―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は6月15日週に2.07円と、その前の週の1.09円から拡大した。前週比では+1.08円となり、週足で反発。年初来では3.0%高と、最大の上昇率を記録した。日銀が利上げを決定し内田副総裁が利上げ継続を示唆したものの、利上げペース加速などを示唆せず。むしろ、ウォーシュFRB議長初登板のFOMCは年内1回利下げ予想から年内1回の利上げ予想へタカ派転換し、ドル全面高を迎えた。米国とイランの覚書署名にも反応薄で、一時161.81円と2024年7月以来の高値161.95円に迫った。
- ウォーシュ氏が米連邦準備制度理事会(FRB)議長として初めて参加した米連邦公開市場委員会(FOMC)は、声明文で物価安定の遵守が強調され、従来の年内1回利下げ予想から1回の利上げ予想へ転換した結果、タカ派ショックを演出した。しかし、会見でウォーシュ氏は利上げについて議論されなかったと説明。本人もドットの正確性を疑問視する立場から、過去のドットプロットの的中率の低さを逆手に取り、データ重視の姿勢を強調した。市場はこれを、FRBが必要なら本当に利上げに動くという信認の表れと受け止め、米10年物ブレークイーブンインフレ率(BEI)はイラン戦争後の上昇を打ち消した。利上げを確約せずインフレ期待を抑え、トランプ氏の意向とも衝突しない「三方よし」を実現したと言える。
- 53年ぶりのNYニックス優勝、W杯、米国の建国250周年が重なり、米経済指標は一時的に押し上げられている。NYではプレーオフだけで2.2億ドルの経済効果が生じ、W杯開催地では宿泊費や求人が急騰。FIFAは米国内総生産(GDP)を171億ドル押し上げると試算する。一連の効果から、宿泊・娯楽の特需はCPIや雇用統計を短期的に押し上げるが、イベント終了後は剥落する。FRBは一時的な押し上げと構造的なインフレ圧力を見分ける必要がある。
- 日銀は金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ1.0%とし、1995年以来初の水準となった。事前の報道通り、国債買い入れ減額停止も決定。内田副総裁は緩和的環境を踏まえ利上げ継続方針を表明したが、タカ派的な6月FOMCを背景にドル円は161.81円まで上昇。2024年と同じく、あらためて介入観測がくすぶる。ただし、米利上げ局面での介入効果は限定的とみられる。介入の前に、今週24日に予定する6月会合の主な意見の公表と氷見野副総裁の講演(植田総裁の代読)、25日に予定する田村審議委員の講演で、あらためてタカ派的な姿勢が試されよう。
- ドル円のテクニカルは三役好転(ローソク足が一目均衡表の遅行線を上抜け、ローソク足が雲を上抜け、転換線が基準線を上抜け)を形成しつつある。下値も21日移動平均線で支えられており、そろって上向きの移動平均線も、一段高を示唆しているかのようだ。ただし、ドル円は6月18日にRSI(14日)が割高の節目である70を超えた後で上げ渋っており、68.1で週末を迎えたことから、上値が重くなる場合も。介入警戒感も燻るため、一旦上値余地が狭まってもおかしくない。
- 6月22日週の主な経済指標をみると、23日にユーロ圏、独、米の6月総合PMI(製造業・サービス業含む)速報値、24日は日本5月企業向けサービス価格指数、豪5月CPI、25日は豪5月失業率、米5月個人消費支出・個人所得・PCE価格指数、米Q1実質GDP確報値、米新規失業保険申請件数、26日は6月東京都区部CPI、26日は米6月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値を予定する。
- その他、政治・中銀関連では22日にウォラーFRB理事の発言、23日に日銀のコア指標発表、米2年債入札、24日に日銀6月会合の主な意見、植田総裁の講演(氷見野副総裁の代読)、FRBの銀行ストレステスト結果公表を予定する。また、25日に田村審議委員の発言、シカゴ連銀総裁の発言や米7年債入札、ウィリアムズNY連銀総裁の発言、26日にはFOMCで投票権を持つミネアポリス連銀総裁のほか、シカゴ連銀総裁の発言が控える。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の162.50円、下値は6月11日の安値が近い159.50円を見込む。
