<テクニカル分析判断>
●短・中期:「介入とは思えない急落」の出来に、中期下落サイクルへの転換リスク高まる

■8/31週:「寄付159.99:155.28~160.39終値156.24、前週比▲3.85円の円高)」
●8/31週は前週比▲3.85円と前週の陽線から一転して急落。週央にかけ160円台半ばへの上値模索が見られたものの、根強い押し目買い圧力には(ポイントとしていた)21週MAを連続で上回る(維持できる)だけの力はなく、逆に強力な(戻り)売り圧力によって重要な下値支持線をことごとく下抜けた
●こうした先週の展開によって、「協調介入」懸念(?)を背景とした『強力な戻り売り圧力』が改めて確認された格好
◇ただ、直近2回は僅かだが「昨年4月以降の急落時の下値は着実に切り上がり」を続けており、8/3週の「当面の底打ち」状態はかろうじて維持
◇なお、「上下両圧力の拮抗」によって直近2週連続で1.74円と落ち着きつつあった展開から一転、「週間変動幅は5.11円」と前週までの3倍超へ急拡大
<上掲チャートのポイント(週足):中期時間軸>
<<◎典型的な上昇サイクルパターンである「上値/下値の切り上がり」は4週連続となり、約1か月ぶりに『21週MAの上抜け』を示現。終値でも(5週ぶりに)160円超の水準を回復
◇しかし、『21週MAの上抜け』が定着するかどうかは未確認。我々は「終値で複数回連続」が達成された時に「確認」としている:以上、前回のコメント>>
●⇒2週連続で『21週MA超の水準』の維持に失敗。それどころか、先週の急落で「21週MA/昨年4月からの上昇TL/52週MA」など重要なサポート水準を終値でことごとく下抜け、それまでの「強調地合い」から「軟弱な地合い」へと一気に反転
◇ただし、5週前の急落時にも踏み止まった『21週MA▲2.16%』水準は、(ザラ場では大きく下回ったものの)今回も終値ベースでかろうじて上回った
⇒今週「終値で『21週MA▲2.16%』と『52週MA』の水準を回復(上回る)できるか否か」はテクニカル的に極めて重要
⇒●仮に、2週連続で上記2つの水準を下回った場合は図中の「下落サイクル➊,➋に類似」し「中期トレンド(が円高USD安に)転換」の可能性が高まる

(図は上掲を約4.5年分に拡大したもの)
<<⇒上図が示す通り、上昇トレンドが本格化していた2022年以降で『ひと月以上続いた下落サイクル』は➊~➍の4回(冒頭の➊,➋ → ❸,➍)。ざっくりしたパターンは『下落が始まった水準と底打ちした水準は21週MAを挟んで上下ほぼ同じ乖離幅』・『大きく下げた場合でも底打ちするのは“21週MA▲7.41%”が多い』
⇒今回の場合は(既述の通り)反落に向かった(ピークアウトした)水準が『21週MA+2.16%』とさほど高い水準ではないため、最大でも『21週MA▲2.16%~同▲4.32%(152.85@8/3)』が底打ちの水準だとみていた>>
●実際、これまではかろうじて終値では『21週MA▲2.16%(156.15)』超の水準を維持したものの、ザラ場では一時大幅に下抜けており、再び<「下落サイクル入り」の可能性を完全には排除できない>状況となった
◆既述の通り、今回の『下落(反落)が始まった水準』はさほどの過熱感はなかったと思われるため、現状では最大でも『21週MA▲4.32%(152.55@9/4)』が底打ちの水準だとみている

