目次ドル円、注目のFOMCを通過米雇用関連の指標が軒並み低調、米長期金利が低下私の好きな一目均衡表チャート ドル円、注目のFOMCを通過 […]
<テクニカル分析判断>
サマリー:
●短期:想定を超える根強い上昇圧力によって「上値メドの模索」が依然続く
●中期:当面強調維持も「ピークアウトは早晩訪れる可能性が高い」との見通しを継続
先週は「寄付145.35:144.53~146.63:終値146.43(前週比+1.05円の円安)」となり
週足は4週連続の陽線を形成し、依然として根強い上昇圧力の継続が示唆されている。
ただし、先週半ばには前週の安値を下回る調整も観測されており、7月中旬から続いて
いた下値の切上りは5週連続で潰えた。まだ僅少ではあるものの「上昇力の減退」の
兆しが徐々に垣間見られるようになってきた。また、7週前に5.77円まで爆発的に拡大
した週間レンジは、その後4.27円⇒3.75円⇒3.20円⇒3.48円と比較的高水準を維持し
続けていたが、前週1.91円と急縮小の後、先週も2.10円と展開は落ち着きつつある。
他の金融市場と同様に出来高の漸減が続いた外国為替市場だったが、今週も依然として
根強い上昇圧力によって「上値のメドを模索」する展開が先行・継続しやすいと見る。
なお、ここひと月ほど「見通しの再検証」についてお伝えしているが、先週末の再検証
では「(中期的な)ピークアウトは早晩訪れる可能性が高い」との結論に著変は無かった
ものの「その後の下落期間は比較的短命に終わり、我々が数年単位の超長期トレンドと
位置付けるUSD高/円安への転換・移行が本格化する」とのシナリオの蓋然性を検討中。
<<<この点については、後段の「➌月足チャート分析」でも触れる予定>>>
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/08/25のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:根強い上昇圧力により上値メドの模索が先行・継続
●黒い〇は天井形成、エンジの〇は底打ち(上昇)の時点(共に同色のRSI水準)を表す
◎長期的ピークアウト(151.95@昨年10/21)との前提のもと、3つの下落トレンドライン
・その上方突破認定時にエンジの〇・その時のRSIにも〇(水準により同色とは限らない)
◎(上下の方向を問わず)突破認定は『終値ベース・複数回連続』を原則としている
◆最初の鋭角的下落線の突破は今年1/30。以下主要な数値(2本目以降も同様)
①終値130.42、②各MA:21/52/200=130.35 / 134.00/ 136.83 、③RSI=46.1
⇒3本のMAより低い水準。特に200MAとは大幅な乖離。③はやや低めの中立領域
◆(1本目より緩やかとなった)2本目の下落トレンド線の突破は約2.5か月後の4/17
①終値134.46、②各MA:21/52/200=132.26/ 133.46/ 136.77 、③RSI=58.2
⇒21/52MAよりやや上。200より依然下にあるが乖離はかなり縮小。③は中立領域
◆(非常になだらかとなった)3本目の下落トレンド線の突破は更に約4か月後の8/11
①終値144.93、②各MA:21/52/200=141.57 /141.58/ 136.38 、③RSI=65.1
⇒3本のMAより高い水準。特に200とは8.6円もの乖離。③は70に近い警戒領域
□以上より、当面は「上値メドの模索が先行・継続」する可能性が高いと考えられるが
そのタイミングも含めて、ピークアウトに向け着実に接近中と認識している
>>>想定レンジ=今週:144.30~149.25 、今後1ヶ月:140.55~150.90 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:下落再開に向け、ピークアウトの確認待ち
◎上記の日足と同様に、長期的ピークアウト(151.95@昨年10/21)との前提のもとで
3つの下落トレンドラインの上方突破の状況をより拡大して検証
(これも同様に、突破認定は『終値ベース・複数回連続』を原則としている)
◆最初の鋭角的下落線の突破は今年1/30週。以下主要な数値(2本目以降も同様)
①終値131.19、②21MA/52MA=138.44 (-4.32%=132.45)/ 132.95、③RSI=42.6
⇒21MAより大幅に低い水準で21MA-4.32%と-7.41%の中間。③は低めの中立領域
◆(1本目より緩やかとなった)2本目の下落トレンド線の突破は約3か月後の4/17週
①終値134.10、②21MA/52MA=132.81/ 135.75、③RSI=50.3
⇒21MAと52MAのほぼ中間、③も中立領域のど真ん中に位置している
◆(非常になだらかとなった)3本目の下落トレンド線の突破は更に約4か月後の8/7週
①終値144.93、②21MA/52MA=138.49 (+4.32%=144.45)/ 138.00、③RSI=63.3
⇒21/52MAより大幅に高い水準で21MA+4.32%より上。③はかなり高めの中立領域
□前週の終値をもって上方突破を確認。これをもって、上値抵抗線は上記3本目の
下落トレンド線から(3/19週から始まる)「上昇トレンド帯の上限(紫の太線)」に
