―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は6月1日週に1.04円と、その前の週の0.90円から拡大した。前週比では1.05円となり、週足で4週続伸。年初来では2.3%高と、4週連続で上げ幅を広げた最も高い水準に並んだ。米国とイランの協議膠着やイスラエルとレバノンの停戦をめぐり地政学的リスクが高まった一方で、相次いで6月日銀利上げ観測が報じられ、植田総裁も「利上げの是非を議論」と述べ2025年12月当時と同様に利上げの地ならしを行った。しかし、米経済指標が軒並み強く、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が市場予想の2倍に及ぶ増加を記録すると、米年内利上げ観測が台頭。ドル円は一時160.34円と4月30日の高値160.72円を射程距離範囲内に収めた。
- 米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比17.2万人増と予想を大きく上回り、過去分の上方修正も加わったことで、10月FOMCでの利上げ織り込み度は51.2%と据え置きを逆転した。ただし、雇用増の一部は地方政府やサッカー・ワールド杯関連の一時的要因とみられる。加えて、平均時給の伸び鈍化、失業率の横ばい、長期失業者の増加、フルタイム雇用の減少など、労働市場の弱さを指摘するもあり、エコノミストの間では利上げに慎重な見方が多く、市場の予想と真っ二つの状況だ。今週発表のCPI・PPI次第で年内利上げ観測が変動するとみられ、ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の初会合を控え、為替市場のボラティリティが一段と高まりうる。
- ウォーシュFRB議長のデビュー戦となる6月FOMCでは、同氏が掲げる「FRB改革」がどこまで具体化するかが焦点となる。就任直後に保守系政策専門家2名を顧問に起用し、フォワードガイダンス縮小やインフレ指標の刷新、バランスシート縮小など、改革路線を鮮明にした。6月FOMCでは、ドットチャートを含む経済・金利見通しの扱い変更や会見頻度の見直し、トリム平均PCE重視への転換などが示唆されかねず、特にトリム平均PCEは前年比で8カ月連続にて鈍化するだけに、市場の利上げ期待に冷や水を浴びせかねない。
- ドル円のテクニカルは一目均衡表のローソク足が遅行線を抜き、雲の上限を突破しており、転換線が基準線を抜ければ「三役好転」が成立し、非常に強気な方向へシフトしつつある。21日移動平均線が50日平均線を超え、ゴールデンクロスも形成。加えて、RSIも6月5日に64.1と割高の節目にあたる70まで距離があり、上値余地を残す。今週に予定する米5月CPIなど物価指標が一段高を試すきっかけとなるか否か、確認するタイミングに入った。160円乗せで週を終えたとはいえ、161円超えで再び介入が警戒される場合もありうる。
- 6月8日週の主な経済指標をみると、8日に日本Q1実質GDP成長率・改定値、日本4月国際収支、9日に中国5月CPIとPPI、米5月中古住宅販売件数、10日に米5月CPI、11日に米5月PPIと米新規失業保険申請件数、12日に米6月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値を控える。
- その他、政治・中銀関連では9日に米3年債入札、10日にカナダ銀行の政策金利発表、米10年債入札、11日にECBの政策金利発表と米30年債入札を予定する。また、12日にはイーロン・マスク氏率いるスペースXがナスダックに上場を予定する。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の161.50円、下値は21日移動平均線が近い158.30円と見込む。
1.ドル円振り返り=中東情勢と好調な米指標で160円乗せ、6月日銀利上げ期待はスルー
【6月1日週のドル円レンジ:159.30~160.34円】