<チャートのポイント(日足):短期時間軸:既述週足コメントもご参照>
●「当面の底打ち」後、「52日MA」への上値模索前に急落。「昨年4月からの上昇TL/21日MA/200日MA」など重要なサポート水準を終値でことごとく下抜け、それまでの「強調地合い」から「軟弱な地合い」へと一気に反転
◇ただ、終値では『21日MA▲2.16%』の重要なサポート水準を依然上回る
◇また、当面の底打ちが明らかだったオシレーター(RSIやストキャスティクス)も再び軟弱な推移に転じたが、逆に『いつ反発に転じてもおかしくない水準』に達しつつあるともいえる
以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り
●先週は中短期時間軸主導で、主要なサポート水準をことごとく下抜ける急落が顕現化。終値ベースでは、かろうじて「当面の底打ちは見た」可能性を残したものの「地合いの悪化」が大きく進展しつつあることに疑問の余地はない
<⇔>ただし、先週の急落によって短期時間軸でのRSI・ストキャスティクスなどオシレーター系は『いつ反発に転じてもおかしくない水準』に達しつつあるともいえる
■しかしながら、「中短期の上昇モメンタムは、再度大きく棄損(収束)」したため、仮に「底打ち/反発/上昇に転じた」としても上昇(反発)ペースは緩慢となる見込み
◆また、今回の『下落(反落)が始まった水準』はテクニカルな過熱状態にはなかったため、現状では最大でも『21週MA▲4.32%(152.55@9/4)』が底打ちの水準だとみている
◇なお、超長期時間軸(後述:月足)では「USD円相場の地合いは依然として堅調」の範疇にあるものの、オシレーター系にピークアウトの兆候が出始めており先月までの状況とは大きく乖離
◇仮に、GWに行われた日本の通貨当局による大規模介入時の安値(≒155.04円)を下抜けた場合には、中期下落サイクル入りを意識せざるを得ないが、同時に短期的な「下落の過熱」への留意も必要となろう
□以上を踏まえ、引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目
1 158.50円=200日MA
2 157.55円=21週MA▲1.23%
3 ☆ 157.05円=52週MA ☆
4 156.90円=21日MA▲1.23%
5 155.55円=21週MA▲2.46%
6 ☆ 154.95円=21日MA▲2.46% ☆
7 153.60円=21週MA▲3.69%
8 152.55円=21週MA▲4.32%
>>>上記3(上方)と6(下方)が「抜けると加速する」と思われる水準
~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2026/9/4のNY市場終値をベースに実施) ~
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等
短期(1週間~1か月)の方向性:加速する売り圧力には自律調整の可能性

〇上図は既掲(直近12ヶ月分)を16か月分に拡大したもの。解説コメントは既掲をご参照下さい
>>> 想定レンジ=今後1週間:152.55~158.50、今後1ヶ月:151.95~161.40=
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等
中期(1か月~半年程度)の方向性:当面高まる売り圧力をどの水準で止められるか

◆上図は冒頭2枚目(4.5年)と同じ。解説コメントについては既掲をご参照下さい
◇今回の『下落(反落)が始まった水準』はさほどの過熱感はなかったと思われるため、現状では最大でも『21週MA▲4.32%(152.55@9/4)』が底打ちの水準だとみている
>>>今後6か月間の想定レンジ = 153.90~166.80⇒ 150.60~165.30=
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドのモメンタムに翳り

◇かつて「RSIやストキャスティクスが警戒すべき高水準を長期間維持し続けることを可能にした2022年の“強固な地合い”」は徐々に復活しつつあった
◆しかし、USD円相場の地合いは直近2ヶ月で中短期から急速に悪化しており、超長期時間軸における『着実な上昇トレンド』にも翳りが顕在化し始めた
>>> 今後1年間の想定レンジ = 147.75~167.40 ⇒ 147.75~167.40 =
<ファンダメンタルズ分析判断>
□先週の日米金融市場の変化(下表右端):米利上げ観測後退⇔中東情勢緊迫化が綱引き
◇米国:米利上げ観測は後退も中東情勢緊迫化で米金利は若干強含み⇒株価はマチマチ
◇日本:米財務長官演出の円安是正キャンペーンが奏功、長期金利反落&『円独歩高』
◇USD指数:米利上げ観測後退も中東緊迫化⇒原油価格上昇を受け「USD指数は弱保合い」
◇USD円:日銀の利上げ加速を含む円安是正措置への期待で極めて稀な『円独歩高』展開
<スペース>

