• Weekly Report(6/10):「ドル円、FOMCと日銀金融政策決定会合を挟み乱高下も上値重いか」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    ジーフィット為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は6月3 日週に2.92円と、その前の週の1.34円から拡大した。週間ベースでは、3週ぶりに反落。ドル円は週初につけた157.47円から米5月ISM製造業景況指数や米4月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数の弱含みを受け、下方向を試した。氷見野日銀副総裁のタカ派発言もあり、6月4日には5月16日以来の155円割れを迎え一時154.55円まで下落。ただし、週後半は市場予想を上回る米5月ISM非製造業景況指数を受けて、買い戻し。7日には、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が予想外に強く、4日ぶりに157円台を回復、一時157.08円まで上昇した。ただ、失業率が上昇したこともあってその後は伸び悩み、156円後半で週を終えた。
    • 6月11~12日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、四半期に一度公表される経済・金利見通しと、ドット・チャート(FOMC参加者のFF金利見通し)に注目。特にドット・チャートは、前回3月に3回の利下げを示唆していたが、米5月雇用統計・NFPなどの強含みを受け、2回以下へ修正される見通しだ。ただ、米5月雇用統計の詳細を踏まえれば、失業率が上昇するなど弱い材料を確認。年1回利下げ予想示唆とタカ派となる場合は、パウエルFRB議長の記者会見でハト派寄りに、年2回利下げ示唆なら、記者会見でタカ派寄りを示し、バランスを取る見通しだ。いずれにしても、利下げバイアスは維持するだろう。
    • 6月13~14日開催の日銀金融政策決定会合では、国債買い入れ減額を決定するか否かがドル円を左右しそうだ。日銀の内田・氷見野副総裁はそろって、タカ派姿勢を表明。植田総裁、内田・氷見野副総裁の体制が始動してから、政策変更前に副総裁が布石を打つ傾向を確認しただけに、期待が高まる。今回期末での解散総選挙が見送られたことも、政策変更の追い風に。ただ、国債買い入れ減額の「検討開始」にとどまるリスクにも、留意すべきだろう。
    • 今週は、6月10日に日本1~3月期実質GDP成長率の改定値や4月国際収支(経常収支)を始め、6月12日は日本5月企業物価指数、中国5月消費者物価指数と生産者物価指数、米5月消費者物価指数とFOMC政策発表、13日は米5月生産者物価指数、14日には日銀金融政策決定会合の政策発表、米5月生産者物価指数と米6月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。日米の金融政策決定会合を始め、イベントが目白押しだ。日銀の観測報道が交錯すること必至で、乱高下するリスクが高まる。
    • テクニカル的に、ドル円は強気のパーフェクト・オーダー(21日から200日など移動平均線が全て上向き)、ダウ理論の上昇トレンド(上昇過程で安値を切り下げず、上方向を維持)に加え、三役好転を改めて形成するなど、地合いは非常に強い。ただし、158円前後では介入が警戒され、且つFedが利下げバイアスを維持するなら、上値が重くなりそうだ。
    • 以上を踏まえ、今週のドル円の上値は引き続き介入があったとされる4月29日以降の戻り高値が近い158.50円、下値は5月16日の安値付近の153.60円と見込む。

    1.為替相場の振り返り=ドル円、米雇用統計など米指標に反応し155円割れから157円乗せへ乱高下

    【5月27日~31日のドル円レンジ:156.37~157.71円】

    (前週の総括)

    ドル円の変動幅は6月3 日週に2.92円と、その前の週の1.34円から拡大した。週間ベースでは、3週ぶりに反落。ドル円は6月3日、157.47円の週高値を付けた後、米5月ISM製造業景況指数が予想外に50割れを維持するなか、156円台を割り込んだ。6月4日に、氷見野日銀副総裁が。基調的インフレ率がまだ2%に満たないことを示す一方、徐々にその水準に向かっていると述べた上で、「基調的インフレの見極め、物価データだけではなく賃金や起業行動など様々な要因見る必要」と言及。さらに、為替相場の変動が経済・物価に及ぼす影響やその見通しは金融政策を運営する上で「非常に注意を払ってしっかり分析をしなければいけない」と述べたため、タカ派的と受け止められ、ドル円の下落を促した。NY時間では、米4月雇用動態調査(JOLTS)のうち求人件数が市場予想以下だったため、5月16日以来の155円割れを迎え一時154.55円まで下落した。

    6月5日に発表された米5月ADP全国雇用者数が市場予想以下で下値を試すかにみえたが、米5月ISM非製造業景況指数が市場予想を上回っただけでなく約2年ぶりの高水準だったため、一時156.40円台へ上昇。6月6日は植田日銀総裁が参議院の財政金融委員会に出席し、「人々の物価上昇予想 2%に達していない」と言及した一方で、国債買い入れ減額が適切との見解を述べるなか、やや変動が激しくなる場面も。ハト派の中村審議委員が「利上げはまだ早い」との見解を示すと、ドル買いにつながった。6月7日は、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)や平均時給が市場予想を上回ったため、4日ぶりに157円台を回復、一時157.08円まで上昇した。ただ、失業率が上昇したこともあってその後は伸び悩み、156円後半で週を終えた。

    チャート:ドル円の4月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

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    (出所:TradingView)

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