移行したと認識。この線は今週から149円台に上昇するが近々にこの水準をトライ
する展開となれば、(現状では「ピークアウト近し」を示唆する要因は希薄だが)
RSIは➊~➌全ての時間軸で上昇の過熱を示す70超の水準へ上昇する見込み。
□現状では、依然として「上値メドの模索が先行」する可能性が高くそのタイミング
も含め、ピークアウトに向けて着実に接近中と判断している
●換言すれば「ピークアウトを確認するまでは下落トレンドの再開は困難」とも言える
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 134.70~150.15 ⇒ 136.50~150.90 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンド入りの前に中期的下落を想定
●7月は高変動率の中4カ月ぶりの陰線。本年2月からの下値切り上がりも遂に途切れた
ものの当面は戻り高値更新の可能性高く、“反発局面は終息”の可能性は一旦消滅
●8月の終値を確認後となるが現状では「緩やかな下落トレンドの可能性は依然残存」を
中期のメインシナリオとして維持。その後、超長期上昇トレンドへの移行を見込む
●繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2001年9月からの推移)
<=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去35年以上
経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった(紫の太い〇部分)
<=一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(66.7)も圧倒的に低下余地が大きい
=>超異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた軟化漸進の展開へ
<現在134.40円の水準にある[20MA]は来月以降も約1.3円/月に上昇する見込み>
◎ただ、その動きも1年以内には底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向
へと徐々に変換してゆく可能性が高いと想定している
>>> 今後1年間の想定レンジ = 134.70~152.70 ⇒ 136.50~153.60 =
<ファンダメンタルズ分析判断:簡略版>
◎先週のUSDインデックスは、強弱混在の米経済指標や新たな示唆や材料の提供がなかった
注目のジャクソンホール会合におけるパウエルFRB議長の講演内容を受け、米債利回り
がほぼ横ばいの展開となったことで動意薄。ただし、欧州PMIの想定以上の悪化を受け
対ユーロを中心に上昇(対円でも上昇)するという比較的堅調な展開となった。
これでUSDインデックスは「週ベースでは6週連続高」と15ヶ月ぶりの連騰を記録した。
◎注目されていたパウエル議長の公演内容は、昨年とほとんど変化のないメッセージ。
昨年と全く同様に、『やり遂げるまで続ける』とインフレファイターとして知られた
ボルカー元FRB議長の回顧録を引用した締め括りには(個人的に)苦笑を禁じ得ず。
◎但し、一段の金融引締めを実施すべきかどうかは『慎重に進める』としながらも、
FRBは『依然としてインフレを目標の2%に回帰させるために“政策金利が十分に高い”
とは結論付けていない』と強調しており「タカ派的なトーン」は維持。市場参加者は
「インフレを確実に抑制するために一段の利上げがあり得る」との受け止めが主流。
□主なUSD買い/円売り要因
①既述のジャクソンホール会合を受けた「FRBによる金融引締め長期化観測」
>>先物市場では「9月FOMCでの追加利上げ織込みが19.5%に上昇(前週11.0%)」
②上記を主因とする米国債利回りの上昇
⇒米10年債利回りは一時(瞬間的に)4.35%と、昨年10/21の4.34%を僅かに超過。
仮にこの水準を明確に超えてくるようなら、2007年11月以来の水準更新へ
■主なUSD売り/円買い要因
➊中国不動産大手の中国恒大集団による連邦破産法15条の適用申請の余波
>>「中国発グローバル経済の悪化懸念」の高まり
➋本邦金融当局による「市場介入」への警戒感
>>依然「口先介入」に止まるも、水準としてはいつあってもおかしくない
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」に対する根強いサポート要因
◎明確な鈍化を見せない米国経済指標 ⇒「経済の軟着陸」期待の台頭加速
〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
>>『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀の明白なコントラスト』のむし返し
⇔ 今後「欧米のタカ派色希薄化の一方、日銀はハト派色後退」で逆方向へ
〇昨今注目度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
⇔「欧米の利上げ打ち止め」並びに「日銀の金融政策正常化への漸進」という
かつての「逆行する(金融政策の)方向性」に対する反転が視野に入りつつある中
(食傷気味となった)このロジックはいつまで通用するのか?
