ドル円の短期的なテクニカル分析は、依然としてドル高・円安を指向しています。 上値目標値は、144円処として、142円のドル買いポジションを堅 […]
テクニカル分析判断
サマリー:
●短期:依然として根強い上昇局面にあるものの、「ステージは終盤」の兆候出来
●中期:上昇優勢の展開が再来するも、短期に続いて「上昇の過熱」状態に急接近
先週は「寄付141.69:141.21~143.86:終値143.73(前週比+1.89円の円安)」の
推移を辿り、週足は3週連続での陽線形成となった。ここ数か月「強力な上昇圧力
が根強く残存している証」としていた「前週比でみた下値の切り上がり」は3月の
最終週から13週間にわたってほぼ継続。更に、先週には7か月ぶりの戻り高値を
連続して更新した上に、上値の大幅な切り上げをも示現した。
5週前に我々が修正した中短期見通し『根強い上昇圧力は当初の想定より遥かに
強靭であるため、当面は上値トライが主流となる蓋然性が高い』がまさに本格化
してきたのだと言えよう。
しかしながら、日足での『RSI70超え』が再び出現するなど『上昇の過熱状況』が
改めて高値警戒感を招きつつあり、先週も指摘した通り『今後の更なる上昇には
幾つもの障壁が待ち受けている』。今後は上昇抑制的な展開が増加しよう。
なお、2週前に1.70円まで縮小した週間レンジは、前週2.90円に急回復した後
先週も2.65円を維持したがあえて変動率の高まりを指摘するほどには至らず。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/06/23のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月程度)の方向性:根強い上昇局面にも「終盤」突入の兆候が出来
●過去1年間で形成されていた『中期的に強力な上値抵抗帯』(青い□の帯)の上限を
終値で明確に突破して以降、逆にその水準が下値を強力に下支えする展開が継続。
先週も、連日“上値の切り上げ”を継続し『強力な上昇モメンタムを維持』した。
●ただし、「ある(短期の)MAがより長期のMAを下回るデッドクロス(以下DC)とその
真逆にあたるゴールデンクロス(同GC)は、其々「“下落・上昇”のサイン」とされ
ているが、発生する(早遅の)段階によって示唆する意味合いが変化する場合がある。
⇒チャートの黒い〇はDC、エンジの〇はGCだが最も早く出現するのが①[21&52MA]、
そのトレンドが継続すれば次に出現するのが②[21&200MA]、そして最後に現れるのが
③[52&200MA]。 当然ながら、そのトレンドの成熟度は番号順に高まってゆく。
>>>昨秋~本年1月の下落トレンドをご参照。①②ではそれ以降も下値トライの
継続が見られたが、大きな下向きの矢印を付した③では『ほぼ底打ち』のステージ
(RSIも30近辺まで低下)にて出現していたことが見て取れる。
>>>一方、その後の上昇トレンドにおいては4月に一旦下落の①を挟んだものの
その後は順調に①②の出現を伴う上昇を継続中だった。しかし、当欄で指摘した通り
先週半ばには③のGCが出現。(チャート右端の大きな上向きの矢印部分をご参照)
>>>また、次の上値メドの「142円台半ば」を難なく突破した上に、更なる目標の
「145円台半ば」(ピンクの太い水平線)をも伺う展開に入った模様。
>>>これに伴い、当然ながらRSIも警戒レベルの70を優に超過(73.3)してきた。
●以上より、現在は本年1月半ばのステージ(黒い大きな下方矢印)とは真逆の局面
(エンジの大きな上方矢印)にあり『上昇局面は終盤に突入しつつある』と判断。
>>>想定レンジ=今週:140.85~145.35 、今後1ヶ月:137.10~145.35 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記
中期(1か月超~半年程度)の方向性:短期に続いて「上昇の過熱」状態が着実に接近
●黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン。今年に入ってからはエンジの〇が
大半であり、過去1年で形成された『中期的に強力な上値抵抗帯』(青い□の帯)の
上限を終値で明確に突破して以降は、調整的な下押しの動きに対しても、既述の
『抵抗帯』の中に入ると強力な押し目買い圧力により直ちに抵抗帯超の水準へ押し
上げられる展開。上昇の勢いは衰えず、先週も7カ月ぶりの戻り高値水準を更新。
●モメンタムは明らかに騰勢が優位。しかし[21MA]からの上方乖離([21MA+7.41%]
:145円台半ばへの急接近)やRSIの水準(66.6)などが着実に要警戒領域に接近。
●RSIは、緩やかながらも着実に上昇を継続し上記水準を回復。昨秋急落時の水準
および“上昇の過熱”を警戒すべき70に接近中で上昇余地は僅少となってきた。
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 126.30~145.50 ⇒ 126.90~145.80 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~年単位)の方向性:上値抵抗帯突破で2015~16年の推移想定は遠のく
●先週も7カ月ぶりの高値を更新したため、5月末には未達だった上値抵抗帯上限の
突破も6月末には確実な情勢。このため、5月下旬までメインシナリオとしていた
「2015~16年の軟調推移」はかなり遠のいたものの(傾きをマイルドにした形での)
『緩やかな下落トレンド』の可能性は残存していると判断(図中の大きな矢印ご参照)
●更なる上昇に対してはいくつもの強力な上値抵抗線が控える(チャート右上部)
●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回るという未曽有の異常な過熱状態
●一時85超まで過熱のRSIは中立領域に位置(65.9)を維持も低下余地は大きく残存
