<テクニカル分析判断> ●短期:想定通り高値を更新中も、過熱感の高まりから短期的な(速度)調整リスクも台頭 ●中期:上昇余地は残存も、 […]
<テクニカル分析判断>
サマリー:
●短期:押し目買い圧力は残存も「上昇の最終局面は通過」した可能性が高まる
●中期:『中期的天井 & 長期的Wトップ』の形成を確認する重要なステージに突入
先週は「寄付151.50:149.19~151.91:終値149.64(前週比▲1.89円の円高)」となり、
週足(後掲➋参照)では2週ぶりに(今年7月上旬以来となる大幅な)陰線を形成した。
週初こそ、根強い上昇圧力の継続によって想定通りの上値模索が見られ、一時151.90円と
年初来高値の更新と共に昨年10/21の32年ぶり高値(151.95円)にほぼ面合わせの展開。
しかしその水準で伸び悩むと、週足や月足で示唆されていた「上昇の過熱への反動による
“自律調整的な下落”」へと移行し、その動きが週末にかけて加速することとなった。
なお、10/30週の2.92円から11/6週に2.29円とやや縮小した週間レンジは、先週2.72円
と再び拡大。今月に入り比較的高めの変動率が維持されており、当面高水準の継続を想定。
結果として、先週も指摘したとおり<上昇の過熱を示唆するRSIやストキャスティクスは
かなり警戒すべき水準へと上昇しているため(中略)いつ「上昇の最終局面」を迎えても
おかしくない状況>が出来した可能性が高まったようだ。また、日足(後掲➊参照)では、
<21MAを終値で明確に下回ってくれば、下落が加速しやすくなり中期的なピークアウトに
繋がる可能性が高まる>状況にもかなり近づいたと言えよう。(但し、確認は必要❢)
もちろん、その他数種のテクニカル指標が示すように「上昇圧力の根強さは依然として
強力」であり今週も「押し目買い継続」の可能性は否定できない。ただし、既述の通り
「上昇圧力の衰退・下落圧力の高まり」は顕現化の色彩を濃くしているため、中期的な
天井や長期的なダブルトップを形成した可能性は念頭に置いておく必要があろう。
それを確認する意味でも、今週以降(今月の終値が確定する来週)の推移は極めて重要だろう。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/11/17のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月弱)の方向性:「上昇の最終局面が形成」されたかどうかを確認へ
〇3月下旬から52MAとほぼ同じ傾きで続いている上昇トレンドは依然として大きく崩れる
ほどの変化はなく「根強い上昇圧力⇒押し目買い圧力の残存」は否定できない
●一方、直近3ヶ月以上に亘り終値で明確に(=大幅にor複数日連続で)下回れずに強力な
支持線となっていた21MA(赤い線)を、先週末は比較的明確に終値で下回った(図右端の太枠)
◇但し、3週前にも2度同様の事象があったが、いずれも「下抜けが小幅・翌日には21MA超
を回復」していたことで我々の定義する「下抜け」には到っていなかった
●今回は値幅も伴っているので大丈夫だと思料も、確認の意味でも今週の推移は極めて重要
●これまでも繰り返し指摘してきた通り、21MAを終値で明確に下回る展開となれば、下落が
加速しやすくなり中期的なピークアウトに繋がる可能性が相当高まる
>>チャートの黒とエンジの太い〇部分参照。21MAを終値で明確に抜けると勢いは加速する
⇒21MAを終値で明確に下回った場合の最初の下値目標としていた52MA(149.40円@11/20朝)
を終値で下回ればほぼ確定。次のメドは1) 147.27(10/3安値)、2) 146.25(上昇トレンドライン)
●ここ数週の展開でRSI・ストキャスティクスは短周期で上下動を繰り返していたが、
直近(足許)では共に「下落傾向(サイン)」が明確になってきている
●確認の必要はあるものの、「中期的上昇の最終局面は既に通過した」と認識
>>>想定レンジ=今週:146.25~150.45 、今後1ヶ月:142.50~150.45 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド & 52MA」、RSIを付記
中期(1か月~半年程度)の方向性:中期的ピークアウトの確認から下落トレンド加速へ
●先週初の年初来高値更新からの大陰線形成により、中期的なピークアウトはほぼ確認
