Weekly Report(7/6)「高市政権の「変心」と年内の米利上げ後退観測で、ドル円の頭打ち感を見極め」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。

マーケット分析
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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は6月29日週に2.36円と、その前の週の0.88円から拡大した。前週比では0.41円下落し、週足で3週ぶりに反落。年初来で最大だった前週の3.2%高を下回り、3.0%高となった。米6月雇用統計を控え、ハセットNEC委員長やベッセント財務長官が相次いで強い数字になると予想した結果、米利上げ期待が高まり、ドル円は買いが先行。高市政権が骨太の方針の原案で日銀は適切な金融政策が重要との文言を盛り込んだことも、ドル円を押し上げ、一時162.84円と1986年12月以来の水準へ上昇した。しかし、米6月雇用統計前から調整が入り、結果自体は非農業部門就労者数(NFP)が市場予想以下に終わったため、下落。翌3日には、経済財政諮問会議メンバーである第一生命ライフ資産運用経済研究所の永濱利広首席​エコノミストが日銀は今後も緩やかなペースで利上げすべきと述べたと報じられ、一時160.48円と6月18日以来の安値をつけた。
  • 米6月雇用統計は非農業部門就労者数(NFP)が前月比5.7万人増と、市場予想の半分程度にとどまった。一因は、W杯特需のはく落で、娯楽・宿泊が前月の増加から減少に転じたことが大きい。失業率は4.2%に低下したが、労働参加率の低下が主因であり、手放しで喜べる内容ではない。FF先物市場での9月利上げ確率は低下し、年内利上げの後ずれが意識される。米6月消費者物価指数(CPI)が次の焦点で、既にウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長はインフレ並びにインフレ期待の低下に言及し、ベッセント財務長官はインフレ鈍化に伴う実質賃金の上昇に言及済みだ。インフレが加速しなければ年内利上げ期待が巻き戻され、2024年7月のような介入シナリオが現実味を帯びてくる。
  • ドル円が1986年12月以来の高値162.84円をつけた後、麻生副総裁や経済財政諮問会議メンバーから円安けん制発言が相次ぎ、政権の姿勢に「変心」観測が浮上した。米為替報告書の公表を控え、骨太方針の日銀けん制文言の削除やアコード修正といった対応が視野に入る。米6月CPIが加速せず、介入との合わせ技が機能すれば、一時的な下落にとどまらずドル円のピークアウトにつながるシナリオが視野に入ってきたと言えそうだ。
  • ドル円のテクニカルは、強気地合いが後退した。5月15日以降続いた強力なサポートである21日移動平均線を始め、一目均衡表の転換線や基準線も一時的に割り込んだ。しかし、週の終値ではこれらの水準を戻して161.38円で終了しており、強気トレンドが終了したかは不透明感が残る。RSI(14日)が7月1日に割高の節目である70を超え77.08を記録した後に55.32で週を終えており、中立水準に戻しているだけに、下値で押し目を拾われる状況に変わりはないようにみえる。
  • 7月5日週の主な経済指標をみると、6日にユーロ圏と独の6月総合PMI確報値、米6月ISM非製造業景気指数、7日に日本5月実質賃金(毎月勤労統計調査)、9日に日本6月企業物価指数、中国6月CPIとPPI、米新規失業保険申請件数を予定する。
  • その他、政治・中銀関連では6日にウォラーFRB理事の発言、7日に米3年債入札、8日にNZ準備銀行(RBNZ)が政策金利を発表、米10年債入札、9日に日銀支店長会議・地域経済報告(さくらレポート)、米30年債入札、6月FOMC議事要旨の発表、NY連銀総裁やダラス連銀総裁の発言が控える。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の162.50円、下値は50日指数平滑移動平均線(EMA)が近い160.20円を見込む。


【6月29日週のドル円レンジ:160.48~162.84円】

ドル円の変動幅は6月29日週に2.36円と、その前の週の0.88円から拡大した。前週比では0.41円下落し、週足で3週ぶりに反落。年初来で最大だった前週の3.2%高を下回り、3.0%高となった。米6月雇用統計を控え、ハセットNEC委員長やベッセント財務長官が相次いで強い数字になると予想した結果、米利上げ期待が高まり、ドル円は買いが先行。高市政権が骨太の方針の原案で日銀は適切な金融政策が重要との文言を盛り込んだことも、ドル円を押し上げ、一時162.84円と1986年12月以来の水準へ上昇した。しかし、米6月雇用統計前から調整が入り、結果自体は非農業部門就労者数(NFP)が市場予想以下に終わったため、下落。翌3日には、経済財政諮問会議メンバーである第一生命ライフ資産運用経済研究所の永濱利広首席エコノミストが日銀は今後も緩やかなペースで利上げすべきと述べたと報じられ、一時160.48円と6月18日以来の安値をつけた。

