―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は9月7日週に3.41円と、その前の週の5.10円から縮小した。前週比では2.72円の下落となる。年初来では前週の0.3%安→2.0%安と、年初来で2番目の下落率となった。ドル円は、G20財務相・中央銀行総裁会議後のベッセント財務長官による日銀の利上げとリフレ政策脱却要請に絡む発言の流れに続き、上野厚労相がGPIFの資産構成割合を適時検証と発言したため、一時152.89円と2月半ば以来の水準へ下落した。もっとも、その後は米8月PPIが堅調だったほか、フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡の支配権拡大に伴いWTI原油先物が一時100ドルを突破したことで、ドル円は154.60円台まで買い戻される場面も。米8月CPI後に9月FOMCの利上げ織り込み度が約9割に達した割に、上値は限られた。
- ベッセント米財務長官の「私は非対称的な情報を持つ。今や私が胴元だ」との発言が波紋を広げている。7月末の日米協調介入後、日銀の利上げ観測が強まり、円安是正が進むなかでの強気発言だけに、投機筋へのけん制やトランプ政権への成果アピールとの見方も浮上する。高市政権の「責任ある積極財政」を支えてきた会田卓司氏も9月利上げ予想へ転換。高市政権の人事や日銀の政策判断を含め、ベッセント氏の「情報優位」が日本の政策対応まで見通したものなのかが焦点となる。日銀は9月会合で0.25%利上げし、政策金利を1.25%へ引き上げる見通しだが、植田総裁は、自らタカ派色を強め市場の利上げ加速期待を過度に助長するような発言は回避するのではないか。
- 米8月消費者物価指数(CPI)などを受け、9月15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の0.25%利上げ確率は87.3%まで上昇した。ただ、米8月コアCPIの上振れには携帯電話料金の特殊要因が大きく、9月30日のPCE価格指数の算出方法変更を控え不確実性が高い。原油高はインフレ再燃リスクとなるが、パウエル前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、かつてエネルギー・ショックの対応をめぐり、インフレ期待が安定している限り「ルックスルー」の立場について言及していた。今回、原油高をどこまでルックスルーするのかも焦点となる。さらに、決定が利上げか据え置きだけでなく、票決も焦点に。経済・金利見通し(SEP)とドットチャートを含め、短期・長期金利の反応を左右しそうだ。
- 米財務省は長期債買い戻しを従来の20億ドルから少なくとも40億ドルへ拡大し、9月10日の10~20年債では上限60億ドルを設定した。同日の実績は51億8,700万ドルだった。ベッセント財務長官は「均衡価格を変えられるとは思わない」としており、100億ドル規模まで膨らんだ市場期待は過大だった可能性がある。FOMC後に長期金利が無秩序に上昇するなら、買い戻しをさらに増額する選択肢が残る。
- ドル円のテクニカルは、三役逆転など弱気地合いを維持。ただし、下値も9月8日の152.89円以降、ジリジリと切り上がっている。5月以降に三尊を形成しネックラインがあった155.03円を下抜けたとはいえ、年初来安値がある1月27日の安値152.09円にはまだ距離を残す。FOMCと日銀で150-155円のレンジを足固めするか、あるいは上下へ振れるのか、方向性を試しそうだ。
- 9月14日週の主な経済指標をみると、15日に英8月失業率、ユーロ圏と独の9月ZEW景況感指数、米9月NY連銀製造業景気指数、16日に日本8月貿易統計、日本7月機械受注、英8月CPI、米8月小売売上高、米8月輸入物価指数、17日にNZQ2GDP、米9月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米新規失業保険申請件数、18日に日本8月全国CPIを予定する。
- その他、政治・中銀関連では、15日に米20年債入札、16日にFOMCの政策金利発表とウォーシュFRB議長の会見、17日に高市政権の内閣改造発表、イングランド銀行の政策金利発表、18日に日銀金融政策決定会合での政策金利発表と植田総裁の会見が控える。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の155.50円、下値は年初来安値付近の152.00円と見込む。
1.ドル円振り返り=ドル円は153円割れを経て、米物価指標を受け9月利上げ織り込み度急伸で買い戻し
