<テクニカル分析判断>
●短・中期:日足/週足の「連続陽線は2022年当時の水準へ延伸し」地合いは一段と堅固に

□6/22週:「寄付161.22:161.07~161.94終値161.73、前週比+0.45円の円安)」
◇6/15週は「週間変動幅が2.07円」とその前4週の1円前後からほぼ倍に拡大し、ようやく「保合い/膠着」を脱したかと思われたが、先週は「週間変動幅が0.87円」と急縮小。押し目買い/戻り売りの両圧力は再び拮抗し膠着感強まる
◇しかし、終値は前週比で+0.45円と小幅ながらもUSD高/円安となり、2022年10月中旬以来初の「7週連続陽線」が示現。(日足でも「先週6/25まで2022年9月以来の10日連騰を記録」したことと併せ)「緩やかではあるものの着実な上昇圧力の増勢」を確認
◇また、「21MA2.13%の水準に接近」しつつあり、介入による急落で一旦急激に悪化した「USD円相場の地合いは、一段と堅固さを増幅」していることも確認
◇一方、162円急接近に伴い「戻り売り圧力の高まり」も顕現化。しかし、「地合いの一段の好転」が着実に戻り売り圧力を吸収
<上掲チャートのポイント(週足):中期時間軸>
◇5/4週の「下ヒゲ長めの小“陰線”(4)が底打ちを示唆」した
◎「下ヒゲ長めの小“陰線”」ではあるものの、「(D)からの緩やかな上昇トレンドライン(サポートライン)付近での底打ち」は中期上昇トレンドの存続を示唆
◎『根強い押し目買い圧力』ならびに『昨年4月から1年超続く緩やかな上昇TL』は依然として堅固であり、今後も相当強力なサポートラインとして機能する可能性が高い
⇒既述の通り、(4)で底打ち後に大きく反発。一気に21週MAを大幅に上回った5/10週以降は「下値/上値を共に切上げる典型的な上昇サイクル」の軌道を描き(伸び悩んだ前週の上ヒゲ部分を完全に埋める格好で)7週続伸
⇒「7週連続陽線」は2022年10月中旬以降では初の事象であり、2023年以降は全く観測されていなかった(下図ご参照)

⇒上図が示す通り、2022年は「9週連続陽線×2回」や「7週連続陽線」など“USD高円安が明確に加速”した年
⇒今回の「7週連騰」は2週前が“僅かな陽線”であり、“明確”とは言えないまでも2022年のような「力強い上昇が再来する可能性」を示唆
◎RSI・ストキャスティクスは共に警戒水準に接近しているものの、堅固さを増幅した地合いによって「両指数が高位持続(高止まり)のフェーズに入りつつあり、共に更なる上昇の可能性を排除せず
●ただし、これ以上の水準(ほぼ40年ぶりとなる162円超)への上昇は、上記指数の警戒水準接近と相まって自律調整的な反落にも要注意の局面へ
=>足許での「上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、約40年ぶりの水準に突入してゆくにつれ『(介入など)戻り売り圧力』もまた一段と高まる。このため、両圧力の拮抗により再び『保合い(膠着)』となる可能性もまた排除できない

<チャートのポイント(日足):短期時間軸:既述週足コメントもご参照>
<1枚目>
◇昨年4月以降の緩やかな上昇トレンドでは「連騰は最長6まで」であり、連騰が7以上に伸びるなら上昇圧力の増勢を示唆(5/18週のコメント)
⇒実際、「5/11~19の7連騰」以降は(必ずしも連騰とはなっていないが)週単位で上値/下値を切り上げる、着実な上昇サイクルが進展
◇「介入→底打ち→反発」後は『連騰』がかなり目立つようになり、連続はおろか「陰線自体がほとんど見られない」状況だった
⇒そして、先週木曜までで「連騰は10にまで延伸」。これは「一段と堅固になった“USD円相場の地合い(基調)”」を強調

<2枚目>
◇「7日連続陽線」は2024年6月以来約2年ぶり、「10日連続陽線」は実に2022年10月以来の続伸
◇7日以上の連続陽線は‘22年~’24年に集中的に見られ、特に上昇トレンドの加速が鮮明だった‘22年には10連騰以上の力強い上昇が複数回見られた(図中⑤⑥)
<⇔>
●ただし、同期間において「長い連騰の後には(急)反落するケースも少なくない」ため、この「反動」には相応の警戒が必要
以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り
◎『根強い押し目買い圧力』ならびに『昨年4月から1年超続く緩やかな上昇TL』は依然として堅固であり、今後も相当強力なサポートラインとして機能する可能性が高い
◎『6/12~6/25の“日足での10連騰”』ならびに『2022年10月以来となる“週足での7連騰”』は、今後の「着実な上昇圧力の増勢」を示唆
◎RSI・ストキャスティクスは共に警戒水準に接近しているものの、堅固さを増幅した地合いによって「両指数が高位持続(高止まり)のフェーズに入りつつあり、共に更なる上昇の可能性を排除せず
