Weekly Report(3/16)「日銀など主要中銀、原油高圧力で利上げの可否を探る」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

マーケット分析

―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は3月9日週に2.48円と、その前の週の1.97円から拡大した。前週比では1.91円上昇し、4週続伸。年初来では、1.9%高と、2週連続でプラスとなった。週初から原油相場と地政学リスクに翻弄される展開。イラン情勢の緊迫化でWTI原油先物が一時119ドル台へ急伸するなか、ドル高・円安が加速した。一方、トランプ大統領の「軍事作戦終結が近い」発言や石油備蓄放出観測が上値を抑える場面も見られたが、限定的。むしろ、週末にかけては米1月PCE価格指数や求人件数の上振れが追い風となり、159.76円と年初来高値を更新した。
  • 米・イスラエルのイラン攻撃が長期化の様相を呈する中、ホルムズ海峡の事実上の封鎖という近代史上初の事態が世界のエネルギー供給を直撃している。1970年代の石油危機では利上げと需要抑制の「総合パッケージ」が奏功したが、財政ドミナンスの制約を抱える現代日本にその再現は難しい。高市政権の「責任ある積極財政」路線の下、原油高とインフレ加速観測が円売り圧力を高めるリスクもある。今週予定の日銀金融政策決定会合では、4月の利上げの選択肢を確保する見通しだが、利上げだけでは円安に歯止めをかけられるかは、不透明と言わざるを得ない。介入も、原油高の状況では効果が限定的とみられる。やはり、停戦合意による原油価格の正常化が円安回避の鍵を握ることだろう。
  • 今週は主要中銀の政策発表が集中する「中銀ウィーク」だ。豪準備銀行(RBA)は原油高を受け利上げの見通しで、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)も、今回は据え置きながら年内利上げが織り込まれつつある。FOMCは据え置きが確実視されるが、焦点は経済・金利見通し(SEP)だ。米2月雇用統計・非農業部門就労者数が減少した一方、米1月コアPCEとスーパーコアが約2年ぶりの加速を示した。原油高も重なるスタグフレーション懸念が強まる状況下、今年の成長率の下方修正、インフレと失業率の上方修正が見込まれる。FF金利見通しは、年内1回の利下げ予想が僅差で維持されるのではないか。
  • ドル円の日足は、三役好転を維持するだけでなく、ダブルボトムのネックライン(157.66円)がサポートと化している。加えて、1月23日の高値159.23円だけでなく、1月15日の高値159.45円も超えて、3月13日の週末に159.73円と高値引けすると共に年初来高値を更新した。WTI原油先物が100ドルを突破する流れで、160円超えが視野に入る。一方で、RSIは69.72と過熱圏手前まで上昇しており、買いの勢いは維持されているものの、短期的な達成感から利食い売りが上値を抑える場面も想定される。原油高・米金利上昇というファンダメンタルズの追い風が続く限り、上値余地も意識したい。
  • 3月16日週の主な経済指標をみると、16日は中国2月小売売上高と鉱工業生産、米3月NY連銀製造業景気指数、米2月鉱工業生産、17日は米2月景気先行指標総合指数、18日は日本2月貿易統計、米2月生産者物価指数(PPI)などが予定される。19日は日本1月機械受注、豪Q4GDP、豪2月失業率、米前週分新規失業保険申請件数、米3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、20日は日本が春分の日で休場のところ、目立った指標の発表はない。
  • その他、政府・中銀関連では、17日に豪準備銀行(RBA)が政策金利発表(予想4.10%、前回3.85%)、日本20年利付国債入札、米20年債入札、18日は米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利発表(予想据え置き3.50~3.75%)とパウエルFRB議長の定例記者会見が予定される。19日は日銀金融政策決定会合の結果発表(予想据え置き0.75%)と植田総裁の定例記者会見が控える。また19日にはスイス国立銀行(SNB)の政策金利発表(予想0.00%)、英中央銀行(BOE)の金利発表(予想据え置き3.75%)とMPC議事要旨の公表、ECB政策金利発表(予想2.15%)とラガルド総裁会見も予定されており、主要中銀のイベントが木曜日に集中する週となる。加えて、19日は日米首脳会談が行われる。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の161.50円、下値は2月9日の高値が近い157.50円と見込む。