1.ドル円振り返り=タカ派FOMCと変わらない日銀で161.81円、24年7月高値に接近
【6月15日週のドル円レンジ:159.74~161.81円】
ドル円の変動幅は6月15日週に2.07円と、その前の週の1.09円から拡大した。前週比では+1.08円となり、週足で反発。年初来では3.0%高と、最大の上昇率を記録した。日銀が利上げを決定し内田副総裁が利上げ継続を示唆したものの、利上げペース加速などを示唆せず。むしろ、ウォーシュFRB議長初登板のFOMCは年内1回利下げ予想から年内1回の利上げ予想へタカ派転換し、ドル全面高を迎えた。米国とイランの覚書署名にも反応薄で、一時161.81円と2024年7月以来の高値161.95円に迫った。
15日のドル円は、売り先行後に買い戻し。米国とイランが60日間の停戦で合意し、19日にも署名式を行うと報じられ、160円を割り込み一時159.74円まで週の安値をつけた。ただし、21日移動平均線にサポートされ買い戻しが入り、まもなく160.20円台へ買い戻し。ロンドン時間に上げ渋る場面もみられたが、NY時間にはイラン側が報道する内容との齟齬が意識されたこともあって、一時160.40円まで本日高値をつけた。
16日のドル円は、買いの流れが継続。ドル円は日銀金融政策決定会合の政策発表を前にもみ合いを経て、一時160.05円まで本日安値を更新した。しかし、利上げと国債買い入れ減額停止発表後は、声明文から実質金利について「きわめて低い水準」が削除されたことや、今後は国債買い入れ中間評価を行わない見通しが示されたため、ややドル買い・円売りで反応。入院中の植田総裁に代わって会見に臨んだ内田副総裁は利上げ継続を示すなか、失言もなく160円前半での小動きが継続。ただ、NY時間に入ると前日に続き買いが優勢となり、米5月輸入物価指数の上振れもあって、一時160.48円まで本日高値をつけた。
17日のドル円は、3日続伸。ウォーシュFRB議長のデビュー戦となるFOMCを控え、ドル円は前日の上昇の巻き戻しが入った。ロンドン時間入りには、一時160.12円まで本日安値を更新。NY時間入りに発表された米5月小売売上高が市場予想を上回るも影響は限定的で、160円前半でのもみ合いに終始した。しかし、FOMCで据え置きが発表されつつ、四半期に一度公表される経済・金利見通しで年内1回利下げ予想が年内1回の利上げ予想に転換し、さらにインフレ見通しが上方修正されるタカ派的な内容となり、ドル円は160.50円をトライする展開。ウォーシュFRB議長が会見で物価安定を遵守する姿勢を繰り返すと、ドル買いが勢いづき、4月30日の高値を超え一時160.80円まで上値を広げた。
18日のドル円は、4日続伸。東京時間からロンドン時間の始めにかけては160円後半でのもみ合いが続いたが、NY時間には米新規失業保険申請件数や米6月フィラデルフィア連銀製造業景況指数が予想を下回ったが反応薄。しかし、NY時間午後にかけ161円ちょうどのストップロスを巻き込み上滑りし、その後は糸が切れた凧のように切り上げ、一時161.81円と2024年7月高値161.95円に肉薄した。しかし、NY引けにかけレートチェックが入ったとの噂が駆け巡り160.90円台へ急落する場面もみられた。
19日のドル円は、小幅に5日ぶり反落。東京時間は、前日NY引け前のレートチェックの噂もあって一時160.99円まで本日安値をつけたが、そこからは徐々に買い戻された。片山財務相が断固たる措置を講じると述べたほか、5月全国CPIの影響は限定的。東京時間の午後に一時161.46円まで本日高値をつけた。当日は米国が休場とあって、以降は値動きが限られた。
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