テクニカル分析判断 サマリー: ●強力な上値抵抗線を突破。当面は上値トライの可能性が急速に高まる (日足) ●短期的上昇圧力が再燃も137円 […]
<テクニカル分析判断>
サマリー:
●短期:「上値トライ」継続の可能性が高い中、根強い上昇圧力にも徐々に翳りが出来
●中期:依然強調維持も「ピークアウトは早晩訪れる可能性が高い」との見通しを継続
先週は「寄付147.00:145.89~147.94:終値147.84(前週比+0.06円の円安)」となり
週足(後掲➋参照)では、5週ぶりの陰線を刻んだ後に再び2週連続の陽線を記録した。
①7週連続で(僅少ながら)高値を更新中、②下ヒゲが長く下方抵抗力の強さを強調、
③RSIはかなり高水準にあるも上昇傾向を維持していることなどから、前週と同様に
「依然として根強い上昇圧力が継続中」であることを強く市場に印象付けた。
但し日足(後掲➊参照)では、1)週末の上値トライでも148.00を突破できなかったこと、
2)(先週も指摘の通り)ストキャスティックスが示唆した短期的調整が示現したこと、
3)終値では下回ることはなかったが上昇中の21MA を一時的に下方突破したことなど
から、徐々にではあるものの上昇圧力の減退(下落圧力の台頭)も感じられる。
少なくとも「上昇圧力の減退」の兆しは少しずつ垣間見られるようになってきている。
また、7月2週目に5.77円まで爆発的に拡大した週間レンジは、その後概ね縮小傾向を
辿っており、前週の1.86円に続き先週も2.05円と変動率の低下が鮮明。
既述の1)と併せ、我々はこれらの事象に『上値の行き詰まり』の兆しを感じ始めている。
もちろん数多のテクニカル指標の大半が示すように「上昇圧力の根強さ」は依然として
強力であり、今週も「上値トライ継続」の可能性は否定できない。しかし、徐々にでは
あるが「上昇圧力の翳り・下落圧力の高まり」も顕現化しつつあるため、ピークアウトが接近している可能性は頭に入れておく必要があろう。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/09/15のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:上値トライ継続もピークアウトの兆候も増加
〇『ストキャスティックス』を追加したチャートは先週と同様の仕様。状況判断にも
著変はないが、先週<『高水準で緑線が赤線を下抜け』する寸前だと認識しており、
少なくとも短期的な調整が見られる可能性が非常に高い>とした状況は脱している。
●但し、その水準は依然として高位にあり調整的な反落はいつ起こってもおかしくは
ない。また、既述の通り(強力な支持線となっている)上昇中の21MAを終値で下回る
局面が出来すれば、中期的なピークアウトに直結する可能性もある。
□その他の分析も先週と変化は無く「ピークアウト(転換点)に着実に接近」と認識
>>>想定レンジ=今週:144.90~149.40 、今後1ヶ月:140.70~150.30 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:下落再開に向け、接近中のピークアウトの確認待ち
◎上記の日足と同様にチャートには『ストキャスティックス』を追加した仕様。
□こちらは先週の日足に続き、『高水準で緑線が赤線を下抜け』する寸前だと認識
しており、少なくとも短期的な調整が見られる可能性は高いと判断。
●但し、中期的なピークアウトに直結するかどうかは現時点ではまだ判断できない。
□その他の分析も先週と変化は無く「ピークアウト(転換点)に着実に接近」と認識
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 135.00~149.85 ⇒ 137.10~150.30 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンド入りの前に中期的下落を想定
◎上記➊➋と同様にチャートには『ストキャスティックス』を追加した仕様。明確な
サインはまだないが、インジケーターの水準は警戒的高位に接近中にある。
●8月の終値を確認した現在でも、「緩やかな下落トレンドの可能性は依然残存」を
中期のメインシナリオとして維持。その後、超長期上昇トレンドへの移行を見込む
●繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2012年9月からの推移)
<=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去35年以上
経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった(金の太い〇部分)
<=一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(66.6)も圧倒的に低下余地が大きい
=>超異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた軟化漸進を見込む
<現在136.00近辺の[20MA]はこのまま横ばいでも10月も約1.6円上昇する見込み>
