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  • Weekly Report(3/17)「ドル円、日米金融政策決定会合を挟み下落トレンドを確認へ」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は3月10日週に2.66円、その前の4.36円から縮小した。週足では、反発。前週比では0.60円の上昇となった。年初来リターンは5.5%安と、前週の5.9%安から下げ幅を縮小した。ドル円は3月11日にトランプ大統領が景気後退懸念を否定せず、米株安も重なって一時146.54円と2024年10月4日以来の水準へ下落。もっとも、その後は米2月消費者物価指数(CPI)などが市場予想以下でも、リスク選好度の改善を誘い米金利は上昇、ドル円の買い戻しを誘い、一時149.20円と週の高値を更新した。
    • 今週は3月18-19日に日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)を予定する。各メディアの観測報道によれば、日銀は政策金利を政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.5%で据え置く見通しだ。問題は、植田総裁の記者会見だろう。足元でトランプ政権の関税など政策に不確実性が高まるなか、次回4月30日から5月1日の会合後の5月2日に米4月雇用統計、5月6-7日にはFOMCを控える。5月の米国のイベントをにらみ、植田総裁が今後の追加利上げに慎重な姿勢を示せば、ドル円は上昇で反応するだろう。
    • 一方、3月FOMCも据え置きの公算が大きく、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が3月7日に利下げに急がない姿勢を示したように、年内2回の利下げ予想は維持する見通しだ。もっとも、足元の米経済指標の軟化を受けて、四半期に一度公表となる経済・金利見通しのうち、成長率や失業率、物価の見通しは下方修正されてもおかしくない。下方修正幅次第では、6月利下げの期待が高まりうる。また、1月FOMC議事要旨では、バランスシートの圧縮(量的引き締め、QT)ペースの一段の減速あるいは一時停止について議論していただけに、3月FOMCでいずれかの決断を下す余地もある。
    • アトランタ連銀のGDPナウが3月6日時点で米Q1実質GDP成長率につき2.4%減と予測するなか、「トランプセッション=トランプ不況」との言葉が取り沙汰されている。ただ、Q1についてはトランプ関税による駆け込み需要で輸入が急増した影響が大きく、一時的と捉えられよう。何より、共和党が単独で成立を目指す税制改正法の延長や歳出削減などを含む「一つの大きく美しい予算案」、いわゆる包括案の成立の目途が立てば、悲観が後退する期待もある。
    • 3月17日週は、17日に中国2月小売売上高や鉱工業生産、米2月小売売上高や米3月NY連銀製造業景気指数、18日はユーロ圏と独の3月ZEW景況感指数、米2月住宅着工件数や米2月輸入物価指数、米2月鉱工業生産、19日は日本1月機械受注と2月貿易統計、日本1月鉱工業生産を予定する。20日はNZ24年Q4実質GDP成長率、英2月失業率、米24年Q4経常収支、米新規失業保険申請件数、米3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米2月中古住宅販売件数、米2月景気先行指数、21日は日本2月全国CPIが控える。
    • その他、中央銀行の予定では3月19日に日銀金融政策決定会合と政策金利発表、並びに植田総裁の記者会見を予定する。同日には、FOMCの政策金利と経済・金利見通しの発表、並びにパウエルFRB議長の記者会見が開かれる。20日はスイス国立銀行、イングランド銀行が政策金利を発表するなど、中銀イベントが目白押しだ。
    • ドル円のテクニカルは、弱い地合いがやや後退。21日移動平均線が200日移動平均線を割り込んだほか、50日移動平均線が90日移動平均線を下抜け、デッドクロスが形成された。また、ドル円は引き続き21日移動平均線が抵抗線として機能している。前週、2024年9月安値と2025年1月高値の半値押しに当たる149.23円をローソク足の実体部で超えられなかった点も、上値の重さを感じさせる。一方で、日足のチャートはダブルトップのネックラインがある24年12月の安値148.64円の水準で週を終え、方向感を探っているかのようだ。
    • RSIが3月10日に31.11と割安の節目である30に接近した後、ドル円は買い戻され、足元の傾向を確認した。もっとも、ドル円の下落トレンドが明確になった2月後半以降、RSIが45付近まで切り返すと、売りが再燃してきた実績もある。
    • 以上を踏まえ、今週の上値は3月5日の高値付近の150.20円、下値は3月11日の安値付近で心理的節目の146.50 円と見込む。


    ドル円の変動幅は3月10日週に2.66円、その前の4.36円から縮小した。週足では、反発。前週比では0.60円の上昇となった。年初来リターンは5.5%安と、前週の5.9%安から下げ幅を縮小した。

    10日は、トランプ大統領が9日放送のFOXニュースのインタビューで、景気後退に関して明確に否定せず、時間外取引で米10年債利回りが低下した動きにつれ、ドル円も売りが優勢となった。米株安などもあって「トランプセッション=トランプ不況」が囁かれるなか、ドル円は一時146.63円まで下落した。

    11日は、東京時間に日経平均が1,000円以上も急落した動きにつれ、リスク選好度が低下したため、ドル円は一時146.54円と2024年10月4日以来の安値をつけた。もっとも、日本24年Q4実質GDP成長率・改定値が前期比年率2.2%増と速報値の同2.8%増から下方修正され、日銀の早期追加利上げ期待が後退し、ドル円は買い戻しの展開。NY時間に米1月雇用動態調査で求人件数が市場予想を上回ったほか、トランプ大統領がカナダから輸入する鉄鋼・アルミニウム製品をめぐり、追加関税を50%に引き上げる措置を中止する方針を示したことも、ドル円の買い戻しにつながり148.12円まで本日高値を更新した。

    12日は、前日のウクライナに対する米国の軍事支援などの再開を受けてリスク選好度が回復し、ドル円の上昇につながった。NY時間に米2月CPIが市場予想を下回ると、米株先物が急伸するなどリスク選好度が改善、つれてドル円が上昇し一時149.20円まで週の高値を更新。しかし、EUとカナダが米国に対する報復関税を発表したことから貿易戦争や米景気悪化が懸念され、ドルは買い一巡後に上値が重くなった。

    13日は、シューマー上院院内総務が14日に迫る政府機関閉鎖を前に共和党の25年度末(9月末終了)までの暫定予算に反対するとの発表もあって、一転して軟調地合い。米2月生産者物価指数(PPI)は市場予想以下で米新規失業保険申請件数が市場予想を上回るなかで、ベッセント財務長官がドル安を懸念しない立場を示したため、147.41円まで本日安値を更新した。トランプ大統領がEUに対し米国産ウイスキーへの追加関税を撤廃しなければ、同地域からのシャンペンなどに200%の関税を課す考えを示したことも、貿易戦争の懸念を高め売りにつながった。

    14日、ドル円はシューマー上院院内総務が共和党案を受け入れる可能性を示したことで、政府機関閉鎖リスクが低下し、東京時間から買い戻された。東京時間には、149.02円まで本日高値を更新。もっとも、NY時間は売りが再燃、米3月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値が下振れしたことも材料視し、148円半ば付近で週を終えた。

    チャート:ドル円の2024年12月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

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