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  • 『今更聞けない。インフレとデフレとは?』インフレとデフレについて徹底解説!
    浦島 伸一郎
    この記事の著者
    トレーダム co-CEO&CTO

    プロフィール:外資系証券会社で、オンライン証券取引システム、証券決済システム、米国国債・欧州国債・日本国債などの国債取引所の開発および運営を担当、その後国内証券会社、FX業者などを経て2016年より現職。フィンテックベンチャー企業の経営と、為替リスクヘッジシステム、システム売買ロジックの開発を行う。

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    日本は長い間デフレ下にあったため、インフレを意識する機会が少なかったかもしれません。しかし、2022年頃から物価が明確に上昇しており、日々の生活においても、企業の事業推進においても、その影響を無視することはできなくなっています。

    ここでは、あらためてインフレやデフレがどういうものなのか、そしてそれが個人や企業にどのような影響を与えるのかを解説します。また、密接に関係する為替との相関についても確認します。

    1. インフレとは

    インフレは、「インフレーション」の略称です。一言で述べれば、モノの値段が継続的に上がることを指します。例えば、今年100円で買えたおにぎりが、来年には150円になっているような状態です。

    【今年】

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    【来年】

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    モノの値段が上がると聞くと悪い印象がありますが、インフレがもたらす影響はそれだけではありません。まずは良い影響と悪い影響に分けて見てみましょう。

     1−1.インフレによる良い影響

    インフレはモノの値段が上がる、つまり物価上昇です。インフレによる影響は賃金に対してプラスの影響があります。岸田政権が目指しているのがまさにこの流れです。

     ▪️インフレによる影響①

     [物価上昇]⇨[値上がり前の購入が増える]⇨[企業の収益が改善]⇨[賃金上昇]

    賃金上昇を受け家計の購買力が上がり、経済全体が成長に向かうことが、まさにインフレによる良い影響です。

     1−2.インフレによる悪い影響

    インフレによる悪い影響は、賃金が上昇しない中で物価だけが上がり、経済全体が低迷する流れです。

     ▪️インフレによる影響②

     [物価上昇]⇨[原材料高企業で業績悪化]⇨[賃金が増えず]⇨[買い控え]

    2023年春季の賃上げ率は3.6%(出典:厚生労働省)でしたが、物価の上昇率は2020年を100とした場合に2023年9月は106.2、前年同月比では3.0%の上昇(出典:総務省 報道資料)となっており、賃上げによる実質的なインパクトはほぼありません。賃金の上昇が継続するかが、今後良いインフレになるか、悪いインフレになるかを決めることになります。

    2.インフレによる金利への影響

    次に、インフレが金利や通貨にどのような影響を与えるか見てみましょう。金利は以下のような流れで上昇することになります。

     ▪️インフレによる影響③

     [物価上昇]⇨[企業業績の改善]⇨[投資資金需要の増加]⇨[金利上昇]

    一般的に、インフレが企業業績の改善につながれば、多くの企業で設備投資に積極的になり資金を借りようとしますので、貸付金利が上昇していくことになります。

    また、インフレが進み過ぎるとモノの値段が上がり続けてしまい生活や企業活動が苦しくなります。そこで、日銀は政策金利を上げることで、国内の金利を上げ、お金を使うよりも預けることに誘導します。

    3.インフレによる為替への影響

    為替、つまり通貨については次のような流れで通貨安に動きます。冒頭のおにぎりの図で言うと、1つのおにぎりを買うのに100円では買えなくなり150円払うことになる一方、アメリカでは以前と変わらぬ値段で買える場合、ドルに対する相対的な価値が下がったことを意味します。これは相対的に円の価値が下がったことを示し、円安ドル高圧力が高まることになります。

     ▪️インフレによる影響③

     [物価上昇]⇨[通貨の価値が相対的に低下]⇨[通貨安]

    円安はさらなるインフレをまねくことになります。円安によって輸入品の価格が上昇すると、それを使って生産される最終製品の価格も上昇するためです。日本は食料品の輸入が多いため、スーパーで購入するものの値段が上がっていることは実感できるでしょう。

    尚、円安ドル高になると輸出企業にとっては有利に働くと言われています。その理由は輸出企業はドル価格で契約していることが多いため、円貨にすると売上が増えることになります。また、海外で製品を販売する際に商品価格が実質的に下げられることになり、価格競争力が上がることも要因の1つです。

    逆に輸入がメインの企業にとっては、原材料価格や仕入れ値が上昇することになるため、不利に働きます。

    4.デフレとは

    次にデフレについて確認します。デフレはデフレーションの略称で、基本的にはインフレと逆、つまりモノの価格が継続的に低下する現象のことです。モノの値段が下がることは、消費者としては一見良いことのように思えます。

    しかし「良いインフレ」はあっても、「良いデフレ」はありません。その理由は、継続的な物価の下落は、経済活動の低迷と同義だからです。モノが売れないから安くせざるを得ない、企業の利益減少、賃金カットやリストラ、といった悪循環をもたらすのがデフレです。

    日銀が2%の物価安定目標を掲げてデフレ退治に必死になったのは、日本が長期間に渡るデフレ=デフレスパイラルに陥り経済低迷していたからです。

    5.デフレによる金利と為替への影響

    デフレによる金利と為替への影響も見ておきましょう。デフレで景気が悪化すると、日銀は金利を下げることで、借入金利の低下を図り、設備投資を促して景気改善を狙います。

    為替については、インフレとは逆にデフレは通貨の価値を上げるため、円とドルの関係では円高ドル安に向かいます。冒頭のおにぎりの例で言えば、今年100円で買えたおにぎりが来年は50円で買えることになるため、円の価値が上がったことになります。

    【今年】

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    【来年】

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    6.世界の状況

    ここまで、物価の上昇や下降がもたらす影響や、金利や為替との関係を見てきました。上述の内容はあくまで一般論であるため、現実の世界では政治、貿易、治安状態等、様々な要因が絡み合って物価も金利も為替も決まることには注意が必要です。

    最後に、世界の中で日本の物価がどうなっているのか参照します。日本は長らくデフレと言われてきましたが、実際はどうなのでしょうか。以下は、国際通貨基金(IMF)のデータをもとに日本生命が作成したグラフです。

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    (出典:日本生命)

    このグラフを見ると、主要国の中で見事に日本だけが物価がほとんど上がっていないことが分かります。興味深いことに、内閣官房が発出したレポートにある賃金の伸び率のグラフを参照すると、同じような波形となっています。

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    (出典:内閣官房)

    この2つのグラフの比較から、物価は金利や為替だけでなく、賃金とも密接に関係していることが把握できます。先に述べたように、日銀がデフレ克服に躍起になったのはこれが理由です。

    7.まとめ

    インフレやデフレは、日々の生活においても企業のビジネスにおいても大きな影響があります。またその変動は今まで以上に頻繁になる可能性もあります。変動の理由も様々で、日々世界の動向に目を配る必要があります。

    物価、金利、為替の変化の方向とインパクトを見定め、事業の判断やリスク管理を行うことが企業経営において重要なのは、言うまでもありません。

    ようこそ、トレーダムコミュニティへ!