―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は8月10日週に1.94円と、その前の週の3.35円から縮小した。前週比では1.52円の上昇となる。年初来では前週の0.7%高→1.7%高へ上げ幅を広げた。ドル円は日米協調介入後の戻りを試すかのごとく、買いが先行した。しかし、立て続けに日銀の9月利上げ観測並びに利上げのペースアップ報道が流れ、さらに追加の日米協調介入に言及した元財務官の発言もあって、上げ渋り。米7月消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、小売売上高などそろって市場予想以下の米指標も、ドル円の上値を抑え、政府・日銀の介入があった7月30日の高値と8月3日の安値の半値戻し、159.46円をかろうじて下回り週を終えた。
- 米7月消費者物価指数(CPI)を始め、米重要指標がこぞって9月利上げを正当化しない結果となった。米7月CPIは前年同月比で2カ月連続にて鈍化、米7月PPIも前年比で4カ月ぶりの低水準。米7月小売売上高はプライムデーの6月前倒しで無店舗が弱含みとなった特殊要因が押し下げたものの、自動車・ガソリンもそれぞれ押し下げた。一連の結果を受け、FF先物の9月利上げ織り込みは33%に低下したが、コアCPIの高止まりとイラン情勢緊迫化で年内利上げ観測は根強い。12月までの利上げ確率は8月14日に64%と高水準にあり、「有事のドル買い」もドル円の下値を支えている。
- トランプ大統領は8月14日、「イランを完全に打ち負かした後、ホルムズ海峡を米国領と宣言」と表明。法的根拠はほぼ皆無だが、選挙向けの支持固めの色合いが濃い。一方、ベッセント氏の「来週前例のない経済的孤立措置」はより実質を伴う可能性があり、カギは中国と言える。対中制裁が銀行システムに及べば次元の異なる対立に発展しうるが、47年の制裁実績を踏まえれば従来路線の延長との見方も。原油はIEAの需給悪化と在庫急増が交錯し82ドル台で伸び悩む。今後の対応次第で、ドル円の方向性を決定づける公算が大きい。
- 日銀の9月利上げ観測が強まるも、ドル円は159円を割り込んでも、押し目買いが入る状況だ。城内経財相は積極財政が円高要因になると主張するが、機械受注残の供給制約や物価対策のガソリン税減税効果を見ると、政府の説明は市場に額面通り受け取られていない。円安のプラス面を重視する経済ブレーンの影響が高市政権内に根強く、利上げに消極的な空気もにじむ。古澤元財務官は、介入だけでなく日銀の速い利上げ経路が必要と指摘。本田悦朗氏のX投稿は、会田氏の「国債は返さなくてよい」論への牽制とも読め、政権内の経済ブレーンの路線対立が透ける。政策の一貫性が示されない限り、円安トレンド反転は難しい。
- 8月17日週の主な経済指標をみると、17日に日本Q2実質GDP成長率速報値、米8月NY連銀製造業景気指数、18日英7月失業率、米7月輸入物価指数、19日に英7月CPI、20日に豪7月失業率、米新規失業保険申請件数、米8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、21日に日本7月全国CPI、ユーロ圏、独、米8月製造業PMI速報値などを予定する。
- その他、政治・中銀関連では、19日に7月FOMC議事要旨の公表、米国による一部カナダ製品の50%関税発動、米20年債入札が控える。
- 以上を踏まえ、今週の上値は21日移動平均線がある160.50円、下値は200日移動平均線が近い158.20円と見込む。
1.ドル円振り返り=7月30日高値と8月3日安値の半値戻し159.46円を辛うじて下回り終了
【8月10日週のドル円レンジ:157.63~159.57円】
