Weekly Report(7/21)「GPIFの国内投資引き上げ議論見極めつつ、ドル円は高値圏もみ合い続くか」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。

マーケット分析
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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は7月13日週に0.94円と、その前の週の1.43円から縮小した。前週比では0.77円上昇し、週足で続伸。年初来では3.7%高と最大の上げ幅となった。米6月消費者物価指数(CPI)が市場予想比で下振れした結果、一時161.61円まで下落するも、米国とイランの再衝突が意識され「有事のドル買い」が再燃し下値は限定的。骨太方針の原案修正や、高市首相によるGPIFの国内投資引き上げに関する発言を受けても、162円前半へ切り返し週を終えた。
  • 高市政権が、GPIFの国内投資引き上げに動き出した。GPIFの国内投資引き上げには①基本ポートフォリオ見直し、②乖離許容幅の活用、③オルタナ投資の上限5%までの拡大――の3経路が想定される。①は2014年型(有識者会議、1年超)とGPIF内部完結型の2手法があるが、後者でも厚生年金保険法上の目的適合性は不透明。日米財務相共同声明や為替報告書を踏まえ米国への配慮も必要だが、片山財務相は緊密な対話を強調しており、米国と連携しているならば、②の乖離幅調整と、③のオルタナ投資上限までの拡大の2つが、まず現実的な選択肢となりうる。
  • 米連邦準備制度理事会(FRB)は、ウォーシュ議長が立ち上げた5つのタスクフォースをめぐり、外部有識者15人を起用した。年末までをめどに、米連邦公開市場委員会(FOMC)へ提言をまとめる予定。ウォーシュ氏は議会証言でタスクフォースは「発見モード」と説明し、外部委託ではないと強調。メンバーについて、ロイターは「A評価」とし、オマハの賢人ウォーレン・バフェット氏も「良い人選」と発言するなど、好意的な評価が目立つ。元中銀トップを始め、各界を代表する有識者や専門家が顔そろえるなか、コミュニケーション手段からインフレ枠組みまで協議する過程で、政策を変更するかというと、疑問が残る。次回7月28~29日のFOMCは据え置が有力視されているが、タスクフォースがFRB体制を見直すなか、よほどインフレが加速しない限り、利上げなど政策変更の公算は小さいと見込む。
  • ドル円のテクニカルは、引き続き翳りをみせながらも強気地合いを維持している。7月1日につけた1986年12月以来の高値162.84円を付けてから、ボリンジャーバンドの+2σを狙う動きが手控えられ、高値圏でのもみ合いが続く。その反面、下値は21日移動平均線と一目均衡表の転換線を明確に抜けられず、下値自体も切り上がってきた。RSI(14日)は59.4と割高の節目である70を下回る推移が続き、方向感に欠ける印象は否めない。
  • 7月20日週の主な経済指標をみると、21日にNZQ1CPI、英6月失業率、ユーロ圏と独のZEW景況感指数、22日は英6月CPI、23日は豪6月失業率、24日は日本6月全国CPI、ユーロ圏や独、米の総合PMI速報値(製造業・サービス業含む)を予定する。
  • その他、政治・中銀関連では20日にバーナム英首相の就任、21日に骨太方針の閣議決定、22日に日本40年利付国債入札、米20年債入札、23日にECBの政策金利発表、24日にトランプ大統領のホワイトハウス記者協会晩餐会出席などが控える。発表時期は未定だが、米財務省が半期に一度公表する為替報告書にも留意しておきたい。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の162.50円、下値は50日移動平均線が近い160.00円を見込む。


【7月13日週のドル円レンジ:161.61~162.55円】

ドル円の変動幅は7月13日週に0.94円と、その前の週の1.43円から縮小した。前週比では0.77円上昇し、週足で続伸。年初来では3.7%高と年初来で最大の上げ幅となった。米6月消費者物価指数(CPI)が市場予想比で下振れした結果、一時161.61円まで下落するも、米国とイランの再衝突が意識され「有事のドル買い」が再燃し下値は限定的。骨太方針の原案修正や、高市首相によるGPIFの国内投資引き上げに関する発言を受けても、162円前半へ切り返し週を終えた。

