GFIT為替アナリスト 安田佐和子 がお届けするWeekly動画解説! 今回も、1週間の振り返りを3つのポイントに絞って解説します。今週は特 […]
<テクニカル分析判断>
サマリー:
●短期:根強い上昇圧力に上値余地は残存し「上値模索」が継続も、調整圧力も増幅
●中期:依然根強い上昇圧力に上値余地は残存も、中期的ピークアウトは着実に接近
先週は「寄付149.58:147.27~150.15:終値149.31(前週比▲0.03円の円高)」となり
週足(後掲➋参照)では5週ぶりの陰線を記録。連続上昇に一服感が感じられた一方で、
前週比での高値更新は10週連続まで延びており「依然として根強い上昇圧力が継続中」
であることも示唆し続けている。また、先週も指摘したように月足(後掲➌参照)では
「9月の終値(149.34)」が終値ベースで32年ぶりの高値であった「昨年10月の終値
(148.75)」を更新しておりザラ場高値(151.95円)の更新も充分に視野に入りうる状況。
但し、上昇/下落の過熱を示唆するRSIやストキャスティクスはかなり警戒すべき高水準
まで上昇(週足RSIは70に到達)した後、日足や週足では調整的な動きが観測され始めて
いる。なお、2週前(1.14円)・前週(1.50円)と低水準に止まっていた週間値幅は、先週
「そろそろ反動的な変動率の上昇が見られてもおかしくない」と想定した通り、2.88円
と前週の倍近い水準に拡大した。
もちろん数多のテクニカル指標の大半が示すように「上昇圧力の根強さ」は依然として
強力であり今週も「上値トライ継続」の可能性は否定できない。ただし、既述の通り
徐々にではあるものの「上昇圧力の翳り・調整圧力の高まり」も顕現化しつつあるため、
ピークアウトが接近している可能性は頭に入れておく必要があろう。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/10/06のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:上値模索は依然残存も調整圧力が着実に増幅中
〇3月下旬から52MAとほぼ同じ傾きで続いている上昇トレンドは崩れる気配は無く
依然として根強い上昇圧力が継続中であることは間違いない
●但し、既述の通りストキャスティクスでは既に調整的な反落が見られ始めている。
●また(直近2ヶ月間終値ベースで一度も下回れずに強力な支持線となっている)21MA
(赤い太線)は今週148.40超に上昇し現在値との差はそう大きくない。仮にこの水準
を終値で下回れれば、中期的なピークアウトに直結する可能性が高まることになる
□上値模索の継続は否定出来ないが「ピークアウト(転換点)に着実に接近中」と認識
>>>想定レンジ=今週:146.55~150.30 、今後1ヶ月:140.70~152.55 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:ピークアウトの確認に向け、接近中の調整待ち
●ここ2週70に張り付いていたRSIと共に、ストキャスティクスは『高水準で緑線が
赤線を下抜け(=下落サイン点灯)』したか、その寸前だと認識できよう
□いずれにせよ少なくとも短期的な調整が接近している可能性は高いと判断
□上値模索の継続は否定出来ないが「ピークアウト(転換点)に着実に接近」と認識
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 137.10~153.30 ⇒ 137.10~153.30 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドの前に一旦中期的下落を想定
◎上記➊➋と同様にチャートには『ストキャスティクス』を追加した仕様。明確な
サインはまだないが、インジケーターの水準は警戒的高位に接近している最中。
〇昨年10月の水準を超えた9月の終値を確認。当面の上値余地拡大は否定できず。
但し、超長期上昇トレンドが本格化する前に、一旦「緩やかな中期的下落の可能性
は依然残存している」を中期のメインシナリオとして維持。
●繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2012年10月からの推移)
<=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去35年以上
経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった(金の太い〇部分)
<=一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(68.9)も圧倒的に低下余地が大きい
=>超異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた軟化漸進を見込む
<現在137.80近辺の[20MA]は仮にUSD円が横ばいでも来月も約1.4円上昇の予定>
◎ただ、その動きも1年以内には底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向
へと徐々に変化してゆく可能性が高いと想定している
>>> 今後1年間の想定レンジ = 135.30~153.60 ⇒ 135.30~154.50 =