29日のドル円は、上昇。米国とイランが攻撃を再開するなか、トランプ大統領、イランの要請で翌30日にドーハでイランと会合と投稿したものの、ドル円は東京時間から緩やかに上昇した。NY時間にハセットNEC委員長がCNBCインタビューで米6月雇用統計が強い結果になるとの見通しに言及すると、2024年7月高値161.95円を超え、161.97円まで上値を拡大。直後に161.80円台へゆるんだものの、すぐに買い戻され161.90円台でNY時間を終えた。

30日のドル円は、一段高。東京時間の仲値のタイミングで買いが強まり、ドル円は162円を突破し一時162.40円台へ上昇した。片山財務相が「必要に応じていつでも適切に対応」、「断固たる措置が含まれる」と述べたが反応薄で、ドル円は162円台をキープ。ロンドン時間入りにかけて再び162円半ばをトライし、佐藤審議委員の就任会見で円安容認発言が期待され再度高値を目指す動きがみられた。それでも162円半ばを達成できなかったが、高市政権が骨太の方針原案で政権が目指す「強い経済」実現には日銀の適切な金融政策運営が「非常に重要だ」と明記したこともあって、利上げけん制と受け止められドル円の買いをサポート。NY勢参入につれ、上値追いに勢いがついた。ベッセント財務長官がハセットNEC委員長に続き強い米6月雇用統計のフラグを立てた後は、一時162.67円まで上値を拡大した。

1日のドル円は、上値拡大後に失速。東京時間に発表された日銀短観は大企業製造業の景況判断が5四半期連続で改善し日銀の利上げをサポートする内容だったが、ドル円は反応薄で上値を切り上げ一時162.84円まで1986年12月以来の高値を更新した。三村財務官が日米当局の連携「最も緊密な状態」と発言すると一時162.50円台へ下落も一時的。その後は162円後半でもみ合いを続け、NY時間に市場予想以下の米6月ADP全国雇用者数が発表されても反応に乏しい。むしろ、ECBフォーラムのパネル・ディスカッションに参加したウォーシュFRB議長が7月利上げを示唆しなかったため売りへ急旋回し、一時162.29円まで本日安値を更新した。

2日のドル円は、急落。米6月雇用統計の発表と米国の3連休を控え、東京時間に162円後半から下り坂へ向かい、ロイターが日本当局の介入が事前警告型から沈黙戦略へ移行するとの報道を受けて、売りが強まった。韓国の財政経済次官が為替で日本と協力する方針と述べると、日韓の協調介入観測から一段安となり、自民党の麻生副総裁が「40年ぶりの円安水準も気になる」と発言すると売りに拍車が掛かり、161円割れ。大台を下回ると押し目を拾われ161円半ばへ切り返しつつ、NY時間に入り米6月雇用統計が発表されると、非農業部門就労者数(NFP)が市場予想以下に終わった結果、一時160.62円まで切り下げた。ただ、引き続き大台割れでは下値が堅く、161円前半でNY時間を終えた。

3日のドル円は、反発。東京時間は買いが先行し、ドル円は一時161.52円まで本日高値を更新した。しかし、買い戻しの勢いは長続きせず、片山財務相が閣議後の会見で「必要に応じいつでも適切に対応」と発言が聞かれるなか161円前半でもみ合いとなった。城内経財相が日経新聞のインタビューで金利上昇について「責任ある積極財政だけと言えない」との発言が伝わったが反応薄で、むしろロンドン時間に入り売りが被さった。経済財政諮問会議メンバーである第一生命ライフ資産運用経済研究所の永濱利広首席エコノミストが「日銀は今後も緩やかなペースで利上げすべきと述べたと報じられ、一時160.48円と6月18日の安値に並んだ。以降は米国市場が休場のなかジリジリ買い戻され、161.30円台で週を終えた。

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