13日のドル円は、上昇。ホルムズ海峡を航行中のタンカーが攻撃されるなか、米中央軍が報復する流れを受け、ドル円は東京時間のスタートから買いが先行し162円を回復した。前週末に片山財務相がGPIFの国内投資引き上げを後押しすると発言したが、ロイターが政府関係者の話として資産構成割合の変更を想定していないと報じると、一時162.36円まで本日高値を更新。しかし、木原官房長官が運用環境検証し必要あれば修正と述べたため、一時161.80円台へ急反落する場面もみられた。ただし、21日移動平均線や一目均衡表の転換線などのサポートが控え朝方に付けた本日安値の161.68円には届かず。NY時間にトランプ氏がインタビューでホルムズ海峡は米国が管理すると発言した内容に反応薄だったが、今度はトランプ氏が投稿でイラン関連船舶向けにホルムズ海峡を封鎖すると表明したほか、全ての貨物に海峡警備の名目での“通航料”20%徴収する方針を示したため、ドル円は一段高。ウォラーFRB理事が米6月CPIの結果次第で利上げすべきとの見方を示したこともあって、一時162.49円まで週の上値をトライした。

14日のドル円は、反落。東京時間のドル円は買いが先行し、一時162.49円と前日高値に並んだが、米6月CPIを前に上値が重くなった。片山財務相がNISAの日本国債追加に前向きな発言を行ったほか、上野厚労相がGPIF運用資産について「必要あれば見直し」と発言もあって、ドル円は162円前半で推移。骨太の方針原案につき、日銀の自主性を配慮した文言を加えるとの報道も、上値を重くさせた。NZ準備銀行が利上げを決定し、追加利上げの方針を示したNZドル円が上昇も、影響は限定的。日本の20年利付債の入札が予想以上に好調だった結果を受けGPIFが応札したとの噂もあり、ロンドン時間に162円割れを試す場面もみられた。NY時間には米6月CPIが市場予想以下に終わり、一時161.61円まで本日安値を更新した。ウォーシュFRB議長が米6月CPIの鈍化を受けても「任務完了とは言えない」と述べ、物価安定を目指す姿勢を強調したため、162円前半へ買い戻された。トランプ氏が通航料20%を撤回し湾岸諸国による投資に置き換えると発言したが、影響は限定的だった。

15日のドル円は、続落。東京時間に片山財務相と岸田元首相が国債のNISA対象化で協議したとの報道もあって、ドル円は午前中に一時161.97円まで下落した。しかし、米6月PPIを前に下値も限定的で、むしろ一時162.42円まで本日高値をつけた。NY時間に入ると、米6月PPIが市場予想で下振れした結果、売りが強まるも162円割れならず。しかし、ウォーシュFRB議長が米上院銀行委員会の議会証言で、AIによるインフレ圧力は持続的とならない見通しを示したほか、ベージュブックで物価頭打ちの文言を確認すると、一時161.90円まで本日安値を更新した。ただ、下値は限られ、英次期首相に就任する予定のバーナム氏が、党内右派のマフムード内相を財務相に指名する方針と伝わると、財政規律遵守の期待からポンド円が買われ、ドル円を下支えした。

16日のドル円は、3日ぶりに反発。東京時間の朝方、片山財務相が参院財政金融委員​会で「為替につい⁠ては、必要に応じいつでも​適切に対応をする」と述べたが、ドル円は162円前半にてもみ合いを続けた。ロンドン時間にかけ、高市首相の支持率が時事通信調べで50%割れと発足後最低と報じられると一時161.98円まで本日安値をつけるも、引き続き下値は堅い。NY時間に発表された米6月小売売上高が市場予想と一致し、米7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は上振れたが、ドル円は反応薄。むしろ、米国が電力網の攻撃に踏み切った場合、イランは紅海のバブ・エル・マンデブ海峡を封鎖するようフーシ派に指示したとの報道を受け、ドル買いが優勢となった。NY時間の中盤には一時162.55円と約1週間ぶりの高値をつけた。

17日のドル円は、続伸。東京時間の朝方、片山財務相が必要とあれば円安に対し「果断な措置とる」と述べ、「断固」とは別の文言を使用したが、ドル円は162円前半での推移を保った。ロンドン時間入りに高市首相がGPIFによる日本の金融資産への投資後押しする方策重要との見解を寄せると急落し、一時162.13円まで本日安値を更新。ただ、下値は堅く162円を割り込めず。NY時間にはトランプ大統領がイランに大規模な攻撃を検討とアクシオスが報じたため、一時162.52円まで本日高値をつけ、そのままレンジ上限で週を終えた。

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