Weekly Report(8/10)「米7月CPIと高市人事が交錯、ドル売り・円売り材料の綱引き続くか」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。

マーケット分析
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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は8月3日週に3.35円と、その前の週の6.68円から縮小した。前週比では0.35円の上昇となる。年初来では前週の0.5%高→0.7%高へ小幅に上げ幅を広げた。ドル円は週初も東京時間の序盤に介入らしき動きを確認し、一時155.23円と5月6日以来の安値をつけた。しかし、それ以降は買い戻しが優勢。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙がウォーシュFRB議長に近い関係者の発言として、インフレ次第で9月利上げとなる可能性が報じられると、一時158.58円と介入後の戻り高値をつけた。もっとも、米7月雇用統計・NFPが予想外に減少すると売りが再燃し、157円後半で週を終えた。
  • 米7月雇用統計は、W杯特需の反動や学校休暇入りといった特殊要因を含むものの、NFPの減少、過去分の大幅下方修正、民間雇用の伸び悩み、平均時給の鈍化など、労働需要の減速を示す材料が相次いだ。失業率の改善も労働参加率の低下を伴っており、労働市場の強さを示すとは言い難い。市場では9月利上げ観測が後退。期待インフレやISM仕入れ価格、CPI予想も鈍化方向にあり、米7月消費者物価指数(CPI)が予想通り鈍化するなら、据え置き観測が一段と強まり、ドル円の戻りを重くするだろう。
  • 高市首相が検討する閣僚・党役員人事は、円相場の新たなリスク要因となり得る。片山財務相の交代観測や萩生田氏の幹事長起用案が円安容認への転換と受け止められれば、7月31日に実現した異例の日米協調介入の継続性に疑念が生じかねない。米国はユーロ売り・円買いまで実施しており、円安のアジア通貨への波及も意識していた可能性がある。人事が日米の政策協調への信認を損なえば、円売り再燃にとどまらず、「日本売り」へ波及するリスクもある。
  • ドル円のテクニカルは、弱気地合いがやや後退した。一目均衡表の三役逆転が形成され、200日移動平均線がある158円付近を下回って週を終えた。一方、米7月雇用統計直前の値幅の半値戻しとなる157.50円を上回り、RSI(14日)も31.76と売られ過ぎの節目である30に近い。米7月CPIなどを見極めながらの展開が予想される。
  • 8月10日週の主な経済指標をみると、12日に米7月CPI、13日に日本7月国内企業物価指数、英Q2GDP速報値、米7月生産者物価指数(PPI)と米新規失業保険申請件数、14日は米7月小売売上高、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を予定する。
  • その他、政治・中銀関連では、10日に7月日銀金融政策決定会合の主な意見、11日に豪準備銀行(RBA)の政策金利発表、米3年債入札、12日に米10年債入札、13日に米30年債入札、クリーブランド連銀総裁とリッチモンド連銀総裁の発言が控える。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は一目均衡表の雲の下限が近い159円ちょうど、下値は5月6日の安値付近にあたる155円ちょうどと見込む。


【8月3日週のドル円レンジ:155.23~158.58円】

ドル円の変動幅は8月3日週に3.35円と、その前の週の6.68円から縮小した。前週比では0.35円の上昇となる。年初来では前週の0.5%高→0.7%高へ小幅に上げ幅を広げた。ドル円は週初も東京時間の序盤に介入らしき動きを確認し、一時155.23円と5月6日以来の安値をつけた。しかし、それ以降は買い戻しが優勢。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙がウォーシュFRB議長に近い関係者の発言として、インフレ次第で9月利上げとなる可能性が報じられると、一時158.58円と介入後の戻り高値をつけた。もっとも、米7月雇用統計・NFPが予想外に減少すると売りが再燃し、157円後半で週を終えた。

3日のドル円は、乱高下を経て軟調。東京市場では、トランプ大統領が協調介入を「友情の証」と位置付け、日米財務相もそろって『さらなる日米協調介入に躊躇しない』との声明を発表した。三村財務官からも、協調介入は「日米同盟の完成形」との発言も聞かれた。ベッセント氏の声明に「アベノミクス」との文言が盛り込まれていたこともあり、その後は買いが優勢となり、一時157.89円まで上昇した。ただ、間もなく介入らしき動きが入り、一時155.23円と5月6日以来の安値まで急落。その後は再び買い戻しが優勢。NY時間には、米7月ISM製造業景気指数が市場予想を上回ったこともあり、157円前半まで切り返した。

4日のドル円は、上昇。東京時間は序盤からジリジリ買い戻され、ロンドン時間には一時157.96円まで本日高値を更新した。高市首相が5月の植田総裁との会談で「国債買い入れ」を要請したとの報道も、材料視されたもよう。しかし、200日移動平均線で上値を抑えられ、失速。NY時間にかけ、ベッセント財務長官がCNBCインタビューで今日か明日にもホルムズ海峡で合意可能と発言したほか、日銀は必要なことを行うなどと発言すると、157.30円台へ軟化した。その後は米6月求人件数が市場予想以下にとどまったこともあり、157円半ばを中心としたもみ合いに終始した。

5日のドル円は、続伸。東京時間に発表された6月日銀金融政策決定会合の議事要旨では、利上げ継続路線を強調するようなタカ派的な見解が確認され、ドル円は一時157.31円まで本日安値をつけた。政府が食品消費税「実質ゼロ」につき閣議決定し、財源に外為特会を活用する案が浮かぶとの報道を受けて買い戻され、一時157.85円まで本日高値を更新。NY時間に発表された米7月ADP全国雇用者数や米7月ISM非製造業景気指数が市場予想以下だったものの、小幅に下押しした程度で、全体的に動意に乏しかった。

6日のドル円は、3日続伸。東京時間からジリジリと上昇し、米7月雇用統計を控え買い戻しが入った。ロンドン時間も特に材料薄のなか買いの流れが続き、NY時間に米新規失業保険申請件数が市場予想以下にとどまったことも、買いを後押しした。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が、ウォーシュFRB議長に近い関係者の発言として、インフレ加速なら9月利上げと報じると、158円を突破し、一時158.56円まで切り上げた。

7日のドル円は、売り優勢。東京時間は、米7月雇用統計を前に英FT紙の報道を受けた9月利上げ観測から買いが先行し、一時158.58円まで週の高値をつけた。その後は、158円前半でもみ合いが続いたが、NY時間に発表された米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が前月比でマイナスに転じた結果、急落。157円を割り込み、一時156.67円まで本日安値をつけた。しかし、NFPの落ち込みはW杯特需の反動や夏季休暇に伴う公立学校の教育部門の雇用減という季節的要因と判断されたほか、失業率が前月から改善したため買い戻され、157円後半で週を終えた。

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