記し、代わりに「基準金利はさらに引き下げられる可能性が高い」を削除した。ただし、ベイリー総裁は「金利は高く、需要は比較的低調。英中銀は2022年とは全く異なる状況に直面している」と述べ、過度な利上げ期待へのけん制に努めた。実質金利がFedに続くプラスと引き締め寄りなだけに、市場の利上げの織り込みに対応したのだろう。
チャート:実質金利だけをみると、米欧英ともっとも利上げ余地があるのはECB

もっとも、先物市場ではBOEとECBに対し4月の利上げ開始、並びに年内2~3回の利上げ予想に傾き始めた。ECBに対しては2回を全て織り込み、3回の利上げ織り込み度が50%に上昇。エネルギー価格上昇の影響として物価高と景気減速が懸念されるなか、少なくともマーケットは中銀が物価高対応を優先すると予測している。
「植田総裁会見アノマリー」は遂に終焉か、4月利上げを見据える日銀
植田氏の総裁就任以降、1月の金融政策決定会合までに日銀は23回の会合を重ね、その間のドル円は終値ベースで17回、前日比で上昇した。平均の上昇幅は1.54円。下落は6回にとどまったが、そのうち3回は①2024年10月の政府・日銀による介入、②2025年3月のイスタンブール市長更迭、③1月会合での日米協調レートチェックといった外生要因によるもので、日銀固有の要因とは言い難い。
こうした経緯から「植田総裁の会見アノマリー」とも呼ばれてきたが、3月会合後にはその構図が崩れた。会見中にドル円は一時159.80円台まで上昇したものの、その後は売りが優勢となり、NY時間には約1週間ぶりに158円を割り込んで157.51円まで下落。終値ベースの下げ幅は2.16円と、植田氏が総裁就任後で3番目の大きさとなり、利上げも介入もレートチェックもない中での下落としては異例と言えよう。これで、24回の会合で7回目の下落となったわけだが、植田氏の「会見アノマリー」は転機を迎えた可能性がある。
チャート:植田総裁就任後の、日銀金融政策決定会合でのドル円前日比

3月18~19日に開催された日銀金融政策決定会合では、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.75%程度に据え置くことを決定した。2会合連続の据え置きとなる。反対票を投じたのは前回に続き高田審議委員であり、「物価安定の目標は概ね達成されており、海外発の物価上昇の二次的波及から国内物価の上振れリスクが高い」として1.0%への引き上げを主張した。
声明文では今回、米国とイスラエルによるイラン攻撃開始を受け、中東情勢に関する文言が追加された。該当箇所は、以下の通り。
・「中東情勢の緊迫化を受けて、国際金融資本市場では不安定な動きがみられるほか、原油価格も大幅に上昇しており、今後の動向には注意」
・「足元の原油価格上昇の影響がプラス幅を拡大する方向に作用」
・「なお、原油価格上昇が基調的な物価上昇率の見通しに及ぼす影響についても、留意が必要」
・「リスク要因としては、今後の中東情勢の展開や原油価格の動向」
エネルギー価格の押し上げに伴う物価高の影響だけでなく、物価高による消費を始めとした経済活動の下押し、それに伴う株安・円安などが意識されたと考えられる。
植田氏は会見で、「原油価格の高騰が続けば交易条件の悪化を通じて、景気を下押しする可能性が高まる」と警戒を表明した。政策金利を据え置いた背景としては、基調物価が2027年度にかけての見通し期間後半に物価目標2%を実現する見通しの確度は「少し低下」し、「リスクシナリオの可能性が高まった」と説明。ハト派的に傾斜したように見え、今回の会合でもドル円が上昇するかに見えた。
しかし、植田氏の会見を受けてドル円が下落した背景には、主に3つのポイントがある。1つ目に政策委員会内での物価への警戒感だ。植田氏は「原油価格の上昇は短期的にエネルギー価格を押し上げ、企業や家計の予想物価上昇率を通じて基調物価を押し上げる可能性がある」と述べ、インフレリスクへの警戒姿勢を崩さなかった。さらに今回の会合では、中東情勢の緊迫化に伴う原油高が基調物価に与える影響について「かなり議論になった」と明かしている。そのうえで、委員の見方が「上方リスクを重視する立場」と「下方リスクを重視する立場」に分かれたものの、「微妙に前者が多い印象がある」と述べ、物価上振れリスクが委員会内で優勢になりつつあることを示唆した。
2つ目に、原油高の影響について、基調物価に現れるタイミングとして、「様々なデータの積分から判断できる」として、比較的短期間に可能であるとの考えを示唆した。通常、エネルギー価格の上昇が基調物価に反映されるなら上昇が先行し、ラグを伴って需要低迷による減速を示す場合が多いため、次回4月会合での利上げ再開の可能性を温存させる重要な情報と解釈できよう。
3つ目に、植田氏が質疑応答前に明かした「情報発信の拡充」である。植田氏は、政府による物価高対策の効果などで「CPIは短期的に振れやすくなり、物価の基調を捉えづらい」と言及し、基調的物価を補足する観点から、コア指標を拡充するなど、より丁寧に説明していく方針を明らかにした。さらに、GDPの基準改定を踏まえ潜在成長率や需給ギャップを推計に加え、自然利子率の再推計も行っていると説明。準備が整い次第、公表する構えを打ち出した。
特に3つ目のポイントは、4月利上げへの“架け橋”として位置づけられる。1月の全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.5%と2%を下回り、ガソリン暫定税率の廃止なども重なって、足元の物価上昇ペースは明確に鈍化した。このため、リフレ派からは「利上げの必要なし」との議論が勢いを増している。
チャート:1月全国CPI

