―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は、10月12日週に1.40円と、その前の週の1.07円から拡大した。前週比では0.31円安と5週ぶりに下落。年初来では前週の1.0%高→0.8%高となった。ドル円は週初から地政学的リスクを背景に買いでスタートし、200日移動平均線を上抜ける展開。市場予想比で上振れした米9月消費者物価指数(CPI)後は、一時158.95円へ上昇し、9月24日以来の159円乗せに迫った。しかし、インフレ懸念と米10年債利回りの上昇を受け、AI関連銘柄が米株相場を押し下げた結果、米債利回りが低下に転じドル円もつれて下落。一時157.55円と約1週間ぶりの安値をつけたが、米9月生産者物価指数(PPI)や米9月小売売上高も強含んだため、下値は限られた。
- 米9月CPIの上振れでドル円は159円に迫ったが、「ネオクラウド」の代表格、コアウィーブの社債利回りが15%台まで急騰してAI関連株が急落すると、米10年債利回りは低下に転じ、ドル円も押し戻された。同社は利払いが調整後営業利益の5倍に達し、2028年末までに150億ドルの元本返済を控える。11月3日の中間選挙で民主党が両院を制し、データセンターへの課税や規制の強化でAI投資が減速すれば、米利上げ観測の後退と長期金利の低下を通じて、ドル円が頭打ちとなる場合もあり得よう。今週は20日のエヌビディアGTCでのフアンCEO講演と、21日のメタ決算が、AI投資の持続性を測る材料となる。
- 米9月CPIは前年同月比3.7%、PPIは同6.3%とそろって上振れし、インフレ圧力の高まりを再確認した。ただ、コアウィーブ・ショックに伴うリスクオフで、FF金利先物市場が織り込む10月の利上げ確率の上昇は一時的にとどまった。小売売上高は前月比0.8%増と市場予想を上回ったものの、ガソリン高の押し上げが大きく、物価変動を除いた実質では同0.1%増にとどまる。NY連銀とフィラデルフィア連銀の製造業景況指数も、6カ月先の見通しがそろって2カ月連続で低下した。インフレ指標の強さとは裏腹に、米経済は必ずしも力強いとは言い難い。
- ドル円のテクニカルは、中立寄りを維持。10月12日週は200日移動平均線や7月23日高値と9月8日安値の半値押し、一目均衡表の雲の上限を一時上抜け、21日移動平均線と50日移動平均線のゴールデン・クロスも形成した。しかし、その後は押し返され、これらの抵抗線を下回って週を終えた。一方で、50日移動平均線が下値を支えており、方向感に乏しい状況だ。
- 10月19日週の主な経済指標をみると、20日に米9月住宅着工件数、21日に英9月CPI、22日にNZQ3CPI、米新規失業保険申請件数、23日に9月全国CPI、ユーロ圏や独英米の10月総合PMI速報値が発表される。
- その他、政治・中銀関連では、20日に日本20年利付国債入札、APEC財務相会合(於:香港、21日まで)、ベッセント財務長官のJPモルガン主催投資家会議出席、エヌビディアGTCでのジェンスン・フアンCEO講演、21日にメタの7-9月期決算(日本時間22日早朝)、22日にAI金融会議(於:NY)、23日にムーディーズによるフランス、ギリシャ、ウクライナ、格付け見直しを予定する。なお、25日から欧州と英国の市場は冬時間へ移行する。
- 以上を踏まえ、今週の上値は7月23日高値と9月8日安値の61.8%戻しが近い159.80円、下値は一目均衡表の雲の下限が近い156.50円と見込む。
1.ドル円振り返り=米9月CPIの上振れでドル円は159円接近後、AI関連銘柄急落でリスクオフ
【10月12日週のドル円レンジ:157.55~158.95円】