【3月9日週のドル円レンジ:157.28~159.76円】

ドル円の変動幅は3月9日週に2.48円と、その前の週の1.97円から拡大した。変動幅は1.91円と、前週の1.76円を上回った。年初来では、1.9%高と、2週連続でプラスとなった。週初から原油相場と地政学リスクに翻弄される展開。イラン情勢の緊迫化でWTI原油先物が一時119ドル台へ急伸するなか、ドル高・円安が加速した。一方、トランプ大統領の「軍事作戦終結が近い」発言や石油備蓄放出観測が上値を抑える場面も見られたが、限定的。むしろ、週末にかけては米1月PCE価格指数や求人件数の上振れが追い風となり、159.76円と年初来高値を更新した。

9日のドル円は、買い先行後に失速。イランの最高指導者を選出する権限を持つ「専門家会議」が、米国とイスラエルに殺害されたハメネイ師の後継として次男のモジタバ師に白羽の矢を立てた。反米強硬派とみられるだけでなく、トランプ大統領が事前に「受け入れられない」と発言していた人物だったため、イランとの軍事衝突長期化懸念が浮上。WTI原油先物が一時119ドル台へ急伸につれ、ドル円も上値を切り上げ一時158.90円まで本日高値を更新した。もっとも、その後はG7諸国が石油備蓄を放出する可能性が報じられ、ドル独歩高がゆるみドル円も伸び悩み。NY時間引け前には、トランプ氏が軍事作戦の終結が近いと発言したため、一時157.63円まで本日安値を更新した。トランプ政権が原油高抑制策として、輸出制限や市場介入などを検討と報じられたこともWTI原油先物の下落を誘った。

10日、ドル円は売り先行後に買い戻し。東京時間は、トランプ氏の発言を受けてWTI原油先物が81ドル台へ急降下するなか、ドル円もつれて157.28円まで週の安値をつけた。もっとも、イラン革命防衛隊がミサイル攻撃強化する方針を示し、イラン外相が「必要な限りミサイル攻撃を続ける」と述べたことで、WTI原油につれドル円も買い戻された。NY時間入りに一時158.13円まで本日高値をつけたところ、石油備蓄放出への思惑もあり、上値は限られた。しかも、ライト・エネルギー長官、「米海軍がホルムズ海峡で石油タンカーを護衛した」とするXの投稿したため、WTI原油先物が80ドル割れを迎えたことも、上値を重くした。もっとも、エネルギー長官は投稿を削除したため、思惑を残すこととなった。トランプ氏が昨日のNY引け前にイランの機雷船「完全に破壊」と投稿も、反応は限定的だった。

11日のドル円は上昇。米海軍が民間からの護衛要請を拒否したとの報道もあって、WTI原油先物が買い戻されるにつれ、ドル円も上値を試しにかかった。IEAが過去最大の石油備蓄放出を加盟国に提案と報じられたが、ドル円は反応薄。むしろ、JPモルガンがプライベート・クレジット関連のローン・ポートフォリオ評価切り下げたとの報道で一時157.86円まで本日安値を更新した。その後は商船三井所有のコンテナ船、ペルシャ湾で攻撃被害かとの報道が出てもドル円は上昇を続け、NY時間に発表された米2月消費者物価指数(CPI)が市場予想通りでも影響を受けず。IEAが4億バレルの石油備蓄放出を決定後は、むしろWTI原油先物の上昇につれ買いが強まり、一時158.98円まで上値を広げた。トランプ氏が「イランとの戦争はまもなく終わる。攻撃すべき標的はほとんど残っていない」と発言したが、ドル円は反応せず。同時にイラン革命防衛隊系のタスニム通信が米国大手IT企業でイスラエルと関係のある企業が新たに標的になると報じたほか、イランがホルムズ海峡に機雷を敷設したとの報道もあって、159円手前で取引を終えた。

12日のドル円は、一段高を経て小緩む展開。東京市場スタートからWTI原油先物が95ドルを回復するにつれ、ドル円も買いが入り、序盤に1月23日の高値159.22円を超えて一時159.24円と年初来高値の159.45円に接近した。トランプ政権が前日引け後、日本や中国、欧州連合(EU)など16カ国・地域を対象に、通商法301条に基づく調査を開始すると発表したことも、インフレ懸念を強めた。1月23日の日米共同レートチェックがあったとされる水準超えからは利益確定の売りが入ったものの、買い意欲は根強い。日銀植田総裁が円安は「過去より物価に影響しやすい」と発言も、ドル円の影響は限定的だったところ、ロンドン時間に一時158.57円まで本日安値を付けた後は買い戻された。モジタバ師がホルムズ海峡の事実上の封鎖につき「敵に圧力をかけるための手段として継続すべき」と発言したことが報じられたほか、トランプ大統領が原油高よりイランの核兵器武装阻止が重要と強調したためドル高が進んだ。ベッセント財務長官が米海軍による船舶護衛は「可能な限り」早期に実施すると述べるも、ドル円は一時159.43円と1月15日の高値159.45円に接近した。トランプ大統領が来週17-18日にFOMCを控え緊急利下げを要請したが、影響は限定的だった。