●ただし、これ以上の水準(ほぼ40年ぶりとなる162円超)への上昇は、上記指数の警戒水準接近と相まって自律調整的な反落にも要注意の局面へ
=>足許での「上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、約40年ぶりの水準に突入してゆくにつれ『(介入など)戻り売り圧力』もまた一段と高まるため、両圧力の拮抗により再び『保合い(膠着)』となる可能性も排除できない
◇それでも、超長期時間軸(後述月足)では「USD円相場の地合いは極めて堅固」であるため、今後2024年7月の161.94円を超えて「162円台トライへ移行」する可能性は依然として高い
◎短期的な自律調整を交えつつも「中長期的な円安/USD高トレンドは着実に進展」しているとの認識を引き続き堅持したい
□以上を踏まえ、引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目
1 164.20円=21日MA+2.16%
2 163.65円=21週MA+3.09%
3 ☆162.65円=21週MA+2.46%☆
4 162.20円=21週MA+2.16%
5 ☆160.70円=21日MA☆
6 159.40円=52日MA
7 158.75円=21週MA
8 157.70円=21週MA▲0.69%
>>>上記3(上方)と5(下方)が「抜けると加速する」と思われる水準
~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2026/6/26のNY市場終値をベースに実施) ~
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等
短期(1週間~1か月)の方向性:一段と堅固な地合いvs根強い戻り売り圧力

〇上図は既掲(直近10ヶ月分)を直近2年分に拡大。解説コメントについては既掲をご参照下さい
◇「介入→底打ち→反発」後は『連騰』がかなり目立つようになり、連続はおろか「陰線自体がほとんど見られない」状況だった
⇒そして、先週木曜までで「連騰は10にまで延伸」。これは「一段と堅固になった“USD円相場の地合い(基調)”」を更に強調
●ただし、これ以上の水準(ほぼ40年ぶりとなる162円超)への上昇は、RSI/ストキャスティクスの警戒水準接近と相まって自律調整的な反落にも要注意の局面へ
=>足許での「上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、約40年ぶりの水準に突入してゆくにつれ『(介入など)戻り売り圧力』もまた一段と高まるため、両圧力の拮抗により再び『保合い(膠着)』となる可能性も排除できない
>>> 想定レンジ=『今後2週間』:158.75~163.65、今後1ヶ月:156.60~165.60=
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等
中期(1か月~半年程度)の方向性:自律調整を交えつつ、堅固な地合いから上値模索へ

◇上図は冒頭2枚目掲載分(4年強)と同じ。解説コメントについては既掲をご参照下さい
⇒上図が示す通り、2022年は「9週連続陽線×2回」や「7週連続陽線」など“USD高円安が明確に加速”した年
⇒今回の「7週連騰」は2週前が“僅かな陽線”であり、“明確”とは言えないまでも2022年のような「力強い上昇が再来する可能性」を示唆
◎RSI・ストキャスティクスは共に警戒水準に接近しているものの、堅固さを増幅した地合いによって「両指数が高位持続(高止まり)のフェーズに入りつつあり、共に更なる上昇の可能性を排除せず
●ただし、これ以上の水準(ほぼ40年ぶりとなる162円超)への上昇は、上記指数の警戒水準接近と相まって自律調整的な反落にも要注意の局面へ
>>>今後6か月間の想定レンジ = 153.60~167.40⇒153.60~167.40=
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドは極めて着実に進展中

◇上値抵抗線として機能していた2024年夏以降の下降トレンドライン(TL)突破が示現後、このTLは下値支持線に転化し、その後も月内での『重要な底打ち/反発水準』としての機能を継続
◇かつて「RSIやストキャスティクスが警戒すべき高水準を長期間維持し続けることを可能にした2022年の“強固な地合い”」が徐々に回復しつつある
=>『秩序ある上昇の体』は依然維持されており、最終的に『上昇サイクルは依然として存続(上方向)』を確認する可能性が高いと認識
□超長期時間軸では『着実な上昇トレンド』が堅持されている