●異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA⇒60MA」に向け次第に下落する展開へ
<現在131.35円の水準にある[20MA]は来月以降も約1.3円/月に上昇する見込み>
>>> 今後1年間の想定レンジ = 125.50~145.50 ⇒ 125.85~145.80 =
ファンダメンタルズ分析判断:簡略版
◎ほぼ市場参加者の事前予想通りとなった注目の中央銀行ウィークに大きな波乱は
なかったものの、英中銀の大幅利上げなど主要中銀のタカ派姿勢は依然顕著
>>『タカ派な米欧中銀、ハト派な日銀』の鮮明な対比によって『円安』が進行
◎パウエルFRB議長の議会証言
>>「インフレは昨年半ば以降、幾分緩やかになった」としながらも、
>>「インフレ圧力は依然として高くインフレ率2%達成には依然長い道のり」
>>『経済が現状近辺で推移する場合、FRBは一段の利上げを実施する』という
推測(予想)は「かなり正確と言えるだろう」とした一方で、
>>「より緩やかなペースでの利上げが理にかなう」
◎米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁の発言
>>「今年はあと2回の利上げが『非常に妥当』な予想だ」とした上で、
>>「金利の最終到達点接近に伴い、政策のペースを落とすことが賢明な判断」
>>>これらを受け、欧米の市場金利は短期を中心に強含み(上昇気味)の推移
>>>蒸し返しの材料だが、改めて日本内外の金融政策のコントラストに焦点が
当たり、先週も対USDでは7カ月ぶり・対EURでは15年ぶりの円安水準を更新
●先週末の米欧経済指標は軟調(市場予想を下回り、各々数か月ぶり低水準)
>>6月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は53.0(3月以来の低水準)
>>同米製造業購買担当者景況指数(PMI)速報値は46.3(6か月ぶりの低水準)
>>同サービス業PMIも54.1と今年初の前月比低下(2か月ぶりの低水準)
>>6月のユーロ圏のHCOB総合PMI速報値も50.3と前月の52.8から大幅に
低下して、5か月ぶりの低水準に落ち込んだ
>>>グローバルな企業活動に関する失望的な経済指標を受けリスク回避展開へ
●以上を受け、米欧の市場金利は(短期とは対照的に)中長期ゾーンでは低下
>>将来の景気後退を示唆する長短金利の逆転現象はその幅の拡大が再加速
◆株式・債券両市場による「景気・金融状況」の現状/先行きの判断に甚大な乖離
>>>強気相場入りが鮮明な株式市場(昨秋の安値からS&P500は20%超の上昇)
⇔ 深刻な景気後退(リーマンショック時に匹敵)を示唆する逆イールド(後掲のグラフ)
□【短期~中期的視座】当面「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
⇒『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀』の明白なコントラストのむし返し
〇>>日米短期金利差の更なる拡大とそれに伴う円キャリートレード再開への期待
〇>>相対的な割安感を背景とする「海外勢の“日本株買い/ヘッジの円売り”」
>>日本との現金利差を考慮すれば、円売りヘッジは経済合理性の高い投資行動
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●銀行セクター不安から顕在化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける可能性大
>>>過去1年の急激な利上げの累積効果による顕現化はこれから本格化
>>>3月に始まった欧米金融機関の破綻などの金融不安的動揺
>>>その後も、足許で下落が目立ち続ける商業用不動産市況
>>>米国の企業倒産件数の急増(5月:前年比 +2,324件/+31%、前月比+27%)
⇒2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>将来の景気後退を示唆する米債券市場での『逆イールド』は一向に解消せず
>>>『逆イールド』幅は足許で再び拡大傾向を強めておりその幅は、今年3月の
最大値(▲1.05%)にほぼ面合わせの水準まで拡大(下表)
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ金利に低下余地はほぼ無く変化としては「上昇」するしかない
>>>欧米の利上げが終われば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が急上昇
>>>為替相場には「“内外のファンダメンタルズを反映”した“秩序ある動き”」が
求められるものの、足許ではそれに逸脱気味の推移が展開中
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は140円大台の
半ばから始まり、徹底的に水準を押し下げる強い意志を伴って実施された
>>>前週、日本は「米国の外国為替監視対象国から除外」され、従前よりも市場介入
の自由度・意思決定速度が向上する環境となってきた
>>>円を取り巻くファンダメンタルズや円安進行の速度、さらにその絶対水準を考慮
すれば、本邦通貨当局による『円買い介入』の蓋然性は着実に上昇している
お詫び:今週のファンダメンタルズ分析判断も、簡略版のみと致しました。
なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を
中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート
(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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