13日のドル円は続伸。東京時間の序盤にベッセント財務長官が各国によるロシア産原油・石油製品の購入を30日間容認すると表明したため、ドル円は一時159.10円へゆるんだが、以降は買いが優勢となった。片山さつき財務相は閣議後の記者会見で、円安が進んでいることに対して「いかなる時、いかなる場合も万全の対応を取る方針で臨んでいる」と述べたが、影響は限定的。NY時間に一時159.01円と本日安値を更新したが、米1月PCE価格指数や求人件数が市場予想を上回り、ドル円を押し上げ引けまで買いの流れが続き、159.76円で高値引けした。なお、NY引け後にトランプ氏はイランの石油輸出基地が集まるカーグ島の攻撃を発表した。

チャート:ドル円、2025年10月以降の日足



【今週のドル円予想レンジ:157.50~161.50円】

長期化の様相を呈するイラン戦争、1970年代の石油危機から見た政策的示唆

トランプ大統領は3月9日にイランによる軍事作戦の「終結が近い」と発言した。同氏はイランの無条件降伏を要請する一方で、ペゼシュキアン大統領は3月11日、停戦の条件に①イランの正当性を認めること、②賠償金の支払い、③将来の侵略に対する確固たる国際的保証――を提示。最高指導者に選出されたモジタバ師は、3月12日に声明で「敵に圧力をかけるための手段として継続すべき」、「中東にある米軍基地はすべて直ちに閉鎖されるべきであり、閉鎖されなければ攻撃対象になる」と表明しており、長期化の様相を呈している。イランの弾道ミサイルの減少が指摘される一方で、JPモルガンは米国が紛争を継続する上で3つのM、すなわち「弾薬(Munition)」、「マーケット(Market)」、そして「中間選挙(Midterm)」――がカギを握ると分析。このうち、マーケットは原油高と金利上昇、株安に直面し、「弾薬」については米国の迎撃ミサイル(PAC‑3、THAAD、SM‑3)は生産が追いつかない状況とされる。また、イランにはミサイルが減少しても、安価で軍需工場以外で簡易に製造できる無人機シャヘドがホルムズ海峡を通航するタンカーを含め、脅威となりかねない。

既に日本経済への影響が懸念されるが、1970年代の二度にわたるオイルショックの経験を振り返ってみよう。第一次ショック(1973年10月–1974年3月)では、原油価格の急騰が国内の過剰流動性と結びつき、消費者物価指数(CPI)は1974年2月に前年同月比24.9%を記録する「狂乱物価」へと発展した。背景には、列島改造論に伴う投機熱、ニクソン・ショック後の金融緩和、そして供給ショックが重なった構造的要因がある。

チャート:石油危機時のWTI原油現物価格の推移

金融政策は急転換を迫られた。日銀は1973年春まで緩和基調を維持していたが、石油危機発生後は公定歩合を4.25%から年末には9%へと急速に引き上げ、貸出規制や窓口指導を通じて総需要の抑制を図った。この「総需要抑制策」は、短期的には企業倒産と景気後退を招いたが、暴走するインフレ心理を抑え込むためには不可避の措置だったと言えよう。

金融政策と並行して、財政政策も引き締め色を強めた。大型公共事業の凍結、歳出削減、物価安定緊急措置法や国民生活安定緊急措置法による直接介入が実施され、物価統制と生活物資の安定供給が優先された。補助金は供給確保・省エネ投資・産業再編を支える方向に重点が置かれ、エネルギー多消費型産業から省エネ型産業への構造転換が加速した。

チャート:石油危機発生時、公定歩合と全国CPIの推移

こうした政策対応は、①金融引き締め、②財政引き締め、③賃金抑制、④省エネ・備蓄を中心とする供給サイド強化――という複数の政策を一体で運用する「総合パッケージ」として機能した点に特徴がある。第一次ショックでは後手に回ったが、第二次ショックでは第一次の失敗が深く記憶され、政策当局・企業・労働者が同じ方向を向く総力戦体制が構築された。とりわけ、賃金・物価スパイラルを回避するための労使協調、省エネ投資の加速、石油依存度の低下は、欧米諸国と比べて日本の物価上昇率を大幅に抑える決定的要因となった。