>>> 今後1年間の想定レンジ = 147.30~169.80 ⇒147.30~170.40 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
□先週の日米金融市場の変化(下表右端):和平合意⇒油価/金利は低下もハイテク株は急落
◇米国:米・イランの和平合意⇒原油・金利は低下も、半導体関連を中心に株価急反落
◇日本:上記による米半導体関連株の急反落が日経平均等を直撃、日本株は大きく反落
◇USD円:米金利は低下気味に推移も、USD指数/USD円は共に緩やかに水準切り上げを継続

前半のテクニカル分析では、今週も「USD円相場の地合いは更に堅固さを増幅し、上方志向の展開が見込まれる」と結論づけました。テクニカル要因は前半の分析をご参照頂きたいと思いますが、先週も指摘した通り、我々は「ファンダメンタルズ分析の観点からもほぼ同様の結論」と考えています。
先週の当欄では、次のように2つの要因を強調していました。
➊テクニカル要因:「USD円相場の地合いは一段と堅固に❢」
➋ファンダメンタルズ要因:「潮流は『円安』から『USD高』へ変化」
また、上記2点に共通するのは「2022~24年央に主流であった(テクニカル分析に詳述)」という点。
「2022~24年央」といえば…
➊では、「114円→152円」・「127円→162円」の『USD高円安の大波』を形成(長い連騰が目立つ)
➋では、「(急速なインフレ高進抑制のため)米国では1回に0.75%、0.50%の大幅な利上げ」の一方、
「インフレ顕現化にも拘わらず(異次元緩和を脱せずに)日本は実質政策金利を大幅なマイナスに放置」
⇒この金利要因の他に、ロシア/ウクライナ戦争勃発に伴う資源価格の上昇が、資源や食料の大部分を輸入に頼る日本の貿易収支を悪化させ、その他も含めた本邦国際収支は大幅に悪化しました
こうした状況下「なぜ162円を中々突破できないのか?」…
今週頂いたうちの一つだったこちらのご質問を考えてみたいと思います。
まずはどのメディアでも取り上げられる『介入警戒感』について。
GW中の介入額が史上最高だったこともあり、例え瞬間的であったとしても「暴力的に相場水準を叩き落される恐怖」は誰しも抱きがちです。また、以下の諸点も介入への懸念を煽っているようです。
・GW介入時を既に上回り「1986年12月以来初の162円台」という水準に最接近
・GWから約2か月が経過しある程度のインターバルはとれておりいつ実施されてもおかしくない
・片山財務相は「行き過ぎた(投機的な?)動きがあればいつでも断固たる措置を採る」と発言
・一旦介入が実施されれば、2024年7月以来の水準に膨らんでいる投機筋のポジションが円の買戻しを余儀なくされることで、下落が加速する恐れがあること
確かに、こうした懸念点が162円突入を阻んでいる可能性はありますが(これまでも再三主張してきたように)「介入」については「その効果や円安を止める根本的な対応策」を含めてご案内してきました。直近では、先週、以下のようにまとめています。( 以下、<<< 内のコメント >>> )
<<<「介入とUSD円相場の関係」についてはこれまでも繰り返し論評してきましたので、過去のレポート等をアーカイブ(https://tradom.jp/archives/author_list/%e5%90%89%e5%b2%a1-%e8%b1%aa%e9%ba%bf)で是非チェックして頂きたいと思います。
まず「為替はある通貨ペア(日米の場合はUSD円)の相対評価(交換レート)」ですので、余程極端な投機的ポジションの傾きでもない限り「(実質)金利差や潜在的経済成長力、貿易や投資などを通じた国際収支など所謂ファンダメンタルズ」が反映されたものです。例えば、日本が潤沢な貿易黒字を抱えていた20年前の為替レートと貿易赤字が常態化して久しい現在の為替レートを比較して円安に振れていたとしても、それはファンダメンタルズを反映した適正なレートと言えるでしょう。逆に2国間のファンダメンタルズの変化を無視して(かつての値憶えだけで)「今の円安は日本のファンダメンタルズを反映していない」などという意見には賛同しかねます。
そうしたことを前提に、現在の日米のファンダメンタルズを比較した場合、本号の当欄でも既述の通り、我々は「米国のファンダメンタルズは日本を大きく凌駕している」と考えています。その意味で、直上でも取り上げたように「年内1回の利下げ→1回の利上げへ180度転換」した米国は対円だけでなく、他の主要通貨に対しても上昇しており所謂「USD高」のサイクルにあると考えられます。
だからこそ、当欄の冒頭で<<➋「潮流は『円安』から(2022~24年央に主流であった)『USD高』へ変化」>>とのタイトルを付したのです。
