Weekly Report (07/13) 2022年に次ぐ強調地合いは継続も、短期的な上昇モメンタムにはやや翳り
吉岡 豪麿
この記事の著者
トレーダム 取締役CAO

国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

マーケット分析

<テクニカル分析判断>

●短・中期:163円を前に 2度示現した反落が再度[一時的なものに止まるか]を見極めへ

weeklyreport 20260713 01

■6/29週:「寄付161.76:160.50~162.84終値161.37、前週比▲0.36円の円高)」

◇6/29週は「週間変動幅が2.34円」と前週の0.87円から大幅に拡大。また、6/30に2024/7の高値161.94を日足終値で初めて突破すると、翌7/1には162.84まで急伸

◆しかし、RSIが77を超えるなど短期的には「上昇の過熱」が目立ち、根強い戻り売り圧力と相まって急反落に転じ、2022/7以来の7週連続で連騰が終息

しかし、1年を通じて本格的な上昇相場だった2022年以来初の「7週連続陽線」や、日足でも「6/25まで2022年9月以来の10日連騰を記録」したことと併せ「着実な上昇圧力の増勢」は確認

また、一時的な急落は見たものの「日足の終値では21日MA超の水準を維持」しており、根強い押し目買い圧力に支えられた「堅固な地合い」も改めて示唆された

□7/6週:「寄付161.25:161.25~162.70終値161.67、前週比+0.30円の円安)」

◇7/6週は「週間変動幅が1.45円」と約40年ぶりの162円台を付けた前週の2.34円から縮小

また、既述の通り「日足の終値では21日MA超の水準を維持」しており、根強い押し目買い圧力に支えられた「堅固な地合い」も改めて示唆されたことから、週央には再び162円台後半へ上昇

◆しかし、週末にかけては前週同様に強烈な戻り売り圧力が再び活発化し急反落に転じ、「短期的な上昇モメンタムに翳り」が出始めていることを印象付けた

それでも、一時的な急落は見られたものの「日足の終値では(上昇を続ける)21日MA超の水準を維持」しており、根強い押し目買い圧力に支えられた中長期的な「堅固な地合い」も改めて示唆された

◆162円台という新たなステージに入っても余勢をかった急伸は続かず、逆に「強力な戻り売り圧力」が改めて確認されている。当面、押し目買い/戻り売りの両圧力が再び拮抗し膠着感が強まる可能性がある

<上掲チャートのポイント(週足):中期時間軸>

◇5/4週の「下ヒゲ長めの小“陰線”(4)が底打ちを示唆」した

◎「下ヒゲ長めの小“陰線”」ではあるものの、「(D)からの緩やかな上昇トレンドライン(サポートライン)付近での底打ち」は中長期上昇トレンドの存続を示唆

◎『根強い押し目買い圧力』ならびに『昨年4月から1年超続く緩やかな上昇TL』は依然として堅固であり、今後も相当強力なサポートラインとして機能する可能性が高い

既述の通り、(4)で底打ち後に大きく反発。一気に21週MAを大幅に上回った5/10週以降は「下値/上値を共に切上げる典型的な上昇サイクル」の軌道を描き(伸び悩んだ前週の上ヒゲ部分を完全に埋める格好で)7週続伸

⇒「7週連続陽線」は2022年10月中旬以降では初の事象であり、2023年以降は全く観測されていなかった(下図ご参照)

週足チャート

⇒上図が示す通り、2022年は「9週連続陽線×2回」や「7週連続陽線」など“USD高円安が明確に加速”した年

⇒今回の「7週連騰」は7週中5週目が“僅かな陽線”であり、“明確”とは言えないまでも2022年のような「力強い上昇が再来する可能性」を示唆

◎RSI・ストキャスティクスは共に警戒水準に接近しているものの、堅固さを増幅した地合いによって「両指数が高位持続(高止まり)のフェーズに入りつつあり、共に更なる上昇の可能性を排除せず

ただし、ほぼ40年ぶりとなる163円超への“急速な”上昇は、上記指数の警戒水準接近と相まって自律調整的な反落にも要注意の局面へ

=>実際「GW介入後の上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、一方で「21週MA+2.16%」の水準を終値で超えられない(頭を押さえられている)状況が続いている

