―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は8月24日週に1.64円と、その前の週の1.75円から縮小した。前週比では1.12円の上昇となる。年初来では前週の1.5%高→2.2%高へ上げ幅を広げた。ドル円は日銀の9月利上げ織り込み度が約8割に達するなかでも買いが優勢。氷見野副総裁が9月利上げを明確に示唆しなかったほか、ウォーシュFRB議長が物価を重視する姿勢を強調し米9月利上げ期待が再燃したため、ドル円は一時160.20円と7月31日以来の高値をつけた。
- ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、ジャクソン・ホール講演でインフレ抑制への強い姿勢を示す一方、「決定」ではなく「規律」にコミットすると強調した。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のコミュニケーション失敗を修正した形だが、リアクション・ファンクションはなお曖昧で、裁量の余地を大きく残す。一方、米財務省は長期債買い戻しを倍増し、一般勘定(TGA)活用も検討。利上げで短期金利が上昇すれば、長期金利を抑える債務管理との緊張が強まる可能性がある。
- 9月米利上げ観測が再燃するなか、今週はG20財務相・中央銀行総裁会議で予定される植田日銀総裁とベッセント米財務長官の会談、FIMAレポ・ファシリティの上限引き上げの是非、米8月雇用統計などが焦点となる。FIMAレポは追加介入を支えるインフラ強化になりうる一方、ベッセント財務長官は、足元の円相場について7月末の日米協調介入を招いたような「無秩序な動き」とはみていないとの認識を表明。日銀の利上げペース加速観測がある一方、概算要求の140兆円前後への拡大観測など、財政運営や国債需給への懸念も残るなか、上限引き上げが見送られる展開も想定される。米8月雇用統計は想定通りなら9月米利上げの道を固めそうだが、逆に弱含みなら利上げ期待に冷や水を浴びせそうだ。
- ドル円のテクニカルは、中立地合いから強気地合いへシフトした。ドル円は7月30日高値と8月3日の安値の半値戻しに当たる159.47円を完全に上抜けただけでなく、一目均衡表の基準線、20日を始め50日、100日の指数平滑移動平均線(EMA)も突破した。先週から下値は21日移動平均線がサポートと化しており、上方向を試す勢いを感じさせる。一方で、RSI(14日)は53.08と、中立の節目である50を上回った。割安感が後退するなかで、一段高へ向かうのか地合いの強さを確認することになりそうだ。
- 8月31日週の主な経済指標をみると、31日に日本7月鉱工業生産、独8月CPI速報値、9月1日にユーロ圏、独、米の8月製造業PMI改定値、ユーロ圏8月HICP・速報値、米8月ISM製造業景気指数、米7月雇用動態調査(JOLTS・求人件数)、2日に豪Q2GDP、米8月ADP全国雇用者数を予定する。3日にユーロ圏、独、米総合PMI改定値、米新規失業保険申請件数、米8月ISM非製造業景気指数、4日に米8月雇用統計が控える。
- その他、政治・中銀関連では、8月31日にG20財務相・中央銀行総裁会議(植田総裁とベッセント財務長官が会談する可能性)、9月1日に日本10年利付国債入札、2日に高田審議委員の講演、NZ準備銀行(RBNZ)とカナダ銀行の政策金利発表、米地区連銀発表、3日に日本30年利付国債入札、ウォラーFRB理事やシカゴ連銀、クリーブランド連銀総裁の発言を予定する。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の161.50円、下値は8月安値が近い158.00円と見込む。
1.ドル円振り返り=ウォーシュFRB議長講演で9月利上げ観測再燃、ドル円は7月31日以来の160円乗せ
【8月24日週のドル円レンジ:158.56~160.20円】
ドル円の変動幅は8月24日週に1.64円と、その前の週の1.75円から縮小した。前週比では1.12円の上昇となる。年初来では前週の1.5%高→2.2%高へ上げ幅を広げた。ドル円は日銀の9月利上げ織り込み度が約8割に達するなかでも買いが優勢。氷見野副総裁が9月利上げを明確に示唆しなかったほか、ウォーシュFRB議長が物価を重視する姿勢を強調し米9月利上げ期待が再燃したため、ドル円は一時160.20円と7月31日以来の高値をつけた。
24日のドル円は、買い戻し。東京市場スタートは一時158.56円まで週の安値をつけた。ベッセント財務長官がイランに対し「経済版Dデー」開始すると英FT紙に寄稿した影響か、WTI原油先物が下落し、ドル円の下げにつながったもよう。片山財務相が続投となる見通しが報じられたが、ロンドン時間からは買い戻しが優勢となり、159円台を回復し、一時159.28円まで本日高値を更新した。NY時間入りにCNBCが米財務省は米長期債買い戻しに米財務省一般勘定(TGA)を使用する可能性と報じられた結果、米10年債利回りの低下につれドル円が下落も159円割れは限定的だった。ベッセント財務長官が対イラン向け経済制裁措置を発表したが、反応は乏しかった。
25日のドル円は、続伸。東京時間から買いが優勢となり、ロンドン時間には一時159.49円まで本日高値を更新した。NY時間には米国とイランの戦闘終結に向けた交渉が進むとの観測からドル売りが優勢となったが、159円割れには至らなかった。
26日のドル円は、3日続伸。東京時間の序盤に発表された日本7月企業向けサービス価格指数が市場予想を上回ったこともあって159円を割り込み、一時158.88円まで本日安値をつけた。しかし、159円割れでは押し目を拾われ、NY時間には米7月PCEコアが市場予想と一致し、米Q2実質GDP成長率・改定値が速報値通りで一旦は売りが入るも159円割れでは再び跳ね返された。むしろ、米7月PCE価格指数や米7月個人消費も市場予想を上回ったため買いが再燃し、一時159.45円まで本日高値を更新。ただ、米7月PCEが加速したわけでもなく、一時再燃した9月利上げ期待が後退し、上値を追う動きとはならなかった。
27日のドル円は、4日続伸。東京時間の序盤は売りが先行し、氷見野副総裁の講演開始直後に一時159.12円まで本日安値をつけた。しかし、その後は氷見野氏の講演内容は必ずしも9月利上げの決定打とならず買い戻しに転じ、ロンドン時間には一時159.53円まで週の高値をつける展開。ただ、159円半ばは7月30日高値と8月3日安値の半値戻しにあたり利益確定売りが入りやすく、翌日のウォーシュFRB議長の講演も控え、上値追いには至らなかった。
28日のドル円は、5日続伸。東京時間の序盤に発表された8月東京都区部CPIが市場予想を上回ったためドル円は一時159.30円まで本日安値を更新したが、その後は買い戻しが入り、片山財務相による「日本経済の国際競争力を強化すれば、円の信認は向上する」との発言も無視して買い戻された。ロンドン時間に一旦下押しするも159.40円台までにとどまり、むしろNY時間に入って買いが再燃。米雇用統計・ベンチマーク改定速報値発表後は予想外に下方修正となり159.30台へ下振れしたものの、ウォーシュ氏の講演で「現在最も重視すべきなのは物価」と強調した結果、9月利上げ期待が再燃しドル円は一段高。7月31日以来の160円を突破し、一時160.20円まで上値を広げ大台を保って取引を終えた。
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