●4週前から下落に傾きつつあったストキャスティクスに加え、前週再上昇していたRSI
も先週から低下傾向が鮮明となり、(中期的)下落トレンド開始の可能性が台頭
>>>『中期的天井 & 長期的Wトップ』の形成確認が次第に明確になりつつある
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 139.20~153.75 ⇒ 137.40~150.45 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~1年程度)の方向性:超長期上昇トレンド再開前に中期的下落を想定
◎上記➊➋と同様にチャートには『ストキャスティクス』を追加した仕様。明確な
サインはまだないが、各インジケーターの水準は警戒的高位から低下への兆候あり
◆昨年10月の水準を超えた9・10月の終値を確認したことで、当面の上値余地拡大は
否定できないものの、超長期上昇トレンドが本格化する前に一旦は「緩やかな中期的
下落トレンドに入る可能性が依然残存」をメインシナリオとして維持(上記➊➋参照)
●繰り返しとなるが、その根拠は主に以下の3点(チャートは2012年11月からの推移)
<=2022年10月は「20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る」という過去35年以上
経験したことのない「異常な(上昇の)過熱状態」にあった(金色の太枠部分)
<=一時85超まで過熱したRSIは70.1まで再上昇したが直近66.2まで低下中
=>超異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA突破」に向けた軟化漸進を見込む
<2015年の[20MA]下抜け(チャート中央左の黒枠/グレー枠部分)に近いイメージ>
<現在139.29近辺の[20MA]は仮にUSD円が横ばいでも来月も1円超上昇の予定>
◎ただ、その動きも2024年中には底打ちし(超長期トレンドである)「USD高円安」方向
へと徐々に反転してゆく可能性が高いと想定している
>>> 今後1年間の想定レンジ = 136.50~153.75 ⇒ 132.60~153.00 =
◆なお、様々な要因から『テクニカルな地合いは依然として強い』と判断される向きも多い
のかもしれません。繰り返しになりますが、テクニカルな分析手法やそれに基づく判断は
まさに十人十色であり、個別の判断が誤っていると申し上げるつもりは毛頭ありません。
ただ、相場は常に変動するもの。上下を問わず『依然強い地合い』もいずれは終息するもの
と思われますし、それをもたらすのは『強い地合いとは逆の動き』だと考えます。
(現在はそうした『逆の動き』が急速に顕現化しているステージだと我々は認識しています)
だからこそ、我々はあるトレンドがmatured(成熟/飽和)したかそれに近い状態だと判断した
場合は反転に備えてその兆しを発見することに腐心しています。既述のテクニカルチャート
でもお判り頂ける通り、『トレンドの反転を確認』する前にはRSIやストキャスティクス等
のオシレーター系データがその兆候を示唆してくれることも少なくありません。
<ファンダメンタルズ分析判断>
■先週の米国経済指標は週末の10月分住宅関連指標を除き「概ね軟調」。これらを受けた
「米国長期金利のピークアウト/来年5月辺りからの利下げ観測」などから長期債を中心に
金利が低下し、これを好感する恰好で株式市場も「リスク選好」の機運が高まった1週間。
■長期金利急低下の展開を受けて、USDインデックスは週間での下落幅が今年2番目の大きさ
となり急落。市場金利の絶対水準が圧倒的に低い対円でも150円を下回った所以はここにある
■より具体的に先週の米国債券市場を総括すると以下の通り
◆10年国債利回りが前週末比▲0.22%の4.43%、
◆政策金利を反映し易い2年国債利回りは同▲0.18%の4.88%と再び5%を下回ってきた
■他方、市場金利低下の主因となったのは以下の(景気減速を示唆した)経済指標
1)10月消費者物価指数(CPI)が前年同月比+3.2%、コアCPIは同+4.0%と2021年9月以来の
低い伸びだった結果を受け、インフレ鈍化のトレンドを確認したこと
2)10月小売売上高は前月比▲0.1%と、市場予想の同▲0.3%減より弱くはなかったものの、
