Weekly Report (08/17) 戻り売り圧力は引き続き強力だが「上昇モメンタムの回復」も徐々に進展中
吉岡 豪麿
この記事の著者
トレーダム 取締役CAO

国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

マーケット分析

<テクニカル分析判断>

●短・中期:「上昇モメンタム」は回復が鮮明な一方、一気の21週MA突破には至らず

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□8/10週:「寄付157.68:157.52~159.56終値159.30、前週比+1.53円の円安)」

〇8/10週は「日米協調市場介入」による暴落から底打ち/自律反発に転じた前週の流れが継続し、前週比+1.53円と2週連続の陽線を形成

〇また、前週は強い上値抵抗となっていた昨年4月以降の「上昇トレンドライン(TL)」を突破。更に、終値でもこの水準超を維持しており「一旦収束していた『上昇モメンタム』の回復が徐々に進展している」ことを確認

●ただし、次の難関(強力な上値抵抗線)と考えられる21週MAを一気に超えることは出来ず「協調介入」懸念を背景とした強力な戻り売り圧力も観測

◇なお、「週間変動幅は2.04円」と急落から底打ち/自律反発に転じた前8/3週の同3.36円から縮小(約40%減)したものの、割と標準的な変動幅を維持

<上掲チャートのポイント(週足):中期時間軸>

◎前週、次の下値支持ポイントとして挙げていた『21週MA▲2.16%(156.25)』・『52週MA(156.00)』を一時的に下回ったものの、以下の通り「底打ちパターン」形成の展開

Ⅰ. 終値は底値から大幅に水準を回復し「長い下ヒゲを持つ“差し込み線”」の足型

Ⅱ. 終値は上記2つのポイントを大幅に上回っており、この両下値支持線は改めて当面のサポートとして機能する模様

〇先週も、この「底打ち/反騰」の流れが継続し(強い上値抵抗となっていた)昨年4月以降の「上昇TL」を突破。更に、終値でもこの水準超を維持しており「一旦収束していた『上昇モメンタム』が徐々に回復」を確認

●一方、次の難関(強力な上値抵抗線)と考えられる21週MAを一気に超えることは出来ず「協調介入」懸念を背景とした強力な戻り売り圧力も観測

⇒RSIに底打ちの兆候あるも「3週連続で『21週MA』未満」の状態が継続

⇒この状態は「下落サイクル➊,➋に類似」の懸念あり < ⇔ > 下図参照

週足チャート

(図は上掲を約4.3年分に拡大したもの)

⇒上図が示す通り、上昇トレンドが本格化していた2022年以降で『ひと月以上続いた下落サイクル』は➊~➍の4回(冒頭の➊,➋ → ❸,➍)。ざっくりしたパターンは『下落が始まった水準と底打ちした水準は21週MAを挟んで上下ほぼ同じ乖離幅』・『大きく下げた場合でも底打ちするのは“21週MA▲7.41%”が多い』

⇒今回の場合は(既述の通り)反落に向かった(ピークアウトした)水準が『21週MA+2.16%』とさほど高い水準ではないため、最大でも『21週MA▲2.16%~同▲4.32%(152.85@8/3)』が底打ちの水準だとみていた

◎実際、既述の通り8/3週に終値で『21週MA▲2.16%(156.25)』・『52週MA(156.00)』超の水準を維持した

●ただし、状況的には「下落サイクル入り」の可能性を完全には排除できず

週足チャート

<チャートのポイント(日足):短期時間軸:既述週足コメントもご参照>

前週強い下値支持線と認識していた1)『21日/52日のMA』2)『昨年4月下旬から15か月続く緩やかな上昇TL』だけでなく、約1年のトレンドを示唆する3)『200日MA』をも終値でことごとく下抜けたため、逆にこれらは当面上値抵抗として機能>と指摘

しかし、底打ち/反発の流れは想定より強く<RSI・ストキャスティクスなどオシレーター系は既に「当面の(短期的な)底打ち/自律反発」が明確>となっており、先週5日間全て終値で上抜けていた3),2)は再び下値支持線に転じたと考えられる

ただし、明らかに下落に転じてきた「21日MA」と高止まり気味の「52日MA」がデッドクロス(D.C.)した上に、「先週の上値が連日159円台半ばに止まる」など「戻り売り圧力の継続」もまた明らかになりつつある

