―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は7月6日週に1.43円と、その前の週の2.36円から縮小した。前週比では0.30円上昇し、週足で反発。年初来では3.2%高となった。イランのドローン攻撃を受け、トランプ大統領が停戦終了を宣言すると、「有事のドル買い」が再燃した。ドル円は一時162.71円まで上値を拡大。もっとも、日本の10年債利回りが1996年以来の2.9%をつけるなか、高市政権は骨太の方針原案から日銀に利上げけん制と受け止められた文言の修正に動いた。片山財務相がGPIFの国内投資を後押しする方針を表明したこともあり、ドル円は週末に162円を割り込み週初に付けた安値161.28円まで戻した。
- ドル円が1986年12月以来の高値をつけ円安是正論が高まるなか、片山財務相が7月10日に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国内投資を後押しすると発言、円高・債券高・株高のトリプル高を招いた。しかし、7月11日に日経新聞はGPIFがオルタナ投資を拡大方針と報じており、国内投資がどうなるかは不透明。何より、GPIFの資産配分変更そのものには正式プロセスが必要だ。2014年の大転換は内閣主導の例外的経路だった点や、日米共同声明との整合性、米国債需要への影響という不確実性が残る。結果、短期は円高が見込まれるが、対米投融資向けの銀行向けドル調達支援は外貨準備を活用するため介入余力を限定的とさせかねず、他の施策と総合的にみれば複雑な様相を呈する。
- 米6月消費者物価指数(CPI)が7月14日に発表される。クリーブランド連銀のナウキャストは総合3.9%と鈍化、コアは3.9%で横ばいを見込む。シカゴ連銀の自動車除くコア小売ベースの物価も6月は3.6%へ鈍化しており、CPIは落ち着きを示しそうだ。米・イラン情勢は懸念材料だが、米6月CPIが年内利上げ観測を後退させる内容なら、2024年7月のような介入に留意すべきだろう。米6月CPI発表後にはウォーシュ議長の議会証言が控えることもあり、ボラティリティが高まりそうだ。
- ドル円のテクニカルは引き続き強気地合いの後退を感じさせる。5月15日以降続いた強力なサポートである21日移動平均線を辛うじて回復して週を終えたが、ボリンジャーバンドの+2σを下回った推移が続いており、上値の重さは禁じ得ない。RSI(14日)もデッドクロスを形成したままだ。ただ、RSIは54.24と中立水準にあり、上下どちらの余地があることも事実で、米6月CPIで見極めとなるだろう。
- 7月13日週の主な経済指標をみると、14日に中国6月貿易収支、米6月CPI、15日に中国Q2GDP、米7月NY連銀製造業景気指数と米6月PPI、16日は米6月小売売上高と米新規失業保険申請件数、米7月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、17日に米6月輸入物価指数や米7月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が控える。
- その他、政治・中銀関連では13日にボウマンFRB副議長とウォラーFRB理事の発言、14日に日本20年利付国債入札、ウォーシュFRB議長の下院金融サービス委員会での議会証言、シカゴ連銀総裁の発言、ベイリーBOE総裁の発言、16日にカナダ銀行の政策発表、米地区連銀報告(ベージュブック)、クックFRB理事やNY連銀総裁、セントルイス連銀総裁の発言を予定する。16日にはダラス連銀総裁とカンザスシティ連銀総裁の発言、17日にはジェファーソンFRB副議長の発言が控える。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の162.50円、下値は50日移動平均線が近い160.00円を見込む。
1.ドル円振り返り=イラン情勢悪化と骨太ショックを受け162.71円へ上昇後、162円割れへ急落
【7月6日週のドル円レンジ:161.28~162.71円】