<ファンダメンタルズ分析判断:簡略版>
◇先週の米経済指標は予想を軒並み上回る良好なものが目立ったが、週末の雇用統計は
まさにサプライズと言えるほどの強烈な数値。9月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が
前月比+33.6万人。市場予想の+17万人の2倍近くと大幅に上回り、過去8カ月で最大の
伸びとなった。しかも、7・8月分の数値も大幅に上方修正されており「労働市場の過熱」
と共に「FOMCが年内の再利上げに傾く可能性の高まり」が強く市場に織り込まれた。
但し、平均時給は前年比+4.2%と8月の+4.3%から鈍化し2021年6月以降で最小の伸び
となったため、インフレそのものに対する警戒感の高まりはそれほどなかった。
◇パウエルFRB議長は9月20日、「インフレ率の低下にはトレンドを下回る成長に加え
労働市場が軟化する期間が必要だろう」と述べていた。今回の雇用等統計を受け、過去
18カ月間に5.0%超引き上げてきた政策金利を、再び引き上げる必要があるかどうかを
判断することになろう。FOMCは9月の会合で金利を据え置いたが、会合後に発表された
予測では「政策決定者19人のうち12人が年内の再利上げを支持する意向」を示した。
◇こうした状況下、市場が見込む年内の利上げ確率は雇用統計発表直後に48%から56%
に上昇した。また、「米金融引締め長期化観測」から週を通じて米国債利回りは急上昇し
10年債利回りは一時16年ぶりの高水準となる4.89%(30年債は同5.05%)を記録した。
◆但し、政策金利の動向を反映しやすい2年債利回りは一時5.15%まで上昇したものの
依然として、2006年7月以来の高水準となった9月21日の5.20%を下回っている。
これは「政策金利の高止まりは長期化するものの、更なる引上げ余地には限界がある」
ことを示しており、典型的な景気遅行指標である雇用関連データだけをもって米景気や
インフレの先行きを予測することの難しさが明らかとなった。
●なお、2014年以来最長となる11週連騰中だったUSDインデックスは先週僅かながら低下。
ドル高が11週間も続くのは極めて異例だが、これは市場が既にドルをかなり買い持ちに
している証左であり、更なる「ドルの急伸」は見込み難くなりつつあると判断。
◆9月上旬までは<米国経済は「ゴルディロックス(適温経済)」にある>をはやして
『リスク選好』ムードの中で上昇基調にあった米国株式市場も、ここもとの金利上昇を
受けて9月は月間で4.9%と大幅に下落。10月に入っても軟弱な地合いが継続する。
>>>2023年1月からこれまで「USD高円安」をサポートしてきた要因の一つである
『リスク選好』の動きにも翳りが見え始めていると判断。
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」に対する根強いサポート要因
◎当初想定よりはるかに強い米国経済指標 ⇒「インフレ高止まり」観測の拡大
〇米国の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
>>『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀の明白なコントラスト』のむし返し
⇔ 今後は「欧米のタカ派色希薄化の一方、日銀はハト派色後退」で逆方向へ
〇昨今注目度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
⇔「欧米の利上げ打ち止め」並びに「日銀の金融政策正常化への漸進」という
かつての「逆行する(金融政策の)方向性」に対する反転が視野に入りつつある中(食傷気味となった)このロジックは賞味期限切れに近いと認識
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●米銀行セクター不安から顕現化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける公算大
>>>過去1年半にわたる利上げの累積効果による景気鈍化は今後本格化へ
⇒米銀の貸出態度は現在加速的に厳格化しており、実際の貸出も昨年11月に
つけたピーク(前年比13.5%増)から、足許では伸びが大幅に低下。
⇒おそらく今年末には前年比ゼロもしくはマイナス圏に陥るとみられている。
⇒家計の過剰貯蓄も現在のペースで取り崩していけば、年末までには底を突き、
家計の消費ペースはその後大幅にスローダウンする可能性が高い。
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性は消えず
>>>米債券市場での将来の景気後退を示唆する『逆イールド』は依然継続
>>>『逆イールド』幅は今年3月の最大値(▲1.08%)を7月に僅かに更新
>>>その後、一旦縮小のトレンドに入ったと思われたが、拡大と縮小を交互
に繰り返す展開が続き、解消に向かう明確な気配は未確認だった。が…
⇒米経済の軟着陸シナリオが本当に実現するのなら、近未来の景気後退を示唆
する逆イールドは自ずと解消に向かうはず
⇒3月には「年後半には利下げ」観測から『2年急低下⇔10年緩やかな低下』の
解消経路(パス)だったが、足許では『2年横ばい⇔10年急上昇』のパスが出来