ドル円の変動幅は6月1日週に1.04円と、その前の週の0.90円から拡大した。前週比では1.05円となり、週足で4週続伸。年初来では2.3%高と、4週連続で上げ幅を広げた最も高い水準に並んだ。米国とイランの協議膠着やイスラエルとレバノンの停戦をめぐり地政学的リスクが高まった一方で、相次いで6月日銀利上げ観測が報じられ、植田総裁も「利上げの是非を議論」と述べ2025年12月当時と同様に利上げの地ならしを行った。しかし、米経済指標が軒並み強く、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が市場予想の2倍に及ぶ増加を記録すると、米年内利上げ観測が台頭。ドル円は一時160.34円と4月30日の高値160.72円を射程距離範囲内に収めた。
1日のドル円は、買いの流れ継続。ドル円は前週末にロイターが「日銀、国債買い入れ減額の一時停止を検討か」と伝え、イランのペゼシュキアン大統領が辞意を表明したとの報道が飛び交うなか、窓を開けてスタートし159円半ばでもみ合いを続けた。すぐに辞任報道は否定されたものの、NY時間にはイランが米国との停戦延長協議を打ち切り、レバノンでの攻撃が続く状況では交渉は行わないと表明したとのヘッドラインが流れ、上値を拡大した。同じタイミングで発表された米5月ISM製造業景気指数が市場予想を上回り、一時159.77円まで本日高値を更新。その後、レバノン高官が米国に対し「ヒズボラはイスラエルとの全面停戦の用意あり」との報道が伝わったほか、トランプ大統領がネタニヤフ首相との電話会談後にイスラエルとヒズボラの停戦を発表したため、上げ渋った。
2日のドル円は、続伸。東京時間の序盤に片山さつき財務相が足元の為替変動「いつでも適切に対応」と発言したが、「断固たる措置」が含まれず反応薄で、159円後半での推移を続けた。白井元日銀審議委員が6月利上げに否定的なコメントを発したが、市場はそれほど動かず。ロンドン時間に入ると、ユーロ圏5月統合消費者物価指数(HICP)が市場予想を上回ったため、クロス円が引っ張りドル円もつれ高を迎え159.70円台で推移し、日経新聞の6月利上げ報道への影響も限定的となった。NY時間に入ると再び買いが優勢となり、米4月求人件数が市場予想を大きく上回ると、160円をトライする動きとなり、一時159.99円まで上値を拡大した。
3日のドル円は、3日続伸。東京時間は、植田総裁の講演を控え時事が6月利上げ観測を報じたものの、再び大台を試す動きが活発化し160円にワンタッチした。ロンドン時間に入り、高市首相が「投機筋含む実需に基づかない取引が為替相場に大きな影響を与えている」と口先介入を行うと、一時159.50円台へ下落。続いて、植田総裁が「利上げの是非を議論」と2025年12月の利上げ前に行った示唆を与えると、一時159.37円まで本日安値をつけた。しかし、NY時間に入ると米5月ADP全国雇用者数や米5月ISM非製造業景気指数が強含み、米債利回りにつれドル円も上値を広げ、NY引け前に一時160.10円まで切り上げた。
4日のドル円は、4日ぶりに反落。東京時間は窓を開けて下落し、イスラエルとレバノンが停戦で再合意したとの報道が伝わると、159.80円台へゆるんだ。さらに、ブルームバーグが6月日銀利上げと追加利上げの可能性を報じると、一時159.59円まで本日安値を更新。しかし、その後は下げ渋り、トランプ大統領がイランとの交渉が「最終」段階と言及するも160円台へ切り返してNY時間を終えた。
5日のドル円は、続落。東京時間に三村財務官が時事通信とのインタビューで「明らかにファンダメンタルズから乖離した動きが続いている中での究極のメッセージの手段だ」と述べ、ドル円はゆるやかに売り先行でスタートした。片山財務相による「必要に応じていつでも適切に対応する」と発言した一方で、高市首相が「経済政策は供給力強化が目的、為替誘導目的でない」、「円安にはデメリットとメリットがある」と述べたが、影響は限定的。NY時間入りには、159.80円台へゆるんだ。米5月雇用統計のNFPが市場予想の2倍に膨らむと、一時160.20円台へ急伸。直後にガンマ・オプションの売りが影響したのか一時159.72円まで本日安値を更新したが、その後は介入への警戒感が薄れたほか、年内利上げ観測の台頭もあって、一時160.34円と4月30日の高値160.73円ににじり寄った。
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