―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は5月18日週に0.75円と、その前の週の2.29円から縮小した。前週比では0.43円の上昇と、週足で続伸。年初来では1.6%高と、2週連続で上げ幅を広げた。ベッセント財務長官が19日にG7財務相・中央銀行総裁会議の機会に植田総裁と会談し、「必要なことを行う余地が与えられれば、(植田総裁は)優れた金融政策を実現できると確信」、「日本経済ファンダメンタルズは強固、過度な通貨変動は望ましくない」と発言したが、ドル円は158.65円へ下落する程度。むしろ、米国とイランの協議膠着に伴う原油高につれドル円は小動きながら買い優勢で、一時159.35円と4月30日以来の高値をつけた。
- トランプ大統領は、湾岸諸国や仲介国との電話会談で米国とイランが覚書をめぐり「大筋合意」と投稿した。覚書には60日間の停戦延長、海上封鎖解除、一部制裁の適用除外が含まれると報じられたが、核問題などでは、依然として隔たりが残る。ホルムズ海峡をめぐって、日経新聞は合意後30日間での機雷掃海と通行料なしでの開放という枠組みが議論されていると伝えた。一方で、トランプ氏はアブラハム合意署名を条件に加え、サウジやUAE、パキスタンなどは難色。イスラエル国内でも反発が出ている。週内の合意実現は不透明で、市場は地政学リスクと「有事のドル買い」で神経質な展開が続く。
- イランとの軍事衝突を受け原油先物が高止まりするなか、米国では12月利上げの織り込み度が5月22日時点で67.9%に上昇した。ウォーシュ次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長は就任宣誓で独立性とインフレ抑制への強い意欲を示し、トランプ大統領も「利下げ圧力はかけない」と発言。今週発表の米4月PCE価格指数は市場予想並みと見込まれるが、クリーブランド連銀は過去5カ月間にわたり過小評価の傾向がある。
- パリで開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議で植田日銀総裁と会談したベッセント米財務長官は、日本の経済基礎は強固で過度な円安は望ましくないと強調し、利上げの必要性に理解を示した。日本のQ1 GDPは年率2.1%増、輸入物価も急上昇しており、物価面からも利上げ論が強まる状況にある。今週27日に予定する日銀カンファレンスにて、植田氏は利上げ示唆を行う機会ととらえるか。日銀審議委員から利上げを支持する発言が続出。小枝委員は原油高長期化への警戒と適切な利上げペースを強調しており、前週の増審議委員、4月会合での利上げ票3人を踏まえれば、6月会合で政策委員9人のうち、5人が利上げ票を投じる可能性がある。なお、今週は4月30日、5月1、4、6日に行ったとされる介入規模が判明するため、規模感を踏まえ今後の介入余地を探る動きが高まりそうだ。
- ドル円のテクニカルは強気方向を保つ。5月22日に一目均衡表の雲の上限並びに50日移動平均線を上回って取引を終えた。また、前週と同じく介入があったとされる4月30日の高値と5月6日の安値の61.8%戻し(158円半ば)を超えた水準を維持。一方、RSIは60手前で上げ渋り、介入警戒感の燻りとともに、米国とイランの合意に伴う「有事のドル買い」はく落に伴うドル円の下落も意識せざるを得ず、上値追いに勢いは感じられない。
- 5月25日週の主な経済指標をみると、26日に米5月消費者信頼感指数、27日に日本4月企業向けサービス価格指数、豪4月CPI、米4月PCE価格指数、米Q1実質GDP改定値、米新規失業保険申請件数、28日は東京都区部5月CPI、日本4月失業率と有効求人倍率などを予定する。
- その他、政治・中銀関連では5月26日に日銀「消費者物価のコア指標」、米2年債入札、27日にNZ準備銀行の政策発表、植田総裁による日銀主催カンファレンス「新たな視点から見た金融政策」での挨拶(ミネアポリス連銀総裁、スロバキア中銀総裁が参加)、日本40年利付国債入札、米5年債入札を予定する。28日にはラガルドECB総裁の発言、米7年債入札、内田・氷見野日銀副総裁やジェファーソンFRB副議長、シカゴ連銀総裁など日銀「新たな視点から見た金融政策」に出席、NY連銀総裁やセントルイス連銀総裁の発言が控える。29日に外国為替平衡操作実施状況(4月28~5月27日)を公表、ボウマンFRB理事やSF連銀総裁、フィラデルフィア連銀総裁の発言、ベッセント財務長官の発言が設定されている。
