Weekly Report(9/28)「米8月PCEと米9月雇用統計を控え、ドル円160円「ベッセント・シーリング」を再確認か」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。

マーケット分析
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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は9月14日週に4.69円と、その前の週の3.41円から拡大した。前週比では3.36円の上昇となる。年初来では前週の2.0%安→0.1%高と、小幅ながらプラス転換した。ドル円はFOMCでのタカ派的利上げを受けて買いが優勢。日銀金融政策決定会合で、2人の反対票が飛び出したほか、続投となった城内経財相が会合に今回も出席し、高市首相が利上げに慎重との見方を印象付け、一時158.06円と9月3日以来の高値をつけた。もっとも、その後は日米首脳会談を調整中のタイミングだった影響か、日銀の金融政策正常化と高市政権のリフレ的政策の巻き戻しを主張していたベッセント財務長官への配慮か、日銀がレートチェックを行い156円後半まで上げ幅を縮小し、週を終えた。
  • ドル円の変動幅は、9月21日週に2.46円と、その前の週の4.69円から縮小した。前週比では0.40円の続伸となる。年初来では前週の0.1%高→0.4%高となった。週初は東京市場が3連休を迎えるなか、タカ派的なFOMCを受け10月の追加利上げも意識されドル円は買いが優勢に。米9月総合PMI速報値の強さもあって、一時159.04円と9月2日以来の高値をつけた。もっとも、日米首脳会談を経てトランプ大統領が円安に懸念を示したとされ、片山財務相を始め城内経財相、高市首相、さらにベッセント財務長官まで「口先介入」を行い、一時は157円割れまで当該週の上げ幅を巻き戻した。
  • AI投資が米景気を押し上げる一方、データセンター建設への住民反発や規制強化、巨額の社債発行を背景に、信用リスクが高まっている。中間選挙を控え、有権者の受け止めも「成長の果実」から「成長の請求書」へ反転しつつある。ウォーシュFRB議長は、インフレを2%へより迅速に戻すため「緩和の一部を取り除く」利上げに動き、「最も恵まれていない人々」への配慮も打ち出した。グリーンスパンFRBは1999年に予防的利下げの巻き戻しに着手し、2000年にかけて本格引き締めへ移行した末、ITバブル崩壊を迎えた。今回は期待インフレが安定しており、FRBは保険の範囲内にとどまる公算が大きい。もっとも、エネルギー高が長期化すれば、追加利上げとAI投資の調整が重なり、スタグフレーション型の景気悪化を招くリスクがある。
  • 日銀は9月会合で政策金利を1.25%へ引き上げたが、リフレ派とされる2人の審議委員の反対票と、城内経財相の「政府と緊密に連携」発言が利上げへの慎重姿勢を印象付けた。ドル円は158円台へ急伸し、日銀はレートチェックに追い込まれた。G20以降の米側の円安是正圧力に逆行する展開を受け、トランプ大統領は日米首脳会談で円安への懸念を示した。25日には高市政権の閣僚が「リフレではない」と相次いで発信し、ベッセント財務長官も「強い円が望ましい」と表明した。160円は事実上の「ベッセント・シーリング」として意識されるが、FRBが10月に利上げし、日銀が見送れば、その強度が試される。
  • 今週は、30日の米8月PCE価格指数と10月2日の米9月雇用統計が焦点となる。クリーブランド連銀のナウキャストは8月のPCE、コアPCEともに前月からの加速を見込む。シカゴ連銀の予測では、9月の失業率は4.1%の据え置きが最有力だが、確率はやや上昇に傾く。2指標がそろって上振れすれば10月利上げの織り込みが進み、ドル円は160円を試す展開となりそうだが、介入警戒から上値は抑えられやすい。下振れすれば、155円方向への調整が見込まれる。
  • ドル円のテクニカルは、中立寄りにシフト。9月3日以降の下落を全て打ち消し一時159円台まで回復し、155円が再び鉄壁のサポートと化してきた側面がある。ただし、前週末は一時上抜けた200日移動平均線、50日移動平均線、7月23日高値と9月8日安値の半値戻しを再び下方向へ割り込んだ。トランプ政権と高市政権側の口先介入もあって、159円からは上値が重くなりそうだ。
  • 9月28日週の主な経済指標をみると、28日に日本8月企業サービス価格指数、29日に米9月消費者信頼感指数、米8月雇用動態調査(求人件数)、30日に豪8月CPI、米9月ADP全国雇用者数、米8月PCE価格指数、米8月個人消費支出・個人所得、米Q2実質GDP確定値、10月1日にユーロ圏・独・英・米製造業PMI改定値、米9月チャレンジャー人員削減数、米9月ISM製造業景気指数、2日に9月東京都区部CPI、ユーロ圏9月HICP速報値、米9月雇用統計が控える。
  • その他、政治・中銀関連では、28日に7月分の日銀金融政策決定会合・議事要旨公表、リッチモンド連銀総裁の発言、29日に豪準備銀行(RBA)政策金利発表、月例経済報告、NY連銀総裁を始めシカゴ連銀総裁の発言、米国によるカナダ製品輸入禁止措置発効を予定する。30日に外国為替平衡操作実施状況の発表、クックFRB理事やミネアポリス連銀総裁、リッチモンド連銀総裁の発言、10月1日は9月日銀会合の主な意見、日銀短観、豪中銀半期金融安定報告、クックFRB理事やNY連銀総裁、リッチモンド連銀総裁、ボストン連銀総裁、カンザスシティ連銀総裁の発言、2日はダラス連銀総裁の発言を控える。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の160.00円、下値は4月末から5月初めにかけた今年最初の介入局面で、5月6日につけた安値付近の155.00円と見込む。


