トレーダム為替ソリューション 【AI為替リスク管理システム】

  • Weekly Report (6/12):テクニカルには強弱拮抗もファンダメンタルズでは波乱含み
    吉岡 豪麿
    この記事の著者
    トレーダム 取締役CAO

    国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

    マーケット分析

    テクニカル分析判断  


    サマリー:

    『根強い上昇圧力』は依然強靭ではあるものの、6月に入り高値警戒感の高まり

    もまた当初想定より強力。上昇圧力は「上値模索⇒押し目買いが主流」に変化

    ●『上昇VS下落』双方の圧力の拮抗状態が継続する中、相場を上下に大きく振幅

    させるエネルギーは着実に蓄積している模様

    先週は「寄付139.95:138.75~140.45:終値139.41(前週比▲0.57円の円高)」の推移

    となり、週足は2週連続の陰線を形成。前週、日足での『RSI70超え』に現れた上昇の

    過熱状況が高値警戒感を招き、短期的な調整が継続した格構。ただ、こうした状況下

    においても「強力な上昇圧力がしぶとく残存している証」とした「前週比での下値の

    切り上がり」は3月最終週から10週超にわたってほぼ継続しており、本年初来、特に

    3月下旬からの「(緩やかな)上昇トレンドの継続」を市場参加者に強く印象付けた

    なお、前週2.50円と縮小に転じた週間レンジは、先週1.70円と小幅ながらもさらに

    縮小し、更なる上値模索の一方で相応の抑制圧力を受けたことを示唆した。

    先々週の短期的調整によって月足こそ“確認”にまでは至らなかったかったものの、

    日足/週足という中短期時間軸では我々が注目していた「強力な上値抵抗帯の上限」

    を“終値で明確に上回った”ことで我々が中短期見通しの本格的な修正を実施した

    ことは既にご案内したとおり。各時間軸での結論は後述するが、総じて『根強い上昇

    圧力は我々の想定より遥かに強靭であり、そのモメンタムもまた俄かには衰えそうも

    ないことを再確認』し「当面は上値トライが主流となる蓋然性が高い」としていた。

    ただ、ここ2週の変動率の縮小は『押し目買い圧力は依然強靭である一方、上値模索

    の動きはその勢いが衰えつつある』ことを示唆し始めているのかもしれない。


    以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな

    視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/06/09のNY市場終値をベースに実施)

    <以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>

    ➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記

    短期(1週間~1か月程度)の方向性押し目買い圧力と高値警戒感の拮抗状態が継続

    USDJPY D 20230609


    チャートは先々週までの1年強の期間を半年強に短縮しスケールを拡大したもの。

    黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン今年に入ってからはエンジの〇が大半

    であり過去1年で形成されていた『中期的に強力な上値抵抗帯』(137.75~139.20:

    青い□の帯)も5/24には遂に終値で明確に突破していた。

    ●先々週こそ『RSI 70超え』等に現れた上昇の過熱状況が高値警戒感を招き短期的な

    調整が具現化したものの、週末には既述『抵抗帯』の中で再び大幅な反発に転換。

    先週見られた調整的動きに対しても、『抵抗帯』の中に突入すると強力な押し目買い

    圧力によってすぐさま抵抗帯より上の水準へ押し上げられる展開が続いている。

    ●今週139円台に上昇する[21MA]を下回らず上昇モメンタムを維持できるかに注目。

    ●先々週4週続伸して“上昇の過熱”ゾーンである 72.9まで上昇していたRSIは、

    その後速度調整的反落を経たことで57.5へ軟化し上昇余地を形成も70超は厚い壁。

    >>>想定レンジ=今週:138.15~141.60 、今後1ヶ月:137.40~143.25 =



    ➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記

    中期(1か月超~半年程度)の方向性強含み保合い状態から次の波動を模索する動きへ

    USDJPY W 20230609 1


    チャートの黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン今年に入ってからは

    エンジの〇が優勢であり過去1年で観測されていた『中期的に強力な上値抵抗帯』

    (137.70~139.20:青い上部の□の帯)も遂に3週前に終値ベースで明確に突破。

    ●その後の高値警戒による調整的動きに対しても、既述の『抵抗帯』の中に入ると

    強力な押し目買い圧力により直ちに抵抗帯超の水準へ押し上げられる展開が続く。

    ●週間変動幅縮小にも現れているこの強弱拮抗状態は当面継続しそうな状況だが、

    逆に上下どちらかに振れると「次なる大きな流れ」の形成に波及する可能性あり。

    ●RSIは、前回ピークアウトした4月第4週や2月第3週、さらに昨年急落した

    11月第2週の水準で一旦はね返された格好も、依然として中立的領域(59.2)に

    位置しており今後の上昇余地は残存。一方で、低下余地も潤沢にあると言える

    >>> 今後6か月間の想定レンジ = 127.800~145.50 ⇒ 126.45~145.50 =



    ➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記

    長期(半年超~年単位)の方向性上値抵抗帯突破で2015~16年の推移想定は遠のく

    USDJPY M 20230609


    ●5月の終値は139.32と上値抵抗帯上限(139.35)とほぼ面合わせ。このため中短期

    の時間軸とは異なり『強力な上値抵抗帯を“終値で明確に突破”には到らず』。

    ●従って、当面は強含みの展開が見込まれ想定していた「2015~16年の軟調推移」は

    遠のいたものの『(傾きをマイルドにした)緩やかな下落トレンド』の可能性は残存。

    ●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回るという未曽有の異常な過熱状態

    ●一時85超まで過熱のRSIは中立領域に位置(63.5)を維持も低下余地は大きく残存

    異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA⇒60MA」に向け次第に下落する展開へ

    <現在131.20円の水準にある[20MA]は来月以降も約1.3円/月に上昇する見込み>

    >>> 今後1年間の想定レンジ = 125.10~145.50 ⇒ 124.50~145.50 =



    ファンダメンタルズ分析判断:簡略版


    先週の欧米の経済指標は少数で内容はマチマチながら若干軟調なトーンが優勢

    ◎ただし、週央の豪中銀に続くカナダ中銀の利上げは市場にサプライズを提供

    ◎これを受け「仮に、6/13~14のFOMCで利上げが停止されるとしても、世界的な

    インフレの高止まりが緩和されない中で政策金利見通しは引上げられる」との

    見方が大きく台頭  ⇒  短期を中心に市場金利は上昇

    ◇今週は日米欧の金融政策決定会合が開催されるほか、5月の米消費者物価指数を

    始め米国の重要な物価統計や景況感関連指標の発表が予定・注目されている

    ◆株式・債券両市場による「景気・金融状況」の現状/先行きの判断に甚大な乖離

    >>>強気相場入りが鮮明な株式市場(昨秋の安値からS&P500は20%超の上昇)

     ⇔ 深刻な景気後退(リーマンショック時に匹敵)を示唆する逆イールド(後掲のグラフ)



    □【短期~中期的視座】当面「USD/円相場の上昇」をサポートする要因

    〇欧米の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)

     >>先週の豪・加中銀のサプライズ利上げがこれを後押し

    〇日米短期金利差の更なる拡大とそれに伴う円キャリートレード再開への期待

    〇>>相対的な割安感を背景とする「海外勢の“日本株買い/ヘッジの円売り”」

     >>日本との短期金利差を考慮すれば、円売りは経済合理性の高い投資行動

    〇>>本邦投資家による“(外貨建て資産保有に伴う)円買いヘッジ外し(解消)”

     >>内外短期金利差を考えればヘッジ外しの円売りは経済合理性の高い投資行動



    ■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因

    ●銀行セクター不安から顕在化し始めた“信用逼迫”への懸念は燻り続ける可能性

    >>>過去1年の急激な利上げの累積効果による顕現化はこれから本格化

    >>>3月に始まった欧米金融機関の破綻などの金融不安的動揺

    >>>その後も、足許で下落が目立つ商業用不動産市況

    >>>米国の企業倒産件数の急増(5月:前年比 +2,324件/+31%、前月比+27%)

      ⇒2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想

    ●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性

    >>>将来の景気後退を示唆する米債券市場での『逆イールド』は一向に解消せず

    >>>『逆イールド』幅はピーク時より縮小も、足許で再び拡大傾向にある(下表)

    >>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」

    4a1xgwM79 gsQxFfMSZwIFR04ufYW5S7shLi0QxNvGlvKSS63mQ3g O3VPebeRasGrjwxVZSxVEcYvFnFks0oaAIO9yivm78gpUEC pe2htt 5GJCq3PQq9lYIbtWxu52wpuzSXR4



    ●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無

    >>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない

    >>>いずれにせよ金利に低下余地はほぼ無く変化としては「上昇」するしかない

    >>>欧米の利上げが終われば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)

    ●【日本】通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が上昇

    >>>為替相場には「“内外のファンダメンタルズを反映”した“秩序ある動き”」が

    求められるものの、足許ではそれに逸脱気味の推移が展開中

    >>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな

    かった日本にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態

    >>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は140円大台の

    半ばから始まり、徹底的に水準を押し下げる強い意志を伴って実施された

    >>>円を取り巻くファンダメンタルズや円安進行の速度、さらにその絶対水準を考慮

    すれば、本邦通貨当局による『円買い介入』の蓋然性は着実に上昇している



    お詫び:今週のファンダメンタルズ分析判断も、簡略版のみと致しました。

    なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を

    中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート

    (Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。

    TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい

    ようこそ、トレーダムコミュニティへ!