◎ただ、その動きも1年以内には底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向
へと徐々に変換してゆく可能性が高いと想定している
>>> 今後1年間の想定レンジ = 133.50~153.60 ⇒ 135.30~153.60 =
<ファンダメンタルズ分析判断:簡略版>
●8月CPI・PPIなどの物価指数統計、8月鉱工業生産・9月NY連銀製造業景況指数等
の生産活動が市場の事前予想を上回るなど、先週の米経済指標はほとんどが良好。
これに伴う「米金融引締め長期化観測」から米国債利回りは上昇し、政策金利に連動
しやすい2年債利回りは終値で5.0%を超えて越週した。
〇なお、USDインデックスは先週も(僅かに)上昇し2014年以来最長となる9週連騰を記録。
●ドル高が9週間も続くのは異例だが、ドルの上昇幅は毎週徐々に縮小してきている。
これは市場が既にドルをかなり買い持ちにしている証左であり、この水準から更なる
「ドルの急伸」を見込むのは次第に難しくなりつつあると判断
◎2週前までは<米国経済は「ゴルディロックス(適温経済)」にある>をはやして
『リスク選好』ムードの中で上昇基調にあった米国株式市場も、先週の金利上昇継続を
受けて続落。主要指標であるS&P500は週間で0.2%と僅かではあるが軟化している。
<『米国経済は過熱も減速もしていない状態で今後インフレも相応に抑制され、米国は
景気後退を回避する』という理想的な軟着陸シナリオを辿っているとの楽観論>
>>個人的には「いいとこ取りし過ぎだし時期尚早」なためリスク大(≒危険)だと思料
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」に対する根強いサポート要因
◎明確な鈍化を見せない米国経済指標 ⇒「適温経済」シナリオの拡大が加速
〇米国の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
>>『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀の明白なコントラスト』のむし返し
⇔ 今後「欧米のタカ派色希薄化の一方、日銀はハト派色後退」で逆方向へ
〇昨今注目度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
⇔「欧米の利上げ打ち止め」並びに「日銀の金融政策正常化への漸進」という
かつての「逆行する(金融政策の)方向性」に対する反転が視野に入りつつある中
(食傷気味となった)このロジックは賞味期限切れに近いと認識
●9/9の植田日銀総裁による週末一般紙インタビュー記事が与える影響も昨今の
ドル高円安に偏った市場参加者に楔を打ち込む効果に結び付く可能性あり。
記事の見出し:“マイナス金利解除「選択肢」”となっており、従来の総裁発言
或いは、8月2日の内田副総裁の講演・記者会見と比べて、やや踏み込んだ内容。
円安が進んでいることや市場で資産インフレの高まりを指摘する声が強まって
いることへの牽制が意図されている可能性もある。
今週21・22日の金融政策決定会合で、今回の植田総裁の発言真意、及び、日銀の
政策スタンスを確認することになろう。
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●米銀行セクター不安から顕現化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける公算大
>>>過去1年半にわたる利上げの累積効果による景気悪化は今後本格化へ
⇒米銀の貸出態度は現在加速的に厳格化しており、実際の貸出も昨年11月に
つけたピーク(前年比13.5%増)から、7月末時点で同1.6%増へ伸びが低下。
⇒おそらく今年末には前年比ゼロもしくはマイナス圏に陥るとみられている。
⇒家計の過剰貯蓄も現在のペースで取り崩していけば、年末までには底を突き、
家計の消費ペースはその後大幅にスローダウンする可能性が高い。
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
⇒全米不動産業者協会の住宅アフォーダビリティー指数は7月も87.8と、前月から変わらず極めて低水準。これらは1989年以降で最低水準にある。
●中国の景気減速が米国(世界の)金融市場に波及する可能性の高まり
>>>8月、中国恒大集団が米連邦破産法の適用申請
●「この問題が米国の金融市場に飛び火する」可能性の高まり
>>>米国では商業用不動産市況が懸念され続ける中、企業向け融資にも警戒拡大
⇒ 背景:米企業の債務残高の対GDP比率は昨年末時点で76.0%を超えていた
(2008年の「リーマン・ショック=世界金融危機」時を上回る水準)
>>>中国不動産企業のドル建社債発行残高は約1000億ドルとされるが碧桂園の
利子の支払い遅延後は、ジャンク(投機的格付け)債を中心に投げ売り状態
>>>今後、中国不動産企業のドル建ジャンク債のデフォルトが多発するような
事態となれば、米社債市場全体のセンチメントが一気に悪化する惧れあり
>>>中国の不動産企業の債務危機を世界の金融市場は決して軽視できない