【9月14日週のドル円レンジ:153.37~158.06円】

【9月21日週のドル円レンジ:156.58~159.04円】

ドル円の変動幅は9月14日週に4.69円と、その前の週の3.41円から拡大した。前週比では3.36円の上昇となる。年初来では前週の2.0%安→0.1%高と、小幅ながらプラス転換した。ドル円はFOMCでのタカ派的利上げを受けて買いが優勢。日銀金融政策決定会合で、2人の反対票が飛び出したほか、続投となった城内経財相が会合に今回も出席し、高市首相が利上げに慎重との見方を印象付け、一時158.06円と9月3日以来の高値をつけた。もっとも、その後は日米首脳会談を調整中のタイミングだった影響か、日銀の金融政策正常化と高市政権のリフレ的政策の巻き戻しを主張していたベッセント財務長官への配慮か、日銀がレートチェックを行い156円後半まで上げ幅を縮小し、週を終えた。

 ドル円の変動幅は、9月21日週に2.46円と、その前の週の4.69円から縮小した。前週比では0.40円の続伸となる。年初来では前週の0.1%高→0.4%高となった。週初は東京市場が3連休を迎えるなか、タカ派的なFOMCを受け10月の追加利上げも意識されドル円は買いが優勢に。米9月総合PMI速報値の強さもあって、一時159.04円と9月2日以来の高値をつけた。もっとも、日米首脳会談を経てトランプ大統領が円安に懸念を示したとされ、片山財務相を始め城内経財相、高市首相、さらにベッセント財務長官まで「口先介入」を行い、一時は157円割れまで当該週の上げ幅を巻き戻した。

14日のドル円は、上昇。イランが支援するイエメンの武装組織フーシ派がホルムズ海峡に次ぐ重要航路、バブ・エル・マンデブ海峡周辺へ支配権を広げた結果、原油輸出縮小の懸念から、東京市場は序盤から買いが優勢となった。9月FOMCで利上げが確実視されるなか、NY時間入りにはWTI原油先物104ドル乗せと米10年債利回り5%乗せの流れで、一時155.00円まで本日高値を更新。9月10日にドローン攻撃を受けたサウジアラビアの東西パイプラインの稼働停止も、意識された。トランプ大統領がロシアとウクライナによるエネルギー施設攻撃停止合意について投稿したほか、イランが迅速に合意を求めているとの見解を表明し、上げ幅を縮小した。

15日のドル円は、続伸。前日に続き、東京時間はWTI原油先物と米10年債利回りをにらみながらスタートし、買いが先行した。155円手前で一旦はゆるみ、高市政権がトランプ政権の要請を受け防衛費をGDP比3.5%への引き上げを検討と報じられても、影響は限定的。しかし、WTI原油先物が一時103.80ドルまで買い戻され、米10年債利回りも5.047%と2007年以来の水準へ切り上げる動きにつれて、一時155.24円まで本日高値を更新。NY時間にはハセットNEC委員長が翌日のFOMCでの政策決定はウォーシュFRB議長に一任と発言するなか、以降の値動きは限られた。

16日のドル円は、大幅に3日続伸。東京時間から買いが先行し、内閣改造では城内経財相の続投が有力と報じられるなか、155円半ばへ上昇した。ロンドン時間には売りに転じ154.84円まで本日安値を更新し、NY時間に入ると、米8月小売売上高などが市場予想を上回り、155円台を回復。サウジアラビアがドローン攻撃を受けて停止した東西パイプラインについて、数日以内にその輸送能力の約半分を復旧させる方針との報道で再び155円割れを迎えたが、9月FOMCで利上げが発表されると155円半ばを再びトライ。ウォーシュFRB議長の会見では今回の利上げは緩和度合いを取り除くもの、など追加利上げを連想させる発言が相次いだため上値を広げ、156円も突破し一時156.41円と9月4日以来の高値をつけた。

