―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は3月16日週に2.39円と、その前の週の2.48円から小幅に縮小した。前週比では0.5円の下落と、5週ぶりにマイナスに。年初来では1.6%高と、3週連続でプラスながら前週の1.9%高を下回った。中東情勢緊迫化と原油先物の高止まりを受け、ドル円は高値圏での推移を維持。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がタカ派的な姿勢を打ち出すと、一時159.90円まで年初来高値を更新した。翌日の日銀金融政策決定会合で植田総裁が4月利上げの示唆を与えると、ドル円は日米首脳会談の最中に約1週間ぶりに158円を割り込み、一時157.51円まで下落。もっとも、FOMCの年内利下げ期待が後退し、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)の間で年内3回の利上げが織り込まれ始めるなか、ドル円の下値も限定的で159円前半で週を終えた。
- 米国とイスラエルがイランを攻撃してから約3週間、イランはホルムズ海峡の事実上の封鎖を継続し、原油高とインフレ圧力が強まっている。トランプ大統領は3月21日、48時間以内の海峡開放を要求し、応じなければ発電所を攻撃すると警告したが、背景には戦争権限法による時間的制約がある。一方、イランの革命防衛隊(IRGC)は報復を示唆。少なくとも、日本時間の23日午前中に時間切れを迎えるなか、エスカレーションを抑止できるか、それとも地域全体を巻き込む不可逆的な衝突へ傾斜するかを左右する分岐点となることは間違いない。
- 米欧英は原油高を受けインフレ警戒を強め、金融政策の方向性が分岐しつつある。米連邦公開市場委員会(FOMC)は3月会合で政策金利を据え置き、SEPでは成長率とインフレ見通しを上方修正し、年内利下げは1回予想を維持。しかし、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、エネルギー高によるインフレリスクを強調し、利下げには明確なディスインフレが必要と説明。労働市場の均衡を認めつつも、インフレの粘着性に強い警戒感を示した。議長人事の停滞も相まって、利下げは一段と後ずれする公算が大きい。
- 欧州中央銀行(ECB) は3月会合で金利を据え置いたが、インフレ見通しを大幅に上方修正し、原油高次第でHICPが4.8%に達する追加シナリオまで提示するなど、物価警戒を一段と強めた。イングランド銀行(BOE) も全会一致で据え置きつつ、声明文から「必要なら行動する」と利上げ余地を明確化し、緩和示唆を削除。市場では両中銀とも4月利上げ開始、年内2~3回の利上げ観測が急速に強まっており、欧英はインフレ抑制を最優先する局面に入った。
- 植田総裁就任後続いてきた「会見アノマリー」は3月会合で崩れ、ドル円は会見後に大幅下落した。日銀は金利を据え置いたが、中東情勢と原油高を受け物価上振れリスクを明確に意識し、委員会内でもインフレ警戒が優勢になりつつある。植田総裁は原油高が基調物価に短期で波及し得ると指摘し、物価指標の拡充方針も示した。これは4月利上げへの布石と市場は受け止めている。米欧がインフレ対応を優先し利上げ観測が強まるなか、日銀も政策金利1%台へ踏み出す局面が近づいている。
- ドル円の日足は、三役好転を維持するだけでなく、ダブルボトムのネックライン(157.66円)を割り込んでも一時的で、引き続きサポートとして機能している。WTI原油先物が100ドルドルを超えて急騰する場面では、引き続き160円超えが視野に入る。一方で、RSIは3月11日に69.72と過熱圏手前まで上昇した後は、上げ渋っている。直近は58.98となり、159円前半から上値余地があるか見極めのタイミングに入ってきた。片山財務相が3月12日に介入前段階の文言となる「断固たる措置」に言及しており、介入警戒も上値の重石となっている側面にも留意したい。
- 3月23日週の主な経済指標をみると、24日は2月全国CPI、ユーロ圏や独英米の総合PMI速報値(製造業・サービス業含む)、25日は英2月CPI、独3月Ifo企業景況感指数。米2月輸入物価指数、26日は日本2月企業向けサービス価格指数、米新規失業保険申請件数、27日は米3月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を予定する。
- その他、政府・中銀関連では、24日に日本40年利付国債入札、25日に1月日銀会合議事要旨公表、ラガルドECB総裁の発言、26日はG7外相会合、27日にユーロ圏財務省会合が行われる。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の161.50円、下値は50日移動平均線が近い156.50円と見込む。
1.ドル円振り返り=FOMC後に159.90円まで年初来高値を更新も、日銀後に上げ幅縮小
【3月16日週のドル円レンジ:157.51~159.90円】
