「米国国内ガソリン価格を知らずにやってはいけない」
松井 隆
この記事の著者
DZHフィナンシャルリサーチ 為替情報部 アナリスト

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットを担当。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたる事業に従事する。

為替の仕組み
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米国には、AAA(American Automobile Association=全米自動車協会)という組織があります。

頭文字を取って「トリプルエー」と呼ばれており、多くの米国人はAAAと聞けばすぐに分かるほど有名な存在です。

日本で言えば、JAF(日本自動車連盟)に近い存在と言えるでしょう。

日本のJAFが、バッテリー上がりや故障時の救援、レッカー移動などを行うように、AAAも同様のロードサービスを提供しています。

また、AAAはJAFと提携しているため、JAF会員であれば米国でもAAAのサービスを利用できる場面があります。

実際に、私も全米横断をした際や、旅行でレンタカーを借りた際には、AAA窓口でJAFカードを提示することで、さまざまなサービスを受けることができました。

今ではカーナビやスマートフォンの地図アプリが普及していますが、以前はAAAで無料のカラー地図を受け取るのが定番でした。

さらに、例えば「サンフランシスコからロサンゼルスを経由し、アリゾナ州ツーソンまで行きたい」と伝えると、推奨ルートだけでなく、途中の観光地や見どころまで丁寧に案内してくれます。



AAAが優れている点の一つは、全米各地にネットワークを持っていることです。

日本と比べて広大な国土を持つ米国において、AAAは全米規模の生活実感に近いデータを把握できる存在でもあります。

そのAAAが公表しているデータの中で、近年特に市場関係者から注目されているのが、州別のガソリン価格です。

AAAでは全米のガソリン価格を毎日更新しており、全米平均価格も確認できます。

レギュラーだけでなく、プレミアムやディーゼル価格も公表されています。

市場参加者はWTI原油先物価格などを詳細に見ながら取引を行っていますが、実際に米国人がどの程度「ガソリン価格を高いと感じているのか」を把握するには、AAAのデータが非常に参考になります。

特に米国では、1ガロン当たりのガソリン価格について、おおよそ以下のような感覚があると言われています。

2ドル台:かなり安い

3ドル前後:普通・許容範囲

3.5-4ドル:「高くなってきた」

4ドル超:家計負担を強く意識

4.5ドル超:かなり高い、ニュースになる水準

5ドル超:危機的に高い印象

そのため、AAAが公表する全米平均ガソリン価格が4.5ドルを超えている今、米国の消費者心理や政治情勢、市場全体にも影響を与えやすくなっていることが、トランプ大統領の発言に垣間見れます。

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経済専門の記者以外では、米国のガソリン価格がどの程度まで上昇しているのかを中心に、トランプ米大統領へ質問する場面も増えています。

もちろん、トランプ氏は不動産王一族として裕福な環境で育った人物であり、一般的な米国家庭とは生活感覚が異なる部分もあると思われます。

ただ、車社会である米国では、ガソリン価格の上昇は国民生活に直結する問題です。

特に1ガロン4.5ドルを超える水準になっていることで、多くの米国民が家計負担の重さを強く意識し始めています。

そして、このガソリン価格の動向は消費者心理だけでなく、大統領支持率にも影響を及ぼしています。

そのため、トランプ大統領としても、ガソリン価格の高騰には神経質にならざるを得ません。

特に中間選挙を控える中では、燃料価格の上昇が政権への逆風となっており、原油価格の上昇には一定の歯止めをかけたいところです。

他国のインフレ動向は気にしないトランプ大統領ですが、米国内のガソリン価格の上昇には敏感になっています。

よって、今後のトランプ大統領の発言や対外政策を読み解く上では、米国内のガソリン価格の動向が最も要な判断材料になります。


本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※本記事は2026年5月25日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。


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