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>米債券市場での将来の景気後退を示唆する『逆イールド』は依然高水準
>>>『逆イールド』幅は今年3月の最大値(▲1.08%)を7月に僅かに更新
>>>その後、一旦縮小のトレンドに入ったと思われたが、拡大と縮小を交互に
繰り返す展開が続いており、一向に解消に向かう明確な気配は見られない
⇒既述の「適温経済」シナリオが本当に実現するのなら、近未来の景気後退を示唆
する逆イールドは自ずと解消に向かうはず
⇒しかしながら、現状ではその『解消へのパス(経路・道筋)』すら展望できない
>>>2年・10年債を含め米国の債券利回りは各々『限界的な水準』にあると判断
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式市場の好調は「米利上げサイクルが終了に接近中との見方」も重大な要因
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ低下余地はほぼ無く金利の変化としては「上昇」するしかない
(生保など機関投資家が長期投資対象として充分魅力的な水準になるまで)
>>>先月の「YCC修正」により『日本の金利は下げられない』ことが改めて明白に
>>>欧米の利上げが終了すれば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が継続
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本の金融当局にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>前週末の植田日銀総裁の発言(インタビュー記事)には「漸進する円安をけん制」
する意味合いも込められていた可能性が高い
>>>昨秋9月から、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は、
断続的かつ徹底して水準を押下げる強い意志を伴って実施された
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(国際)収支構造の反転(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した内外金利差、今後増加が見込まれる対外直接投資や個人による海外証券投資、更には上記①で明らかになった本邦の「外貨不足」という需給動向
テクニカル分析でも指摘したが、ここもと『壁』となっている148.00を明確に上回って
くれば、150円台へ上昇が加速する素地は充分整っているように見受けられる。しかし、
強力な支持線として機能している21日MAがかなり近い水準まで上昇しており、終値で
この水準をなど下回ってくれば「ピークアウト」が一気に顕現化してくる可能性あり。
今週は日米の金融政策会合が開催される。米国労働市場は雇用拡大ペースが鈍化する中で
FOMCもそう簡単に利上げには踏み切れないとの見方が優勢となっており、「9月は金利が
据え置かれる」と市場はほぼ織り込み済。そのため、注目されるのは新たな経済見通しで
来年末のFF金利見通しが6月見通し(6月時点では中央値が4.6%)からどの程度引き上げ
られるかということとなろう。「現状のFF金利と6月時点のFOMC予想中央値との差」は
約1%なのでその差が縮小すれば、USDの押し上げ材料と受け止められ、逆のケースなら
USDを圧迫し押下げ材料となりだ。
かたや日銀は、次回の政策修正時期の前倒し観測を高めた植田総裁の発言を、どこまで
声明文に反映させてくるのかが注目される。前倒し期待がさらに高まれば、円が上昇し
やすくなる一方、日銀が先日の総裁発言の内容を巡る市場の受け止め方を修正し、政策
調整期待を従来通り2023年4月以降へ押し返せば、円安圧力が再燃する可能性あり。
ただ、円安が更に進む場合には、本邦通貨当局による市場介入への警戒も高まるため、
米FOMC・日銀・本邦財務省に対する思惑が複雑に絡み合い、円相場の値動きが非常に
荒くなる可能性があり注意が必要だろう。
FRB当局者も繰り返すように「今後、FRBの金融政策はデータ次第」となると個人的には
考えているし、前週の金融市場全般の動きは「9月FOMCでの利上げは見送り。その後の
追加利上げもデータ次第」と受け止めたが故の適温経済シナリオの織込みだったはず。
パウエルFRB議長は8月末の講演で『曇り空のもとで星を頼りに航海している』と述べ
不確実性が高い現在の経済環境において、金融政策の舵取りの難しさを強く指摘した。
今、我々は<いいとこ取りの「適温経済」という超楽観論>に浸るべき時ではなく「『引締め過ぎ』と『引締め不足』の両方のリスクに備えるべき時」だと考えたい。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに
短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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