Weekly Report(4/6)「米国とイラン、緊張の臨界点へードル円は「停戦」と「衝突」の狭間に」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は3月30日週に2.19円と、その前の週の2.39円から縮小した。前週比では0.68円の下落。年初来では1.9%高と、前週から上げ幅を縮小しつつ5週連続でプラスとなった。トランプ大統領とイラン側の間で仲介国が停戦を模索するなか、トランプ政権はホルムズ海峡の事実上の封鎖解除なしで終結する方針との報道もあり、事態打開への期待が高まった。ドル円は一時158.23円まで下落。もっとも、トランプ氏が演説で今後数週間の大規模攻撃に言及し、楽観が撒き戻され、ドル円は159円後半へ切り返した。
  • 米3月雇用統計は表面上堅調だったが、詳細をみると“不都合な真実”が浮かび上がる。非農業部門就労者数(NFP)は教育・健康のストライキ終了による一時的要因が押し上げ、失業率低下も労働参加率の低下による見かけ上の改善に過ぎない。長期失業者比率も高止まりし、男性・大卒・白人の労働参加率はコロナ禍直後の水準まで低下した。米国によるイラン攻撃を受けインフレ加速が懸念されるなか、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「様子見が可能な良い位置」と述べた背景には、労働市場の変調への警戒がにじむ。
  • 日銀は4月会合での追加利上げに向け地ならしを進めている。3月会合「主な意見」では、中東情勢悪化下でも、大規模緩和解除後初めて「金融引き締めが必要」との見解が確認できたほか、植田総裁も利上げが適切に行われない場合は物価高と長期金利の上昇が進むとの考えを表明。4月短観では業況感が改善し、物価見通しも上昇、人手不足も深刻化しており、物価・需給・景況感の条件が利上げを後押しする構図だ。イラン情勢の不確実性は残るが、利上げへ向けたファイティング・ポーズを維持したと言えよう。
  • 米国がイランへの大規模攻撃を警告するなか、ホルムズ海峡ではオマーンとイランの協議が進む一方、通航料徴収など不透明要因も残る。他方、日本をはじめ英仏独伊蘭が主導する安全な通航確保の国際枠組みには40カ国超が参加し、初会合では英国が通航料を全面拒否と表明した。トランプ大統領の予算教書は国防費を大幅増とし、イラン作戦の長期化を織り込んだ姿勢が鮮明化。中東情勢の不安定化が続くなか、国際的な取り組みの重要性が増している。
  • ドル円の日足は三役好転を維持するだけでなく、前週の週初に年初来高値を更新した後も高値圏での推移が続いている。一目均衡表の雲はねじれつつ上限を切り上げており、上値余地が意識されやすい。RSI(14日線)は前週にデッドクロスを形成したが、3月31日に52.58まで低下した後は上昇に転じており、売り圧力の強さは感じられない。あとは、トランプ政権によるイラン発電施設への攻撃見送り期限(4月6日)を前に、中東情勢がどう動くかが上値追いの鍵を握る。
  • 4月6日週の主な経済指標をみると、4月6日に米3月ISMサービス景況指数、7日にユーロ圏や独英米の総合PMI改定値(サービス業含む)、8日に日本2月実質賃金、9日に米Q4実質GDP確報値、米2月個人消費支出やPCE価格指数、米新規失業保険申請件数が控える。10日に日本3月国内企業物価指数、中国3月CPIと生産者物価指数(PPI)、米3月CPI、米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。
  • その他、政治・中銀関連では4月6日に日銀支店長会議とさくらレポートの公表、7日に日本30年利付国債入札、米3年債入札、ジェファーソンFRB副議長とシカゴ連銀総裁の発言、8日にニュージーランド準備銀行(RBNZ)の政策金利発表、FOMC議事要旨、9日に米30年債入札、12日に自民党大会を予定する。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は2024年7月高値の手前161.50円、下値は3月19日安値付近の157.50円と見込む。


【3月23日週のドル円レンジ:158.27~160.46円】

ドル円の変動幅は3月30日週に2.19円と、その前の週の2.39円から縮小した。前週比では0.68円の下落。年初来では1.9%高と、前週から上げ幅を縮小しつつ5週連続でプラスとなった。トランプ大統領とイラン側の間で仲介国が停戦を模索するなか、トランプ政権はホルムズ海峡の事実上の封鎖解除なしで終結する方針との報道もあり、事態打開への期待が高まった。ドル円は一時158.23円まで下落。もっとも、トランプ氏が演説で今後数週間の大規模攻撃に言及し、楽観が撒き戻され、ドル円は159円後半へ切り返した。