⇒『(介入など)戻り売り圧力』の高まりも予想され、両圧力の拮抗により再び『保合い(膠着)』となる可能性もまた排除できない

週足チャート

<チャートのポイント(日足):短期時間軸:既述週足コメントもご参照>

<1枚目>

◇「GW介入→底打ち→反発」後は『連騰』がかなり目立ち、ここ2か月超については連続はおろか「陰線自体がほとんど見られない」状況だった

⇒そして、6/25まで「連騰は10にまで延伸」。これは「一段と堅固になった“USD円相場の地合い(基調)”」を強調していた

◆ただし、直近2週は「週後半に急落」の展開が続き、先週末にはついに4月下旬以来の連続陰線が出来。少なくとも、短期的な上昇モメンタムの減退(翳り)は否めない

それでも、一時的な急落は見られたものの「日足の終値では(上昇を続ける)21日MA超の水準を維持」しており、根強い押し目買い圧力に支えられた中長期的な「堅固な地合い」が改めて示唆される

日足チャート

<2枚目>

◇「7日連続陽線」は2024年6月以来約2年ぶり、「10日連続陽線」は実に2022年10月以来の続伸

◇7日以上の連続陽線は‘22年~’24年に集中的に見られ、特に上昇トレンドの加速が鮮明だった‘22年には10連騰以上の力強い上昇が複数回見られた(図中⑤⑥)

●ただし、同期間において「長い連騰の後には(急)反落するケースも少なくない」ため、この「反動」には相応の警戒が必要

以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

◎『根強い押し目買い圧力』ならびに『昨年4月から1年超続く緩やかな上昇TL』は依然として堅固であり、今後も相当強力なサポートラインとして機能する可能性が高い

◎『6/12~6/25の“日足での10連騰”』ならびに『2022年10月以来となる“週足での7連騰”』は、足もとでの「着実な上昇圧力の増勢」を示唆

◎RSI・ストキャスティクスは共に警戒水準に接近しているものの、堅固さを増幅した地合いによって「両指数が高位持続(高止まり)のフェーズに入りつつあり、共に更なる上昇の可能性を排除せず

ただし、ほぼ40年ぶりとなる163円超への“急速な”上昇は、上記指数の警戒水準接近と相まって自律調整的な反落にも要注意の局面へ

=>実際「GW介入後の上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、一方で「21週MA+2.16%」の水準を終値で超えられない(頭を押さえられている)状況が続いている

⇒『(介入など)戻り売り圧力』の高まりも予想され、両圧力の拮抗により再び『保合い(膠着)』となる可能性もまた排除できない

=>今週は、163円を前に 2度示現した反落が再度「一時的なものに止まるか」を見極める展開

◇それでも、超長期時間軸(後述月足)では「USD円相場の地合いは極めて堅固」であるため、既に162円を超えた今後も「163円台トライへ進展」する可能性は依然として低くはないとみている

◎短期的な自律調整を交えつつも「中長期的な円安/USD高トレンドは着実に進展」しているとの認識を引き続き堅持したい

□以上を踏まえ、引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目

1 164.40円=21週MA+3.09%

2 163.40円=21週MA+2.46%

3 ☆162.90円=21週MA+2.16%☆

4 162.45円=21週MA+1.86%

5 161.40円=21週MA+1.23%

6 160.60円=21週MA+0.69%

7 ☆160.10円=52日MA☆

8 159.50円=21週MA

>>>上記3(上方)7(下方)「抜けると加速する」と思われる水準

~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2026/7/10のNY市場終値をベースに実施) ~

<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>

➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等 

短期(1週間~1か月)の方向性:「ダブルトップ」or「ダブルボトム」

日足チャート

上図は既掲(直近10ヶ月分)を直近15ヶ月分に拡大。解説コメントについては既掲をご参照下さい

◇「GW介入→底打ち→反発」後は『連騰』がかなり目立ち、ここ2か月超については連続はおろか「陰線自体がほとんど見られない」状況だった

⇒そして、6/25まで「連騰は10にまで延伸」。これは「一段と堅固になった“USD円相場の地合い(基調)”」を強調していた

◆ただし、直近2週は「週後半に急落」の展開が続き、先週末にはついに4月下旬以来の連続陰線が出来。少なくとも、短期的な上昇モメンタムの減退(翳り)は否めない

それでも、一時的な急落は見られたものの「日足の終値では(上昇を続ける)21日MA超の水準を維持」しており、根強い押し目買い圧力に支えられた中長期的な「堅固な地合い」が改めて示唆される