◇短期時間軸では「当面、『200日MA(≒158.40)』 ~ 『21日MA(≒160.05)』での保合い」となる可能性が高いと見ている

以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

〇短期時間軸主導で底打ち/反発の流れは想定より強く、RSI・ストキャスティクスなどオシレーター系は既に「当面の底打ち/自律反発」が明確

〇週足でも「底打ちパターン」形成の展開となり「ボトムアウト」の蓋然性は高い

●ただし、現在は復活の途上にあるとはいえ(7/27週の急落により)「中短期の上昇モメンタムは、一旦大きく棄損(収束)」したため、「底打ち/反発/上昇に転じている」としても今後の上昇ペースは緩慢となる見込み

◇イメージとしては、「160~165円を中心とした緩やかな上昇相場」から「当面、157~161円での強含み保合いの展開へ移行」を想定

◇なお、超長期時間軸(後述:月足)では「USD円相場の地合いは依然として堅固」であるため、中短期での調整局面を(時間・価格の両面で)比較的軽微に凌ぐことができれば、徐々に「全ての時間軸での強調地合い」復活を展望することもできよう

◎短期的な自律調整を交えつつも「長期的な円安/USD高トレンドは依然維持されている」との大局観を引き続き堅持したい

□以上を踏まえ、引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目

1 161.70円=21週MA+2.16%

2 161.00円=52日MA

3 ☆ 160.45円=21日MA ☆

4 159.75円=21週MA

5 158.40円=200日MA

6 ☆ 157.80円=21週MA▲1.23% ☆

7 157.00円=21日MA▲2.16%

8 156.45円=52週MA

>>>上記3(上方)6(下方)「抜けると加速する」と思われる水準

~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2026/8/14のNY市場終値をベースに実施) ~

<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>

➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等 

短期(1週間~1か月)の方向性:当面の底打ち確認、21日MAへの上値模索なるか

日足チャート

上図は既掲(直近12ヶ月分)を16か月分に拡大したもの。解説コメントは既掲をご参照下さい

>>> 想定レンジ=今後1週間:157.80~160.45、今後1ヶ月:152.85~162.45=

➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等

中期(1か月~半年程度)の方向性:底打ちはほぼ確認、当面「強含み保合い」へ

週足チャート

上図は冒頭2枚目(4年強)と同じ。解説コメントについては既掲をご参照下さい

□復活途上の「上昇モメンタム」と「下落サイクル入りの可能性」が対峙

>>>今後6か月間の想定レンジ = 150.90~162.75⇒ 151.80~164.70=

➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記

長期(半年超~1年程度)の方向性:若干のペースダウンも超長期上昇トレンドは着実に進展

月足チャート

◇かつて「RSIやストキャスティクスが警戒すべき高水準を長期間維持し続けることを可能にした2022年の“強固な地合い”」が徐々に復活しつつある

=>『秩序ある上昇の体』は依然維持されており、最終的に『上昇サイクルは依然として存続(上方向)』を確認する蓋然性が高いと認識

□中短期にはやや翳りあるも、超長期時間軸では『着実な上昇トレンド』を堅持

>>> 今後1年間の想定レンジ = 147.75~167.40 ⇒ 147.75~167.40 =

<ファンダメンタルズ分析判断>

□先週の日米金融市場の変化(下表右端):米景気指標不芳⇒利上げ観測が大きく後退

◇米国:景気指標が概ね不芳で9月利上げ観測が後退⇒株価は再び最高値圏で堅調推移

◇日本:「円安是正には利上げ継続」が意識され市場金利は上昇も株価は回復基調継続

◇USD指数:米景気指標が概ね不芳で9月利上げ観測が後退⇒金利低下からUSD指数軟調

◇USD円:早期利上げ観測から市場金利上昇/USD指数軟調も、USD円は反発地合いを継続

<スペース>

weeklyreport 20260817 07 1

今週から上の表に「USD指数」を追加しています。

これまでも、介入の有無に関係なく「基軸通貨USDの方向性が『USD円相場』に与える影響は大」とお伝えしてきましたが、ザックリ言えば「USD指数は2025年初に110でピークアウト後、25年6月と26年2月に97でWボトムを形成。その後はやや持ち直すも100前後で保合っており相対的に主要通貨内では弱い部類」です。したがって、7月下旬に付けた1USD=163.98円は「円安の評価そのもの」といえるでしょう。

