Weekly Report (6/1) 緩慢な上昇サイクルは着実に維持も、上下双方の強力な圧力が拮抗し膠着が継続
吉岡 豪麿
この記事の著者
トレーダム 取締役CAO

国内大手金融機関の外国為替取引部門で外国為替、外国証券等のディーラーとして20年、海外金融機関でアセットマネージャーとして15年以上の経験を有する為替のエキスパート。貿易企業の経営者を経て、企業年金基金の資産運用を担当。2021年1月よりCAOとして投資助言部門を担当。

マーケット分析

<テクニカル分析判断>   

●短・中期:前週の’24年6月以来の7連騰は「着実な上昇圧力の増勢復活」を示唆

週足2Y20260529

□5/25週:「寄付158.79158.75~159.65終値159.25前週比+0.05円円安)

◇前週比で+0.05円とほぼ横ばい。それでも僅少ながら3週連続陽線を継続した。前週、日足で約2年ぶりの7日連騰を記録し、緩慢ではあるものの着実な上昇圧力を確認した効果が続く

また、日足・週足ともに前週回復した21MA超の水準を着実に維持し、介入による急落で一旦急激に悪化した「USD円相場の地合いは、再び力強く好転」したことも確認

一方、160円に接近すると「戻り売り圧力の高まり」も顕現化。しかし、既述の「地合いの好転」が徐々にかつ着実に戻り売り圧力を吸収

このように、展開がほぼ上昇を志向しつつも極めて緩慢に進んでいることで「週間変動幅は僅か0.90円」と、前5/18週の0.85円と同水準。まさに「膠着が継続」

<上掲チャートのポイント(週足):中期時間軸> 

◇5/4週の「下ヒゲ長めの小“陰線”が底打ちを示唆」したことはほぼ確実(以下参照)

(1)・(2):「下ヒゲの長い小“陽線”」と「(D)からの緩やかな上昇トレンドライン(サポートライン)付近での底打ち」

(3):「下ヒゲの長い小“陽線”」と「(A)⇒(C)の長期下降TL」が上抜けしたため強力なサポートラインに転化した水準での底打ち

(4):「下ヒゲ長めの小“陰線”」ではあるものの、「(D)からの緩やかな上昇トレンドライン(サポートライン)付近での底打ち」を示唆

➀:「21週MA」を強力なサポートラインとした底打ち

➁:「(A)=>(C)の長期下降TL」が上抜けし強力なサポートラインに転化した水準での底打ち

➂:「(D)からの緩やかな上昇トレンドライン(サポートライン)付近での底打ち」がほぼ確実

◎『根強い押し目買い圧力』ならびに『昨年4月から1年超続く緩やかな上昇TL』は、依然としてかなり堅固であり、今後も相当強力なサポートラインとして機能する可能性大

既述の通り、(4)で底打ちを確認後に大きく反発。一気に21週MAを大幅に上回った前2週に続き、押し目をほとんど作らずごく僅かながらも続伸

◎RSIは中立水準で反発に転じ、ストキャスティクスも低位から反騰に転じた模様。共に更なる好転の余地を潤沢に残している

ただし、これ以上の水準は3週前に『大きく顕現化した160円超への障壁』に接近してゆくため、自律調整的な反動(反落)にも警戒を怠れぬ局面(足型も上ヒゲが目につく)

=>足許での「上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、水準が上がるにつれ『160円超への障壁(戻り売り圧力)』も同時に高まるため、両圧力の拮抗により再び『保合い(膠着)』となる可能性も排除できない

=>実際、先週の変動幅も「僅か0.90円」に止まり「僅かに続伸」したものの、見方によっては『強含み“保合い”・膠着』の範疇に止まった

日足10M20260529
日足7連騰以上(補足)

<チャートのポイント(日足):短期時間軸:既述週足コメントもご参照>

<1枚目:5/18週のコメント含む>

◇昨年4月以降の緩やかな上昇トレンドでは「連騰は4以下 or 6まで」と5で止まったことはなく、モメンタムを考慮すれば、もう1本追加され6連騰へ進展する可能性は高い

◇連騰が7以上に伸びるなら(示現したため)上昇圧力の増勢を示唆

<2枚目>

◇「7日連続陽線」は’24年6月以来約2年ぶりの現象

◇7日以上の連続陽線は‘22年~’24年に集中的に見られ、特に上昇トレンドの加速が鮮明だった‘22年には10連騰以上の力強い上昇が複数回見られた(図中⑤⑥)

