―Executive Summary―
- ドル円の変動幅は、10月5日週に1.07円と、その前の週の2.08円から縮小した。前週比では0.44円と4週続伸。年初来では前週の0.8%高→1.0%高となった。週初は高市首相の所信表明演説や植田総裁の挨拶を予定したものの、内容は目新しさに乏しく影響は限定的だった。9月日銀金融政策決定会合で利上げに反対票を投じた佐藤審議委員が利上げの方向性には賛成とのインタビューが報じられたが、反応薄。仏やスペインの政治問題を背景に対ユーロでドル買いが加速するなか、7日に東京時間の仲値にかけ一時158.51円まで週の高値をつけながら、200日移動平均線の抵抗線に抑えられ狭いレンジでの推移にとどまった。
- 仏10年債利回りは5%目前と2002年以来の高水準に達し、ギリシャやイタリアを上回った。コロナ禍以降の手厚い支援で財政赤字は4年連続5%超となる見通しで、ECBの再投資終了や日本勢の売却で需給も悪化。少数与党の予算案は成立が見通せず、大統領選の有力候補も、財政規律の「黄金律」を掲げながら定年引き下げを維持したり、国債の帳消しを唱えたりする。ECBの安全網TPIは形式上の条件を満たすが、仏当局は支援を求めず、インフレ下のECBも動きにくい。ユーロ安はドル高を通じて円に及ぶ。10月23日のムーディーズの格付け見直しで格下げが重なり、消費税減税の財源懸念など日本側の材料が加われば、ドル円は160円台が視野に入り、日銀は10月会合で12月利上げへの地ならしを迫られかねない。
- 今週は10月14日に米9月消費者物価指数(CPI)、15日に米9月生産者物価指数(PPI)と米9月小売売上高を予定する。クリーブランド連銀のナウキャストは、CPIが前年比3.6%と加速する一方、コアは同2.4%と前月並みを見込む(市場予想は2.5%)。シカゴ連銀は、9月のコア小売売上高を前月比0.4%増と、前月の1.4%増から鈍化すると予測。物価指標次第では利上げ期待が再燃しうるが、ドル円が上値を試せば、160円の「ベッセント・シーリング」を意識した日米当局の口先介入などが視野に入る。ベッセント米財務長官はIMF・世銀総会を欠席するものの、同氏によるX投稿などでの牽制にも警戒したい。
- ドル円のテクニカルは、中立寄りを維持。10月7日に一時158.51円まで上昇したが200日移動平均線(158.53円)は引き続き上抜けできなかった。同水準は、7月23日高値と9月8日安値の半値戻し(158.46円)付近に当たるだけに、非常に重要な節目となる。加えて、ドル円は一目均衡表の雲に突入したが、雲の上限が200日移動平均線近くとなる方向で、上値抵抗線が強まる気配が漂う。一方で、7月23日高値と9月8日安値の38.2%戻し(157.16円)に加え、50日移動平均線(157.70円)や一目均衡表の転換線(157.44円)が下値の強力なサポートとなっており、レンジ相場の突破口を開くにあたり、米9月消費者物価指数(CPI)やG20財務相・中央銀行総裁会議などでの要人発言がカギを握る。
- 10月12日週の主な経済指標をみると、12日に日本と米債市場が休場、13日に日本9月企業物価指数、14日に米9月CPI、15日に豪9月失業率、英8月GDP、米9月小売売上高と生産者物価指数(PPI)、16日に米9月輸入物価指数などを予定する。
- その他、政治・中銀関連では、12日にクリーブランド連銀総裁の発言、13日に9月分の豪準備銀行(RBA)議事要旨、IMF世界経済見通し・世界金融安定報告、ウォラーFRB理事やリッチモンド連銀総裁、ボストン連銀総裁による発言が控える。14日に日本5年利付国債入札、三村財務官IMF世銀年次総会出席、ボウマンFRB副議長やリッチモンド連銀総裁など発言、15日に小枝審議委員の発言、ボウマンFRB副議長やクリーブランド連銀総裁の発言、G20財務相・中央銀行総裁会議、16日に植田総裁の挨拶(内田副総裁による代読)、ウォーシュFRB議長の発言を予定する。
