―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は4月27日週に5.24円と、その前の週の1.30円から大幅に拡大した。前週比では2.26円安と、大幅反落。年初来では0.3%高と上げ幅を急縮小しつつ、9週連続でプラスとなった。5月4日週の変動幅は2.91円へ縮小。前週比では0.4円と続落した。年初来では横ばいに反転。日銀金融政策決定会合後の植田総裁会見が6月利上げを明示せず、一時160.73円と2024年7月以来の水準へ上昇。しかし、その後は4月30日、5月1日、4日、6日と介入が入ったと見られ、ドル円は5月6日に一時155.03円と2月24日以来の安値をつけ、イラン紛争後の上昇を打ち消した。米国とイランが戦争終結に動き始め、WTI原油先物が一時90ドル割れを迎えたことも、ドル円の下落をサポートした。
- プラザ合意直前の高値240円と2011年の安値75.32円の半値戻しにあたる157.70円を突破したドル円は、「半値戻しは全値戻し」の格言通り、240円方向を試すシナリオが排除できない状況にある。加えて変動相場制移行以降に観測されてきた「約8年周期のピークアウト」というサイクル論も、2024年7月高値161.95円を明確に上抜ければ崩壊する。4月30日に160.73円と同高値に迫ったことは政府・日銀に重くのしかかり、伝家の宝刀となる介入の引き金を引かせた可能性がある。
- 4月15日の日米財務相会談後の声明に初めて盛り込まれた「maintaining even-closer communications」という文言と、2025年9月の日米共同声明を踏まえれば、今回の介入は米国に事実上容認されたとみるのが自然だ。GW介入の総規模は約8~9兆円と推計され、ゴールドマン・サックスは「最大30回の余力がある」と評価する。しかし介入依存からの脱却には日銀の利上げが不可欠であり、高市政権が補助金延長を検討するなかでインフレ懸念がくすぶるだけに、日銀の利上げ判断がドル円の命運を握ることになる。
- 今後も介入が続くか否かは、ベッセント財務長官の訪日で日銀に金融政策の正常化と財政拡張路線のけん制が盛り込まれるか、そして2つのテクニカル要因を超えてくるかが分かれ道となりそうだ。ただ、ベッセント氏訪日では当初の報道に反し、急遽、植田日銀総裁が国際決済銀行(BIS)の中央銀行総裁会議に出席のため会談見送りとなり、憶測を招いた。なお、植田氏は2024年4月の金融政策決定会合後の会見での発言でドル円の160円突破を招いたが、当時は逆に欧州中央銀行(ECB)フォーラムやカンザスシティ連銀総裁のジャクソンホール会合の参加が見送られていた。
- 仮に為替や日銀の金融政策に対する発言が見送られたとしても、5月14日を皮切りに相次ぐ日銀政策委員の発言機会で、利上げへの温度差を探ることになるだろう。特に、5月16日に氷見野副総裁、6月3日に植田総裁が発言する予定で、2025年1月の利上げ前を彷彿とさせる。
- ドル円の週足は介入を受けて続落し、一目均衡表の雲の中に突入した。介入らしき動きの後の戻りも、4月30日の高値160.73円と5月6日の安値155.03円の半値付近の157.90円が重石となるほか、61.8%押しに当たる157.21円を割り込んで週を終え、軟調な方向へシフトしつつある。ただし、5月6日に155.03円まで下落したとはいえ、200日指数平滑移動平均線(EMA)の154.99円抜けられず、3月19日安値がある155.51円を上回って週を終えており、一段安にブレーキが掛かる状況でもある。
- 5月11日週の主な経済指標をみると、11日に中国4月CPIと生産者物価指数(PPI)、独5月ZEW期待指数、米4月CPI、13日に日本3月国際収支、米4月PPI、14日は英Q1実質GDP成長率速報値、米4月小売売上高、米新規失業保険申請件数、米4月輸入物価指数、15日に米5月NY連銀製造業景気指数と米4月鉱工業生産を予定する。
- その他、政治・中銀関連では5月11日に米3年債入札とベッセント財務長官の訪日(13日まで)、12日は4月日銀金融政策決定会合の主な意見公表、ベッセント財務長官と高市首相、片山財務相などとの会談、シカゴ連銀総裁の発言、米10年債入札が控える。13日は米10年債入札やミネアポリス連銀総裁やボストン連銀総裁の発言、14日はトランプ大統領と習近平国家主席の会談(トランプ氏は15日まで訪中)、増審議委員を始め、バーFRB理事やクリーブランド連銀総裁の発言を予定する。15日はパウエルFRB議長の任期満了(後任が就任するまで暫定議長)を迎え、16日に氷見野副総裁の講演が行われる。