ドル円の変動幅は8月10日週に1.94円と、その前の週の3.35円から縮小した。前週比では1.52円の上昇となる。年初来では前週の0.7%高→1.7%高へ上げ幅を広げた。ドル円は日米協調介入後の戻りを試すかのごとく、買いが先行した。しかし、立て続けに日銀の9月利上げ観測並びに利上げのペースアップ報道が流れ、さらに追加の日米協調介入に言及した元財務官の発言もあって、上げ渋り。米7月消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、小売売上高などそろって鈍化した米指標も、ドル円の上値を抑え、政府・日銀の介入があった7月30日の高値と8月3日の安値の半値戻し、159.46円をかろうじて下回り週を終えた。
10日のドル円は、大幅上昇。東京時間に7月の日銀金融政策決定会合「主な意見」が公表され、利上げペースアップの必要性が明記されるなどタカ派的だったが、市場の反応は限定的だった。むしろ、米国とイランの緊張再燃を懸念した「有事のドル買い」に加え、日曜に報じられた片山財務相の交代観測などが材料視されたのか、買いが優勢。NY入りにかけ城内経財相が「責任ある積極財政は円高要因」との発言が伝わっても買いの流れが続き、159円回復をうかがう展開に入った。しかし、共同通信が植田総裁による日銀金融政策決定会合後の会見での9月利上げ示唆が、日米協調介入につながったと報じると、一時158.40円台へ急落。もっとも、そこからは押し目を拾われ、7月末以来の159円を回復し、一時159.37円まで上昇した。ガリバフ国会議長の顧問がトランプ氏の任期切れとなる2029年まで交渉しない方向性に言及したほか、トランプ氏が賠償を求めるイランに「賠償返し」に言及したことも、材料視された。なお、ハセットNEC委員長が円相場に関してベッセント財務長官の管轄との発言が話題になったが、介入措置についてであり、誤訳だったことが判明した。
11日のドル円は、高止まり。東京市場が休場のなか、ドル円は序盤に一時158.92円まで本日安値をつけた。もっとも、すぐに買い戻され159円前半での推移を継続。ロンドン時間には一時159.39円まで本日高値をつけたが、パキスタン国防相が米・イランは合意に近づくとの言及を受けて上げ渋り、NY時間も高値圏でのもみ合いに終始した。
12日のドル円は、乱高下を経て買い戻し。東京時間は買いが先行したが、159.40円台で上げ渋ると、ロンドン時間に突如急落し、米7月CPIの発表を控え一時158.58円まで本日安値を更新した。NY時間に米7月CPIが市場予想と概ね一致した結果が出ると、再び158.50円割れを試すも下値は堅い。むしろ、中東情勢への警戒感もあって怒涛の買い戻しが入り一時159.55円まで本日高値を更新した。
13日のドル円は、続伸。東京時間に発表された7月企業物価指数は川上・川中での物価圧力の高止まりを確認したが、159円前半へ軟化する程度だった。ブルームバーグが「日銀が10月までの利上げ視野、介入効果維持で政府も支持姿勢」と報じると、一時159.10円台へ下落も下値は堅い。NY時間には米7月生産者物価指数(PPI)が市場予想より弱く下落も、一時159.02円までと大台を割り込まず。昨晩の米7月CPI後と同じく買い意欲を確認し、むしろ一時159.57円まで日米協調介入後の戻り高値をつけた。
14日のドル円は、売り優勢。東京時間は買いが先行し、序盤に一時159.54円まで本日高値をつけた。ベッセント財務長官による「来週、これまでにない措置をイランに適用」との発言が、有事のドル買いを支えたもよう。しかし、その後は古澤元財務官が「円安是正に向け再び介入もありうる」と述べたほか、9月と12月の日銀利上げに言及し、上値を抑えた。さらに、ロイターが日銀関係者の話として「早ければ日銀は9月利上げを想定 『ペース加速』も視野」と報じると、159.10円台へ下押し。ロンドン時間に入ると、米7月小売売上高を控えてドル売りが強まり、NY時間に米7月小売売上高の発表前に159円割れ。予想外にマイナスとなった同指標結果を受けて一時158.60円まで本日安値をつけた。しかし、米7月CPI発表後などの流れと同じく押し目を拾う向きも強く、159円前半を回復して週を終えた。
ようこそ、トレーダムコミュニティへ!





