<テクニカル分析判断> ●短期:反発局面突入確認以降、依然上振れの可能性を残すも、上昇力息切れの兆候も台頭 ●中期:短期の変調が中期に […]
<テクニカル分析判断>
サマリー:
●短期:依然「上値トライ」が続く中、根強い上昇圧力にもやや翳りが出来
●中期:依然強調維持も「ピークアウトは早晩訪れる可能性が高い」との見通しを継続
先週は「寄付146.16:146.01~147.87:終値147.78(前週比+1.56円の円安)」となり
週足(後掲➋ご参照)では5週ぶりの陰線の直後に再びしっかりとした陽線に転換した。
これで①6週連続で高値を更新中である、②ほぼヒゲの無い丸坊主に近い陽線である、
③RSIはかなり高水準にも拘らず上昇傾向を維持していることなどから、依然として根強い上昇圧力は継続中であるといえる。
しかし日足(後掲➊参照)では、1)148.00を目前に4日連続で足踏みが続いていること、
2)一部オシレーター系指標では少なくとも短期的調整の接近が示唆されていることなど
から、徐々にではあるものの下落圧力の台頭も感じられる。
少なくとも「上昇圧力の減退」の兆しは徐々に垣間見られるようになってきている。
また、7月2週目に5.77円まで爆発的に拡大した週間レンジは、その後概ね縮小傾向を
辿っていたが、前週の2.93円の再拡大を挟み、先週は1.86円と急速に縮小している。
既述の1)と併せ、我々はこれらの事象に『上値の行き詰まり』の兆しを感じ始めている。
もちろん、数多のテクニカル指標の大半が示すように「上昇圧力の根強さ」は依然として
強力であり、今週も「上値トライ継続」の可能性は否定できない。しかし、徐々にでは
あるが「上昇圧力の翳り・下落圧力の高まり」も顕現化しつつあるため、ピークアウトが接近している可能性は頭に入れておく必要があろう。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/09/08のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:上値トライ継続もピークアウトの兆候も増加中
●チャートには先週までの指標に『ストキャスティックス』を追加。これはRSIと
同様に相場の買われ過ぎ・売られ過ぎを判断する分析手法で、オシレータ系の指標。
◎これまでは、定点観測(継続性)の意味合いから『ローソク足・MA・エンベロープ・
RSI』と比較的シンプルで解りやすいものをご案内してきたが、現在我々が認識して
いる微妙なニュアンスをお伝えするために追加したもの。
>>緑の線が赤の線を上下どちらに抜けるか、その水準は(RSIと同様に) 相対的に
買われ過ぎ・売られ過ぎになっていないかなど、逆張りシグナルとして使われる。
□現在は『高水準で緑線が赤線を下抜け』する寸前だと認識しており、少なくとも
短期的な調整が見られる可能性が非常に高いと判断。
●但し、中期的なピークアウトに直結するかどうかは現時点ではまだ判断できない。
□その他の分析は先週と変化は無く「ピークアウト(転換点)に着実に接近」と認識
>>>想定レンジ=今週:143.70~148.20 、今後1ヶ月:140.10~149.70 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:下落再開に向け、接近中のピークアウトの確認待ち
◎上記の日足と同様チャートには先週までの指標に『ストキャスティックス』を追加。
□こちらも日足と同様に、現在は『高水準で緑線が赤線を下抜け』する寸前だと認識
しており、少なくとも短期的な調整が見られる可能性は高いと判断。
●但し、中期的なピークアウトに直結するかどうかは現時点ではまだ判断できない。
□その他の分析も先週と変化は無く「ピークアウト(転換点)に着実に接近」と認識
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 135.00~149.85 ⇒ 135.60~149.70 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンド入りの前に中期的下落を想定
●8月は、4カ月ぶりの陰線となった7月から大きく反発して再び陽転。昨年の11月
以来となる147円台を一時回復した。しかし、上ヒゲが比較的長目となっており
「上昇圧力の翳り」も感じられるため『中期的なピークアウト(≒反発局面は終息)』
も可能性として再浮上してきている
●8月の終値を確認した現在でも、「緩やかな下落トレンドの可能性は依然残存」を
中期のメインシナリオとして維持。その後、超長期上昇トレンドへの移行を見込む
●繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2012年9月からの推移)
<=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去35年以上
経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった(緑の太い〇部分)
