―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は3月23日週に2.39円と、その前の週と変わらなかった。前週比では1.09円の上昇と、反発。年初来では2.3%高と、4週連続でプラスとなった。トランプ大統領がイラン側と協議を経て同国発電施設への空爆を5日間停止すると発表したが、効果は限定的。米国が提示した15項目の和平案に対し、イランが逆に5項目の停戦案を突き付けるなど両者の溝は埋められず、長期化への懸念から原油先物が上昇し、ドル円もつれ高となった。三村財務官や片山財務相の口先介入も限定的。日銀がコアCPIの拡充や中立金利の再推計などを発表したが、ドル円は2024年7月以来の160円を突破し、一時160.41円まで年初来高値を更新した。
- 米国では原油高騰を受け「財務省が先物市場に介入する」との観測が浮上したが、ベッセント財務長官は介入を否定し、ロシア・イラン産原油の制裁一時停止や戦略石油備蓄(SPR)放出による“物理的介入”を強調した。一方、先物介入は法的根拠が乏しく、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)も市場機能を損なうと批判。日本でも財務省が原油先物介入の可否を金融機関に打診したが、法的解釈は曖昧で実務的リスクも大きい。観測を流すだけで市場心理を揺さぶる「日米連携」の可能性はあるものの、原油先物という前例のない手段が議論される背景には、日米ともに政策の余地が限定的となる現実が浮かび上がる。
- 日銀は、コアCPIの拡充、需給ギャップと潜在成長率の再推計、自然利子率の再推計を一斉に公表した。特殊要因を除いた物価は依然として堅調で、需給ギャップは手法見直しにより過去15四半期がプラスへ遡及修正された。自然利子率も下限が引き上げられ、名目の中立金利は1.1~2.5%程度と推計される。これらの指標はいずれも、実質政策金利がなお中立水準を下回る環境を示すとともに、中東情勢による原油高の下でも、日銀が金融緩和の正常化を進める余地を統計的に裏付ける内容となった。
- 米国のイラン攻撃開始から1カ月、米国は15項目の和平案、イランは5項目の停戦条件を提示したが溝は深い。空爆停止は延長されたものの、イランはカーグ島への地上軍投入を警戒し、米国防総省も1万人規模の地上作戦を検討と報じられるなど緊張は続く。原油高止まりの中、今週は米3月雇用統計を予定、非農業部門就労者数は前月から改善が見込まれている。ただしイラン攻撃後、3月の全米リアルタイム求人広告動向指数は明らかに低下しており、額面通り受け止められるかは不透明だ。
- ドル円の日足は、三役好転を維持するだけでなく、年初来高値を更新し継続。160円を維持して週を終え、非常に強い地合いが保たれた。RSIも3月11日に69.72と過熱圏手前まで上昇した後で上げ渋りを続け、直近で62.72と小幅ながら上げ余地がある。ゴールデンクロスも形成しており、介入やWTI原油先物の急落がなければ、2024年7月の高値161.95円を試す勢いだ。
- 3月30日週の主な経済指標をみると、31日は3月東京都区部CPI、日本2月失業率と有効求人倍率、中国3月製造業PMI、ユーロ圏3月統合消費者物価指数・速報値、日本の外国為替操作実施状況の公表、米3月消費者信頼感指数、米2月JOLTSを予定する。4月1日は日銀短観、中国3月Ratedog製造業PMI、ユーロ圏や独、米3月製造業PMI改定値、米3月ADP全国雇用者数と米2月ISM製造業景況指数が控える。2日は米2月貿易収支と米新規失業保険申請件数、3日は米3月雇用統計と米3月ISMサービス業景況指数が発表される。
- その他、政治・中銀関連では3月30日に3月会合の日銀主な意見、パウエルFRB議長とウィリアムズNY連銀総裁の発言、31日はボウマンFRB副議長やバーFRB理事、シカゴ連銀総裁の発言、4月1日はセントルイス連銀総裁の発言、2日はダラス連銀総裁の発言を予定する。4月3日はグッドフライデーのため、米欧豪などが休場で、米債市場は短縮取引となる。以上を踏まえ、今週の上値は2024年7月高値161.95円を上回る162.00円、下値は21日移動平均線が近い158.50円と見込む。
1.ドル円振り返り=米・イラン間で紛争長期化懸念から原油高止まらず、ドル円は160円突破
【3月23日週のドル円レンジ:158.02~160.41円】
