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ウッドショックという言葉を聞いたことがあるでしょうか。新型コロナの世界的な蔓延により生まれた言葉で、アメリカを中心に住宅購入を入口とした生活環境の変化です。
2022年年末時点でコロナ罹患は相変わらず高止まりは続いていますが、経済的混乱は落ち着いてきたような印象を受けます。それでも来たる2023年には、第二次ウッドショックが待ち構えていると筆者は考えます。
第一次ウッドショックとは何か
ウッドショックは2020年頃からアメリカの都市部でコロナが蔓延するのを受け、アメリカの住宅購入層がそれまでのように都市部に住宅を購入せず、人口密度の高い都市部を回避して郊外に平屋建てや戸建てを建て始めた傾向を称します。
郊外の広めの住宅は木造が多いため、木材資材の高騰と戸建て増加による建築人件費の増加を招きました。またそれまでコミュニティが存在していなかった地域に住宅が集まると、買い物や教育などのインフラが遅行的に推進されます。
それらの建築ブーム、不動産ブームを合わせてウッドショックといわれています。広義だと経済活性化の意味を込めますが、現地でショックという言葉を使っていることから、木材高騰による他用途への影響という意味で使う場合が多いです。アメリカの他にヨーロッパや中国などでも同様の傾向が発生したと見られ、不動産業界を中心に懸念が続いています。
日本におけるウッドショック
日本は国土そのものと、国土のなかでも居住地域が限られていることもあり、目立った形でのウッドショックは発生してはいません。都市部の人口が地方の中核都市に流れているという話もあまり聞かないため、経済活動としてのウッドショックは発生していないと思われます。
ただ、ウッドショックの影響を受けた木材高騰は顕著です。建築現場や不動産現場では木材の高騰が建築価格を底上げし、今後の懸念材料となっています。筆者はこの状況に、もう2つの要素が加わって2023年に第二次ウッドショックを発生させると懸念しています。
第二次ウッドショックを招く2つの要因
第二次ウッドショックは現状の木材高騰をベースとして、2点のネガティブな要素の懸念です。
ロシア・ウクライナ戦争による経済制裁
これまで日本はロシアと多くの経済協力を締結してきました。2022年のウクライナへの侵攻を受け、国際世論と歩調を合わせる形でロシアへの経済制裁に参画し、輸入を禁じています。
これまで日本はロシアから年間71万㎡もの木材を輸入してきました。これは木材輸入全量の16.1%にも及びます。また世界全体の動きとしてサステナビリティなど木材回帰の動きを見るに、木材高騰の要因が揃っている印象を受けます。これは2022年よりも、来たる2023年の方がリスクが高いといえるでしょう。
ウッドショックに加わる円安
木材の中心はロシアに限らず外国からの輸入資材のため、ここに為替相場も加わります。
2022年後半、ドル円相場において一時150円を記録するなど円安傾向が急伸、約32年振りの安値水準を記録しました。木材の輸入上位国はカナダ、スウェーデン、フィンランドと地理上日本に遠く、輸入コストがかかることに加え、円安により輸入への逆風が吹くなか、ウッドショックの継続要因となる恐れがあります。
いつ終わるともわからないコロナからの復興や戦争によるカントリーリスクと異なり、為替リスクは一時的なものです。円高傾向になると木材の輸入を後押しするため、状況が一気に変わるでしょう。ただしここまで複合的な要因が重なっていると、為替はウッドショックの一要因にはなる一方、反発までは期待できないのではと思います。
ロシアからの代替輸入を進めることで高まるコスト
もう1つの懸念は、ロシアから確保していた分の木材シェアを他国から調達する場合に値上がりコストが懸念されることです。石油も小麦もそうですが、国内において需要が維持される場合に、ロシアからの輸入想定量が低下したから市場供給数をコントロールすることはできません。そうした場合に他の生産国に輸入増加を依頼する手段がありますが、通常の取引値ではなく特別値として高値を提示される可能性があります。
2011年に大地震で国内の原子力発電を止めた際に、代替燃料としてのLNG(天然ガス)が高値での輸入になったと報じられました。2023年は木材において、同様の現象が懸念されています。
我々の生活においては、消費財としての木材への影響がまず懸念されます。ただ建築資材としての木里、我々が普段使用している紙・パルプ、書籍の原料としての木材は異なりますので、影響は不透明という見方も残ります。
2023年に住宅建築など大きな買い物を控えている場合は、価格推移がどうなっていくのか、継続して確認していくようにしましょう。ウッドショックはメディア紙上の話ではなく、我々の生活に直接的な影響を及ぼすものだと改めて実感します。
本記事は2023年1月16日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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