<=一時85超まで過熱したRSIは中立領域に位置(66.6)も圧倒的に低下余地が大きい
=>超異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた軟化漸進を見込む
<現在135.90円の[20MA]はこのまま横ばいでも10月も約1.5円上昇する見込み>
◎ただ、その動きも1年以内には底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向
へと徐々に変換してゆく可能性が高いと想定している
>>> 今後1年間の想定レンジ = 133.50~153.60 ⇒ 133.50~153.60 =
<ファンダメンタルズ分析判断:簡略版>
●8月米ISM非製造業景況感指数が市場予想を上回るなど、先週の米経済指標は概ね
良好。これに一部FRB高官のタカ派発言なども加わって「米金融引締め長期化観測」
から週央には米国債利回りが上昇。但し、この金利上昇が景気減速(後退)の呼び水
となるとの見方もあり週末にかけては軟化に転じた(週間では僅かに上昇)。
〇なお、USDインデックスは週間では0.7%上昇し2014年以来最長となる8週連騰を記録。
●ドル高が8週間も続くのは異例だが、ドルの上昇幅は毎週徐々に縮小してきている。
これは市場が既にドルをかなり買い持ちにしている証左であり、この水準から更なる
ドルの急伸を見込むのは難しくなりつつあると判断
◎前週までは<米国経済は「ゴルディロックス(適温経済)」にある>をはやして
『リスク選好』ムードの中で上昇基調にあった米国株式市場は、週央の金利上昇を
受けて反落。主要指標のS&P500は週間で1.3%下落した。
<『米国経済は過熱も減速もしていない状態で今後インフレも相応に抑制され、米国は
景気後退を回避する』という理想的な軟着陸シナリオを辿っているとの楽観論>
>>個人的には「いいとこ取りし過ぎだし時期尚早」なためリスク大(≒危険)だと思料
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」に対する根強いサポート要因
◎明確な鈍化を見せない米国経済指標 ⇒「適温経済」シナリオの台頭加速
〇米国の利上げ継続観測(≒米金利がより長期間高水準にとどまるという観測)
>>『タカ派なFRB・ECB、ハト派な日銀の明白なコントラスト』のむし返し
⇔ 今後「欧米のタカ派色希薄化の一方、日銀はハト派色後退」で逆方向へ
〇昨今注目度が高まる日米実質金利差ならびに日米短期金利差の更なる拡大と
それに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
⇔「欧米の利上げ打ち止め」並びに「日銀の金融政策正常化への漸進」という
かつての「逆行する(金融政策の)方向性」に対する反転が視野に入りつつある中
(食傷気味となった)このロジックは賞味期限切れに近いと認識
●9/9の植田日銀総裁による週末一般紙インタビュー記事が与える影響も昨今の
ドル高円安に偏った市場参加者に楔を打ち込む効果に結び付く可能性あり。
記事の見出し:“マイナス金利解除「選択肢」”となっており、従来の総裁発言
或いは、8月2日の内田副総裁の講演・記者会見と比べて、やや踏み込んだ内容。
円安が進んでいることや市場で資産インフレの高まりを指摘する声が強まって
いることへの牽制が意図されている可能性もある。
来週21・22日の金融政策決定会合で、今回の植田総裁の発言真意、及び、日銀の
政策スタンスを確認することになろう。
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●米銀行セクター不安から顕現化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける公算大
>>>過去1年半にわたる利上げの累積効果による景気悪化は今後本格化へ
⇒米銀の貸出態度は現在加速的に厳格化しており、実際の貸出も昨年11月に
つけたピーク(前年比13.5%増)から、7月末時点で同1.6%増へ伸びが低下。
⇒おそらく今年末には前年比ゼロもしくはマイナス圏に陥るとみられている。
⇒家計の過剰貯蓄も現在のペースで取り崩していけば、年末までには底を突き、
家計の消費ペースはその後大幅にスローダウンする可能性が高い。
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想
⇒全米不動産業者協会の住宅アフォーダビリティー指数は7月も87.8と、前月から変わらず。これは1989年までさかのぼるデータで最低水準にある。
●中国の景気減速が米国(世界の)金融市場に波及する可能性の高まり
>>>中国不動産業界の最大手「碧桂園」の問題に言及することはなかったが、
4週前、イエレン米財務長官は「中国の不動産問題に起因する景気減速が米国に
波及する可能性」を認めた(数日後、中国恒大集団が米連邦破産法の適用申請)
●「この問題が米国の金融市場に飛び火する」可能性の高まり
>>>米国では商業用不動産市況が懸念され続ける中、企業向け融資にも警戒拡大