【9月7日週のドル円レンジ:152.89~156.29円】
ドル円の変動幅は9月7日週に3.41円と、その前の週の5.10円から縮小した。前週比では2.72円の下落となる。年初来では前週の0.3%安→2.0%安と、年初来で2番目の下落率となった。ドル円は、G20財務相・中央銀行総裁会議後のベッセント財務長官による日銀の利上げとリフレ政策脱却要請に絡む発言の流れに続き、上野厚労相がGPIFの資産構成割合を適時検証と発言したため、一時152.89円と2月半ば以来の水準へ下落した。もっとも、その後は米8月PPIが堅調だったほか、フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡の支配権拡大に伴いWTI原油先物が一時100ドルを突破したことで、ドル円は154.60円台まで買い戻される場面も。米8月CPI後に9月FOMCの利上げ織り込み度が約9割に達した割に、上値は限られた。
7日のドル円は、急落。東京時間の序盤は156.29円まで週の高値を付けた後、もみ合いを続けた。しかし、ロンドン時間に入り、156円を割り込んだ辺りから急落を開始。イランがホルムズ海峡巡るオマーンとの交渉は最終段階との報道が流れるなか、一時154.06円とイラン戦争勃発前の2月23日以来の安値をつけた。米国市場がレーバーデーの休場を受けて、その後は動意薄、イランが韓国軍による湾岸での海上作戦参加で報復するとの警告や国際原子力機関(IAEA)の査察を妨害との報道が飛び出し、WTI原油先物が約3カ月ぶりの93ドル超えまで急伸したが、ドル円は154円前半を中心とした推移を続けた。
8日のドル円は、急落を経て下げ幅縮小。東京時間の序盤、7月実質賃金が市場予想を上回り、9月利上げ期待が高まるなかで売りが先行した。上野厚労相がGPIFの資産構成を適時検証していると認識との発言もあって売りが加速し、153円も割り込んで一時152.89円と2月半ば以来の安値をつけた。その後は買い戻しが優勢となり、共同通信が日銀は9月に0.25%利上げと報じつつ、将来の利上げペース加速などを伝えなかったため失望を招き、NY入りにかけ154.42円まで本日高値をつける乱高下をみせた。
9日のドル円は、3日続落。東京時間の序盤に一時154.02円まで本日高値をつけたが、ベッセント氏が「円安に賭けてみよ、今や胴元は私だ」との発言を受けて、ほぼ終日154円割れでのもみ合いが続いた。7月実質賃金が市場予想を上回り日銀の9月利上げをサポートするなか、153円も割り込み152.94円まで本日安値を更新。しかし、153円割れでは押し目を拾われ、NY時間には米長期債買い戻しスケジュールが発表されるなか、上限が60億ドルだったことが失望され米10年債利回りが急伸する場面でも、154円には届かなかった。
10日のドル円は、4日ぶりに反発。東京時間は153円半ばでの推移を続け、増審議委員が「世界中がインフレ懸念の利上げモード」と述べ、9月利上げを視野に入れた発言を行うなかで、一時153.28円まで本日安値をつけた。しかし、ロンドン時間入りから一転して買い戻しが優勢となった。イランがヨルダン国内の基地を攻撃し米軍機複数に損傷が生じたとの報道や、イランが支援するフーシ派が戦略的要衝バブ・エル・マンデブ海峡周辺への支配を広げたとの報道で、WTI原油先物が100ドルへ急伸し米長期金利も上昇し、「有事のドル買い」が強まった。欧州中央銀行(ECB)のタカ派的利上げや、米8月生産者物価指数(PPI)の前年比加速などもドル円を押し上げ、一時154.67円まで本日高値を更新。しかし、その後は「いってこい」となり、154円割れまで上げ幅を縮小した。もっとも、米長期債買い戻し額が上限60億ドルを下回ったことが市場では失望され、米10年債利回りが4.9%を超え2023年10月以来の水準まで上昇したため、ドル円も154円前半まで切り返す場面がみられた。
11日のドル円は、乱高下を経て反落。東京時間の序盤に発表された8月企業物価指数が前月と比較し鈍化するなか、一時154.62円まで本日高値をつけた。もっとも、日経新聞が共同通信やロイターに続き、日銀が9月に利上げへと報じるなか、米8月CPIの発表を控え上値は重い。NY時間に大注目の米8月CPIが発表されると、コアの前月比が市場予想を上回った結果に反応し一時154.40円台へ急伸も、概ね市場予想と一致した内容を受け上げ幅を縮小し、一時153.24円まで本日安値を付けた。もっとも下値も堅く、153円半ばでNY引けを迎えた。
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