さらにこれも当レポートで繰り返ししてきしてきましたが、介入の本質的な「成否」は、ほとんど基軸通貨であるUSDの(介入時の)トレンド(方向性)で決まると言っても過言ではありません。だとすれば、主要通貨に対して「USD高」のサイクルにある現在、「USD売り円買い」介入に巨額の資金を投入してもトレンドとしての「USD安円高への転換」は望むべくもないというのが、我々の現状認識です。
そもそも、今年のGWに過去最大規模(11.7兆円)もの介入が行われたにも拘わらず、USD円レートは僅かひと月で介入水準を回復しました。しかも、その時のUSD指数はほぼ横ばいの推移であり、現在のUSD高サイクルよりも軟弱な地合いだったといえます。したがって、投機筋のポジション云々は否定できない事実ではありますが、現時点でのUSD売り円買い介入は一時的(瞬間的)な円高効果しか望めないのではないでしょうか。
更に申し上げれば、(既述の通り)11.7兆円規模の介入効果が1ヵ月しか保てなかったこと、足元の円安は米国の利上げ転換観測を主因とするUSD高であることを通貨当局も認識していると思われます。よって、今後165円程度まで急ピッチで円安が進むような展開にならない限り、為替介入は見送られる可能性が高いのではないかと我々はみています。
また、「介入はあくまでもスムージングオペであり対症療法に過ぎない」ことを通貨当局も認めています。その意味で、円安に歯止めをかけるために根本的に必要なことは、為替介入のような対症療法ではなく、少なくとも以下の2点は必須だと考えられます。
(1) 高市政権が「真に責任ある積極財政政策」に変え、現在の円安容認姿勢を明確に否定すること
(2) 日銀が「利上げの実施時期の早期化とペースの加速姿勢」を明確に打ち出して、インフレの上振れ懸念を払拭すること >>> ~ 6/22付weekly reportより ~
次に、先週公表された『6月日銀政策決定会合の主な意見』について。
こちらも先週の当欄でご案内した通り「持続的な利上げを示唆する内容」であり『概してタカ派』的であったと考えます。以下ポイント。
●為替要因(円安推移)による基調的物価上昇率が2%超に上振れるリスクが高まっている
●金融環境は引き続き緩和的であり、今後とも金融正常化の更なる進展が望まれる
=>政策金利はなるべく早期に「中立金利」に近づける必要あり
ただし、内閣府から「(利上げに対する)説明責任の徹底」や「景気変動への主体的対応を求める意見」が示された点は懸念材料。
先週の当欄でもご紹介した通り、日銀側は(これを受けて)内田・氷見野両副総裁が利上げと政府の成長戦略との整合性を強調し、説明責任を尽くしておられたと考えられます。しかし7月の「骨太の方針」には金融政策運営への言及が明記される見通しとされており『政権と日銀の軋轢』は深まりそうです。USD高円安が進展する可能性が高い中、両者の政策のネジレは(中央銀行の独立性との観点からも)円安要因として意識されるでしょう。
円安への根本的な対応として既述しましたが、政権が日銀に対してこうした要請を提示するのなら、「財政を発動する政府側も“財源や使途”の詳細につき審らかにする説明責任」を果たすべきではないではないかと考えます。
本件を端的に申し上げれば「日銀が苦労して作り上げた“タカ派ムード(円高的要因)”を政権が希薄化した件」と言えそうです。やはり、現状の日米ファンダメンタルズ比較において「円高要因」を見つけ出すのは容易ではなさそうです。
さて、一方のUSD高要因について。
6月に入り、主要通貨に対する「USD指数は上昇サイクルにある(≒現時点での円買い介入は効果的とは言えない)」と指摘してきましたが「その主因は『FRBのタカ派転換』にある」と指摘してきました。
それはそれで間違ってはいないと考えていますが、よくご紹介している「TRADOM為替アンバサダー安田佐和子氏の6/29付weekly report」に大変参考になるトピックが紹介されていました。
以下、<< TRADOM為替アンバサダー安田佐和子氏の6/29付weekly reportより一部抜粋 >>
― ベッセント氏率いる米財務省の為替報告書が試す、高市政権との温度差
ベッセント米財務長官は2025年3月、米国が長年支えてきた安全保障の提供や世界需要の吸収といった役割の限界を訴え、関税を軸とした「国際経済秩序の再構築に着手する」と宣言した。この発言は以後1年余り、「ドル離れ」論や「ディベースメント・トレード(通貨価値の劣化を見込む取引)」が市場で意識される起点となった。