さて、前半のテクニカル分析では<<想定より早期の「底打ち」をほぼ確認。ただし、(協調)介入想定の戻り売り圧力は簡単には沈静化しないため、イメージとしては「160~165円を中心とした緩やかな上昇相場」から「当面、157~161円での強含み保合いの展開へ移行」を想定>>と結論付けました。

以下はそのポイントです。

<< 〇短期時間軸主導で底打ち/反発の流れは想定より強く、RSI・ストキャスティクスなどオシレーター系は既に「当面の底打ち/自律反発」が明確

〇週足でも「底打ちパターン」形成の展開となり「ボトムアウト」の蓋然性は高い

●ただし、現在は復活の途上にあるとはいえ(7/27週の急落により)「中短期の上昇モメンタムは、一旦大きく棄損(収束)」したため、「底打ち/反発/上昇に転じている」としても今後の上昇ペースは緩慢となる見込み >>

<< ◇なお、超長期時間軸では「USD円相場の地合いは依然として堅固」であるため、中短期での調整局面を(時間・価格の両面で)比較的軽微に凌ぐことができれば、徐々に「全ての時間軸での強調地合い」復活を展望することもできよう

◎短期的な自律調整を交えつつも「長期的な円安/USD高トレンドは依然維持されている」との大局観を引き続き堅持したい >>

では、今週も為替相場について次のような趣旨のご質問を頂戴しましたので、後半はこの回答を中心に進めてゆきたいと思います。

<< 先週は以下のような「USD安/円高の要因(材料)が目白押し」だったのに何故円高にならなかったのか? >>

Ⅰ) 日米協調介入をフォローする「日米財務省首脳らによる前向きな発言」

Ⅱ) 軒並み事前予想を下回った「米国の最新主要経済指標」

Ⅲ) 「日銀による利上げペースの加速」観測の高まり

まずは、Ⅰ)について。「日米“協調”介入」という個人的に想定外だったオペレーションについては8/3付weekly reportでも反省点を含めて詳述しましたので今回は割愛しますが、7/31の協調介入前後には質問にもあったように特に米政権から以下のような発言がありました。

●(依頼されたので)「友情の証として実施した」(トランプ大統領)

●「日本の円は著しく過小評価されている」(ベッセント財務長官)

●「円の著しい過小評価を是正するために、日本の金融市場対応や金融政策面での“断固たる措置”を強く支持する」(ベッセント財務長官)

●「我々は“更なる協調介入”を躊躇わない」(ベッセント財務長官)

7/31の実際の介入をモニター越しに見ていましたが『断続的かつ追撃的な浴びせ売り』は見事であり、少なくとも『円安是正』に向けた意気込みは伝わりました。

既述の通り、USD指数は決して堅調とは言えない状況下であり、後述するⅡ),Ⅲ)も円優位に働きやすいと考えられるため、(個人的には)「159円台では追加的な協調介入」が入るのではと考えていました。

しかし、追加介入を催促するかのような「上値模索」が続く中でもついに先週は協調介入が実施されることはありませんでした。もちろん「先週見られなかったから今週も」と予断を持つことはできませんが「今回ダイレクトにUSD売り/円買い介入ではなく、EUR売り/円買い介入を選択したか」の意味を考えることは重要だと思われます。

個人的には、金融市場をよく知りポンド危機を自ら演出したベッセント氏は「介入は本質的に『スムージングオペレーション』であり、市場の過度な変動を抑制するもの」・「あくまでも行き過ぎた相場状況への『対症療法』に過ぎず、介入自体で主体的に相場の方向性変えることは難しい」と考えておられたはずだと考えています。

従って、「円安是正」の根本的な対応は、時の経済状況に応じた「適切な金融・財政政策」がとられることであり、円の最大の弱点である「マイナスの実質金利」解消に向けた金融政策や真に責任ある積極財政政策が展開され、構造的な外貨不足の緩和・解消に向けた対応が進展することだと(これまでと同様に)注文をつけられたのではないかと推察されます。

