Weekly Report(7/27)「日銀とFOMCのタカハト度合いで、試されるドル円165円突破」
安田 佐和子
この記事の著者
トレーダム為替アンバサダー/ストリート・インサイツ代表取締役

ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。

マーケット分析
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―Executive Summary―

  • ドル円の変動幅は7月20日週に1.79円と、その前の週の0.94円から拡大した。前週比では1.38円上昇し、週足で3週続伸。年初来では4.5%高と年初来で最大の上げ幅となった。米国とイランの事実上の停戦破綻を受け、イランがフーシ派にバブ・エル・マンデブ海峡を含む紅海封鎖を指示したとの報道を受け、「有事のドル買い」が再燃した。GPIFの国内投資引き上げは、それほど材料視されず。骨太方針の閣議決定で日銀法第3条が脚注にとどまり、利上げけん制の意図が再認識される場面もあり、片山財務相の口先介入が響くなかでも、ドル円は一時163.99円と1986年12月以来の高値を更新。トランプ政権の関税措置や為替報告書への影響は限定的だった。
  • ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、7月28-29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、静観姿勢を維持する見通しだ。理由は3つ。①米国が攻撃停止、イランが報復休止の流れを迎え、原油一段高への警戒後退。②内需鈍化によるインフレ頭打ち、③8月のジャクソン・ホール会議で政策変更を示唆する時間的余裕あり――などが挙げられる。また、タスクフォースが設立したばかりであり、早々に利上げ示唆するとも想定しづらい。
  • 日銀は7月30-31日会合で政策金利1%据え置きの見通し。展望レポートでは成長見通し上方修正、物価見通しは原油高一服で下方修正も、円一段安や6月企業物価指数の急伸を受けて、利上げ路線は堅持する公算が大きい。米為替報告書が日銀の金融正常化を後押しする文言を初めて盛り込んだことは、追い風だ。焦点は①植田総裁会見、②利上げペース前倒しを示唆、③利上げけん制派とされる城内経財相の出席・反応――となる。植田体制下、会合日のドル円は27回中19回上昇しており、今回も上昇なら164円どころか165円乗せが視野に入り、介入も意識される。特に、高市政権が週内に食料品消費税減税の可否について執行部で指示するとの報じられており、内容次第ではドル円を押し上げるリスクに留意しておくべきだろう。
  • ドル円のテクニカルは、完全に強気地合いに突入した。一目均衡表は三役好転を形成し、21日移動平均線だけでなく、7月1日高値がサポートに転じている。前週の終値自体も163.85円とレンジ上限で、164円突破の勢いを残す。ただ、RSI(14日)は70.43まで上昇し割高のサインが点灯しており、ここから上値が重くなる可能性も否めない。
  • 7月27日週の主な経済指標をみると、27日に日本6月企業向けサービス価格指数、独7月Ifo起用景況感指数、米6月耐久財受注、28日は米7月消費者信頼感指数が控える。29日は豪6月CPI、30日はユーロ圏Q2GDP、米6月個人消費・所得・PCE価格指数、米Q2実質GDP成長率・速報値、米新規失業保険申請件数、31日は日本6月失業率と有効求人倍率、7月東京都区部CPI、中国6月製造業PMI、ユーロ圏7月統合消費者物価指数・速報値、米Q2雇用コスト指数を予定する。
  • その他、政治・中銀関連では27日に米2年債と米5年債入札、28日に片山財務相が金融イベントに出席、ブロック豪中銀総裁の発言、米7年債入札、29日にFOMCの政策金利発表とウォーシュFRB議長の会見、30日はイングランド銀行の政策金利発表、31日は日銀金融政策決定会合の政策金利発表と植田総裁の会見、外国為替平衡操作実施状況(介入実績)の公表が控える。
  • 株式市場では、27日に中国半導体メモリ最大手CXMTが上海証券取引所に上場するほか、29日に韓国SKハイニクス、マイクロソフトの決算発表、30日に韓国サムスン電子、アップル、アマゾンの決算発表、31日にキオクシアの決算発表を予定する。その他、政治・中銀関連では20日にバーナム英首相の就任、21日に骨太方針の閣議決定、22日に日本40年利付国債入札、米20年債入札、23日にECBの政策金利発表、24日にトランプ大統領のホワイトハウス記者協会晩餐会出席などが控える。発表時期は未定だが、米財務省が半期に一度公表する為替報告書にも留意しておきたい。
  • 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の165円、下値は21日移動平均線が近い162.50円を見込む。