ドル円の変動幅は7月6日週に1.43円と、その前の週の2.36円から縮小した。前週比では0.30円上昇し、週足で反発。年初来では3.2%高となった。イランのドローン攻撃を受け、トランプ大統領が停戦終了を宣言すると、「有事のドル買い」が再燃した。ドル円は一時162.71円まで上値を拡大。もっとも、日本の10年債利回りが1996年以来の2.9%をつけるなか、高市政権は骨太の方針原案から日銀に利上げけん制と受け止められた文言の修正に動いた。片山財務相がGPIFの国内投資を後押しする方針を表明したこともあり、ドル円は週末に162円を割り込み週初に付けた安値161.28円まで戻した。
6日のドル円は、上昇。東京時間から買いが先行し、山崎元財務官による極端な円安はいずれ是正との発言内容が報じられたが反応薄で、ロンドン時間入りに162円台を回復した。NY時間に入ると、一時162.43円まで本日高値を更新。もっとも、米6月ISM非製造業景気指数が市場予想以下にとどまり、仕入れ価格も2月以来の水準まで切り返したため、米金利が低下した結果、ドル円もつれて162円を割り込んでNY時間を終えた。
7日のドル円は、続伸。東京時間は昨日に続き買いが先行し早々に162円台を回復したが、閣議後に城内経財相が「骨太の原案の趣旨と異なる受け止めで誤解だ」と述べたため、大台を割り込んだ。ロンドン時間に入り、再び162円台へ切り返すも限定的で、三村財務官が「為替市場含む市場動向で韓国当局と緊密に対話」と述べたこともあって、前週に続きあらためて協調介入が意識され一時161.65円まで本日安値を更新。NY時間では特に重要指標を予定しないなか、イランがホルムズ海峡を航行中のタンカーにドローン攻撃を実施。カタール、サウジ、そして匿名のタンカーと3件発生するなか、WTI原油先物は1週間ぶりに70ドル台を回復した。米10年債利回りが上昇するなか、つれてドル円も買いが優勢となり、一時162.18円まで本日高値を更新した。ロイターによる浅田審議委員のインタビューが報じられ、日銀は物価だけでなく雇用や生産に配慮すべきと、日銀の統治目標以外について言及した事実が判明したものの、為替への影響は限定的だった。
8日のドル円は、3日続伸。東京時間は売りが先行し、ドル円は一時162.08円まで本日安値を更新した。高市政権が、骨太の方針原案での金融政策で文言修正につき、日銀の利上げけん制懸念拡大で修正すると報じられたが、反応薄。しかし、ロンドン時間にNATO首脳会議でトルコを訪問中のトランプ大統領が、イランとの停戦は「終わりだ」と発言、イランへの再攻撃にも言及したため、WTI原油先物や米10年債利回りが上昇した結果、ドル円も上値を切り上げた。NY時間には、トランプ氏が「イラン・イスラム共和国」と言うところを「日本・イスラム共和国」と失言するなか、一時162.71円へ上昇。7月1日につけた1986年12月以来の高値162.84円に接近した。もっとも、トランプ氏がイランとの交渉余地を確保する方針も言及していたため、一段高は回避された。
9日のドル円は、4日ぶりに小幅反落。東京時間早々にドル円は一時162.62円まで本日高値を付けた後も堅調に推移し、ゆるむ場面があっても162.24円まで本日安値を付けた程度となった。イランのドローン攻撃を受けトランプ氏は停戦終了に言及した後、イランから電話があったと説明するなか、上値も重い。ロンドン時間の政府が骨太案で日銀の独立性に関する文言を盛り込む方針と伝わったが、ドル円への影響は限定的。ウォーシュFRB議長が立ち上げた5つのタスクフォースのメンバーが発表されたがこちらにも反応薄で、162円前半でのもみ合いを続けた。
10日のドル円は、続落。東京時間の朝方、閣議の会見で片山財務相と城内経財相が骨太の方針原案について金融政策は日銀に委ねられるべきとすると発言し、売りが先行した。さらに、片山氏がGPIFなどの国内金融資産投資を後押しすると発言すると、21日移動平均線を割り込み急落し162円を下抜け、一時161.28円と6日の安値に並んだ。その後は買い戻されたが、162円を回復できず。NY時間には再度下値を試す動きを迎えつつ、161.28円に届かず21日移動平均線手前で週を終えた。
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