先週の外国為替市場では、ここ数年めったにお目にかかれなかった『円独歩高』の展開となりました。先週の当欄でもご案内した通り、ウォーシュFRB議長は議長として初めて出席した経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で演説し「インフレ抑制を優先するタカ派の姿勢」をこれまでで最も明確に示唆しました。これ受けて金融市場では「9月FOMCでの利上げ」の織り込みが急速に進展し、USD指数が上昇。USD円も7/31の協調介入時以来となる160円台を回復して越週しました。
そして、先週8/31-9/1の「G20財務相・中央銀行総裁会議 @ Asheville,North Carolina」での発言を皮切りに、ベッセント米財務長官は週を通じて「円安是正」を促す発言を執拗に繰り返します。
ベッセント財務長官は今回、従前のように「日銀に金融正常化(利上げ)の継続を促す」だけでなく、「高市政権の積極財政を含むリフレ政策そのものに(あからさまな)見直し」を迫っています。2025年の財務長官就任以降、米財務省は日本に対し一貫して「健全な金融政策」や「成長とインフレのバランス(≒持続可能な財政政策)」を求めてきましたが、今回は「リフレ政策をやめるべき」と表現を一段と強めてきました。
その背景には「低金利の維持・円安の容認・歳出の拡大を組み合わせる政策」に対する米国サイドの不満があることは間違いないと思われます。したがって、今後は日銀の利上げ(ペース)だけでなく、消費税減税や成長投資、補助金を含む高市政権の財政運営がどこまで米国の要請に沿う形で修正されるかが焦点となってゆくでしょう。
しかし、米国はなぜ、そこまで日本の金融・財政・通貨政策に干渉しようとするのでしょうか?
我々の基本的な認識としては、以下の諸点が複合的に絡み合ったものではないかと考えています。
・「米国は経常赤字国」であるためグローバルに資金調達する必要がある
・G7主要国の長期金利上昇はグローバルにその影響が及ぶ
(日本のタームプレミアム主導の長期金利上昇は米国にも波及し利払い費増加の悪循環に直結)
⇒日本の(悪い)長期金利上昇阻止
(円高促進≒日銀の利上げペースの加速、財政の健全化 → リフレ政策の撤回)
<先週のベッセント財務長官の主な発言要旨>
◎日本政府および日銀が「円高に繋がる措置を講じると“確信”」している
◎「円の著しい過小評価に対処」するための「日本の断固たる“市場対応”および金融政策上の措置」に対して『強く支持』する
◎日本は「利上げに向けた“道筋”」だけではなく「財政のサステナビリティ(維持可能性)」を金融市場に対して『明確に提示』することが重要
◎日本は『リフレ政策』を中止すべき(どストレート❢)
いやいや、それにしても「主権国家」たる日本に対して、あたかも属国がごとき助言(?)・要請(?)・指示(?)の数々。個人的には、ベッセント氏はトランプ政権における数少ない「良識派」だと考えていましたが、これでは「カナダをアメリカの51番目の州に❢」とぶち上げたトランプ氏とそう変わらないような気もしてきました。
さて、週末にUSD円相場関連の質問を頂戴していますので、こちらへの回答をもって今週のweekly reportを締めたいと思います。ご質問は以下の通りです(原文のまま)。
Q:今7月末のような“協調介入”が行われたら、それこそトレンドが明確に変わるぐらいのインパクトがあるのではないかと思います。次に協調介入が行われるとすればどんなタイミングになるでしょう」
A:結論から申し上げますと「1USD=180円・200円といったような超極端な円安相場」でも起こらない限り、いわゆる「“協調介入”は実施されない」のではないかと我々は考えています。
一つ目の理由は、既述の「米国はなぜ、執拗に日本の金融・財政・通貨政策に干渉しようとするのか?」にあると推察しています。
即ち「米国債(USD)の価値を下げたくない(USDを売りたくない)との考え方が根本的な理由」だと考えているのです。
だからこそ、7/31の協調介入の際には「印刷さえすれば無尽蔵にある自国通貨USD」をダイレクトに売らず、「外貨準備のリバランス」と称して保有比率の高い『ユーロを売って』USDを買い、そのUSDを売って『円を買う』というUSDの需給には全く影響のない手法をとったと考えられます。
