<テクニカル分析判断> ●短・中期:過熱感を伴わぬまま「下げ一巡感」が出来。喪失した短期的方向性を改めて模索へ 8/26週は「寄付14 […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は7月15日週に3.49円、7月22日週は5.68円に及んだ。特に7月22日週は、4月29日週以来、年初来で2番目の大きさに。ドル円は過去2週間で、大幅にドル高・円安の調整が入り、まさに投資格言「天井三日 底百日(相場の推移の典型として上昇はゆるやかだが、下落はあっという間という意味)」の展開を迎えた。7月の30-31日の日銀金融政策決定会合での追加利上げ期待、自民党幹部の円安是正・追加利上げ支持発言、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長を始めとするFed高官のハト派寄りコメントなどがドル円の急落要因に。7月25日には5月3日以来の152円割れを迎え、一時151.94円をつけた。ただ、その後は米指標を手掛かりに買い戻された。
- 7月30-31日は、日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会を控える。日銀は国債買い入れ減額発表を予定するなか、岸田首相を始め円安是正・追加利上げ支持の発言を受け、追加利上げへの期待が強まる。ただ、仮に経済指標を踏まえれば個人消費の弱さなど、追加利上げを決定できるかは微妙な情勢。また、仮に追加利上げを行ったとしても、日経新聞によれば利上げ幅は0.15%程度とされる上、国債買い入れ減額内容と公表を予定する展望レポートの内容などが失望に終わる可能性に留意すべきだろう。
- FOMCをめぐっては、9月の利下げ開始の地均しを行う観測が根強い。パウエルFRB議長が7月15日、インフレ2%達成へ向け「いく分自信が強まった」と発言したほか、NY連銀総裁やタカ派寄りのウォラーFRB理事が今後「2カ月」の米指標を見極めたいと言及。9月17-18日のFOMCを前に、米雇用統計や米消費者物価指数、米個人消費支出(PCE)価格指数など、それぞれ2回を予定するだけに、利下げ開始への期待が高まる。
- 今週は、7月30~31日に日銀金融政策決定会合(展望レポート含む)とFOMCを控えるほか、7月30日に米6月雇用動態調査(求人件数を含む)、31日に米7月ADP全国雇用者数、8月1日にイングランド銀行政策発表、米7月ISM製造業景況指数、8月2日に米7月雇用統計を控える。文字通り、FOMCなどが終了しても米7月雇用統計を控え、重要イベントが目白押しだ。
- テクニカル的に、ドル円は三役好転やダウ理論(上昇過程で安値を切り下げず、上方向を維持)、パーフェクト・オーダー(21日移動平均線などが全て上向き)などが消滅し、弱気シグナルが点灯している。一方で、RSIは割安の水準を示す30を割り込んでおり、同水準で反発してきた実績を踏まえると買い戻しが入ってもおかしくない。
- 投機筋の円のネット・ショート・ポジションの動向は7月23日週に10万108枚と、3月12日週以来、約4ヵ月ぶりの水準へ縮小した。7月25日に一時152円割れまでドル円が下落し、153円後半で週を終えたことを踏まえれば、さらに縮小したとも考えられる。
- 以上を踏まえれば、ドル円が再び152円割れを試したとしても、日米金利差が引き続き5%以上とあって、下値を突っ込む勢いは限られそうだ。今週の上値の目途は100日移動平均線付近の155.50円、下値は200日移動平均線が近い151.50円と見込む。
目次
1.為替相場の振り返り=ドル円、日銀追加利上げとFedの利下げ観測で152円割れ
【7月15~19日のドル円レンジ:155.37~158.86円】
【7月22~26日のドル円レンジ:151.94~157.61円】
(過去2週間の総括)
ドル円の変動幅は7月15日週に3.49円と、7月22日週は5.68円に及んだ。特に7月22日週は、4月29日週以来、年初来で2番目の大きさに。ドル円は過去2週間で、大幅にドル高・円安の調整が入り、まさに投資格言「天井三日 底百日(相場の推移の典型として上昇はゆるやかだが、下落はあっという間という意味)」の展開を迎えた。週足では、4週続落した。
7月13日にトランプ前大統領の選挙集会中に暗殺未遂事件が発生、壇上で倒れつつも、すぐに拳を挙げて立ち上がった姿が不屈のリーダーとしての存在感を放ち、一部では「もしトラ」から「確トラ」にシフトしたとの見方が広がった。そのような状況下、トランプ氏のブルームバーグ・インタビュー記事が7月16日に掲載され、ドル高・円安の批判が盛り込まれた。4月23日の自民党・麻生副総裁との会談前にも同様の見解を自身のソーシャル・ネットワークで展開したが、ドル円は17日から158.60円台から急落を開始。さらに、同日には河野デジタル相が英語で、円安是正に向け日銀は追加利上げを行うべきとブルームバーグのインタビューで発言。神田財務官も共同通信のインタビューで介入の回数と頻度は「無制限」と述べ、ドル円の下落に拍車を掛け、一時156.06円まで下落した。米6月小売売上高などで買い戻されたが、戻りも限定的だった。その他、7月15日週は、15日のパウエルFRB議長発言を始め、17日のウォラーFRB理事やNY連銀総裁の発言で、9月利下げ開始観測が強まったことも、ドル円の下落を促した。
7月19日に経済諮問会議で岸田首相が「円安等に伴う物価の上昇の影響等には注意が必要」と発言するなか、7月22日には茂木幹事長が「正常化する方向で着実に進める方針をもっと明確に打ち出すことが必要」と円安是正・日銀の追加利上げを支持する発言を行い、ドル円に再び売り圧力が掛かる展開に。ロイターが24日に日銀が国債買い入れ減額発表と合わせ、追加利上げを慎重に判断すると報じられるなか、翌25日にドル円は一段安を迎えた。ロンドン時間に5月3日以来の152円を割り込み、一時151.94円まで下落。5月3日の安値151.86円には届かず。NY時間に米Q1実質GDP成長率・速報値が市場予想を大幅に上回っても、戻りは154円前半までとなり、26日には、米6月PCE価格指数がインフレ鈍化を示唆し、153円後半でNY時間を終えた。
チャート:ドル円の4月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)
(出所:TradingView)
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