物価上昇を除いた『実質の小売売上高』が前年同月比▲0.2%と、7カ月ぶりに減少したこと
3)11/11の週の米新規失業保険申請件数が23.1万件と約3カ月ぶりの高水準に増加したこと。
更に継続受給者数においては186.5万人と8週連続で増加し、2022年11月以来の水準へ急増。
年末商戦向けの臨時採用が発表されているが、職探しが長期化している兆候が現れ始めている。
先週ご案内したサーム・ルール(失業率の直近3カ月移動平均と過去12カ月間の最低値の差)
における示唆と併せて、今回の数値は堅調を維持していた米労働市場の減速を浮き彫りにした
■先週指摘した通り、『FRBのタカ派的な金融政策』の継続観測による米国債利回り上昇)と
米国長期金利のピークアウト観測を背景とする『リスク選好機運』(11月だけで米S&P500は
7.7%上昇)が共存できるはずはなく、上記の経済指標がその解を示したと言える
□【短期~中期的視座】「USD/円相場の上昇」に対する根強いサポート要因
◎当初想定よりはるかに強い米国の「インフレ高止まり」観測(かなり怪しくなってきたが…)
⇒「Higher & Longer」=米金利がより長期間高水準にとどまるという観測
>>『タカ派なFRB VSハト派な日銀の明白なコントラスト』の再強調
⇔ 今後は「欧米のタカ派色希薄化の一方、日銀はハト派色後退」が漸進してゆくはず
〇依然として高水準を維持する「日米実質金利差ならびに日米短期金利差」の更なる?拡大
観測とそれに伴う円キャリートレード復活/活発化に対する期待
⇔「欧米の利上げ打ち止め」並びに「日銀の金融政策正常化への漸進」というかつての
「逆行する(金融政策の)方向性」の反転が視野に入りつつある中、このロジックはいつまで
ワークするのか(そろそろ賞味期限切れになるのではと認識)
>>但し、長期的には折に触れて注目される要因(特に市場の変動率が低い場合は)
■【中期~長期的視座】先行きの「USD/円相場の下落」を示唆する要因
●米銀行セクター不安から顕現化した“信用逼迫”への懸念は燻り続ける公算大
>>>過去1年半超にわたる利上げの累積効果による景気鈍化は今後本格化へ
⇒米銀の貸出態度は現在加速的に厳格化しており、実際の貸出も昨年11月に
つけたピーク(前年比13.5%増)から、足許では伸びが大幅に低下中
⇒おそらく本年末には前年比ゼロもしくはマイナス圏に陥るとみられている
⇒家計の過剰貯蓄も現在のペースで取り崩されていけば、年末頃には底を突き、
家計の消費ペースはその後大幅にスローダウンする可能性が高い
>>>2023年通年での米企業倒産件数はリーマンショック後で最高に達するとの予想も
●米債券市場において『逆イールド』が示唆した景気後退リスクは払拭されず
>>>米債券市場での将来の景気後退を示唆する『逆イールド』は依然残存
>>>『逆イールド』幅は今年3月の最大値(▲1.08%)を7月に僅かに更新
>>>その後、一旦縮小のトレンドに入ったと思われたが、拡大と縮小を交互
に繰り返す展開が続き、解消に向かう明確な気配は未確認だった。
⇒既述の「Higher & Longer」認識の浸透に伴い、9月下旬以降縮小が加速
⇒3月には「年後半には利下げ」観測から『2年急低下⇔10年緩やかな低下』の
解消経路(パス)だったが、ここもとは『2年横ばい⇔10年急上昇』のパスが機能
⇒この長短金利の跛行的な動きが加速したことにより逆イールドは急速に縮小し
その幅は3月の縮小時を更新した
⇒ただし、直近2週は既述の「10年債利回りの急低下(⇔2年債利回りの高止まり)」
によって、逆イールドは再度拡大気味
⇒しかし、我々の想定に近い形で今後の米国のファンダメンタルズが進展すれば、
昨今の国際情勢の悪化も加わり米景気後退が視野に入るため、再び今年3月のパスに
回帰するというルートが復活する可能性も高まりつつある
●【日本】現在の『異次元の金融緩和』に追加的(深堀りの)余地は皆無
>>>「現在の緩和的な金融環境の維持」は政策金利の追加的引き下げを意味しない
>>>今後の日銀金融政策の選択肢は「現状維持」or「正常化」しか残されていない
>>>いずれにせよ低下余地はほぼ無く金利の変化としては「上昇」するしかない
(生保など機関投資家が長期投資対象として充分魅力的な水準に上昇するまで)
>>>欧米の利上げが終了すれば、自ずと内外金利差は縮小へ向かう (円の買戻しへ)