次に、Ⅱ)について。事前予想を大きく下回った8/7の雇用統計を始め、先週発表された米国の主要経済指標は軒並み事前予想を下回る芳しくないものとなりました。

米7月CPIは前年同月比で2カ月連続の鈍化となり、米7月PPIも前年比で4カ月ぶりの低水準に低迷しました。米7月小売売上高についてはプライムデーの6月前倒しとなった無店舗が弱含みとなった特殊要因が押し下げたものの、自動車・ガソリンもそれぞれ押し下げ要因となりました。

こうした一連の結果発表を受け、FF先物市場における「9月の利上げ織り込みは33%に低下」しました。しかし「コアCPIが高止まりしていたこと」と「(和平合意が全く展望できない)イラン情勢緊迫化」によって『年内利上げ観測は依然根強い』状況です。12月までの利上げ確率は先週末8/14時点で64%と高水準にあり「有事のドル買い」もUSD円の下値を支えているといえます。このため、Ⅱ)からの金利低下圧力は現状では大きくUSD安(円高)を牽引するまでには至っていません。

最後に、Ⅲ)について。「日銀による利上げペースの加速」観測の高まりは先週1週間でかなり進展した観があります。具体的には、日銀の9月利上げ観測が強まっています。7月の日銀金融政策決定会合後の会見で、植田総裁が「金融環境が緩和的過ぎるなら、利上げのペースを速める可能性あり」とかなりタカ派トーンを強めた発言をされました。

さらに、主な意見でも「金融緩和度合いの調整をペースアップする必要」が指摘され、明確に利上げペースの加速が示唆されました。加えて、8/13にはブルームバーグが「日銀が9月か10月の利上げを視野に入れ、日米協調介入の効果を維持する観点から政府も早期利上げを支持している」と報道しました。また翌8/14には、ロイターが「日銀は早ければ9/17~18の金融政策決定会合で利上げし、その後は従来の年2回程度より速いペースとなる可能性がある」と伝えました。この結果、市場では9月利上げ確率が一時8割近くまで上昇し「これ以上の円安を抑止し、トレンド反転の牽引役となり得る」との期待も高まりました。

しかしながら、現実としては「根強い押し目買い圧力」によって159円台の定着/160円台模索のステージへ移行しようとする可能性さえ感じられます。これは、以前から指摘しているように「中央銀行(日銀)の独立性に対する懸念」がその背景にあると思われます。即ち既述した「ベッセント氏が熱望する『時の経済状況に応じた金融政策』(現在の日本では「円の最大の弱点である『マイナスの実質金利解消』に向けた金融正常化=利上げ」)が、高市政権下の目指す金融財政政策とうまくマッチしないということ。

城内経財相は「積極財政が円高要因になる」と主張していますが、機械受注残の供給制約や物価対策のガソリン税減税の効果を見ますと、政府の説明は市場に額面通り受け取られていないようです。これは、円安のプラス面を重視する経済ブレーンの影響が高市政権内に根強く、利上げに消極的な空気も滲んでいるからだと思われます。今回の協調介入を評価されていた古澤元財務官が「介入だけでなく日銀のスピードを伴った利上げ経路が必要」と指摘されていたことも非常に印象的でした。

こうして見てくると、一頃に比べれば「構造的な円安要因」ばかりが目立つ状況ではなくなってきたように感じます。先週も指摘したように、相対的堅調を維持していると思われる米景気についても昨今「静かに(徐々に・緩慢に)鈍化」の兆候も増えてきました。その点では、全ての金融市場の現在のトレンドをもう一度ゼロベースで検証し直して「トレンド反転の兆候をより注意深く探求してゆく必要」があるのかもしれません。

結局、こんな状況だからこそ (いつも申し上げているとおり)今後も「過度に予断を持たず変化の兆しを見落とさぬ姿勢」を貫き、金融資本市場全体を引き続き注視してゆかねばならないと考えています。

お知らせ➀:今週はご紹介できませんでしたが、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。

TRADOMユーザーの方々はサイト内で是非ご参照下さい。

お知らせ②:トレーダムでは「5月22日、ステーブルコインを活用したクロスボーダー決済サービス『トレーダム ペイメント』の提供を開始」しました。日経新聞を始め多様なメディアに取り上げられておりますので、是非ご一読ください。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB251ET0V20C26A5000000/?n_cid=dsapp_share_ios

2026/8/17

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