日銀は昨年最後の12月会合で金融政策の現状維持を決定しました。もっとも、2024年という時間軸で見た場合、マイナス金利の解除は既定路線であり […]
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/about/history)
日本の日本銀行、米国の連邦準備制度と同様に、現在のイギリスではイングランド銀行(BoE)が中央銀行としての役割を担っています。銀行のある住所から、Old Lady of Threadneedle Streetという愛称でも呼ばれる同行は、イギリス経済及び法定通貨であるスターリング・ポンド(GBP)の動向を見る上で重要です。本記事では、BoEの歴史、役割及びその重要性について解説します。
BoEの歴史
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/about/history)
BoEは、1694年に対フランス戦争のためにイングランド政府が発行した多額の国債の管理を行うための商業銀行としてロンドンに設立された世界で2番目に古い中央銀行です。当時のロンドンは、イギリス国内の物流と金融の中心地であり、18世紀には英国内における決済の多くがBoEと同行に口座を保有する大手銀行の預金口座を通じて行われるようになりました。
また、設立当初のBoEは銀行券の発行権限が付与されていましたが、現在の香港のように複数の銀行が銀行券を発行している状況であり、全国的な通貨供給や信用調節といった金融政策も担っていませんでした。
BoEが現代の中央銀行のような役割を担うようになったのは1844年のビール銀行条例がきっかけでした。同条例により、BoEに独占的な銀行券発行の権限が付与され、銀行券の兌換維持のための銀行券の発行量や貸出量を調節することにより金融政策をとることが可能となりました。加えて、産業革命が進行し銀行の貸出規模が拡大するようになると、周期的に金融危機が発生し、最後の貸し手としてBoEが行動するようになりました。
このように、BoEは様々な経緯を経ながら、決済サービスの提供、金融政策の実施、金融システムの安定性維持といった現代の中央銀行の役割を確立していきました。
2020年からは、アンドリュー・ジョン・ベイリー氏が第121代総裁として歴史あるBoEの舵取りを担っています。
BoEの役割
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/about/history)
BoEはこれまでにご紹介した歴史的な変遷を経て、現在は次のような役割を担っています。
これらに加え、BoEに特筆すべき役割として、1998年に制定されたイングランド銀行法による物価の安定に対する責務があります。同法が制定されるまでは、イギリスでは伝統的に政策金利の決定は財務省が担ってきましたが、同法により、金利の決定権がBoEに移譲されました。また、同法ではインフレ率が目標値の上下1%を超えると、BoE総裁は財務大臣あてに申開きの公開書簡を送付することが義務付けられています。なお、2004年1月以降のインフレ率の目標値は消費者物価指数で2%と定められています。
BoEがイギリス経済及び為替に与える影響
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/museum/online-collections/blog/bank-of-england-in-movies)
BoEは金融政策を通じて、イギリスの通貨の安定及び金融の安定を図っています。その最も大きな手段が金利の調節です。
BoEは、経済活動が過熱している局面では、インフレを抑制するために金利を引き上げます。金利の引き上げにより、企業は資金調達が困難となり、リスクのあるプロジェクトへの投資を控えるとともに、株式から債券へ資金がシフトするようになります。一方で、経済活動が停滞している局面では、企業の資金調達を支援するとともに債券から株式へ資金をシフトさせ、経済を刺激するために金利を引き下げます。実際の名目金利の上下に加え、将来の利上げ・利下げを予想するフォワードガイダンスを併せて示すことがあります。
まとめ
(画像の出典:BoE website https://www.bankofengland.co.uk/about/history)
本記事ではBoEの歴史、その役割及びイギリス経済及び為替市場に与える影響をご紹介しました。国際通貨基金(IMF)が実施している「公的外貨準備の通貨別構成調査」によるとスターリング・ポンドが中央銀行の外貨準備高に占める割合は2023年第2四半期において、米ドル、ユーロ、日本円に次いで4番目となっており、その動向はイギリス国内のみならず、世界経済に大きな影響を及ぼすことから、その動向には注意が必要です。
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