株式市場は急落した。1973年末から1974年にかけて日経平均は大幅に下落し、戦後初のマイナス成長と企業収益の悪化を反映した。しかし、政策対応が浸透し、物価上昇率が1975年以降に沈静化すると、株式市場も徐々に安定を取り戻した。第二次オイルショック(1979–81年)では、第一次の教訓が生かされた。日銀は早期に利上げを実施し、賃金・物価スパイラルを回避するため、労使は賃上げ抑制に協調した。企業は省エネ投資を積極化し、国民も節約行動を強めた結果、CPI上昇率は欧米諸国に比べて低く抑えられ、日本は「物価の優等生」と称されるに至った。

チャート:石油危機発生時の日経平均

1970年代の石油危機を踏まえれば、利上げと需要抑制策が成功例と言える。もっとも、当時の成功モデルを現代にそのまま適用することは難しい。まず、決定的な違いは、足元でホルムズ海峡が事実上封鎖状態にある一方、第一次・第二次の石油危機ではホルムズ海峡は閉鎖されておらず、危機の震源はあくまで供給国側の政治的意思、すなわちOPECによる禁輸決定とイラン革命による生産停止にあった。今回は海上輸送路そのものが遮断されるという、近代史上初の事態であり、備蓄放出や代替調達といった従来の政策ツールの有効性が根本から問われる局面にある。

日本についても、当時と大きな違いが横たわる。日銀は利上げ局面にあるとはいえ、GDP236%(国際通貨基金、2024年)に達する政府総債務を抱える下では、金利上昇が即座に国債利払い費の拡大へと直結する。財政制約が金融政策の自由度を実質的に縛る「財政ドミナンス」の懸念がある以上、1970年代のように公定歩合を数倍に引き上げて総需要を抑制するような政策対応は、現実的ではない。加えて、高市政権はガソリン価格を170円程度に抑える措置を講じるなど、供給ショックの家計への波及を抑える姿勢を明確にしている。「責任ある積極財政」を掲げる同政権の政策スタンスを踏まえれば、需要抑制策が本格的に発動される可能性は低い。その場合、中東への原油依存度95%、エネルギー自給率12.6%という構造に加え、原油高と財政刺激によるインフレ加速観測が円売りにつながるリスクがある。

日銀は3月18–19日に金融政策決定会合を予定し、金利を据え置く見通しだ。しかし、植田総裁は4月利上げの選択肢を確保するだろう。ただ、日銀が4月利上げで対応しても、その後の利上げペースに疑問符がつけば、円売りにブレーキを掛けることができるかは不透明だ。

円の一段安を回避する上では介入も選択肢だが、投機筋の円先物ネット・ショートは4万1,387枚と、2022~24年に介入を実施した水準を下回る。円安圧力を和らげるには、イラン情勢悪化前の水準である65ドル付近まで原油先物が下落するような停戦合意の成立が望まれる。

3月19日には高市首相がホワイトハウスでトランプ大統領と会談を予定する。トランプ氏は既にホルムズ海峡の機雷除去で日本を含む各国に協力を求めており、会談では自衛隊派遣と日本のエネルギー確保を巡る協議が焦点となりうる。

中銀ウィークに豪は利上げ、米欧英は据え置き見通しも…

 今週は3月17日の豪準備銀行(RBA)を皮切りに、米連邦公開市場委員会(FOMC)など中央銀行の政策発表が相次ぐ。RBAは、原油高を受けて2月に続き今回も利上げを行う見通しで、5月の利上げも視野に入る。欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(BOE)は据え置きを決定する公算だが、ブルームバーグによれば先物市場ではECBは年内2回の利上げの予想に傾き(7月、12月)、BOEは7月頃に1回の利上げが織り込まれつつある。スイス国立銀行も、年内1回、9月の利上げ織り込み度が一時85%に上昇した。

 FOMCをめぐっては、FF先物市場に基づけば10月あるいは12月に1回の利下げが有力視されている。米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が9.2万人減、失業率が4.4%へ上昇したものの、イラン攻撃前ながら米1月コアPCE価格指数コアは前年同月比3.1%、スーパーコア(住宅を除くコアサービス)も同3.5%と、約2年ぶりの伸びへ加速。加えて原油高が重なり、スタグフレーションへの懸念が強まるなか、年内2回の利下げ予想が後退。エコノミストの間では、3月の利下げ開始が6月にずれ込んだが、引き続き年内2回予想を維持する動きと、対照的だ。