【7月20日週のドル円レンジ:162.20~163.99円】

ドル円の変動幅は7月20日週に1.79円と、その前の週の0.94円から拡大した。前週比では1.38円上昇し、週足で3週続伸。年初来では4.5%高と年初来で最大の上げ幅となった。米国とイランの事実上の停戦破綻を受け、イランがフーシ派にバブ・エル・マンデブ海峡を含む紅海封鎖を指示したとの報道を受け、「有事のドル買い」が再燃した。GPIFの国内投資引き上げは、それほど材料視されず。骨太方針の閣議決定で日銀法第3条が脚注にとどまり、利上げけん制の意図が再認識される場面もあり、片山財務相の口先介入が響くなかでも、ドル円は一時163.99円と1986年12月以来の高値を更新。トランプ政権の関税措置や為替報告書への影響は限定的だった。

20日のドル円は、上昇。東京市場が休場のなか、ドル円は米兵士がヨルダンで2人死亡し、イラン側が6月の停戦停止を表明したことから、162円前半でのもみ合いが続いた。ロンドン時間には、ルビオ国務長官がイランとの外交的対話を継続する発言を受け、一時162.20円まで週の安値を付ける展開。もっとも、NY時間に入ると上値を拡大。フーシ派によるサウジアラビアが紅海側を封鎖宣言や、トランプ大統領が米兵殺害を受けイランへの報復を受け、一時162.60円まで本日高値をつけた。

21日のドル円は、大幅続伸。東京時間のドル円は買いが先行、骨太の方針が閣議決定され日銀法第3条にある日銀の自主性についての文言は脚注にとどまるなか、ジリ高展開となった。トランプ氏が7月24日に期限切れを迎える122条に備え新たな関税を発動するとの英FT紙の報道も、米金利とドルの上昇につながった。NY時間には特に大きな買い材料が確認できないなかでも、1986年12月以来の163円を突破し、一時163.24円まで上値を切り上げた。カナダに対し、1930年制定のスムート・ホーリー法のうち338条を初適用するなかで、山火事を受けた関税措置はこれとは別と発言したことも、一部で米インフレ懸念を招いた。

22日のドル円は、小幅反落。東京時間に片山財務相が為替相場に対し断固たる措置を講じると発言したが反応薄で、ドル円は序盤に一時163.22円まで本日高値をつけた。ロンドン時間に入って日銀が利上げペースを半年ごとの市場予想より加速へ柔軟姿勢との報道が伝わると、一時162.67円まで本日安値を更新。もっとも、その後は前日の大幅高もあって動意薄となり、163円近辺で引けを迎えた。

23日のドル円は、反発。東京時間の序盤に、片山財務相が「果断に行動」と発言したが、引き続きドル円への反応は限定的で、163円を割り込むことなく堅調な推移を保った。ロンドン時間に入ると、時間外の原油先物と米金利の上昇にドル円もつれ高となり、163円ちょうど付近から163円前半へ上向き、NY時間入りには163円半ばを突破。さらに米国とイランの情勢悪化を懸念した動きから「有事のドル買い」が勢いづき、163円後半へ切り上がっていった。欧州中央銀行(ECB)が据え置きを決定しつつも、ラガルドECB総裁が9月利上げの選択肢を確保するタカ派寄りだったが反応薄でドル高が加速し、ドル円は一時163.99円と164円に肉薄した。その後、トランプ政権が122条に代わる強制労働を受けた301条の関税措置を発表したほか、米財務省が「過度な変動を容認しない」との記述を盛り込んだ為替報告書をリリースしたが、163円後半で引けを迎えた。

24日のドル円は、続伸。東京時間の朝方、片山財務相が3日連続で口先介入するなかで「断固たる措置を果断に」行うと発言し、ドル円は163円後半でのもみ合いが続いた。ロンドン時間入りに一時163.65円まで本日安値を更新した後は買い戻され、NY時間には一時163.94円まで本日高値をつけた。

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