- 以上を踏まえ、今週の上値は7月23日高値と9月8日安値の61.8%戻しが近い159.80円、下値は9月30日の安値が近い156.40円と見込む。
1.ドル円振り返り=200日移動平均が上値抑制、高市首相や日銀政策委員の発言に反応薄でレンジ続く
【10月5日週のドル円レンジ:157.44~158.51円】
ドル円の変動幅は、10月5日週に1.07円と、その前の週の2.08円から縮小した。前週比では0.44円と4週続伸。年初来では前週の0.8%高→1.0%高となった。週初は高市首相の所信表明演説や植田総裁の挨拶を予定したものの、内容は目新しさに乏しく影響は限定的だった。9月日銀金融政策決定会合で利上げに反対票を投じた佐藤審議委員が利上げの方向性には賛成とのインタビューが報じられたが、反応薄。仏やスペインの政治問題を背景に対ユーロでドル買いが加速するなか、7日に東京時間の仲値にかけ一時158.51円まで週の高値をつけながら、200日移動平均線の抵抗線に抑えられ狭いレンジでの推移にとどまった。
5日のドル円は、買い優勢。東京時間の序盤に売りが先行し、ドル円は一時157.44円まで週の安値をつけた。しかし、フランス政情不安を受けた対ユーロでのドル買いに支えられ、買い戻しに反転。時事通信の「日銀は『基調物価』が2%に達したと判断する方向で検討に入る」との報道にも反応薄だった。むしろ、ロンドン時間にはGPIFが9月会合でポートフォリオの変更につき協議しなかったとの報道が嫌気され158円台を回復すると、NY時間には一時158.30円まで本日高値を更新。サウジアラビアのパイプラインへの攻撃による影響は限定的で通常稼働中と報じられるとWTI原油先物が上げ渋り、ドル円の上値を抑えた。
6日のドル円は、売り先行後に買い戻し。東京時間の序盤にドル円は一時157.77円まで本日安値を更新したものの、その後は買い戻しが入った。植田総裁の挨拶直前には、一時158.25円まで本日高値を付ける展開。植田氏の挨拶は前日の時事通信が伝えた基調物価上昇率2%到達で利上げペース加速の方針などには触れられず、ロンドン時間からNY時間まで重要指標を予定しないなか、158円前半を中心とした小動きが続いた。共同通信による佐藤審議委員のインタビューでは、9月利上げに反対票を投じたものの、利上げ継続には賛成との立場を表明したが、ドル円は反応薄だった。
7日のドル円は、3日ぶりに反落。ドル円は東京時間から買いが先行し、仲値過ぎに一時158.51円と200日移動平均線に迫り週の高値をつけた。前日の佐藤審議委員の発言を受けてもドル円はむしろ買いが入った格好。8月実質賃金が8カ月連続でプラスだったが影響は極めて限定的だった。ロンドン時間にかけて、高市政権が骨太の方針などに反し災害対応や公務員給与引き上げなどを念頭に第2次補正予算案を検討と報じられたが、こちらにも反応薄。対ユーロでのドル高の影響で158円を割り込み一時157.85円まで下落したが50日移動平均線がサポートとなり買い戻され、NY時間は材料に乏しい中で158円前半での推移を続けた。
8日のドル円は、小幅続落。東京時間にドル円は売りが先行し、一時157.51円まで本日安値を更新した。ただし、50日移動平均が下値を抑え、そこからは買い戻し。日銀支店長会議の内容が報じられたが反応薄だった。NY時間では、トランプ大統領が中間選挙前にイランを再攻撃する可能性が報じられ、一時158.37円まで本日高値をつけた。ただし、その後、トランプ氏による再攻撃しないとの投稿を受け、WTI原油先物が下落し米10年債利回りも低下に転じたため、ドル円は158円割れを迎える場面もみられたが、底堅かった。
9日のドル円は、買い戻し。ドル円は東京時間の序盤に一時157.76円まで本日安値を付けたが、引き続き50日移動平均線割れでは買い戻しが入り、すぐに158円台を回復した。NY時間には一時158.43円まで本日高値を更新。材料不足のなか、引き続き200日移動平均線は上値の抵抗線として意識された。
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