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●米銀行セクター不安から顕現化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける公算大
>>>過去1年半にわたる利上げの累積効果による景気悪化は今後本格化へ
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
>>>海外大手格付け機関による一部米銀の格下げ
>>>依然として軟化が目立ち続ける商業用不動産市況
●中国の景気減速が米国(世界の)金融市場に波及する可能性の高まり
>>>中国不動産業界の最大手「碧桂園」の問題に言及することはなかったが、
2週前、イエレン米財務長官は「中国の不動産問題に起因する景気減速が米国に
波及する可能性」を認めた(数日後、中国恒大集団が米連邦破産法の適用申請)
●「この問題が米国の金融市場に飛び火する」可能性の高まり
>>>米国では商業用不動産市況が懸念され続ける中、企業向け融資にも警戒拡大
⇒ 背景:米企業の債務残高の対GDP比率は昨年末時点で76.0%を超えていた
(2008年の「リーマン・ショック=世界金融危機」時を上回る水準)
>>>中国不動産企業のドル建社債発行残高は約1000億ドルとされるが碧桂園の
利子の支払い遅延後は、ジャンク(投機的格付け)債を中心に投げ売り状態
>>>今後、中国不動産企業のドル建ジャンク債のデフォルトが多発するような
事態となれば、米社債市場全体のセンチメントが一気に悪化する惧れあり
>>>中国の不動産企業の債務危機を世界の金融市場は決して軽視できない
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>米債券市場での将来の景気後退を示唆する『逆イールド』は依然高水準
>>>『逆イールド』幅は今年3月の最大値(▲1.08%)を7月に僅かに更新
>>>その後、一旦縮小のトレンドに入ったと思われたが、先週は再び拡大へ
>>>2年・10年債を含め米国の債券利回りは各々『限界的な水準』に接近と判断
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式市場の好調は「米利上げサイクルが終了に近いとの見方」も重要な要因
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ低下余地はほぼ無く金利の変化としては「上昇」するしかない
(生保など機関投資家が長期投資対象として充分魅力的な水準になるまで)
>>>先月の「YCC修正」により『日本の金利は下げられない』ことが改めて明白に
>>>欧米の利上げが終われば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が継続
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は145円台から
始まり、その後断続的に徹底して水準を押し下げる強い意志を伴って実施された
>>>現在、日本は「米国の外国為替監視対象国から除外」され、従前よりも市場介入
の自由度・意思決定速度が向上する環境となってきている
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(経常)収支構造の反転(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した内外金利差、今後増加が見込まれる個人による海外証券投資、
更には上記①で明らかになった本邦の「外貨不足」という需給動向
テクニカル分析でも指摘したが、現在、明確なピークアウト接近の兆候は見られない。
本邦金融当局による市場介入観測が上値を抑制する材料として警戒されているものの、
「節目の150円を超えてくるまで実弾介入に踏み切る可能性は乏しく(それまでは口先
介入に留まる)、ドル高・円安の流れを食い止めるには至らない」との見方が増勢中。
確かに、現在は介入ぐらいしか「我々が(早晩訪れると考えている)ピークアウトの兆し」
に繋がる要因は無いのかもしれない。また、実弾介入の実施まで「上値トライ」が継続
してくれた方がUSDロング・ポジションの積み上がりや昨今リスク回避に傾きつつある
他の金融市場センチメントの悪化が顕現化しやすくなってくる可能性もある。
ただし、「ジャクソンホール会議後の方向性は上昇」と捉えていた市場参加者が圧倒的
多数を占めていた状況を考えると、パウエル議長の講演内容は果たしてそうした認識を
サポートするものであったかどうかについては「はなはだ疑問」だ。
FRB当局者も繰り返すように「今後、FRBの金融政策はデータ次第」となると個人的には
考えている。パウエル議長は講演で『曇り空のもとで星を頼りに航海している』と述べ、
不確実性が高い中で金融政策の舵取りの難しさを指摘した。
今、我々は『引締め過ぎ』と『引締め不足』の両方の可能性に備える必要がある。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに
短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏の
レポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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