<テクニカル分析判断> ●短期:想定を超える一段の下落進展により「短期的反発は不可避」の状況が醸成・急接近 ●中期:短期的な反発は不可 […]
「FOMC投票メンバー」見解が重要、人数はハト派優位
アメリカの金融政策は、連邦公開市場委員会(FOMC)会合の投票で決定されます。FOMCでは、中央銀行にあたる連邦準備制度(Federal Reserve System)の中枢機関・連邦準備理事会(FRB、The Federal Reserve Board)メンバーと全米12地区の連銀総裁が、金融政策について議論します。
その決議は、投票権を持つ12名の多数決で決められます。FRB理事7名(議長、副議長2名、その他の理事4名)と、地区連銀総裁5名(常任のNY連銀総裁ほか、輪番の4地区連銀総裁)です。
金融政策の先行きを予想する上では、この「FOMC投票メンバー」の見解に注目する必要があります。FRB理事とNY連銀総裁、そして2023年はシカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリスの地区連銀総裁が投票権を持っています。
日々の金融関連イベントの予定表で、重要な経済指標の発表予定とともに金融当局高官の講演など発言予定もチェックできます。その際、米金融当局関係者の発言については、上記「FOMC投票メンバー」の見解がより重要な材料となります。
2023年の「FOMC投票メンバー」について、ベースとなる政策スタンスは以下のようにとらえられています。
2022年末から2023年入りにかけ、利上げサイクルが終了して年内の利下げも織り込み始めた背景には、タカ派(金融引き締め支持派)とされるメンバーが3名であるのに対し、ハト派(金融緩和支持派)メンバーが一時5名と優位になったことが一因だったかもしれません。
ちなみに2022年に輪番で「FOMC投票メンバー」だった地区連銀総裁4名のうち、ブラード・セントルイス連銀総裁、ジョージ・カンザスシティー連銀総裁、メスター・クリーブランド連銀総裁が基本的にタカ派とされていました。2023年の「FOMC投票メンバー」となった地区連銀総裁のうち、タカ派とされているはカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁とローガン・ダラス連銀総裁で、タカ派勢力が1名後退したことになります。
強い雇用などを受けてハト派色が後退
ただし、これはあくまでベースとされる政策スタンスに基づいて[タカ派][ハト派]を区分けした考察例です。各局面の状況に応じた各々の発言を反映して、上記と異なる[タカ派][ハト派]の区分けが提示されることがあります。「FOMC投票メンバー」による直近の発言から、政策スタンス・対応の選択状況を推し量る必要があります。
タカ派のウォラーFRB理事が「インフレは依然として非常に高いため、さらに多くのことを行う必要(米現地2/8)」と利上げ継続や高水準の金利維持を示唆したことは規定路線といえます。一方、中立がベースのパウエル議長が「強い労働市場のデータが続けば、ピーク金利は上昇する可能性(同2/7)」と述べ、政策金利引き上げの最終到達点・ターミナルレートの切り上げりに言及したことなどは、ここ最近の強い雇用データを受けてマーケットがタカ派な見方へ傾斜していることとも符合します。
さらに、ハト派のウィリアムズNY連銀総裁が「インフレ率低下を反映し、2024年もしくは25年に利下げする可能性(同2/14)」としつつも、直近の対応については、「最近のデータはさらなる利上げの主張をサポート」と述べています。ハト派メンバーによる追加利上げ主張をマーケット参加者に意識させました。
他方で、最もハト派といえたブレーナード副議長が国家経済会議(NEC)委員長就任を理由に退任した影響なども一応留意したい点です。それでもタカ派3名に対しハト派4名で、後者が数の優位を維持してはいます。
もっとも、インフレの高止まりに加えて雇用データが強いことなどを根拠に、もうしばらく利上げを続ける可能性に中立派は傾いています。「FOMC投票メンバー」全体では利上げ継続が志向されているように見えます。「FOMC投票メンバー」見解の変遷をにらみつつ、米金融政策・マーケットの行方を追う展開が続きそうです。
本記事は2023年2月22日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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