更に、膨大な米国債を保有する日本に介入の原資として米国債の売却を回避させるために、FIMAレポを通じてUSDを供給する仕組みまで準備しています。端的に言えば「ここまでやってあげたんだから、あとは自国でちゃんとやれよ」との状態になっているのではないでしょうか。
二つ目の理由は「7月の協調介入が日米以外の主要国との事前協議/調整を経ていなかった」と思われること。この件については、8/24付のweekly reportで次のように頭出しをしていました。
<<特に「今後のUSD円相場に影響を及ぼし得る」と考えるポイントが「☆」をつけたものです。
中でも、以下2つは特に重要視しています。
Ⅰ) 8/27~29:☆「ジャクソン・ホール会議(経済シンポジウム)」
Ⅱ) 8/31~9/1:☆「G20財務相・中央銀行総裁会議 @ Asheville,North Carolina」
先月末に「日米協調介入が(米国はユーロ円で)実施された」こともあり、日米のみならず、欧州やその他の主要国を含め「自国の通貨政策」に関する情報発信が行われる可能性もあり、留意が必要だと考えているからです>>
実際には<「自国の通貨政策」に関する情報発信>は行われませんでしたが、「ECB政策委員会のメンバー」であり「ドイツ連銀総裁」でもあるナーゲル総裁が会見で以下の趣旨の発言をしています。
◎7/31の日米協調介入については、今回のG20で問題提起され、率直に議論された
●例え日米だけで実施したのだとしても“協調介入”だと銘打つのであれば『グローバルな事前協議や調整が行われることが慣例』であり、それが望ましい
〇「この事前調整の欠如を、ユーロ通貨圏だけでなく欧州の通貨当局者が不快に感じた理由を参加者の大半が理解/共有した」。その点は前向きに評価できる。
●仮に、再度そのような措置が取られる場合は『必ず事前調整が行われる』ことを期待している
以上、「今回の日米協調介入はグローバルには芳しくない評価だった」ことが分かります。
従って、次回改めて協調介入が行われる場合には事前にある程度の時間をかけた多国間の調整が必要であり、今回のようなクロス円ではなく「USD円ダイレクトでやれ」との意見が多数派となる可能性があります。一つ目の理由から、本音では「USDを売りたくない(価値を落としたくない)」米国が改めて協調介入に踏み切るにはかなりの抵抗があるのではないでしょうか。
前半のテクニカル分析でもお伝えしましたが、これまでの円安トレンドに転機が訪れる可能性が高まりつつあります。ファンダメンタルズ要因としては、既述した「日銀の利上げペースの加速」や、米国のインフレ推移を受けて「FOMCが9月の会合で利上げできる環境」が整うかどうかを見極めるステージとなるのが今週。特に日米ともに発表される物価統計が注目されることになるでしょう。
9月に入り、朝晩には秋の気配も感じられるようになってきました。また、11月の米中間選挙までは2か月を切ってきています。過去最低を更新し続ける支持率の回復に躍起となっている米トランプ政権。しかし、年明け以降の「力による安定」をアピールしたい政権の(目に余るほどの“唯我独尊”的な)政策に対する透明性や評価はますます悪化しているように思われます。これに伴って、金融市場全体のボラティリティは一段と高まりこそすれ、落ち着き・低下することは想定しづらい状況です。
結局、こんな状況だからこそ (いつも申し上げているとおり)今後も「過度に予断を持たず変化の兆しを見落とさぬ姿勢」を貫き、金融資本市場全体を引き続き注視してゆかねばならないと考えています。
お知らせ➀:今週はご紹介できませんでしたが、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMユーザーの方々はサイト内で是非ご参照下さい。
お知らせ②:トレーダムでは「5月22日、ステーブルコインを活用したクロスボーダー決済サービス『トレーダム ペイメント』の提供を開始」しました。日経新聞を始め多様なメディアに取り上げられておりますので、是非ご一読ください。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB251ET0V20C26A5000000/?n_cid=dsapp_share_ios
2026/9/7
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