□【数年単位の超長期的視座】超長期的に「USD/円相場の上昇」をサポートする要因
①日本の貿易(国際)収支構造の反転(≒貿易赤字の常態化)
>>>TRADOM内コンテンツ「為替の歴史」&「月足チャート」もご参照ください
②2005~2007年当時の円キャリートレードが復活する可能性(環境)の高まり
>>>潤沢で安定した内外金利差(日銀の「金融政策正常化」VS「米国の金融緩和」が
今後仮に進んだとしても日本の潜在成長率の低さを考慮すれば政策金利差は必ず存続)
>>>今後増加が見込まれる対外直接投資や「個人や機関投資家による海外証券投資」
⇒「(超)低成長・低金利環境にある日本」から「圧倒的な比較優位を持つ海外」へと
本邦の企業や(個人・機関)投資家の資金がシフトするのは自明の理(≒必定)
←特に今後国策として『“貯蓄”から“投資”へ』を本格化させるのならなおのこと
◇上記①・②から明らかになるのは「本邦の『外貨不足』という需給動向」
既述の通り、先週は10月米CPIを始めインフレや景気の減速を示唆する経済指標が好感
され、債券・株式ともに大きく買われました。 影響の大きかったCPIを振り返ると…
「10月コアCPIは前年比で+4.0%と2021年9月(同+4.0%)以来の水準まで低下」
⇒FRBは2021年9月時点では『インフレは一過性』と主張していましたが、次の10月分
CPI(11/10発表)が前年比+4.6%(前月比+0.6%)に加速した辺りから変調が始まります
>>>2021年9月22日に公表されたFOMC声明文では『インフレは概ね一過性の要因で
上昇』と謳っていたものの、その後、11月3日の声明文では『一過性と思われる要因』に
修正され、そして12月FOMCでは、遂に『一過性』という文言が完全に削除されました。
この文脈で考えると「10月CPIは一つの節目となる水準までインフレが収まってきた」と
言えるのかもしれません。また、今後要注目となるポイントは以下の2点となるでしょう。
- 高止まりしていた「インフレがこの先も順調に低下するか」どうか
- この先「インフレが低下する過程でどの程度の景気悪化を伴うか」
後者においては、とりわけ雇用の悪化度合いが焦点となりそうです。既述の通り、先週発表
された失業保険継続需給者数は186万人と2年ぶりの水準まで上昇し、逼迫していた労働需給
の明らかな変調が示唆されていました。
今週発表される予定の雇用関連指標では、同上の週次失業保険申請件数、11月PMI速報値
における雇用指数などが注目されることになるでしょう
我々の分析では、予算を巡り米議会運営の難局は増幅している他、中東情勢など不透明要因
に対する不安の高まりもあって、FRBの追加利上げへの慎重姿勢は崩れないと見ています。
また、既述の要因が複合的に作用することで、米経済が減速懸念を強めるものと思われ、
市場金利の更なる低下を通じてUSD/円の押し下げ要因も増える可能性が高まります。
ここ2ヶ月近く、USD/円相場は高値圏でのせめぎ合いが継続していましたが、我々はようやく
「円買戻しのマグマ」が蓄積から放出にステージを進め始めたとの認識を強めています。
今週は11/21に11月FOMCの議事要旨公表、11/22に米10月耐久財受注・11月ミシガン大学
消費者信頼感指数(確報値)、11/24に本邦10月の全国CPIなどの発表が予定されています。
また、11/23は米:感謝祭と日:勤労感謝の日による日米休場(更に翌11/24は米国の株式市場
と債券市場が短縮取引)となり、マーケットがかなり薄くなることが予想されるところです。
テクニカル分析でも言及した通り、中期的なピークアウトが鮮明になりつつある中「転換機を迎え
当面は高水準の変動率継続が見込まれる」ため、今週も「高い変動率を伴う激しい展開」には
相応の注意が必要だと考えています。
お知らせ:米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに
短期を中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏の
レポート(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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