何より、原油高を受けてガソリン価格を170円程度に抑えるため、3月19日から補助金の支給が再開され、一時的に物価を押し下げる可能性がある。原油高が長期化し、1970年代の石油危機とは対照的に補助金延長による財政拡張が続けば、円安が加速する負のスパイラルを招きかねない。
植田氏は、基調物価の把握に向けたデータ拡充について「利上げを説明しやすくするためではない」と否定したものの、実際には政府に利上げの必要性を理解させるための布石とみることもできる。市場も同様のメッセージを読み取った可能性が高い。
次回4月日銀金融政策決定会合は、4月27~28日に行われる。中銀の政策金利発表の先陣を切ることになるが、既に米連邦公開市場委員会(FOMC)は事実上の据え置きモードに入り、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)に至っては、4月の利上げが視野に入り始めた。植田総裁会見アノマリーの終焉が意識されるなか、日銀は政策金利1%という約31年ぶりの領域へ、もはや踏み出さざるを得ない局面にある。
ドル円は強い地合いを維持、RSIの70付近ではドル円失速続くが…
ドル円の日足は、三役好転を維持するだけでなく、ダブルボトムのネックライン(157.66円)を割り込んでも一時的で、引き続きサポートとして機能している。WTI原油先物が100ドルを超えて急騰する場面では、引き続き160円超えが視野に入る。
一方で、RSIは3月11日に69.72と過熱圏手前まで上昇した後は、上げ渋っている。直近は58.98となり、159円前半から上値余地があるか見極めのタイミングに入ってきた。片山財務相が3月12日に介入前段階の文言となる「断固たる措置」に言及しており、介入警戒も上値の重石となっている側面にも留意したい。
3月23日週の主な経済指標をみると、24日は2月全国CPI、ユーロ圏や独英米の総合PMI速報値(製造業・サービス業含む)、25日は英2月CPI、独3月Ifo企業景況感指数。米2月輸入物価指数、26日は日本2月企業向けサービス価格指数、米新規失業保険申請件数、27日は米3月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を予定する。
その他、政府・中銀関連では、24日に日本40年利付国債入札、25日に1月日銀会合議事要旨公表、ラガルドECB総裁の発言、26日はG7外相会合、27日にユーロ圏財務省会合が行われる。
米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した投機筋による円先物のネット・ポジション動向は、3月17日週時点で6万7,780枚のネット・ショート。3週連続でショートが拡大した結果、2024年7月以来の水準へ積み上がった。
アセットマネジメントは439枚と2025年1月以来のネット・ショートに反転。その他(ディーラー、AM、レバレッジ系以外)は、3万7,991枚とネット・ロングが4週連続で縮小した結果、2024年11月以来の低水準となった。
レバレッジ系(ヘッジファンド勢等)は6万5,249枚のネット・ショート。3週連続で拡大、1月27日週以来の高水準を迎えた。
当該週、中東情勢に緊迫化を受け、「有事のドル買い」が引き続き優勢。加えて、米1月PCE価格指数や米1月求人件数が強含んだため、Fedの利下げ期待が後退し、ドル円は一時159.76円まで年初来高値を更新した。
チャート:投機筋の円のネット・ショートは、2024年7月以来の高水準

チャート:レバレッジ系、円先物のネット・ショートは8週ぶりの水準へ拡大

以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の161.50円、下値は50日移動平均線が近い156.50円と見込む。
チャート:25年10月からの日足チャート、25年10月6日安値と1月14日高値の38.2%戻しはオレンジ線、21日移動平均線は黄色線、50日移動平均線は薄青線、90日移動平均線は紫の線、一目均衡表の転換線は赤線、基準線は青線、200日指数平滑移動平均線は白の点線、下図はRSI。

3.主な要人発言





4.主な経済指標結果
〇米国の経済指標

〇欧州の経済指標

〇日本と中国の経済指標

〇オセアニア

5.経済指標予定
・米政府機関が再開したものの、新たな予定発表時期がリリースされておらず、*が記された指標の発表は未定
・赤字が最重要、青字がある程度重要な経済指標 orイベントとなる。
※緑文字は、米政府機関閉鎖が継続、あるいは閉鎖解除後の発表先送りを決定すれば、リリースが延期となる可能性がある指標を示す

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