◇なお、4/30の急落以降に急低下し、いつ反発に転じても全くおかしくない水準に至っていた「RSI/ストキャスティクスは上記7連騰に伴い急反発」

=>根強い押し目買い圧力が強固に存続していた結果として、短期時間軸における「USD円相場の地合いの力強い好転」を確認

<⇔>

●ただし、同期間において「長い連騰の後には(急)反落するケースも少なくない」ため、この点には相応の警戒が必要

=>実際、先週も上下双方の圧力が拮抗し「保合い」というより「膠着」的な展開。なお、そんな状況の中で5/28には週間上昇幅の約半分(0.5円)ほどの反落も観測

以上より<今週のテクニカル分析の結論>は以下の通り

◎『根強い押し目買い圧力』ならびに『昨年4月から1年超続く緩やかな上昇TL』は、依然としてかなり堅固だと思われ、今後も相当強力なサポートラインとして機能する可能性大

◎週足のRSIは中立水準で反発に転じ、ストキャスティクスも低位から反騰に転じた。共に更なる好転の余地を潤沢に残している

●ただし、これ以上の水準は5週前に『大きく顕現化した160円超への障壁』に接近してゆくため、自律調整的な反動にも警戒を怠れぬ局面に

=>足許での「上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、水準が切り上がるにつれ『160円超への障壁(戻り売り圧力)』も同時に高まるため、上下双方向への圧力の拮抗により再び『保合い/膠着』となる可能性も排除できない

◇それでも、超長期時間軸(後述月足)では「USD円相場の地合いは依然として堅固」であるため、今後2024年7月の161.94円を超えて162円台へのトライへ移行する可能性は依然として強く存続

◎短期的な自律調整を交えつつも「中長期的な円安/USD高トレンドは着実に進展」しつつあるとの認識を引き続き堅持する

□以上を踏まえ、引き続き「過度に予断を持つことなく」変化の兆しを見落とさぬ姿勢を維持した上で、終値が以下の水準を「突破or維持」できるかどうかに注目

1 161.70円=21週MA+2.46%

2 161.25円=21週MA+2.16%

3 160.30円=21日MA+1.23%

4 159.75円=21週MA+1.23%

5 158.20円=21日MA

6 157.80円=21週MA

7 156.40円=21日MA▲1.23%

8 155.85円=21週MA▲1.23%

>>>上記3(上方)6(下方)「抜けると加速する」と思われる水準

~以下では『短期・中期・長期の方向性』についての分析ポイント及び各時間軸での想定レンジをご案内します。(今号の分析は2026/5/29のNY市場終値をベースに実施) ~

以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数

➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド、52MA & 200MA」、RSI等 

短期(1週間~1か月)の方向性:押し目買い圧力は堅固も、戻り売り圧力も漸増

日足24M20260529

上図は前掲(直近10ヶ月)分を直近2年分に拡大。解説コメントについては既掲をご参照下さい

◎『根強い押し目買い圧力』ならびに『昨年4月から1年超続く緩やかな上昇TL』は、依然として堅固であり、今後も相当強力なサポートラインとして機能しよう

●ただし、これ以上の水準は4週前に『大きく顕現化した160円超への障壁』に肉薄してゆくため、自律調整的な反動にも警戒を怠れぬ局面に

=>足許での「上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、水準が切り上がるにつれ『160円超への障壁(戻り売り圧力)』も同時に高まるため、上下双方向への圧力の拮抗により再び『保合い』となる可能性も排除できない

>>> 想定レンジ=今後1週間158.35~161.15今後1ヶ月:155.80~163.65

➋週足チャート「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSI等

中期(1か月~半年程度)の方向性:堅固な地合いから自律調整交えつつ上値模索へ

週足4.25Y20260529

上図は冒頭掲載分の期間を4年強に拡大。解説コメントについては既掲をご参照下さい

=>足許での「上昇モメンタムの増勢は明らか」だが、水準が切り上がるにつれ『160円超への障壁(戻り売り圧力)』も同時に高まるため、上下双方向への圧力の拮抗により再び『保合い/膠着』となる可能性も排除できない