30日のドル円は、売り優勢。東京時間早々に一時160.46円まで年初来高値を更新した後、売りに転じた。三村財務官が「そろそろ断固たる措置を取る」と発言したほか、3月の日銀「主な意見」でタカ派的見解が並び、さらに植田総裁が衆院予算委員会で利上げに遅れれば物価高と金利上昇を招くと警戒を表明したことを材料視。前週末にトランプ大統領がイランが月曜朝からホルムズ海峡を通って米国に向けて20隻のタンカーを送ると発言し、WTI原油先物の時間外取引で売られたため、ドル円の下落を下支えした。ロンドン時間には前週末安値を抜け、NY時間に入っても売りの流れは継続。パウエルFRB議長がFF金利水準は「よい位置にある」と発言するなど、利上げ期待をけん制したこともあり、一時159.33円まで本日安値をつけた。

31日のドル円は、続落。東京時間は、WSJ紙のホルムズ海峡封鎖解除なしでも軍事作戦終了との報道を受け、供給網混乱の長期化が懸念され159.98円まで本日高値をつけた。もっとも、160円付近では上値が重く、トランプ氏がNYP紙のインタビューで、イランの交渉相手を「ガリバフ国会議長」と明かしたことで、協議への進展期待の再燃をもたらした。ロンドン時間からは、むしろWSJ紙報道などを受けた停戦期待が強まり、ドル円は売りへ傾く展開。NY時間にはトランプ大統領、ジェット燃料不足の国々に「米国から買うか海峡で自力調達せよ」と迫る場面もあったが、ヘグセス国防長官が今後数日が重要局面と言及すると、停戦期待を高め159円割れ。イランのペゼシュキアン大統領が「戦争を終結させる用意がある、しかし保証が必要」と発言したとのヘッドラインが流れ、アラグチ外相が米国と協議していないが直接連絡を取っているとの発言が報じられたこともあり、158.66円まで本日安値をつけた。米2月求人件数や米3月ISM製造業景況指数が発表されたが、影響は限定的だった。

1日のドル円は、軟調地合いを維持。東京時間、ドル円はトランプ氏が今後数週間でイランから撤退すると発言したため、売りが先行した。日銀短観が改善を続けたほかレビット報道官が「4月1日午後9時から、トランプ大統領がイラン情勢の進展について演説を行う」と言及したことも意識。仲値のタイミングで買いが入るも上値は重く、イスラエル軍がイランに対する大規模攻撃完了と表明したことも、材料視された。イラン外相が米国との交渉を否定したタイミングでは、市場予想を上回るユーロ圏3月製造業PMI改定値もあって、ドル円は上昇する場面も、買い戻しの勢いは限られた。リフレ派とされる浅田日銀審議委員の会見を無難にこなしたこともあって売りが再燃し、ロンドン時間には158.27円まで週の安値を更新。NY時間は米3月ADP全国雇用者数や米3月ISM製造業景況指数が市場予想を上回ったが、それほど影響を受けなかった。

2日のドル円は、大きく買い戻される展開。東京序盤は、現地時間夜に行われたトランプ氏の会見で今後2-3週間に大規模な攻撃が続く可能性に言及し停戦期待が後退、WTI原油先物の時間外取引での急伸につれ、ドル円も158円半ばから159円後半へ1円を超える上昇をみせた。ロンドン時間入りには、一時159.75円まで本日高値を更新。NY時間にイランがオマーンと協力しホルムズ海峡を通過する船舶の航行を共同監視するための新たなプロトコルを策定との報道が流れると159.20円台へ下押しした程度だった。

3日のドル円は、堅調地合いを維持。東京時間入りは一時159.43円まで本日安値を更新した後は、米3月雇用統計を控え159円半ばを中心としたもみ合いに終始した。ロンドン時間からは、グッドフライデーで米欧などが休場だったことも、動意に乏しくなった。NY時間に市場予想を上回る米3月雇用統計が発表されると、非農業部門就労者数(NFP)と失業率が市場予想より強い結果だったため、一時159.82円まで本日高値を更新。もっとも、NFPはヘルスケア関連のストライキ終了に伴う反動だったほか、失業率の低下も労働力人口の減少が影響したため、上値も限られ以降は159.60円台を中心とした推移が続いた。イランが米国と協議する意思なし、米戦闘機がイランの攻撃で墜落との報道が流れても、休場の関係で市場参加者は乏しく影響は限られた。

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