―Executive Summary―
- ドル円は7月27日週に6.68円と大きく変動し、前週の1.79円から急拡大した。前週比では6.34円の急落となり、週足は4週ぶりの反落。年初来の上昇率も4.5%高→0.5%高へ縮小した。FOMC前にはサプライズ利上げ観測で163.95円まで上昇したが、据え置き決定とウォーシュ議長が9月利上げを示唆しなかったことで反転。7月30日には本邦の介入観測で158円割れとなった。日銀会合は予想通り据え置きで、植田総裁の慎重な利上げ姿勢も市場への影響は限定的。むしろ、米財務省の円買い介入の可能性や、ベッセント財務長官の「円買い50~100億ドル」メモ、さらにユーロ売りを通じた米財務省の円買い介入報道が重なり、ドル円は157.28円まで下落。一目均衡表の雲下限、200日指数平滑移動平均線(EMA)と200日移動平均線をいずれも下抜けて週を終えた。
- 高市政権が骨太の方針で強調したように、成長を促すべく「責任ある積極財政」を推進するなか、7月30~31日の48時間で円安是正の動きが加速した。日本政府・日銀が6.4兆~7.25兆円規模の円買い介入を実施、韓国も同時に動いたとみられる。31日には日銀が政策金利を据え置く一方、植田総裁が利上げペース前倒しを示唆。米財務省もレートチェックに続き、NY連銀を通じユーロを売り円を買う形で介入に参加した。米国の円買い介入は1998年以来28年ぶりとなる。
- 米国の介入原資ESFはユーロ資産が円の2.2倍あり、ユーロ売却は理にかなう。ベッセント財務長官の介入には、日本による米国債売却回避、支持率低迷する高市政権への援護、外為特会の剰余金を通じた財源論議の後押しという計算が透ける。8月3日、日米財務相はさらなる協調介入も辞さない姿勢を表明。実際に再介入とみられる動きがあり、ドル円は5月6日の安値155.03円に接近した。ベッセント氏の過去の投稿を踏まえれば、日銀へ利上げを促す狙いとみられるが、それに加え、政府・日銀アコード見直しという「対価」を高市政権に迫る可能性にも留意したい。逆に、財政・金融政策の枠組みが変わらなければ、構造的な円安リスクが将来的に再燃しかねない。
- ドル円のテクニカルは、完全に弱気地合いに反転した。前週末にドル円は157.45円と一目均衡表の雲の下限だけでなく、前回4月―5月介入での止められた200日EMA・移動平均線を割り込んで終了。トレンド転換の兆しが見える。RSI(14日)が割安の30を下抜け24.23まで低下したが、日米が週明けに円安是正の方針を発表する予定と報じられており、割安感でドル円の押し目を拾う局面ではなくなっている。
- 8月3日週の主な経済指標をみると、3日に米7月ISM製造業景況指数、4日に米6月JOLTS(求人件数など)、5日にNZQ2失業率、日6月実質賃金、ユーロ圏・独・米総合PMI改定値、米7月ADP全国雇用者数、米7月ISMサービス業景況指数、6日に米新規失業保険申請件数、7日に米7月雇用統計を予定する。
- その他、政治・中銀関連では3日に財務省為替介入実績(4ー6月)、4日に日本10年利付国債入札、5日に日銀6月会合議事要旨公表、クックFRB理事の発言、6日に日本30年利付国債入札、セントルイス連銀総裁の発言、7日に米7月NY連銀インフレ期待、リッチモンド連銀総裁の発言が控える。株式市場では、スペースXが4日に決算発表、6日にロックアップ解除を予定する。
- 以上を踏まえ、今週の上値は一目均衡表の雲の下限が近い159円ちょうど、下値は年初来安値手前の心理的節目152.50円と見込む。
1.ドル円振り返り=FOMC・日銀会合明け、30年ぶりに日米が協調介入に踏み切り158円割れ
【7月27日週のドル円レンジ:157.28~163.95円】
ドル円の変動幅は7月27日週に6.68円と、その前の週の1.79円から拡大し、2024年9月以来の大きさとなった。前週比では6.34円も急落し、週足で大幅に4週ぶりに反落。年初来では前週の4.5%高→0.5%高へ急縮小した。ドル円はFOMCを控え、サプライズ利上げ観測もあって7月28日に一時163.95円まで週の高値をつけたが、据え置きを決定したほかウォーシュFRB議長が会見で9月利上げを明確に示唆せず、売りに反転。加えて、7月30日には本邦当局の介入が入ったとされ、158円割れ。日銀金融政策決定会合では市場予想通り据え置きで、植田総裁は非常に慎重に利上げペースの拡大を示唆したところ、影響は限定的だった。むしろ、その後は米財務省が円相場に介入する可能性を告知したと報じられたほか、ベッセント財務長官の「やることリスト、円買い、50億-100億ドル」というメモ、米財務省によるユーロを介した円買い介入が伝えられた。ドル円は一時157.28円と5月14日以来の安値をつけ、一目均衡表の雲の下限だけでなく、4月ー5月介入で止められた200日EMAと200日移動平均線を下抜けて大引けを迎えた。