◇それでも、超長期時間軸(後述月足)では「USD円相場の地合いはかなり堅固」であるため、今後2024年7月の161.94円を超えて162円台への上値模索へ移行する可能性は依然として強く存続

◎短期的な自律調整を交えつつも「中長期的な円安/USD高トレンドは着実に進展」しつつあるとの認識を引き続き堅持する

>>>今後6か月間の想定レンジ 150.60~167.40⇒ 151.00~167.40

➌月足チャート「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記

長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンドは着実に進展中

月足直近6Y20260529

◇上値抵抗線として機能していた2024年夏以降の下降トレンドライン(TL)突破が示現後、このTLは下値支持線に転化し、その後も月内での『重要な底打ち/反発水準』としての機能を継続

◇かつて「RSIやストキャスティクスが警戒すべき高水準を長期間維持し続けることを可能にした“強固な地合い”」が徐々に回復しつつある 

=>『秩序ある上昇の体』は依然維持されており、最終的に『上昇サイクルは依然として存続(上方向)』を確認する可能性が高いと認識

□超長期時間軸では『着実な上昇トレンド』を堅持

>>> 今後1年間の想定レンジ = 147.30~169.50 ⇒ 147.30~169.50 =

<ファンダメンタルズ分析判断>

□先週の日米金融市場の変化(下表右端):米イラン停戦合意期待⇒株価は最高値圏

◇米国:依然インフレ懸念は残るも、米イラン停戦合意期待から株価は再び最高値圏

◇日本:金利は一時急上昇も、米イラン停戦合意期待から株価は再び最高値更新へ

◇USD円:米金利低下を受け弱含むも、前週比ではUSD指数/USD円共にほぼ横ばい

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先週、ある読者の方から頂戴した以下のご質問:

<「GW中に行われた介入は“10兆円規模”(実際は11兆円超だった)とされているが、結局3週間程度で159円台に戻って“再び160円が視野に”入っているが,,,」

➀“事前通告”まで行った『巨額の介入が効かない』のはなぜか?

➁今後の展開は?円高or円安?> に対して、

紙幅を使ってなるべく論理的にお答えしたつもりでしたが、➀の結論とした次の部分が本当に“誤解を招いてしまった”ようです。

<我々は、これまで円高を止める(抑止する)要因として「市場介入」が話題になるたびに『介入はスムージングオペであり、あくまでも対症療法に過ぎない。複数国家による協調介入ならアナウンスメント効果も含めて単独介入以上の明白な効果はあるだろうが、それでも一時的に需給を操作(緩和)することしかできないし、抜本的に相場のトレンドを逆転させることはできない』と主張してきました。

したがって「介入が効かない」と感じられるのは(誤解を恐れず申し上げれば)「介入の効果を過大に評価されているから」だと考えています。>

これに対し「A.2022年4Q / B. 2024年3Qの介入(共に2回に分散)では『2・3か月で20円超下落』しており『介入効果は非常に大きい』と言えるのではないか?」とのご指摘を頂戴しました。

確かに、ご指摘の2回については下落幅・期間ともに『効果』に十分値するものだと思われます。ただし、上記A.、B.のそれぞれ数週前には同規模の介入(以下➊➋)が行われていましたが、こちらは今回同様ほとんど間を空けることなく(あっという間に)介入時の高値に接近する回復を見せただけでなく、実際その高値を上回っていました。

そして、もう一つ例を挙げておきたいのは、➌2025年1Qの約3か月かけて下落(19円強)した局面です。この際には、介入は実施されていませんでした。

1)A.、B.&➌の共通点:大きく下落:期間が2~3か月、下落幅が20円前後(19円~24円)、「米市場金利とUSD指数がピークアウトから下落傾向にあった」

2)同 相違点:いずれも大きく下落しているが「➌では介入は行われていない」

3)➊&➋の共通点:「介入による急落後、間を空けず反発に転じた」、「米市場金利とUSD指数は上昇軌道にあったor強含んでいた(少なくとも軟弱な地合いではなかった)」

⇒1)~3)からの示唆:A.、B.での介入効果は正確には把握できない。ただ、少なくとも直近4年間においては、USD円の基本的な方向性はほぼUSD(指数)の推移によって決定づけられていた