>>> 想定レンジ=今週:160.10~164.40、今後1ヶ月:157.50~166.20=

➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等

中期(1か月~半年程度)の方向性:自律調整を交えつつ、堅固な地合いから上値模索へ

週足チャート

上図は冒頭2枚目掲載分(4年強)と同じ。解説コメントについては既掲をご参照下さい

⇒上図が示す通り、2022年は「9週連続陽線×2回」や「7週連続陽線」など“USD高円安が明確に加速”した年

⇒今回の「7週連騰」は7週中5週目が“僅かな陽線”であり、“明確”とは言えないまでも2022年のような「力強い上昇が再来する可能性」を示唆

◎RSI・ストキャスティクスは共に警戒水準に接近しているものの、堅固さを増幅した地合いによって「両指数が高位持続(高止まり)のフェーズに入りつつあり、共に更なる上昇の可能性を排除せず

ただし、ほぼ40年ぶりとなる163円超への“急速な”上昇は、上記指数の警戒水準接近と相まって自律調整的な反落にも要注意の局面へ

=>実際「GW介入後の上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、一方で「21週MA+2.16%」の水準を終値で超えられない(頭を押さえられている)状況が続いている

⇒『(介入など)戻り売り圧力』の高まりも予想され、両圧力の拮抗により再び『保合い(膠着)』となる可能性もまた排除できない

>>>今後6か月間の想定レンジ = 153.60~167.40⇒ 155.10~168.30=

➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記

長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドは極めて着実に進展中

月足チャート

◇上値抵抗線として機能していた2024年夏以降の下降トレンドライン(TL)突破が示現後、このTLは下値支持線に転化し、その後も月内での『重要な底打ち/反発水準』としての機能を継続

◇かつて「RSIやストキャスティクスが警戒すべき高水準を長期間維持し続けることを可能にした2022年の“強固な地合い”」が徐々に復活しつつある

=>『秩序ある上昇の体』は依然維持されており、最終的に『上昇サイクルは依然として存続(上方向)』を確認する可能性が高いと認識

□超長期時間軸では『着実な上昇トレンド』が堅持されている

>>> 今後1年間の想定レンジ = 147.30~170.40 ⇒ 147.30~170.40 =

<ファンダメンタルズ分析判断>

□先週の日米金融市場の変化(下表右端):和平合意ご破算⇒有事のUSD買いやや盛り返し
◇米国:米・イランの和平合意ほぼ消滅⇒原油・金利は反発も半導体関連除き株価は反発
◇日本:上記に加え、リスクプレミアム上昇に伴い一時長期金利が急上昇、株価は反落
◇USD円:「イランとの紛争激化」からUSD指数/USD円は共に緩やかに水準切り上げ続く

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いきなりで恐縮ですが、まずはお知らせから。

先週も休載とさせていただきましたが、この7月は、昨年10月に合併した新しい企業年金基金運営(最初の決算代議員会など)に関連するイベントが多く、「休載」もしくは「テクニカル分析(一部にご希望のある「サポート/レジスタンスのテクニカルポイント)」のみでのレポートが多くなりそうです。予めご了承頂きたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

さて、今週も為替関連よりも圧倒的に質問が多かった「株式市場関連」の話題から私見を述べさせて頂きます。6/15付の当weekly reportで以下のようなQ&Aを行っていました。

