日本は長い間デフレ下にあったため、インフレを意識する機会が少なかったかもしれません。しかし、2022年頃から物価が明確に上昇しており、日々の […]
―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は6月10日週に2.54円と、その前の週の2.96円から縮小した。週間ベースでは、反発。ドル円は12日、米5月消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったため、一時155.72円まで下落。もっとも、6月FOMCでは、利下げ示唆が前回の3回→1回へ縮小された結果、米5月CPI後の下落を概ね打ち消す展開となった。14日には、日銀金融政策決定会合で国債買い入れ減額の「検討」を決定、具体的に減額を発表しなかったため、植田日銀総裁の会見前には4月29日以来の158円を突破し、一時158.26円まで上値を拡大。ただ、植田総裁が7月の利上げ余地を残したほか、フランスの政局混乱への懸念もあってリスク選好度が低下した結果、ドル円は上げ幅を縮小、157円前半でNY時間を終えた。
- 6月FOMCはハト派度合が後退し、年内利下げ示唆は従来の3回→1回へ縮小も、FF先物市場では年内2回の利下げ予想に傾く。米5月消費者物価指数(CPI)を始めインフレ鈍化を確認したため、「データ次第」の金融政策を行うFedが再びハト派に傾斜すると見込んでいるようだ。
- 6月13~14日開催の日銀金融政策決定会合では、7月30~31日開催の次回会合で国債買い入れ減額を決定すると発表。市場は肩透かしを食らったものの、植田総裁は減額規模につき「相応」になると言及。また、経済物価動向次第では、7月に減額発表と同時に追加利上げする可能性について「当然あり得る」と発言、タカ派姿勢を打ち出し、政策正常化への望みをつなげた。
- 今週は、6月17日に中国5月小売売上高と鉱工業生産、米6月NY連銀製造業景況指数、18日に豪準備銀行の金融政策決定会合、米5月小売売上高と米5月鉱工業生産、19日に日銀・金融政策決定会合議事要旨公表、20日にイングランド銀行とスイス国立銀行の政策決定会合、21日に日本6月全国消費者物価指数を予定する。なお、19日は米奴隷解放記念日を受け、米国は休場となる。
- テクニカル的に、ドル円は強い地合いを維持する上、三角持ち合いをブレークした。ただし、トレンドを示す指標、ADXは上方向を示していない。介入警戒感が燻るほかジリ高基調にとどまりそうだ。欧州の政局混乱もあって、リスク選好度が低下する局面では下落に転じてもおかしくない。
- 以上を踏まえ、今週のドル円の上値は心理的節目の159円、下値は3月後半からサポートとして機能する50日移動平均線が近い155.60円と見込む。
1.為替相場の振り返り=ドル円、米5月CPIで急落もFOMCと日銀会合で打ち消し一時158円台
【6月10日~14日のドル円レンジ:155.72~158.26円】
(前週の総括)
ドル円の変動幅は6月10日週に2.54円と、その前の週の2.96円から縮小した。週間ベースでは、反発。ドル円は米5月雇用統計で非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を上回った流れを受け、週初は156円後半から157円前半で推移した。しかし、12日に米5月消費者物価指数(CPI)が前月比、前年同月比そろって市場予想を下回ったほか、スーパーコア(住宅を除くコアサービス)の前月比も0.04%の低下と、2021年9月以来のマイナスとなったため、一時155.72円まで下落。日経新聞が日銀観測報道として、国債買い入れ減額を検討する方針と報じたが、反応薄だった。6月FOMCでは、利下げ示唆が前回の3回→1回へ縮小された結果、米5月CPI後の下落を概ね打ち消す展開となり、156円後半へ戻した。
13日は東京時間に157円前半へ戻しつつ、NY時間に米新規失業保険申請件数や米5月生産者物価指数(PPI)が市場予想より弱い結果となり、再び売りが入るも156.50円台にとどまり、日銀金融政策決定会合を控え157円挟みへ戻した。日銀金融政策決定会合が終了した14日、国債買い入れ減額の「検討」を決定、7月会合で今後1-2年の具体的な減額計画を発表するとした。検討であって「減額」を決定しなかったため、植田日銀総裁の会見前には4月29日以来の158円を突破し、一時158.26円まで上値を拡大。ただ、植田総裁が会見で「減額する以上は相応の規模になる」、減額決定と追加利上げの決定も「当然あり得る」と発言したほか、フランスの政局混乱への懸念もあってリスク選好度が低下し、会見後は157円割れまで上げ幅を縮小した。NY時間になると買い戻され、米5月輸入物価指数などが市場予想以下だったものの反応は限定的で、157円前半で週を終えた。
チャート:ドル円の4月以降の日足、米10年債利回りは緑線(左軸)
(出所:TradingView)
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