Weekly Report(8/24)「米財政健全化策と対イラン制裁、日米中銀要人発言でドル円は方向感探る」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。

マーケット分析
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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は8月17日週に1.75円と、その前の週の1.94円から縮小した。前週比では0.34円の下落となる。年初来では前週の1.7%高→1.5%高へ上げ幅を縮小した。ドル円は米国とイランの対立激化をにらみ、160円回復をうかがう動きを見せ、一時159.78円まで日米協調介入後の戻り高値をつけた。米財務省が米長期債買い戻し増額を発表すると、米長期債利回りの急低下につれ、ドル円も一時158.03円と8月10日以降の上昇を概ね打ち消す展開。しかし、米財務省の買い戻し増額の効果は一時的で、米長期債利回りの下げ幅縮小につれ、ドル円も159円台を回復する場面がみられた。
  • 米財務省は、長期金利が約20年ぶりの高水準を付けた翌日、10~30年債の買い戻し上限を1回20億ドルから少なくとも40億ドルへ倍増した。市場全体の約0.01%にすぎず、QEとも異なるが、市場では金利上昇時の介入を示唆する「ベッセント・プット」と受け止められた。今後、買い戻しをTビル増発で賄い、市場性国債残高の加重平均残存期間(WAM)が短期化すれば、「財務省版ツイスト」の色彩が強まる。焦点は11月4日の四半期定例入札発表(QRA)と、米国債の実質供給、WAM、将来の利払い負担と言えそうだ。
  • 8月27~29日のジャクソン・ホール会議で、ウォーシュFRB議長が初の基調講演に臨む。9月15-16日予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げの可能性は低く、ウォーシュ氏が引き締め示唆を与えるとは想定しづらい。焦点は金融・決裁におけるイノベーション、銀行仲介、FRBのバランスシートを結ぶ新たな政策原則だ。米財務省が米長期債買い戻しを拡大するなか、両者の役割分担を示し、巨額債務時代の中央銀行像を描ければ、過去5回に続く「第6の転換点」となり得る。
  • ドル円のテクニカルは中立地合いを保つ。ドル円は前週、一時159.78円と7月30日高値と8月3日安値の半値戻しがある159円半ば付近をクリアに抜けたが、米財務省による米超長期債買い戻し増額発表を受けて再び同水準が抵抗線として意識される。一目均衡表の雲の下限も、再び下抜けた。ただし、下値は200日移動平均線(158.33円)がサポートとして機能しており、方向感が出づらい。ベッセント財務長官による財政健全化策の方針の他、同氏による24日予定の対イラン制裁発表、27日に予定する氷見野副総裁の講演や、28日予定のウォーシュ氏のジャクソン・ホール会議の講演で方向感を試すこととなりそうだ。
  • 8月24日週の主な経済指標をみると、25日に米8月消費者信頼感指数、26日に日本7月企業向けサービス価格指数、豪7月CPI、米7月個人消費支出・所得・PCE価格指数、米Q2実質GDP成長率・改定値、27日に米新規失業保険申請件数、28日に8月東京都区部CPI、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を予定する。
  • その他、政治・中銀関連では、24日にベッセント財務長官による対イラン「史上最も厳しい制裁」発表、25日は日銀のCPIコア指標、豪中銀議事要旨、米2年債入札、26日は米5年債入札、27日は氷見野副総裁の講演、米7年債入札、28日は外国為替平衡操作実施状況(7月30日-8月26日)、米労働省労働統計局(BLS)雇用統計年次基準改定(速報値)、ウォーシュFRB議長、ジャクソン・ホール会合講演を予定する。株式市場の重要イベントとして、26日にエヌビディアの決算発表が控える。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の160.50円、下値は200日EMAが近い157.90円と見込む。


【8月17日週のドル円レンジ:158.03~159.78円】

ドル円の変動幅は8月17日週に1.75円と、その前の週の1.94円から縮小した。前週比では0.34円の下落となる。年初来では前週の1.7%高→1.5%高へ上げ幅を縮小した。ドル円は米国とイランの対立激化をにらみ、160円回復をうかがう動きを見せ、一時159.78円まで日米協調介入後の戻り高値をつけた。米財務省が米長期債買い戻し増額を発表すると、米長期債利回りの急低下につれ、ドル円も一時158.03円と8月10日以降の上昇を概ね打ち消す展開。しかし、米財務省の買い戻し増額の効果は一時的で、米長期債利回りの下げ幅縮小につれ、ドル円も159円台を回復する場面がみられた。

18日のドル円は、続伸。東京市場は売り先行、一時159.30円まで本日安値を更新した。ロンドン時間には買いが優勢となり、一時159.78円と7月31日以来の高値をつけた。時間外取引で米30年債利回りが5.32%台まで上昇し、2007年以来となる約19年ぶりの高水準を更新したことも材料視された。しかし、その後は買いも一巡。NY時間にトランプ氏が自身のSNSに「イランとの協議や対話は行われておらず、予定もない」と投稿したが、値動きは限られた。

19日のドル円は、急落。東京時間は序盤から売りが先行し、トランプ氏がカナダ向け関税50%の発動一時停止を発表したこともあって、ドル/加ドルの下落(ドル安・加ドル高)に連れたことも一因となった。日本株安・債券安の裏で、ドル円は売りが優勢となり、159円割れを試す展開。NY時間には、米財務省が長期債買い戻し増額を突如発表し、米長期金利が急低下する動きにつれてドル円も159円付近から急落、一時158.04円まで下落。その後は買い戻されたが、7月FOMC議事要旨がそれほどタカ派的な内容と受け止められず158.60円台までにとどまり、159円前半へ押し返され、引けを迎えた。

20日のドル円は、もみ合い。東京時間早々に一時158.03円まで8月3日以来の安値を付けた後は買い戻され、米財務省の長期債買い戻し増額への影響は限定的との思惑も買いにつながった。ロンドン時間入りにかけ、158.70円台へ上昇。そこまでくると7月30日高値と8月3日安値の38.2%戻しにあたる158.47円付近を超えた水準にあり、一目均衡表の雲の下限158.94円も意識され、一旦は158.20円台へ押し下げられたが、買い意欲は根強い。NY時間からは買いが優勢となり、159円台を回復し一時159.18円まで切り上げた。

21日のドル円は、もみ合い。東京時間の序盤に発表された7月全国CPIは市場予想を上回ったものの、ドル円は一時159.13円まで本日高値を更新した。ロンドン時間からは159円を上下するもみ合いを経て、米長期債利回りの低下につれ、一時158.35円まで本日安値をつけた。もっとも、200日移動平均線が支えとなり、NY時間には買い戻され159円付近で取引を終えた。

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