GFIT為替アンバサダー 安田佐和子 がお届けするWeekly動画解説! 1週間のドル円相場の振り返りを踏まえて解説します。 今週のトピック […]
外国為替相場制度
外国為替相場制度とは、外国為替取引において、通貨間の交換比率、すなわち、為替相場を決定する制度を意味します。
外国為替相場制度は、相場変動にどのようなルールでどれだけ柔軟性を持たせるかで何種類かに分類できます。大きくは、固定制の強い制度、ソフト・ペッグ制度、高い柔軟性を持つ制度と三つに分けられます。
1. 固定制の強い制度
・追加同盟・ドル化
通貨同盟:通貨同盟(Currency Union)とは、複数の国の間で単一の共通通貨を導入する制度を意味する。通貨統合とも呼ばれます。
例えば、2023年12月現在、EU加盟国のうち20か国で、経済通貨同盟(Economic and Monetary Union、EMU)のもと、単一通貨ユーロが導入されています。
ドル化:自国固有の法定通貨を持たず、他の国の通貨を法定通貨として流通させます。一般にはドルであることが多いので、俗に“ドル化(Dollarization)と呼ばれます。
・単一通貨固定相場制度
単一通貨固定相場制度:通貨当局が予め定められた公定平価で自国通貨を単一の外国通貨に固定する制度を指します。固定為替相場制度というと、この単一通貨固定相場制度を指す場合が多いです。
公定平価を自国通貨が安くなる方向に変更することを切り下げ、自国通貨が高くなる方向に変更することを切り上げと呼ぶます。例えば、ブレトン・ウッズ体制下において、日本は単一通貨固定相場制度を採用しており、1米ドル=360円という公定相場で円を単一の外国通貨ドルに固定していました。また、この公定相場は、1971年のスミソニアン協定において1米ドル=308円に切り上げられた。
・カレンシーボード制度
カレンシーボード制度:自国通貨を特定の外国通貨に一定の公定平価で完全に兌換することを保証する制度です。比較的経済力が弱い国や地域が、自国の経済や通貨を安定化させる目的で導入しているケースが多いです。
カレンシーボード制度は為替相場の変動を避け、インフレーションに強い特性をもちますが、自由に金融政策を運営できないなど制度の欠点があることで、現在はドルに固定したカレンシーボード制度を採用する香港などに限られています。
2. ソフト・ペッグ制度
・バスケットペッグ制度
バスケットペッグ制度:複数の貿易相手国の為替相場を一定水準に固定する制度であり、一般的に貿易量などによって複数の通貨レートの比重を決め、加重平均して自国通貨のレートを算出します。特定の通貨が急激に変動しても、複数の通貨で構成されているため影響が緩和され、為替相場が安定しやすいです。
バスケットペッグ制度はシンガポールなどのアジアの国々やロシアなど、多くの国で採用されています。この制度は、相場安定に加えて投機的な取引の標的になりにくいという利点がある一方で、通貨の構成比率が非公表の場合も多く不透明感もつきまといます。
・クローリングペッグ制度
クローリングペッグ制度:インフレ率など特定の経済指標の変化に合わせて為替相場を調整するものであり、通常、インフレ率が高い国において採用されています。
バスケットペッグ制もクローリングペッグ制も、一定期間の変数の変化に合わせて定期的に調整することが多いので、実際の運営は、ペッグのターゲットはある程度幅を持たせることが多く、このためペッグではなくクローリングバンド制などと呼ばれることがあります。
・管理変動相場制度
管理変動相場制度:通貨当局が為替相場の動きを一定の範囲に収めようとする為替制度のことです。 通貨当局が水準を決める「固定相場制」と、自由な取引に委ねる「変動相場制」の中間に位置するもので、為替相場の上限と下限を設定し、その範囲内に入るように「管理」しようとする為替制度を指します。
特に相場のターゲット算出の方法を持っているわけではありませんが、経済関係の深い他の複数通貨の変動や、内外インフレ格差を見たりしますので、原理としてはバスケット制度やクローリング制度との大きな違いはありません。
3. 高い柔軟性を持つ制度
・変動相場制度
変動相場制度:市場の需給に完全に相場動向を任せる制度です。1973年に先進国は相次いで変動相場制度に切り替えました。
変動相場制度は、経済実勢が為替レートに反映されたり、金融政策の裁量が増えたりするメリットがある一方で、投機マネーで乱高下するなど、為替レートが急激に変動するというデメリットがあります。現状では、ドルを含めて主要通貨で実際にこの変動相場制度に徹している国はないと言ってよいでしょう。
※本記事は2024年4月13日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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