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貿易摩擦は、その規模や対立国によってグローバルで影響をもたらすため、多くの企業がその影響を注視しています。今まさに大規模に発生しているのが、アメリカと中国間の争いであり、その激しさから「貿易戦争」とまで呼ばれています。
ここでは、貿易摩擦とは何か、その発生原因、貿易や為替に与える影響等について解説します。
1. 貿易摩擦とは何か
貿易摩擦とは、端的には国や地域同士の経済的な対立です。対立は、貿易相手からの輸入量を制限したり、輸入品に高い関税をかけるという形で行われます。
輸入量の制限や高い関税の設定を行う理由は、基本的には自国経済を守ることにあります。貿易相手国から安くて品質の良い製品が輸入されれば、自国企業の製品が売れなくなってしまいます。
消費者からすれば安く買えることは望ましいことですが、自国の企業が次々に倒産するような事態になれば、その影響は国内経済に大きな影響を与える可能性があるため、国が自国産業を保護する目的で輸入量の制限や関税をかけることになります。
当然、製品を輸出する企業からすればおもしろい話ではありません。貿易相手国も報復として同じような対抗措置を取ることで、貿易摩擦が発生します。
例えば米中貿易戦争は、2018年に当時のトランプ大統領が中国から輸入する鉄鋼製品に関税をかけることで始まりました。中国はそこで引かず、対抗措置としてアメリカから輸入していた農産物や自動車に関税をかけました。
その後、お互いヒートアップして、関税対象品目はあっという間に数百になり、5,000を超えました。また関税率も複数回引き上げる措置が取られることなっています。結果、下グラフが示すように、2019年からアメリカにおける中国からの輸入は激減しました。
2. 貿易摩擦の発生契機
貿易摩擦は、自国経済を守るために行われると述べましたが、発生契機はいくつか挙げられます。
第一に、米中貿易戦争のように、輸入品が自国製品より競争力に優れる場合です。特に、自国の主要産業に関連する製品であり、企業努力でカバーしきれない場合には、国が介入して関税を設定する事態になります。
第二に、安全保障に関わる場合です。米中貿易戦争では、アメリカが中国製の通信機器や監視カメラに制限をかけましたが、これはアメリカのセキュリティに関する重要な情報が漏洩するリスクを避けることが背景にありました。
第三に、通貨操作です。1点目の契機に通じるものがありますが、一方の国が通貨価値を意図的に下げることで輸出品の価格競争力が強まり、貿易摩擦を招くことがあります。
第四に、知的財産権の争いです。特許、商標、著作権が他国に不当に侵害された場合、対抗措置としての関税や輸入量制限が発動されることがあります。
3. 貿易摩擦による経済への影響
貿易摩擦は、企業の枠を超えた国と国の争いです。そのため、経済への影響は大きくなる可能性があります。相手国にとっては輸出量が減る等で経済的な打撃を被ることになりますが、影響は自国にも及びます。その影響について、企業のビジネス面と為替から見てみます。
3−1. 企業ビジネスへの影響
貿易摩擦は、企業のビジネスに次のような影響を与えます。
- 原材料の高騰
- 従来購入していた製品に関税が上乗せされることや、輸入量制限から品薄になることによる価格高騰は、企業にとって原材料価格が高騰し利益を圧迫することになります。最終製品の価格が上がることになれば、その負担は消費者も負うことになるでしょう。
- 調達の不安定性、調達期間の長期化
- 貿易摩擦は、特定の製品について安定的に調達することを妨げます。実際に、米中貿易戦争では半導体が対象となったことで、半導体を使う高度な電子部品やPCが手に入りにくくなりました。
実際、企業で使われるシステムを動かすサーバーの納品が遅れることは日本でも発生し、多くの日系企業のビジネスにも影響を与えました。
- 貿易摩擦は、特定の製品について安定的に調達することを妨げます。実際に、米中貿易戦争では半導体が対象となったことで、半導体を使う高度な電子部品やPCが手に入りにくくなりました。
- 手続きやルールの変更
- 輸入製品に規制がかけられることは、手続きが追加されたり、追加書類を提出したり等、従来なかった業務が追加されることがあります。規制を遵守しなかった場合に罰則が設けられることもあり、企業にとっては新たな負担となります。
- サプライチェーン等の戦略変更
- 企業は、原材料の高騰や調達の不安定性を背景に、サプライチェーンの再構築を迫られることになるでしょう。代替品の調達は一朝一夕では難しいため、相応の期間もコストも必要となります。場合によっては、貿易摩擦の対象となる原材料を含む製品の継続が難しくなることもあるでしょう。
3−2.為替への影響
貿易摩擦は為替にも影響を与えることになります。直接的には、「2. 貿易摩擦の発生契機」で記載した、意図的な通貨操作によるものです。
また、貿易摩擦による貿易額の減少は企業業績の悪化や、関税が最終製品に転化されたことによる消費低迷を引き起こし、国全体の経済を弱らせることでその国の通貨価値が下がる可能性もあります。
貿易摩擦を続ける国に対しては、国内の企業価値向上に不確実性があるため、機関投資家から敬遠されることもあるでしょう。
貿易摩擦の悪影響が経済見通しに織り込まれれば、為替レートへの影響も避けられず、その方向やインパクトを見定める必要があります。
4. 解決方法
貿易摩擦の解決方法は、基本的には争う国同士の協議や、第三国や国際機関が介入しての交渉となります。では、アメリカと中国の貿易戦争は今後どうなっていくか、推察してみます。
5. 米中貿易摩擦はどうなるか
2018年から続く米中貿易戦争は、今後しばらく落ち着くことが予想されます。なぜならば、両国とも内憂のため国外で争っている余裕がないからです。
アメリカは来年に大統領選を控えています。関税はアメリカ国民に負担を強いることになるため、世論を考慮すれば大統領選に向けて良い政策とは言えません。
また、中国は国内経済が不動産を中心に低迷しているため、立て直しが急務です。アメリカと争っているほどの猶予がない状態です。
こうした背景もあり、11月にサンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、バイデン大統領と習近平国家主席が会談すると言われています。その結果次第で、今後の貿易摩擦の方向性が定まることになるでしょう。
6. まとめ
ここまで、貿易摩擦とは何か、その発生契機や、貿易及び為替への影響を確認しました。国同士の争いのように見えますが、企業や消費者にも多大な影響を及ぼす可能性があり、特にアメリカと中国という二大国の争いの行方は注視する必要があるでしょう。今後は、国際的な協議の場で解決が図られることを期待します。
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