- 以上を踏まえ、今週の上値は心理的節目の159.50円、下値は100日EMA並びに4月30日高値と5月6日安値の38.2%戻しが近い157.20円と見込む。
1.ドル円振り返り=ベッセント発言の影響は限定的、米国・イランの協議膠着で159円台を回復
【5月11日週のドル円レンジ:158.59~159.35 円】
ドル円の変動幅は5月18日週に0.75円と、その前の週の2.29円から縮小した。前週比では0.43円の上昇と、週足で続伸。年初来では1.6%高と、2週連続で上げ幅を広げた。ベッセント財務長官が19日にG7財務相・中央銀行総裁会議の機会に植田総裁と会談し、「必要なことを行う余地が与えられれば、(植田総裁は)優れた金融政策を実現できると確信」、「日本経済ファンダメンタルズは強固、過度な通貨変動は望ましくない」と発言したが、ドル円は158.65円へ下落する程度。むしろ、米国とイランの協議膠着に伴う原油高につれドル円は小動きながら買い優勢で、一時159.35円と4月30日以来の高値をつけた。
18日のドル円は、買い優勢。ドル円は東京時間に買い先行、高市首相が政府与党連絡会議において、2026年度補正予算編成を含め家計負担軽減を指示と伝えられると、4月30日以来の159円台を回復。ただし、ロンドン時間に入るとドル買いは一服し、NY時間にはむしろ上げ幅を縮小。米国がイラン産原油に一時的な制裁免除を提案と報じられ、一時158.61円まで本日安値を更新した。NY引け前に買い戻されたが、トランプ大統領が翌日予定していたイラン攻撃を中止すると投稿すると、再び売りに圧された。
19日のドル円は、続伸。トランプ大統領がイランへの攻撃中止を発表した後に、いつでも攻撃再開可能と述べたこともあり、東京時間は買いでスタートした。日本国債利回りが上昇を続けるも、むしろ円売りで動く展開。ロンドン時間には前日高値を超えていった。NY時間にかけて159.10円台へ上昇した後、ベッセント財務長官が植田総裁と会談し「為替の過度な変動は望ましくない」、「植田総裁が、日本の金融政策を成功に導くと確信している」との認識を表明すると、一時158.65円まで一気に本日安値を付けるなど値の荒い場面を迎えた。もっとも、すぐに切り返し一時159.19円まで本日高値を更新。片山財務相が断固たる措置を取る構えを再び示したこともあり下落する場面もあったが、下値は限られ159円台でNY時間を終えた。
20日のドル円は、8営業日ぶりに反落。ドル円は前日にベッセント財務長官や片山財務相の発言を受けて上げ渋りとなり、まもなく159円台を割り込んだ。ただし、158.80円台へ緩むと買い戻され下値も堅く、NY時間には一時159.17円と4月30日以来の高値をつけた。まもなくトランプ大統領が「米国とイランの協議が最終段階にある」と発言すると、WTI原油先物の下落につれ、一時158.59円まで本日安値へ押し返された。
21日のドル円は、続伸。東京時間から買いが先行、小枝審議委員が原油価格の上昇が長引く可能性に警戒が必要としたうえで、政策金利を適切なペースで引き上げ物価高に対応することが適切との見解を寄せたが、159円割れへ軟化するにとどまった。ロンドン時間には、イランの最高指導者が兵器級に近い濃縮ウラン在庫は国内に留めるべきだと発言との報道を受けて買いが強まり、NY時間には米10年債利回りの上昇も重なり、一時159.35円と4月30日以来の高値をつけた。トランプ大統領がイランとの交渉継続に言及すると上げ幅を縮小も、大台を回復してNY時間を終えた。
22日のドル円は、3日続伸。ドル円は日本4月全国CPIが市場予想以下となったことで、ゆるやかな買いの流れが続いた。25日のメモリアルデーなど米国のほか英国などが休場を迎えるなか動意に乏しい。NY時間に一時159.24円まで上昇も、前日高値を超えられなかった。
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