チャート:FF先物市場、年内1回の利下げ予想が優勢

3月FOMCでは経済・金利見通し(SEP)が公表される。成長率は今年について下方修正、失業率とインフレ率は上方修正される可能性に留意したい。注目のFF金利見通しについては、NY連銀総裁が「インフレ次第で利下げ余地を確保する」と発言し、FF先物市場も年1回の利下げを織り込むだけに、年内1回の利下げ予想が僅差で維持される展開を見込む。

チャート:2025年12月発表のSEP

ドル円は非常に強い地合いを維持、160円超えが目前に

 ドル円の日足は、三役好転を維持するだけでなく、ダブルボトムのネックライン(157.66円)がサポートと化している。加えて、1月23日の高値159.23円だけでなく、1月15日の高値159.45円も超えて、3月13日の週末に159.73円と高値引けすると共に年初来高値を更新した。WTI原油先物が100ドルを突破する流れで、160円超えが視野に入る。

一方で、RSIは69.72と過熱圏手前まで上昇しており、買いの勢いは維持されているものの、短期的な達成感から利食い売りが上値を抑える場面も想定される。原油高・米金利上昇というファンダメンタルズの追い風が続く限り、上値余地も意識したい。

3月16日週の主な経済指標をみると、16日は中国2月小売売上高と鉱工業生産、米3月NY連銀製造業景気指数、米2月鉱工業生産、17日は米2月景気先行指標総合指数、18日は日本2月貿易統計、米2月生産者物価指数(PPI)などが予定される。19日は日本1月機械受注、豪Q4GDP、豪2月失業率、米前週分新規失業保険申請件数、米3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、20日は日本が春分の日で休場のところ、目立った指標の発表はない。

その他、政府・中銀関連では、17日に豪準備銀行(RBA)が政策金利発表(予想4.10%、前回3.85%)、日本20年利付国債入札、米20年債入札、18日は米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利発表(予想据え置き3.50~3.75%)とパウエルFRB議長の定例記者会見が予定される。19日は日銀金融政策決定会合の結果発表(予想据え置き0.75%)と植田総裁の定例記者会見が控える。また19日にはスイス国立銀行(SNB)の政策金利発表(予想0.00%)、英中央銀行(BOE)の金利発表(予想据え置き3.75%)とMPC議事要旨の公表、ECB政策金利発表(予想2.15%)とラガルド総裁会見も予定されており、主要中銀のイベントが木曜日に集中する週となる。加えて、19日は日米首脳会談が行われる。

米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した投機筋による円先物のネット・ポジション動向は、3月3日週時点で1万6,575枚のネット・ショートと、3週ぶりのショートに反転した。アセットマネジメントは1万7,904枚と6週連続でネット・ロングが縮小。一方、その他(ディーラー、AM、レバレッジ系以外)は、4万8,891枚とネット・ロングが2週連続で縮小した。レバレッジ系(ヘッジファンド勢など)は3万4,138枚のネット・ショート。7週ぶりに拡大した。以上の水準を踏まえれば、投機筋は円のネット・ショートに傾いているとは言い難く、政府・日銀が介入に踏み切ったとしても効果は限定的となりそうだ。

当該週、政府が日銀審議委員の後任に2人のリフレ寄りを提示し、ドル円は上昇。植田総裁が読売新聞のインタビューで春の利上げ姿勢を強調したものの、2月28日に米国とイスラエルがイランに軍事作戦を開始した結果、ドル独歩高の展開を迎えた。

チャート:投機筋の円のネット・ショートは、7週ぶりの水準へ拡大

チャート:レバレッジ系は、円先物のネット・ショートが7週ぶりに拡大

以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の161.50円、下値は2月9日の高値が近い157.50円と見込む。

チャート:25年10月からの日足チャート、25年10月6日安値と1月14日高値の38.2%戻しはオレンジ線、21日移動平均線は黄色線、50日移動平均線は薄青線、90日移動平均線は紫の線、一目均衡表の転換線は赤線、基準線は青線、200日指数平滑移動平均線は白の点線、下図はRSI。





〇米国の経済指標

〇日本と中国の経済指標

〇オセアニア



・米政府機関が再開したものの、新たな予定発表時期がリリースされておらず、*が記された指標の発表は未定

・赤字が最重要、青字がある程度重要な経済指標 orイベントとなる。

※緑文字は、米政府機関閉鎖が継続、あるいは閉鎖解除後の発表先送りを決定すれば、リリースが延期となる可能性がある指標を示す

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