ドル円の変動幅は、10月12日週に1.40円と、その前の週の1.07円から拡大した。前週比では0.31円安と5週ぶりに下落。年初来では前週の1.0%高→0.8%高となった。ドル円は週初から地政学的リスクを背景に買いでスタートし、200日移動平均線を上抜ける展開。市場予想比で上振れした米9月消費者物価指数(CPI)後は、一時158.95円へ上昇し、9月24日以来の159円乗せに迫った。しかし、インフレ懸念と米10年債利回りの上昇を受け、AI関連銘柄が米株相場を押し下げた結果、米債利回りが低下に転じドル円もつれて下落。一時157.55円と約1週間ぶりの安値をつけたが、米9月生産者物価指数(PPI)や米9月小売売上高も強含んだため、下値は限られた。
12日のドル円は、買い優勢。東京市場が休場のなか、ドル円は序盤に一時158.08円まで本日安値を更新したが、その後はWTI原油先物の上昇につれ買いが強まった。トランプ大統領が前週末にロシアとウクライナの間で「エネルギー停戦で合意した」と発表したものの、双方の攻撃は止まらず、フーシ派がサウジアラビアの首都リヤドの空港を攻撃した影響が背景。NY時間に入っても買いの流れが続き、200日移動平均線を抜け一時158.75円まで上値を広げた。もっとも、テクニカル的な節目を抜けた後は米国もコロンバス・デーで米債市場が休場のなか上値追いは限定的となった。
13日のドル円は、反落。三連休明けの東京市場は売りからスタートしたが、158円割れでは下値の堅さを確認した。高市首相が国会答弁で「円安にメリット・デメリットあるとの考え方に変わりない」と発言しても、反応薄。ブルームバーグが日銀は10月利上げを見送ると報じると一旦158.60円台へ上昇したが、12月利上げの可能性とも伝えた結果、158円割れ。一時157.83円まで本日安値をつけた。下値では50日移動平均線や一目均衡表の転換線に支えられ、買い戻し。NY時間には米10年債利回りが上昇に転じた動きもドル円の戻りを誘い、米9月中古住宅販売件数が市場予想を上回る結果になると、200日移動平均線と一目均衡表の雲の上限を抜け一時158.69円まで本日高値をつけた。その後、トランプ氏がフーシ派を批判する投稿を行ったほか、イランについて間もなく決断すると発言したが、影響は限定的だった。
14日のドル円は、反発。ドル円は東京時間から米9月CPIの発表を控え158円前半を中心に小動きで、毎日新聞が城内経財相について「日銀の利上げを止めるにはどうしたらいいか。議決延期請求をしたほうがいいんじゃないか」とつぶやいていたと報じたものの、反応薄だった。しかし、NY時間に市場予想上振れの米9月CPIが発表されると米10年債利回りにつれて急伸し、200日移動平均線と一目均衡表の雲の上限を抜け、一時158.95円と9月25日以来の高値をつけた。その後、AI関連のコアウィーブの債務問題を警戒した同社の株価が急落するなど米株が売られる動きに合わせ米債利回りが上げ幅を縮小したため、ドル円も買いを巻き戻す展開。リスクオフの流れから対円や対スイスフランを中心にドル売りが進むなか、NY時間終盤には、一時158.05円まで本日安値をつけた。
15日のドル円は、反落。東京時間のドル円は昨日のNY時間の流れを受け継ぎ、日本株安もあって売りが先行した。小枝審議委員の講演がタカ派的と受け止められたほか、片山財務相の「必要なら躊躇せず行動」との発言もあって、50日移動平均線を下抜ける展開。ロンドン時間に買い戻されたが、NY時間入りには売りが再燃し一時157.55円と約1週間ぶりの安値をつけた。もっとも、米9月PPIや小売売上高が市場予想を上回る結果となり買い戻され、一時158.35円まで本日高値をつけた。
16日のドル円は、買い戻し。ドル円は東京時間からロンドン時間まで、158円を上下する小動きに終始した。ブラウン米財務次官が「日本はもはやデフレではない」と発言したが、反応薄。ウォーシュFRB議長が政策の方向性に言及せず、早期追加利上げ観測が後退したことでドル売りが強まるなか、NY時間に入ると一時157.69円まで本日安値を更新した。もっとも、50日移動平均線や21日移動平均線がサポートとなり、その後は一時158.34円まで本日高値へ戻し、大台を保ってクローズした。
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