<<今週末も変動率の激しい日米株に関する質問が多かったです。特に「今の相場は半導体・AIバブルか?」というもの。

この問いに対して、かつてのバブル相場を経験したものとしては『似て非なるもの』というのが率直な感想です。かつてのバブル相場も➀物色対象に極端な偏り、➁上昇のスピードが異常に早いなどの点は非常によく似ています。

ただ、決定的に異なるのはヴァリュエーションであり「かつてはPER100倍などがザラ」にありましたが、現在は高めだとは思われるものの「異常な高PER」とまでは言えないと思います。
故に現在のAI/半導体関連株主導の上昇相場はバブルだとは認識していませんが「過熱感は相応にある」と考えていますので、時期こそ限定できませんがある程度の調整局面は必ずやってくるのではないかと考えています。>6/15付weekly report>

本件に関する我々の認識はほとんど変わっておらず、上記「6/15付weekly report」の考え方のベースは、同様に「株式に関するQ&A(4/27付weekly report)」にてご案内していました。

<<やはり「日米の半導体関連株を中心に株式市場はすこぶる活況だがどこまで上昇するのか?」といった趣旨のご質問が圧倒的でしたのでこれについて個人的な意見をお伝えします

ここ数週、米国とイランの恒久的停戦合意が近いとの期待の高まりから、株式市場が暴騰に近い上昇をみせています。SOX指数の17日連騰という驚異的な続伸とともにナスダック総合指数はこのところ連日の最高値更新に沸いています。その他、主要株価指数の中では、台湾加権指数、S&P500指数、日経平均株価なども、最高値更新ラッシュの渦中にあります。
この動きの牽引役は、ご案内の通りいずれも半導体関連株です。先日発表された世界半導体市場統計(WSTS)の2月の世界半導体売上が「前年比+86.1%の驚異的な伸び」となるなど、AI投資拡大に伴う半導体需要の強さが改めて示されましたが、これによって、関連銘柄への物色に弾みが付いたものとみられます。まさに有卦に入っている状況と言えるでしょう。

ただし、中長期的なポートフォリオの一環として株式を捉えている我々としては「➊物色対象の極端な偏り」・「➋上昇速度」(「➌ヴァリュエーション」)に強烈な過熱とリスクを感じており、➊➋に着目すれば、当面は「更なる上昇余地」よりも「自律調整による反落」の可能性が高まっていると判断しています。
特に、5万円をつけてから半年たらずで6万円の大台に到達した日経平均株価は➊~➌の諸点もさることながら、我々機関投資家が日本株のベンチマークとして位置付けているTOPIXとの(パフォーマンス)乖離が歴史的水準にまで拡大。TOPIXは2月に記録した最高値からまだ5%超劣後(先週末時点)しており、最高値更新中の日経平均との所謂「NT倍率(日経平均/TOPIX)」はまさに歴史的水準にまで拡大しているのです。

こうした視座で考えれば、今後、TOPIXを含む株価が上値を追う展開となるためには『半導体やテクノロジー以外の業種・銘柄に物色対象が拡がることが必要』となるでしょう。また、そうした状況が実現するためには(当然のことながら)ホルムズ海峡の航行正常化(実質的封鎖の解除)が焦点になると考えています。

上記のように「ホルムズ海峡の航行正常化(実質的封鎖の解除)」は日本を含むグローバル経済にとって喫緊の課題だといえますが、現在の米国とイランの主張の隔たりを考慮すれば、残念ながら早期の完全決着は望みがたいと考えます。>4/27付weekly report>

そして、上記に挙げた『半導体やテクノロジー以外の業種・銘柄に物色対象が拡大』し始めています。直近3週を振り返ると、米・イランの暫定合意に基づきホルムズ海峡の航行正常化が進み、WTI原油先物価格は一時2月末の開戦以前の低水準となる1バレル=68ドル台まで下落しました。これを受けた株式市場では、それまでイラン情勢緊迫化のもとで集中的に買われてきたAI・半導体関連株から、出遅れ感が強いヘルスケア・不動産・公益などに資金シフトが起きました。その結果、ナスダック総合・韓国総合指数・台湾加権・日経平均株価など、AI・半導体関連株の比率が高い株価指数が大幅安となる一方、同比率が高くはないFT100指数・NYダウは小幅安~プラスに収まっています。(7/10現在)