27日のドル円は、売り先行後に買い戻し。東京市場のドル円は、前週末にトランプ氏がイランへの攻撃停止を指示したと報じられ、イランも報復休止を発表したことで、窓を開けて下落し163円半ばでスタートした。衆院予算委員会で高市氏が発言すると、やや上向きつつ動意に乏しい。高市氏が午後6時から会見を予定との発表もあって手掛かり難だったが、ロンドン時間入りには一時163.33円まで本日安値を更新。もっとも、イラン外務省報道官が「現在米国との対話や交渉を行っていない」と発言したこともあって買い戻され、高市氏が会見で食料品消費税減税について言及を控えつつ、「デフレ脱却と言える状況にない」、「過度な緊縮志向から脱却」などと発言すると、買い戻された。NY時間にかけては、食料品の2年限定の消費減税について、政府・与党は来年4月から1%に引き下げる方針を固めたと報じられ、ドル円は買いが優勢に。一時は163.80円まで上昇し、朝方に開けた窓を概ね埋めた。トランプ氏がイランとの交渉が失敗すれば「強力な軍事行動に戻る」と発言したことも、材料視された。
28日のドル円は、上昇。東京時間に片山財務相が円安けん制を行うも、断固や果断といったキーワードを使わず、買いが先行した。シタデル・セキュリティーズなど7月FOMCでサプライズ利上げを予想する向きもあり、163円後半での推移を継続。熊本県で震度7の大地震が発生すると、ドル円は利上げ困難との見方が再燃し、一時163.95円まで週の高値をつけた。その後は上げ幅を削り、NY時間にはトランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相の会談を受け、一時163.65円まで本日安値を付けた。事前に、イランによるピックアックス山での地下核施設の建設・掘削活動再開について、ネタニヤフ氏がトランプ氏に提示すると報じられたが、これをトランプ氏が事前のインタビューでけん制したため、イランへの大規模攻撃のリスクが低下したとの思惑から、有事のドル買いが巻き戻されたかたちとなった。
29日のドル円は、下落。東京時間はNY時間からのドル売りの流れを引きつぎ、一時163.28円まで下落した。豪6月CPIが市場予想以下にとどまり、豪準備銀行(RBA)の8月利上げ期待が後退したことで、クロス円の下落もドル円を押し下げた。もっとも、FOMCを控えロンドン時間からは買い戻され、NY時間には一時163.91円まで本日高値を更新。しかし、FOMCが市場予想通り据え置きを発表したものの、利上げ票が地区連銀総裁の3人にとどまり、売りへ反転した。ウォーシュFRB議長が9月利上げを示唆しなかったことで会見中には下げ幅を拡大し、一時163.23円まで本日安値をつけた。
30日のドル円は、大幅続落。東京時間から売りが先行し、ドル円は163円前半で推移した。夕方に高市首相が食料品の消費税率を2027年4月から2年間限定で現行の8%から1%に引き下げる意向を表明した。財源について具体策は明示しなかったが、赤字国債に頼らないと述べたほか、租税特別措置・補助金の見直し、税外収入の確保などを列挙し「市場の信認が得られるよう、赤字国債に頼らずに確保する」とも言及。あらゆる特会や基金から歳入確保の取り組みを進めるとも述べるなか、外為特会の剰余金を一般会計に回すのではとの見方が広がり、ドル円は売りへ舵を切り、ロンドン時間に163円を割り込み、162円前半へ下落。NY時間には、米Q2実質GDP成長率・速報値が市場予想以下に終わり、米6月PCE価格指数もインフレ鈍化を示したが、反応は限定的だったところ、その1時間に急落を開始した。日本と韓国が同じタイミングで介入に踏み切ったとみられ、ドル円は日本時間の22時半頃に162.80円付近から一気に157.95円と約2カ月ぶりの安値をつけた。その後は159.60円台まで切り返したが、今度はNY連銀のレートチェックの観測が広がり戻りを抑え、ベッセント財務長官が「円は過小評価」と発言したこともあって、159円前半で取引を終えた。
31日のドル円は、3日続落。東京時間の朝方、三村財務官が介入について質問されるなか「米当局から単なる精神的支援を超える支援を得ている」と発言し、片山財務相が「常に緊張をもって対応」と述べたが、ドル円は粛々と買い戻された。日銀が据え置きを発表すると、ドル円は一時160.88円まで本日高値をつけた。もっとも、展望レポートでは基調的物価が2%から上振れするリスクについて指摘するなどタカ派的な内容もあって、以降は上げ渋った。植田総裁の会見では、基調的物価上昇率がかなり2%に近づきつつあるなか、上振れていくリスクは無視できない、そうならないよう政策運営していくとタカ派的な発信を行ったこともあって、160円半ば付近でもみ合いを継続。その後、ドル円は急落し一時158.55円まで本日安値を更新し、NY時間に戻りを試すも、米財務省が円相場で介入する可能性を告知したとのロイター報道もあって160円半ばから再び急落し、159円を割り込んだ。NYの正午前には、ロイターが閣議出席中のベッセント氏の手元にあった「やることリスト、円買い50億ー100億ドル」と明記されたメモが伝えられた。そのニュースでの値動きは限られたが、英フィナンシャル・タイムズ紙が「米当局がユーロ円で介入し、30年ぶりに日米が協調介入」と報じると、今度は158円割れを試す展開。一旦159円へ切り返したが、再び介入が入ったのかNY引けに158円だけでなく重要なテクニカルポイントである200日EMA・移動平均を下抜け、一時157.28円と5月12日以来の安値をつけた。
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