しかし、2026年2月28日の米国によるイラン攻撃をきっかけに、「有事のドル買い」が進行。6月17日に米国とイランが60日間の停戦延長で合意した後は、米指標の好転とタカ派的な6月FOMCを受け、米利上げ観測の台頭に伴うドル高へと潮目が変わった。FF先物市場での9月利上げの織り込みは6月26日に59.4%と一時の70%超えを下回りつつ高水準を維持し、ドル指数も2025年5月以来の高値圏に戻した。米2年債利回りは6月FOMC直後に4.22%と2025年2月以来の水準へ上昇した後、低下に転じ、市場のインフレ期待を示すブレークイーブンインフレ率も、イラン戦争後の上昇分を打ち消す格好となった。これは、ウォーシュ議長率いるFRBが、必要な局面でインフレ抑制に動くとの市場の信頼感の表れと捉えられる。
チャート:米5月PCE価格指数などを経て、9月利上げ織り込み度は低下も過半数占める

こうしたFRBへの信頼感の高まりは、ベッセント氏が目指す強いドル路線を後押しする結果となった。同氏も6月23日、米国の主権と経済安全保障の回復を掲げる5原則を提示し、そのうち4つ目として、基軸通貨ドルを国家戦略の中心と位置づけている。ただし、質疑では「強いドル」とは指数の水準ではなく、税制や規制の安定、投資環境の整備全体を指すと説明し、他国の通貨安誘導は牽制する姿勢も崩さなかった。
翌日のCNBCインタビューでは、制裁下にあったベネズエラがドル取引に復帰しつつある例を挙げ、イランの原油取引も今後ドル建てに戻ると明言した。両国の事例はいずれも、原油の対価をドルで受け取らせる「ペトロダラー」体制への復帰を意味する。同体制は米国にとって基軸通貨の地位を支える土台であり、ベッセント氏が掲げる戦略の核でもある。イランの凍結資産解除も同じ文脈に位置づけられ、最初に解除される資金はカタール経由で支払われ、米財務省が使途を直接監督する方針。資金の大半は米国産の食料品・医薬品の購入に充てられる予定で、解除された資金そのものが米国経済へ還流する仕組みとなっている。
こうした動きは、トランプ政権が掲げる「ドンロー主義」の延長線上にあるとみられる。ベネズエラやイランをドル経済圏に引き戻す動きは、関税政策によって特定国を国際貿易から締め出す動きと表裏一体であり、「外部の敵」を排除し米国中心の秩序を固め直す試みと位置づけられる。為替レートを動かしてドルを安く・高くするのではなく、基軸通貨としての構造的な地位そのものを固めることに軸を置く姿勢がうかがえる。
チャート:トランプ政権の「関税政策」と「ドンロー主義」の連携

ウォーシュ氏への支持も明確だ。インフレと成長双方に資する判断力を評価する一方、ドットチャート自体の信頼性には否定的な見方を崩さず、廃止を支持。提出見送りの判断にも理解を示した。強いドルは利下げ局面でも成立し得るとし、米経済の優位性こそがその条件だと語った。
一連の発言は、ドル高の演出というより、ペトロダラー体制を軸とした基軸通貨の地位固めへの決意表明と読める。このように解釈すれば、財務長官に就任して以来、一貫して日銀の利上げとインフレ抑制、財政規律を促してきたベッセント氏が、高市政権の日銀の利上げけん制を容認するか不透明だ。
その試金石となるのが、まもなく公表される為替報告書だ。2025年6月分では「日銀は国内の経済基盤に対応し、金融引き締めを継続すべきで、対ドルでの円安の正常化と二国間貿易の必要な構造的リバランスにつながる」と明記された。直近の1月分では、「日銀は長年にわたる超緩和的な金融政策を緩やかに解除しつつあるものの、日本円はドルに対しても、実効為替レートベースでも、数十年ぶりの安値圏にとどまっている」とされ、利上げ圧力が後退したようにも読める。だが同じ報告書には「日本と主要貿易相手国との大幅な金利差や、新政権下の拡張的な財政政策への期待から、円は数十年ぶりの安値圏に固定されている」との記述もあり、円安是正を求める姿勢自体が変わったわけではないとみるべきだろう。次回報告書で円安・財政運営への言及がどう変化するかが、ベッセント氏の本音を見極める鍵となる。
<<< 以上 ~ TRADOM為替アンバサダー安田佐和子氏の6/29付weekly reportより抜粋 ~ >>>
「強いドル(≒USD高)を望む」という直接的な言及ではなく「ペトロダラー体制を軸とした基軸通貨の地位固めに向けた決意表明」との指摘が印象に残りました。また「財務長官に就任して以来、一貫して日銀の利上げとインフレ抑制、財政規律を促してきたベッセント氏が、高市政権の日銀の利上げけん制を容認するか不透明だ」とのくだりは、既述の「日銀と政権の金融政策を巡る軋轢」を看過せず、ベッセント氏の本邦に対する要請は「日銀に対する金融正常化(利上げ)」だけではなく、「財政規律にも厳格な配慮」を求めていたことを改めて認識させられました。
さて、これまで見てきたように今週のUSD円相場の注目点は以下の3点となりそうです。
➀ USD高主導で、1986年12月以来の「162円突破なるか?」
➁ 突破した場合、次なるターゲット水準は?