ドル円の変動幅は3月23日週に2.39円と、その前の週と変わらなかった。前週比では1.09円の上昇と、反発。年初来では2.3%高と、4週連続でプラスとなった。トランプ大統領がイラン側と協議を経て同国発電施設への空爆を5日間停止すると発表したが、効果は限定的。米国が提示した15項目の和平案に対し、イランが逆に5項目の停戦案を突き付けるなど両者の溝は埋められず、長期化への懸念から原油先物が上昇し、ドル円もつれ高となった。三村財務官や片山財務相の口先介入も限定的。日銀がコアCPIの拡充や中立金利の再推計などを発表したが、ドル円は2024年7月以来の160円を突破し、一時160.41円まで年初来高値を更新した。
23日のドル円は、急落。トランプ大統領がイランに「48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければ攻撃」と警告し、イランも報復姿勢を示したことで、東京序盤は159円ちょうどまで下落。その後は仲値にかけて買い戻された。三村財務官が「原油先物の投機的動きが為替に影響」と述べたが反応は限定的で、159円半ば中心の推移が続いた。ロンドン時間は原油高につれ159.66円まで上昇。しかしNY時間は、トランプ氏が「協議進展」を理由に空爆を5日間停止すると発表し、原油が85ドル台へ急落した流れを受け、ドル円も158.20円台まで下落した。イラン側の否定で159.10円まで戻したが、週内の米・イラン会談予定が伝わると再び売りが強まり、今度は158.20円まで本日安値を更新。その後の戻りは鈍く、最終的に158円半ば近くで引けた。
24日のドル円は、買い戻し。東京時間は158円後半へ揺り戻しとなり、城内経財相が原油高を受け、燃料補助金基金に予備費8000億円を繰り入れる方針を示し、節エネより補助金支給の姿勢を打ち出したことも、ドル円の上昇につながった。ロンドン時間からNY時間にかけ、イランが米国とイスラエルによる攻撃で死亡した最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長の後任に、イスラム革命防衛隊元幹部ゾルカドル氏を任命したと発表。原油先物の買いを促し、ドル円は158.90円台へ押し上げた。米3月総合PMI速報値が約1年ぶりの水準に低下し一旦は軟化したが、米国防総省が陸軍第82空挺師団の旅団戦闘チーム(約3,000人)を中東に派遣する計画との報道を受け、WTI原油先物(オレンジ線)の買いが再燃。加えて、米2年債入札も惨憺たる結果となり、ドル円は一時159.19円まで本日高値を更新した。
25日のドル円は、買い優勢。東京時間から緩やかに上昇し、ロンドン時間には159.20円と前日高値に並んだ。一旦はゆるんだが、NY時間にイランは米国が提示した停戦案を受け入れないと報じられ、WTI原油先物に買いが入るなか、ドル円もつれ高に。ロンドン・フィックス(日本時間午前1時)を意識した買いも強まり、一時159.28円まで本日高値を更新した。
26日のドル円は、もみ合いを経て上昇。東京時間、ドル円は159円半ばでの推移を維持した。日銀が再推計したコアCPIと需給ギャップを公表した直後の反応は限定的だったが、それぞれ強含みを示すと、ロンドン時間入りに一時159.29円まで本日安値を更新。もっとも、NY入りにかけては米国防総省が「最終局面」として、カーグ島の攻撃を含む計画を進行中との報道もあり、WTI原油先物につれ一時159.85円まで本日高値を更新した。
27日のドル円は、買い優勢。東京時間の序盤にドル円は一時159.46円まで本日安値を更新したが、その後は徐々に上方向を試した。米国防総省が中東向けに1万人の地上部隊を派遣するとの報道もあり、日銀が中立金利の再推計を発表したところ、下限がやや切り上がったが、反応は限定的。ロンドン時間入りには、一時159.97円まで年初来高値を更新し、以降も160円突破を伺う展開に入った。NY時間に発表された米3月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値が低下したものの、影響せず。むしろ159.70円台へゆるんだ後に急速に買いが集まり、2024年7月以来の160円を突破し、一時160.41円まで上値を拡大した。
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