17日のドル円は、4日ぶりに反落。東京時間に一時156.28円まで本日高値を更新したが、その後はWTI原油先物の下落と米10年債利回りの低下につれ、上げ幅を縮小した。高市氏が内閣改造を実施する過程でも、155円半ばまで売られる展開。高市氏が会見を行い、金融政策の具体的手法は日銀に委ねるとの発言にも反応薄で、米長期金利の低下につれてNY入りには一時155.34円まで本日安値を更新。もっとも、日銀金融政策決定会合を控え買い戻され156円台へ戻した。

18日のドル円は、乱高下。日銀は東京時間に利上げを決定したが、リフレ派とされる2人の審議委員が反対票を投じた。高市政権はベッセント財務長官の要請に反して利上げに慎重との観測が広がり、ドル円は156円前半から一気に157円を突破した。植田総裁の会見直前には、城内経財相が日銀に政府との緊密な連携を求めた。植田氏が会見の冒頭で、基調的な物価上昇率を2%で安定させる「局面変化」に言及すると、ドル円はいったん下押しした。会見中に片山財務相が「日米協調介入にためらわず」と発言したことも売りを誘ったが、下げは一時的だった。会見終盤から再び上昇し、9月3日以来となる158円台に乗せ、一時158.06円まで上値を伸ばした。NY時間には日銀のレートチェックが入って急落し、156円後半で取引を終えた。

21日のドル円は、上昇。東京市場がシルバーウィークを受けた休場のなか、売りが先行し一時156.58円まで本日安値を更新した。しかし、その後は買い戻しが優勢に。NY時間にも買いの流れは続き、一時157.53円まで本日高値を更新した。ベッセント財務長官がCNBCインタビューに応じるなか、中国との人工知能(AI)の会合を何立峰副首相と年内に深センで再協議する見通しを示し、「米中AI対話」の開始に言及したが、円相場などの言及はなく、相場への影響は限定的だった。

22日のドル円は、続伸。東京市場休場でもドル円は買いの流れが続き、ロンドン時間にも受け継がれ157.78円まで本日高値を更新した。しかし、共同通信英語版がイラン高官は米国が軍事的な圧力を緩和するうえで初期段階の措置を講じるならば、イランは7日以内にホルムズ海峡を再開する意向を表明と報じ、WTI原油先物が急落。サウジアラビアの東西パイプラインの一部復旧のニュースも加わり、一時156.82円まで本日安値を更新。しかし、その後は再び157円後半まで買い戻され、日米首脳会談もサプライズなく終了したこともあって、堅調さを維持した。

23日のドル円は、3日続伸。ドル円は東京時間が休場ながら引き続き買いが優勢となり、NY時間には米9月総合PMI速報値などが市場予想を大きく上回ったため、急伸し158円台に乗せ一時158.40円まで上値を拡大した。高市首相とトランプ大統領の会談では円安是正を求める発言が伝わらず、大台を維持して取引を終えた。

24日のドル円は、売り先行後に買い戻し。休場明けの東京時間、ドル円は序盤に片山財務相の「日米協調介入以降の原則は生きている」との発言が伝わると、一時157.80円と米9月総合PMI速報値後の上昇をほぼ打ち消した。しかし、その後は原油先物の買い戻しや米10年債利回りの高止まりを背景に買いが再燃、NY時間には9月3日の高値を超え、159円を回復し一時159.04円まで切り上げた。米中首脳会談では特に反応せず、高値圏での推移を保った。

25日のドル円は、急落。東京時間の序盤から売りが優勢となった。片山財務相が閣議後会見でトランプ大統領の円安懸念を明かし、城内経財相もアベノミクス的なリフレ政策を否定したと報じられ、円買いが加速した。ロンドン時間には、高市首相が日米首脳会談でトランプ氏から「円安によって米国の貿易が厳しいという話があった」と明かした。片山財務相も、ベッセント財務長官の元上司であるスタンリー・ドラッケンミラー氏との面会後に「高市首相はリフレ派ではない」と発言し、ドル円は158円を割り込んだ。NY時間も売りは止まらず、財務省が片山財務相とベッセント財務長官の電話会談を発表すると157円も割り込み、一時156.94円まで下落した。ベッセント氏がXで「強い円が望ましい」と投稿したこともあり、戻りは鈍く、157円前半で週を終えた。米国とイランのホルムズ海峡再開をめぐる交渉が実務段階へ移ったとアルジャジーラが報じたとされ、WTI原油先物が急落したことも、ドル円の戻りを抑えた。

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