- 以上を踏まえ、今週の上値は20日と50日のEMAが近い158.10円、下値は5月6日の安値近くであり200日EMAが走る155.00円と見込む。
目次
1.ドル円振り返り=日銀会合後に160.73円と24年7月以来の高値を更新後、介入で155円台へ急落
【4月27日週のドル円レンジ:155.49~160.73円】
【5月4日週のドル円レンジ:155.03~157.94円】
ドル円の変動幅は4月27日週に5.24円と、その前の週の1.30円から大幅に拡大した。前週比では2.26円安と、大幅反落。年初来では0.3%高と上げ幅を急縮小しつつ、9週連続でプラスとなった。5月4日週の変動幅は2.91円へ縮小。前週比では0.4円と続落した。年初来では横ばいに反転。4月27日週は日銀金融政策決定会合で据え置きを発表しつつ、3人に増えた利上げ票やタカ派的な展望レポートに反し植田総裁の会見が6月利上げを示唆せず、ドル円は3月30日以来の160円台を回復。米国とイランの第2回協議への不透明感に加え、トランプ政権がホルムズ海峡封鎖継続の構えとあって、ドル円は4月30日に一時160.73円まで年初来高値を更新した。もっとも翌4月30日には日本の当局によるドル売り・円買い介入実施が入ったとみられ、5月1日には第2弾の介入らしき動きもあり、一時155.49円とイラン紛争開始後の上げ幅を巻き戻した。5月4日週も介入らしき動きが断続的に入った。トランプ大統領が戦争権限法に基づき、イランへの敵対行為終了を宣言。「壮絶な怒り作戦」終了に合わせ、ホルムズ海峡の正常化へ向けた「プロジェクト・フリーダム」を発表。ドル円は5月6日に一時155.03円とイラン紛争後の上昇を相殺した。
27日のドル円は、小動き。米国とイランの第2回協議が開催されるかと思いきや、トランプ政権が米国代表団の派遣を見送った結果を受け、小幅ながら上方向へ窓を開けてスタートし、一時159.60円と本日高値を更新した。しかし、翌日の日銀金融政策決定会合の政策発表を控え、上値は限定的。ロンドン時間に一時159.10円まで本日安値を更新しつつも下げ渋りとなり、NY時間にアラグチ外相がトランプ氏らの交渉要請を検討と発言したものの、下値は限定的だった。
28日のドル円は、上昇。ドル円は東京時間の序盤から日銀金融政策決定会合を控え159円半ばへ上向いたが、日銀が政策据え置きを発表すると、反対票が3人に増加した事実とタカ派的な展望レポートを受けて売りで反応し、159円を割り込み一時158.96円まで本日安値を更新。ただし、植田総裁の会見で、見通しの確度が低下した、4月利上げの緊急性は確認できなかったとの発言を受けて買いが優勢となった。会合後には上値をトライし、一時159.79円まで本日安値を更新した。
29日のドル円は、大幅続伸。東京時間こそ、休場を受けて159円半ばでもみ合いで推移も、ロンドン時間から買いが優勢となった。トランプ大統領がイラン封鎖の長期化を指示したとの報道で、WTI原油先物の上昇とともに、有事のドル買いに傾いた格好。NY時間には、米上院銀行委員会でウォーシュ次期FRB議長候補の指名承認が可決された結果、ウォーシュ氏がバランスシート縮小を提言するだけに、米金利上昇とともにドル円の買いを誘い3月30日以来の160円台を回復。FOMCが政策金利を据え置き緩和バイアスを維持したものの、FRB議長として最後のパウエル氏の会見は、理事として残留する意思を表明しただけでなく、Fedの独立性遵守を強調する内容で、トランプ氏の期待通りに利下げに動かない可能性が意識され、ドル買いを後押しした。トランプ氏がイランが提示した「まずホルムズ海峡を開放し、核協議は後回しにする」案を拒否したとの報道もあり、ドル円は3月30日の高値160.46円を超え一時160.48円まで切り上げた。