AI・半導体関連株の上昇があまりにも急ピッチだったことで過熱感が相当高まっていただけに、これはグローバル株式市場全体の持続的上昇という観点からは、望ましい物色の循環(健全なセクターローテーション)だと考えられます。

振り返れば、2024年に本格化し始めたAI相場が継続する可能性が高いと思われる中、これまでにも何度かこのようなAI関連株の小休止とセクターローテーションが起きていました。
しかし、5月頃までは、FRBの次の一手は「利下げ」との安心感が「幕間つなぎ(ローテーション)相場(≒AI以外の業種が主役)」を支えたのに対し、現在は年内「利上げ」との真逆の見方が有力となっています。したがって、足元の原油安の流れが反転する、或いは米・イラン戦争の激化に伴うインフレ懸念によって金利の上昇が顕現化した場合には、株式相場全体が調整局面入りしやすい状況にあるという点には留意が必要だと思われます。

さて、話題をUSD円相場に移しましょう。
USD円が1986年12月以来の高値をつけ「円安是正論」が高まるなか、片山財務相が週末7/10にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による国内投資を後押しすると発言し、円高・株高・債券高(金利低下)のトリプル高を演出しました。しかし、翌7/11には日経新聞が「GPIFがオルタナ投資を拡大方針」と報じるなど、国内投資がどうなるかは全く不透明な状況です。

そもそも、GPIFは財務省ではなく(我々企業年金基金を管轄する)厚生労働省の所管する機関であり、何より、GPIFの資産配分変更そのものには規定された正式プロセスが必要です。その他にも、様々な不確定要素があるようですが、仮に、このプランが実現するとなれば、我々のような私的年金基金にも同様のお達しが及びはしないか非常に心配です。

本件については、本稿でもほぼ毎週ご紹介している「TRADOM為替アンバサダー安田佐和子氏の7/13付weekly report」に非常に詳細な記事が紹介されていました。

以下、<< TRADOM為替アンバサダー安田佐和子氏の7/13付weekly reportより一部抜粋 >>
―GPIF国内回帰、4つの不確実性――実現性、介入余力、共同声明、米国債需要
ドル円が7月1日に162.84円と1986年12月以来の高値をつけてから、国内で円安是正をめぐる動きが活発化している。自民党の麻生副総裁の円安懸念発言に加え、骨太の方針の原案についても、修正をめぐる報道が相次いだ。7月8日には、「『強い経済』の実現に向けては、『安定的な物価上昇』の実現に資する適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である」とし、「安定的な物価上昇」を盛り込む方針が伝えられた。新たな文言が加わった背景として、当初、適切な金融政策運営が非常に重要とされ、利上げけん制と解釈されたことがある。
城内経財相は7月7日、閣議後の記者会見で「原案の趣旨と異なる受け止めであり誤解だ」説明していたが、7月8日に伝えられた骨太方針原案の修正を受けても不十分とされ、10日に「与党からの意見を踏まえ文案修正を調整している」と発言。片山財務相も同日、骨太方針の原案修正は事実としたうえで、「現行の日銀法の考え方は第三条と第四条があってできている」とし、金融政策には独立性が担保されるべきと述べた。なお、日銀法の第3条と第4条は、以下の通り。

(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第三条 日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2 日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。
(政府との関係)
第四条 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。