=>言葉不足で大変恐縮でしたが、先週我々が結論として申し上げたかったことは上記例から導かれるニュアンスです

この文脈で考えると「現在のUSD指数は100に僅かに届かない水準で安定」しており「A.、B.&➌」よりも「➊&➋」のケースに近く、少なくとも更なる下落(USD安・円高)よりも「➊&➋」のように近い将来『100を回復⇒上抜け』の蓋然性の方が高いと考えています。

さて、最初の介入が実施された4/30から1ヶ月が経過。この間「変化が大きかったのは何か?」を、我々がメインシナリオとしている『円安・USD高』に対するリスク(円高要因)を中心に考えてみました。

➀米イラク戦争終結(期待):有事のUSD買い要因の剥落

・停戦合意に向けた協議は継続も着地点は全く見えず

⇒トランプ大統領の発言は依然ブレが激しく信用できない

⇒ただし(米・イラン共に)「戦争を止めたがっている」のは確かだと考えられ、この問題に対する市場の不透明感も「最終的には落としどころが見つかる」との楽観的な見方が増加している印象

⇒それでも「有事のUSD買い要因の剥落」が顕現化しないのは、交渉の長期化・不安定なホルムズ海峡問題→「原油価格高止まりの長期化」が日本(円)に及ぼすネガティヴな影響が大

➁主要国の金融政策の方向性とその度合いの変化

4/30の織り込み度合い5/29の織り込み度合い
日本2.0回利上げ↑ / 年1.6回利上げ↑ / 年
ユーロ3.0回利上げ↑ / 年2.3回利上げ↑ / 年
英国2.5回利上げ↑ / 年1.5回利上げ↑ / 年
米国0.25回利下げ↓ / 年0.6回利上げ↑ / 年

・日本の金融正常化(利上げ)路線に変化はないが、利上げペースは鈍化予想

(仮に年2回利上げしても織り込み済みなので「円高要因」になりにくい)

円高を止めるなら、市場が予想している以上のペースで利上げを続けるしかなさそうですが…

⇒もしくは米国に頼み込んでの「日米協調介入」が実現すればかなりのサプライズ

・欧州は足元で景況感が悪化→「インフレ対応の利上げ」ペースは鈍化予想へ

米国は「雇用市場の鈍化対応による利下げ」から「インフレ対応による利上げ」に見通しがシフト

(この1ヶ月の変化の度合いは方向性も含めて最も変化が大きい

⇒FOMCメンバーのコンセンサスは(大きく)タカ派に方向転換

(例)トランプ氏の推薦を受けて理事に就任した(ハト派と目される)「ウォラー理事」の直近の発言

 ●インフレが近い将来に沈静化しない場合、将来的な利上げの可能性はもはや否定できない

 ●同様に、現状での『利下げ』の検討は「正気の沙汰ではない」

 ●足元の経済データを見る限り、現在は「9月までに追加的な利下げができる」とは到底言えない環境にある

既述の『サプライズ的円高要因』でも出てこない限り、先週も指摘した「大幅なマイナスの実質金利」(円にとっての最大の『弱点』)を始めとした多数の『構造的とも言うべき円安要因』を超えて行くのはかなりの困難を伴うと考えられます。

早いもので、新年度入りから2か月が経過し11月の米中間選挙まであと5か月になってきました。低迷が続く支持率の回復を狙う米トランプ政権。しかし、年明け以降の「力による安定」をアピールしたい政権の政策に対する透明性や評価は決して高いとは言えないと思われます。これに伴って、金融市場全体のボラティリティは一段と高まりこそすれ、落ち着き・低下することは想定しづらい状況です。

こんな状況だからこそ、 (いつも申し上げているとおり)今後も「過度に予断を持たず変化の兆しを見落とさぬ姿勢」を貫き、金融資本市場全体を引き続き注視してゆかねばならないと考えています。

お知らせ➀:今週はご案内していませんが、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を中心としたUSD円相場見通しについては、トレーダム為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。

TRADOMユーザーの方々はサイト内で是非ご参照下さい。

お知らせ➁:トレーダムでは「5月22日、ステーブルコインを活用したクロスボーダー決済サービス『トレーダム ペイメント』の提供を開始」しました。日経新聞を始め多様なメディアに取り上げられておりますので、是非ご一読ください。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB251ET0V20C26A5000000/?n_cid=dsapp_share_ios

                              2026/6/1

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