30日のドル円は上値を拡大後に、急落。東京時間序盤は前日に3月30日の高値を超えた反動から売りが先行しつつ、160円割れを回避し底堅い展開を迎えた。しかし、160円超えで片山財務相や三村財務官の口先介入が飛び出さなったため買いが優勢となり、ロンドン時間入りには一時160.73円と2025年7月以来の高値を更新。しかし、その後に片山氏が「断固たる措置に近づいている」、続いて三村財務官が「これは最後の退避勧告」と厳しい口先介入を行ったため、上げ幅を縮小した。ドル円はこれらを受けて、160.60円付近から一気に157円台へ急落。加えて、ロンドン時間に断続的な売りが被さり、ドル円は一時155.56円まで切り下げた。介入らしき動きが入った後、日経新聞が介入だったとの報道もあり、NY時間に入っても戻りは157.10円台にとどまった。市場予想以下となった米3月PCE価格指数や米Q1実質GDP成長率・速報値への影響は限定的だった。
1日のドル円は、急落を経て買い戻し。東京時間は買い戻しでスタートし、4月東京都区部CPIが市場予想以下だったこともあって、一時157.33円まで本日高値をつけた。しかし、ロンドン時間入りに再び急落し、一時155.47円とイラン紛争開始前の2月25日以来の水準まで下落。ただ、NY時間に買い戻されたが、第2弾の介入らしき動きで下落した分を概ね吐き出し、157円前半で週を終えた。
4日のドル円は、再び急落。ゴールデンウィークで休場中の東京時間に、トランプ大統領が米海軍が4日の月曜日からホルムズ海峡で各国の船舶を「誘導」し、航行を支援すると発言したが、買いでスタートし、一時157.33円まで本日高値を更新した。しかし、直後に介入が入ったのか正午過ぎに急落し一時155.49円まで本日安値を更新。片山財務相が「為替市場で投機的な動きがみられる」と発言するも買い戻しが確認され、NY時間にはホルムズ海峡で警告無視の米軍艦にイランがミサイルを発射したとの報道で再び緊張が高まり、ドル円は買い戻された。157.30円台を回復するなか、再びNY引け前に急落すると156円半ばへ下落する場面がみられた。
5日のドル円は買い戻しが優勢。東京時間こそ157円前半での推移でもみ合いを続けたが、ブルームバーグが「3営業日連続の為替介入は1回と数える、財務相同行筋がIMF基準に言及」と報道の英語版が影響したようで、ロンドン時間から買い戻しが優勢となった。突如157.90円台に急伸した後、157.10円台へ落ち込む荒い動きを経て、NY時間はゆるやかに上昇を継続。高市首相が補正予算を視野に入れているとの報道もドル円の買いを促し、市場予想以下の米4月ISMサービス業景気指数などにも反応薄で、一時157.92円まで本日高値をつけた。
6日のドル円は、再び乱高下。ルビオ国務長官が前日のNY引け直前に「壮絶な怒り作戦」の終了を宣言し、ホルムズ海峡の開放へシフトする構えを打ち出したほか、東京時間の序盤にトランプ大統領がイランとの最終合意を見極めるべく「プロジェクト・フリーダム」を中断するとの見解を表明し、ドル円は売りが先行した。しかし、157円半ばまでにとどまり、むしろ買いが戻しを誘発。しかし、13時25分頃に再び介入らしき動きがみられ、一時155.03円と2月24日以来の155円割れに迫った。もっとも、200日指数平衡移動平均線(EMA)に下値を阻まれると買い戻され、ロンドン時間に米国とイランが終戦に向けた覚書の合意が近いと報じられても、売りは限定的で、156円前半で引けを迎えた。
7日のドル円は小動きを経て買い戻し。東京時間にベッセント財務長官が来週11~13日に高市首相や片山財務相、植田日銀総裁と会談し、円安を議論すると報じられた。さらに、三村財務官がIMFの自由変動相場制に基づく介入制限に関する報道を否定し、ドル円は一時156.02円まで本日安値を更新した。その後は156円前半でもみ合いが続き、日銀当座預金残高見通しや短資会社の情報を元に、5月1~6日のゴールデンウィークに介入が入ったことを確認しても、反応は限定的だった。NY時間に入ると買い戻しが勢いを増す展開。トランプ氏が米海軍の駆逐艦3隻がイランから攻撃を受けたと発表すると、WTI原油先物の買い戻しにつれ、ドル円も一時156.96円まで本日高値をつけた。
8日は、買い先行後に上げ幅縮小。ドル円は3月実質賃金が3カ月連続でプラスだったものの、反応薄で一時156.99円まで本日高値をつけた。しかし、米4月雇用統計を前に買いの流れは続かず。NY時間には米4月雇用統計・NFPが市場予想を上回った一方で、労働参加率の低下にもかかわらず失業率が横ばいを受け、一時156.43円まで本日安値を更新。その後の値動きは限られた。
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