片山氏は7月10日、骨太の方針原案の修正を認めた同じ日に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内投資を後押しする方針を表明した。この報道を受け、ドル円は162.40円付近から161.28円まで、1円超も急落しただけでなく、債券や株式市場も好感し、トリプル高の展開を迎えた。ただし、日経新聞は7月11日にGPIFがオルタナ投資を拡大する方針と報道。国内投資がオルタナと合わせて引き上げられるのか、不透明だ。何より国内投資シフトをめぐる議論には、実現可能性、介入余力、そして日米間の合意との整合性、米国債への影響と、少なくとも4つの論点が絡み合うだけに、見極めが必要である。
まず、実現可能性だ。片山氏の発言を受け日本10年債利回りは約10bp(0.1%ポイント)低下したが、ゴールドマン・サックスはこの反応を「オーバーリアクション」と一蹴した。理由は、片山氏が用いたのは「日本の金融資産」という曖昧な表現にとどまり、GPIFが国債保有を明確に増やすとの確約は一切なかったという点にある。GPIFはそもそも財務省ではなく厚生労働省の所管であり、資産配分の変更には正式な検討プロセスを要する。
過去の実例が、その重さを物語る。GPIF史上最大の転換点は、2014年10月の配分変更(国内債券60%→35%、国内外株式合計24%→50%)となる。安倍内閣が2013年に設置した「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」による同年11月の報告書公表、翌2014年6月の公的年金財政検証と厚労相による前倒し要請を経て、同年10月31日に実施された。有識者会議の設置から実施までは約1年2カ月、正式な財政検証・大臣要請からでも4カ月を要した計算になる
なお、2014年の抜本改革は安倍内閣が設置した外部の有識者会議が起点だったのに対し、2020年・2025年の見直しはGPIF内部の経営委員会が主体の定例プロセスで完結している。基本ポートフォリオは、①厚労大臣の中期目標、②財政検証、③4管理運用主体共同の「モデルポートフォリオ」を踏まえ、経営委員会下の検討作業班での議論とモデルポートフォリオへの参酌を経て決定される。2025年4月の現行版もこの内部プロセスのみで策定された。片山発言が「内閣主導の有識者会議」を要する2014年型に発展するか、GPIF内部で完結する現状追認型にとどまるかが、今回の見極めどころとなる。

チャート:ポートフォリオ変更があった過去4回の変遷と、現時点の構成割合

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2014年の大転換は、例外的でもある。2013年6月の暫定修正(会計検査院指摘を受けた微調整)は抜本改革に至らず、2020年4月の4つの資産を均等に振り分けた25%への移行、そして2025年4月の直近見直しはいずれも配分比率そのものは維持し、乖離許容幅の調整にとどまった。つまりGPIFの見直し履歴は政権の強い要請と財政検証が重なった「2014年型の大転換」と「現状追認にとどまる2013・2020・2025年型」の二種類に大別でき、後者の方が近年ではむしろ標準的だ。第5期中期目標期間(2025〜29年度)の均等配分が確定してからまだ1年余りが経過した現時点で、今回の片山発言が前者(2014年型)の域に達するかどうかは未知数であり、「検討はしたが実現には至らない」まま終わる可能性は十分にある。
第二の論点は、GPIFの動きとは別に政府が進めている、もう一つの「ドルを巡る政策」との整合性である。日米関税合意に基づき、日本は最大5,500億ドル規模の対米投融資(出資・融資・融資保証)を政府系金融機関経由で提供することを約束しており、これはドル建てで実行される。日経新聞によれば、この資金は2026年度予算で国際協力銀行(JBIC)が3分の1、メガバンクなど民間金融機関が3分の2を分担する想定だ。同紙の試算で民間銀行だけで40兆円超のドル建て融資が必要となり、3メガバンクの海外融資残高(約140兆円)の3割に相当する。自力での市場調達は円売り圧力そのものになりかねず、且つ銀行側のドル資金調達コストの懸念もあり、政府は外国為替資金特別会計(外為特会)のドルを活用した長期調達支援の枠組みを検討中だ。GPIFの国内投資とは一見無縁の話に見えるが、外貨準備を活用するならば、長期でメガバンクに資金を融通するため、機動的な介入余地が縮小することになる。したがって、介入余地の縮小を見据え、GPIFの国内投資後押しはドル買い需要を抑制する動きと捉えられよう。
第三に、日米財務大臣共同声明との整合性である。2025年9月11日の共同声明は、年金基金等による海外投資は「引き続きリスク調整後のリターンや分散化の目的で行われ、競争上の目的のために為替レートを目標とはしない」と明記。この文言については、米財務省がトランプ政権として2回目に公表した1月分の為替報告書を紐解くと米国側の意図が読み取れ、前回2025年6月分にはなかった「2014年にGPIFのポートフォリオを見直し国内債券の比率を引き下げたのは、日本からの資本流出を促進する円安誘導との憶測を招いた」との指摘が追加された。今回はその正反対だが、米国が「競争上の目的のため」でないと判断するかがカギとなる。
第四に、米国債保有への影響である。GPIFは2025年度末(26年3月末)時点で約294兆円の運用資産を抱え、そのうち25%の73.4兆円が外国債券に割り当てられ、ロイターはさらにその約半分を米国債が占めると分析。GPIFの配分見直しが実現すれば、米国債保有目標の引き下げを伴い、ドル売り・円買い需要につながる見通しだ。