ドル円の変動幅は3月16日週に2.39円と、その前の週の2.48円から小幅に縮小した。前週比では0.5円の下落と、5週ぶりにマイナスに。年初来では1.6%高と、3週連続でプラスながら前週の1.9%高を下回った。中東情勢緊迫化と原油先物の高止まりを受け、ドル円は高値圏での推移を維持。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がタカ派的な姿勢を打ち出すと、一時159.90円まで年初来高値を更新した。翌日の日銀金融政策決定会合で植田総裁が4月利上げの示唆を与えると、ドル円は日米首脳会談の最中に約1週間ぶりに158円を割り込み、一時157.51円まで下落。もっとも、FOMCの年内利下げ期待が後退し、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)の間で年内3回の利上げが織り込まれ始めるなか、ドル円の下値も限定的で159円前半で週を終えた。
16日のドル円は、軟調。前週末にトランプ政権が今週にもホルムズ海峡を航行する船舶の護衛に複数の国が合意したなどの報道が流れ、東京時間に一時159.75円まで本日高値を更新したが、売りが優勢となった。片山財務相が「断固たる措置を取る」と、介入前段階となる文言を言及したことで、介入警戒感が高まった。イランが米国とイスラエルに加担する国にホルムズ海峡の通航を容認しない姿勢を示す一方で、インドなど一部の船舶の航行が確認されたことも、安心感が流れたとみられる。NY時間には、WTI原油先物の下落に加え、米3月NY連銀製造業景気指数の下振れもあって、一時158.85円まで本日安値を更新。ベッセント財務長官やホワイトハウスのレビット報道官が、トランプ大統領の訪中が延期となる可能性に言及したが、影響は限定的だった。
17日のドル円は、引き続き軟調。現地時間のNY引け辺りにトランプ氏がイランとの戦争対応を受け訪中を1カ月延期すると述べたが、反応薄だった。むしろ、WSJ紙が3月FOMCで年内利下げ予想を1回からゼロに修正するとの報道や、仲値にかけての買いの動きもあり159円半ばをトライする展開。片山氏が前日に続き「断固たる措置」に言及したほか、植田総裁が参院予算委員会で基調的な物価上昇率は2%に向け緩やかに上昇などと発言したが、反応薄だった。ロンドン時間にはWTI原油先物につれ一時159.50円まで本日高値を更新。イランの安全保障トップの殺害やイラン最高指導者のモジタバ師が米との緊張緩和案を拒否したと報じられたが、その後はむしろ売りへ傾いた。日本政府がアラスカ産の日米首脳会談でアラスカ産原油の調達要請と報じられるなか売りが続き、NY時間入りに一時158.72円まで本日安値をつけた。その後、トランプ氏が日本やNATOなどイラン軍事作戦に加勢は不要と発言した一方、イランから「近い将来」撤退する可能性に言及したこともあって、ドル円の戻りは限定的だった。
18日のドル円は上昇。東京時間は売りの流れが続き、イラクでキルクーク原油の輸出再開との報道などを受けWTI原油先物が91ドル台へ下落する過程で、一時158.57円まで本日安値をつけた。しかし、NY時間入りにはWTI原油先物が切り返した他、米2月生産者物価指数(PPI)市場予想を大きく上回る加速を示し、ドル円は159円半ばへ上昇。FOMC声明文発表直後は、声明文で利下げバイアスと年内1回の利下げ予想が維持されたため、一時159.29円まで本日安値を更新した。もっとも、WTI原油先物の買いが再燃したほか、パウエルFRB議長が会見でディスインフレを確認できなければ利下げは困難との示唆を与えたため、利下げ予想が後退し、ドル円も上昇が再開。さらに、後任のFRB議長が承認されない間は暫定議長に就任する可能性に加え、刑事捜査中はFRB理事として残留する構えを打ち出すなか、新FRB議長就任でも利下げ困難との見方が強まった。結果、ドル円は上値を切り上げ続け、一時159.90円まで年初来高値を更新した。
19日のドル円は、売り優勢。東京時間の序盤は、前日のタカ派的FOMCの余波から一時159.87円まで本日高値を更新したが、その後は上げ渋りとなり、日銀金融政策決定会合で据え置きが発表されても反応薄だった。植田総裁会見が開始後まもなく、一時159.80円台へ上振れしたものの、むしろ植田氏がエネルギー価格の上昇が基調物価に上方リスクを与えると予想した政策委員が微妙ながら多いと発言したこともあり、売りへ舵を切る展開。会見後に159円半ばへ戻すも上値は重く、むしろNY時間には市場予想を上回る米新規失業保険申請件数や米3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行のタカ派的な据え置きを受けても下落は止まらず、約1週間ぶりに158円を割り込んだ。日米首脳会談が行われるなか、一時は2月9日の高値157.66円も割り込み157.51円まで下落し、週の安値をつけた。
20日のドル円は、上昇。東京時間は春分の日で休場のなか、ロンドン時間から昨日の下落を打ち消す展開となった。ECBやBOEが年3回の利上げを行うとの見方が強まり、クロス円に押し上げられただけでなく、NY時間には1月に利下げ票を投じたウォラーFRB理事が年内利下げに慎重な見解を寄せたため、買いを後押し。トランプ政権がカーグ島制圧に地上軍投入を検討との報道もあり、一時159.39円まで本日高値を更新し、159円を保って週を終えた。
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