⇒先週、この長短金利の跛行的な動きが更に加速したことにより、逆イールドは
急速に縮小し、その幅は3月の縮小時を更新
⇒現在の米国のファンダメンタルズとFRBの政策変更余地を考慮すれば、この
「縮小のパス」に著変は無いと考えられ、この加速によって現在の逆イールドは
「解消→正常化」へ向かうこととなろう
>>>2年・10年債を含め米国の債券利回りは各々『限界的な水準』に接近と判断して
いたが、10年債利回り上昇のメドは5.0%超まで拡大した可能性あり
>>>ただ、将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式の上昇は「米利上げサイクルが終了に接近中との見方」も一因だったが…
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ低下余地はほぼ無く金利の変化としては「上昇」するしかない
(生保など機関投資家が長期投資対象として充分魅力的な水準になるまで)
>>>7月末の「YCC修正」によって『日本の金利はこれ以上下げられない』が明白に
>>>欧米の利上げが終了すれば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が残存
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本の金融当局にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>但し、当局が定義する「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移
することが重要」、「“過度な”為替変動は好ましくなく、そのような動きには
あらゆる手段を排除せずに対応」といった状況に現在が当てはまるのかどうかは
微妙。「“漸進する”円安」に対して「けん制」以上の対応が求められるが…
>⇔>昨秋3回にわたり実施された過去最大規模の円買い介入は、既述の定義に基づき
「断続的かつ徹底して水準を押下げる強い意志を伴って実施」(前掲➌参照)
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(国際)収支構造の反転(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した内外金利差、今後増加が見込まれる対外直接投資や個人による
海外証券投資、更には上記①で明らかになった本邦の「外貨不足」という需給動向
テクニカル分析でも指摘しているが、月足の終値ベースで(32年ぶりとなる)昨年10月の
同高値(148.75)を9月(149.32)で更新。これは、ザラ場の高値(151.95円)の更新ですら
充分に視野に入りうる状況となったことを示唆すると同時に、「上値メドの余地拡大」や
「依然として根強い上昇圧力が継続中」であることを改めて強く市場に印象付けた。
しかし、強力な支持線として機能する21日MAが近い水準(148.42)まで上昇しており、終値でこの水準を下回ってくれば「ピークアウト」が一気に顕現化してくる可能性あり。
先週末の強烈な雇用者数の増加を受けて、「FRBによる年内の追加利上げ」の可能性は
高まったと言わざるを得ない。ただ、雇用統計内での賃銀上昇ペースは明確に鈍化して
おり、FRBは「力強い成長と鈍化しつつあるインフレ圧力との間でバランスを取る」と
いう難しい判断を続けてゆかねばならない。
今週は、PPIやCPIなど複数の物価指数や消費者景況感等の経済指標の他、複数のFRB
高官の発言予定が目白押し。これらを通じて米金融政策や経済の先行きを見据える展開
となろう。米国の金融政策を巡っては、年内利上げが実施されるかどうかより「金利を
どれだけ長く高水準で維持するか」と言ったところへ市場の関心は移りつつある模様。
インフレ鈍化のペースが緩み高金利の長期化観測を高めるのか、それとも鈍化ペースが
加速して利下げ開始の前倒し観測を高めるのかが注目される。
また、こうした市場の観測の変化を受け、為替では先週記録した150.15円突破を実現
できるのかどうか、また本邦金融当局による実弾介入の可能性は高まるのかなど注目点
の多い週になりそうだ。
材料が多いだけに想定は様々だろうが、日米の金融政策格差を意識した「USD高/円安
の流れが引き続き継続する」との見方が大半ではないかと思われる。しかし、先週も
指摘した通り、楽観視されている米国経済も盤石ではないはずだ。
米4-6月期個人消費・確定値は+0.8%と改定値の+1.7%から大幅に下方修正(1-3月期
の4.2%からも大きく減速)。また、住宅ローン金利や住宅価格の上昇、学生ローンの
返済再開、貯蓄(率)の減少など消費抑制要因が目白押し。米経済への先行き不透明感は払拭されるどころかその度合いを一段と高める可能性すらあろう。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに
短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏の
レポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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