チャート:GPIFの運用資産構成割合

weeklyreport 20260713 10

ベッセント財務長官は2025年11月、米国債市場について「記録的な水準の外国人需要」強調、米国債離れの議論を退けてきた。日本は4月時点の米国債保有高が約1.2兆ドルと1位であるため、その最大の買い手であるはずの日本が公的年金を通じて保有を圧縮することを許容するかは定かではない。足元では海外中央銀行の外貨準備の資産内訳をみると、2025年末にゴールドが27%と、米国債の22%を上回ったとのニュースが衝撃を与えた。米国債保有高については、米国内のステーブルコイン業者がGENIUS法の成立に伴い、新たな米国債の購入者として存在感も浮上しているが、どこまで取得するかはステーブルコインの普及次第となる点は否めない。

チャート:ポートフォリオ変更があった過去4回の変遷と、現時点の構成割合

weeklyreport 20260713 11

以上を踏まえれば、短期的には、片山氏の発言自体が持つ「口先介入」効果によって円高方向に振れやすい。ただし、ゴールドマン・サックスが指摘する通り確約を伴わない効果は減衰するとみられ、ドル円の反発(円安への揺り戻し)が予想される。中期的には、銀行へのドル調達支援により外貨準備の余地が縮小し、投機的な円売りに対する防波堤が弱まり、結果的に円安圧力を助長しかねない。GPIFの配分見直しが仮に実現すれば、米国債需要の減少という形で日米間の資金循環そのものを変え、理屈の上では円高要因として作用するはずだ。しかし、それは早くても数年単位の話であり、しかも日米共同声明との整合性という政治的制約が、変更の規模とスピードを抑制する方向に働く可能性が高い。総じて、短期は方向感の乏しいノイズ、中期はむしろ円安方向のリスク、長期の円高シナリオは実現性そのものが不確かという、時間軸によって作用が逆転する複雑な構図だと言える。

<<< 以上 ~ TRADOM為替アンバサダー安田佐和子氏の7/13付weekly reportより抜粋 ~ >>>

7月に入り、いよいよ夏本番を迎えます。また、11月の米中間選挙まではあと4か月を切りました。低迷が続く支持率の回復に躍起となっている米トランプ政権。しかし、年明け以降の「力による安定」をアピールしたい政権の政策に対する透明性や評価は決して高いとは言えず、むしろ更に悪化しているように思われます。これに伴って、金融市場全体のボラティリティは一段と高まりこそすれ、落ち着き・低下することは想定しづらい状況です。

こんな状況だからこそ、 (いつも申し上げているとおり)今後も「過度に予断を持たず変化の兆しを見落とさぬ姿勢」を貫き、金融資本市場全体を引き続き注視してゆかねばならないと考えています。

お知らせ➀:来週7/20のweekly reportは「テクニカル分析」のみの掲載、また、翌週7/27は『筆者都合により休載』とさせて頂きます。大変恐縮ではございますが、ご容赦頂けますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

お知らせ➁:今週は一部のみご案内致しましたが、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。

TRADOMユーザーの方々はサイト内で是非ご参照下さい。

お知らせ➂:トレーダムでは「5月22日、ステーブルコインを活用したクロスボーダー決済サービス『トレーダム ペイメント』の提供を開始」しました。日経新聞を始め多様なメディアに取り上げられておりますので、是非ご一読ください。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB251ET0V20C26A5000000/?n_cid=dsapp_share_ios

2026/7/13

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