➂ 突破した場合、本邦通貨当局の介入はすぐに見られるか?
➀ 「USD高主導で」とうたっているように、現在「堅調」だと思われる米景気が、今週発表予定の主要経済指標によって、市場にどう評価されるのかにかかっているといっても過言ではないでしょう。
米国に限定して6/22週の主な経済指標をみると、6/30に米6月消費者信頼感指数、米5月雇用動態調査(JOLTS、求人件数含む)、7/1は米6月ADP全国雇用者数、米6月ISM製造業景況指数、そして7/3(金)が翌7/4(土)の米独立記念日の振替休日となったため、今月は7/2(木)に米6月雇用統計の発表が予定されています。現在堅調なUSDの今後の方向性を占う上で、否が応でも市場の注目が集まりそうです。
我々のようなテクニカル重視派は今週の162円突破を見込んでいるでしょうが、若干短期的な“過熱感”が台頭し始めているところにやや懸念あり。仮に、事前予想より数値が悪かった場合は「FRBの利上げ織り込み度合い」が後退することで、膨らんでいた円売りポジションの巻き戻しが加速し大きく反落する可能性もあります。
この場合は米国債の利回りも低下しているはずで、USD指数も軟調なら、このタイミングこそ本邦通貨当局が『効果的な』介入を行う絶好のタイミングだと思われます。
➁ 前半のテクニカル分析(今週の結論)をご参照ください。
➂ 既述の通り、162円台突入後も余程上昇のペースが速くない限り「早期の介入はないのではないか」と我々は見ています。ただし、➀の最後でも触れたように雇用統計などの重要経済指標でのネガティヴサプライズによって「効果的な介入」が見込まれる場合には躊躇なく敢行されることをお勧めしたいと思います。
早いもので、今週から7月に入り、夏本番を迎えます。また、11月の米中間選挙まではあと4か月となりました。低迷が続く支持率の回復を狙う米トランプ政権。しかし、年明け以降の「力による安定」をアピールしたい政権の政策に対する透明性や評価は決して高いとは言えず、むしろ更に悪化しているように思われます。これに伴って、金融市場全体のボラティリティは一段と高まりこそすれ、落ち着き・低下することは想定しづらい状況です。
こんな状況だからこそ、 (いつも申し上げているとおり)今後も「過度に予断を持たず変化の兆しを見落とさぬ姿勢」を貫き、金融資本市場全体を引き続き注視してゆかねばならないと考えています。
お知らせ➀:来週7/6のweekly reportは、『筆者都合により休載』とさせて頂きます。大変恐縮ではございますが、ご容赦頂けますよう何卒宜しくお願い申し上げます。
お知らせ➁:今週はごく一部のみご案内致しましたが、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMユーザーの方々はサイト内で是非ご参照下さい。
お知らせ➂:トレーダムでは「5月22日、ステーブルコインを活用したクロスボーダー決済サービス『トレーダム ペイメント』の提供を開始」しました。日経新聞を始め多様なメディアに取り上げられておりますので、是非ご一読ください。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB251ET0V20C26A5000000/?n_cid=dsapp_share_ios
2026/6/29
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