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  • Weekly Report(8/5):「日米金融政策決定会合など重要イベントを経て、ドル円は下げ余地を探る」
    安田 佐和子
    この記事の著者
    トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

    世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事する傍ら、自身のブログ「My Big Apple NY」で商業活動、都市開発、カルチャーなど現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの研究員を経て、現職。NHK「日曜討論」、テレビ東京「モーニング・サテライトなどのTV番組に出演し、日経CNBCやラジオNIKKEIではコメンテーターを務める。その他、メディアでコラムも執筆中。

    マーケット分析
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    ―Executive Summary―

    • ドル円の変動幅は7月29日週に8.80円と、介入があったとされる4月29日週の8.38円を超えて年初来で最大を記録した。週足では、5週続落。日銀金融政策決定会合での追加利上げ、国債買い入れ減額計画の発表、植田総裁の追加利上げ示唆に加え、米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が9月利下げを示唆し、ドル円は売り一辺倒の展開となった。ダメ押しに米7月雇用統計が米労働市場の悪化を裏付け、ドル円は一時146.42円と約6カ月ぶりの安値をつけた。
    • 植田総裁は、今回の追加利上げ決定の理由として、①賃金・所得の増加が個人消費を支援する見通し、②円安を通じた物価の上振れリスクーーなどに加えて、「4月以降のデータがある程度まとまって評価できる時点に達したため、少しずつでも早めに調整しておいた方が後が楽になる」と言及。今後のリスクに備えた金融政策の「のりしろ」作りと位置付けたフォワード・ルッキング型と解釈でき、追加利上げのロジックが変わったこと示唆した。展望レポートが公表される10月の追加利上げへ道を拓いたと言えよう。
    • 対して、7月FOMC後の会見で、パウエル議長はインフレや労働市場の減速に従い、9月利下げが検討される可能性について明言しただけでなく、「さらなる労働市場の冷え込みを避けたい」と発言。さらに、0.5%利下げについてFRB当局者が望むものではないと述べたが、「より深刻な景気後退のようなものがあれば…それに対応する方針だ」と言い切った。米7月雇用統計・非農業部門就労者(NFP)の伸びが鈍化しただけでなく、失業率が前月比0.2%上昇し4.3%と2021年10月以来の高水準を付け、サーム・ルールに基づく景気後退のサインが点灯するなか、ジャクソン・ホール会合でのパウエル議長の見解が待たれる。
    • 今週は、8月5日に米7月ISM非製造業景況指数、7日に中国7月貿易統計と内田日銀副総裁の講演、8日に日本国際収支と日銀の主な意見(7月分)、9日に中国7月生産者物価指数と消費者物価指数を予定する程度で、米国の重要指標は少ない。
    • ドル円は1週間で週間の変動幅は8.80円も急落した結果、テクニカル的に弱い地合いへ急変した。今後は、2023年12月28日につけた安値140.25円が意識されよう。その他、2022年9ー10月の介入を経た値動きを振り返ると、当時は2022年10月21日の高値151.95円から、2023年1月16日に127.22円と、約3ヵ月の間に24.73円も下落した。これが当てはまるなら、中期的に137.21円が視野に入る。
    • ただし、割高・割安を示すRSIはコロナウイルス感染拡大で経済活動が停止に陥った2020年3月につけた19.42を下抜け、8月2日に15.54まで急低下した。下げ渋る局面にも、留意しておきたい。
    • 以上を踏まえれば、特に米重要指標を予定せず、8月に入り米欧が本格的に夏季休暇に入るだけに、どこまで急落するか見極めが必要だろう。今週1週間のドル円の上値の目途は、2023年12月の安値などを結んだトレンドラインがある148円。下値は、2023年12月28日の安値140.25円を見込むが、140円割れにも注意したい。

    1.為替相場の振り返り=ドル円、日銀追加利上げとパウエル議長の9月利下げ示唆、弱い米雇用統計で約6ヵ月ぶりの安値

    【7月29日~8月2日のドル円レンジ:146.42~155.22円】

    ドル円の変動幅は7月29日週に8.80円と、介入があったとされる4月29日週の8.38円を超えて年初来で最大を記録した。週足では、5週続落。前週に続き、投資格言「天井三日 底百日(相場の推移の典型として上昇はゆるやかだが、下落はあっという間という意味)」の展開を迎えた。

     7月29日に153~154円台での小動きを経て、30日に日銀金融政策決定会合を控え、足元の日本株安と軟調な経済指標を受けて追加利上げが難しいとの見方から、一時155.22円まで週の高値を更新した。しかし、NY時間には時事通信やNHK、そして恒例の午前2時配信の日経新聞が日銀は追加利上げを検討すると報じ、152円台へ下落した。

     7月31日には、日銀金融政策決定会合で事前報道通り0.15%の追加利上げと国債買い入れ減額計画を発表し、一旦はセル・ザ・ファクト(事実で売る)の展開となり、153.90円台へ上昇。もっとも、植田総裁が記者会見で追加利上げの方向性を示すと下値を広げ、NY入りにかけ150円を割り込み、149.60円台へ下落した。続いて、7月FOMCで据え置きを決定しつつ、記者会見でパウエルFRB議長が9月の利下げ開始を示唆すると、149.61円まで下げ幅を広げた。  8月1日には、東京時間の午前中に148.51円まで売り叩かれつつ、NY時間では149円台まで買い戻された。2日は、ドル円は再び下値を試す展開。米7月雇用統計・NFPが市場予想以下だった上、失業率が急伸したため、米景気後退懸念が再燃し、一時146.42円と2月2日以来の安値をつけた。

    チャート:ドル円の5月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)

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    (出所:TradingView)

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