⇒ 背景:米企業の債務残高の対GDP比率は昨年末時点で76.0%を超えていた
(2008年の「リーマン・ショック=世界金融危機」時を上回る水準)
>>>中国不動産企業のドル建社債発行残高は約1000億ドルとされるが碧桂園の
利子の支払い遅延後は、ジャンク(投機的格付け)債を中心に投げ売り状態
>>>今後、中国不動産企業のドル建ジャンク債のデフォルトが多発するような
事態となれば、米社債市場全体のセンチメントが一気に悪化する惧れあり
>>>中国の不動産企業の債務危機を世界の金融市場は決して軽視できない
●米債券市場での『逆イールド』が示唆する「米景気後退」の蓋然性の高まり
>>>米債券市場での将来の景気後退を示唆する『逆イールド』は依然高水準
>>>『逆イールド』幅は今年3月の最大値(▲1.08%)を7月に僅かに更新
>>>その後、一旦縮小のトレンドに入ったと思われたが、拡大と縮小を交互に
繰り返す展開が続いており、一向に解消に向かう気配すらない
⇒既述の「適温経済」シナリオが本当に実現するのなら、近未来の景気後退を示唆
する逆イールドは自ずと解消に向かうはず
⇒しかし、現状ではその『解消へのパス(経路・道筋)』すら展望できない
>>>2年・10年債を含め米国の債券利回りは各々『限界的な水準』にあると判断
>>>将来的に「FRBは“金融緩和(利下げ)”に向け漸進せざるを得ない状況」
>>>株式市場の好調は「米利上げサイクルが終了に近いとの見方」も重大な要因
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>今後の日銀の金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ低下余地はほぼ無く金利の変化としては「上昇」するしかない
(生保など機関投資家が長期投資対象として充分魅力的な水準になるまで)
>>>先月の「YCC修正」により『日本の金利は下げられない』ことが改めて明白に
>>>欧米の利上げが終了すれば、内外金利差は縮小へ向かう(=「円の買戻し」へ)
●【日本】(更なる円安進行には)通貨当局による『円買い介入』の蓋然性が継続
>>>高進するインフレに対し、金融政策面で抜本的な対抗措置(利上げ)を実施できな
かった日本の金融当局にとっては更なる円安の進行は看過し難い事態
>>>昨秋、現在と類似した状況で行われた過去最大規模の円買い介入は145円台から
始まり、その後断続的に徹底して水準を押し下げる強い意志を伴って実施された
>>>現在、日本は「米国の外国為替監視対象国から除外」され、従前よりも市場介入
の自由度・意思決定速度が向上する環境となってきている
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(経常)収支構造の反転(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した内外金利差、今後増加が見込まれる個人による海外証券投資、
更には上記①で明らかになった本邦の「外貨不足」という需給動向
テクニカル分析でも指摘したが、ピークアウト接近の兆しが少しずつ顕現化してきた。
一方、本邦金融当局による市場介入観測が上値を阻む材料として警戒されているものの、
「節目の150円を超えてくるまで実弾介入に踏み切る可能性は乏しく(それまでは口先
介入に留まる)、ドル高・円安の流れを食い止めるには至らない」との見方が依然主流。
ただ、それならば、実弾介入があるまで買い進めばよいはずだが「148円台が壁」になる
理由が全く判らない。
今週はブラックアウト期間に突入しているため、FRB当局者発言は予定されていないが、
9/13に予定されている米8月消費者物価指数を皮切りに、9/14の米8月生産者物価指数・
米8月小売売上高、9/15の米9月NY連銀製造業景況指数・同ミシガン大学消費者信頼感
指数など、重要イベントが目白押しとなっている。
FRB当局者も繰り返すように「今後、FRBの金融政策はデータ次第」となると個人的には
考えているし、前週の金融市場全般の動きは「9月FOMCでの利上げは見送り。その後の
追加利上げもデータ次第」と受け止めたが故の適温経済シナリオの織込みだったはず。
パウエル議長は講演で『曇り空のもとで星を頼りに航海している』と述べ、不確実性が高い現在のファンダメンタルズにおいて、金融政策の舵取りの難しさを強く指摘した。
今、我々はいいとこ取りの「適温経済」という超楽観論に浸る愚を犯すべき時ではなく
『引締め過ぎ』と『引締め不足』の「両方のリスクに備えるべき時」だと考えたい。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに
短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
RADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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