海外との取引で、ドル(外貨)の支払い(輸入)または受取り(輸出)を行う場合に、相場の変動による損益リスクを低減するため、スポット、フォワード […]
「日銀当座預金見通し」からみた直近の介入状況
「日銀当座預金見通し」からの推測によれば、日本が休場だった15日の欧米タイムにおけるドル円の下振れは為替介入でなかったようです。しかし11・12日には介入を行っていたようで、神田財務官の任期末期における介入への前向きな姿勢が警戒されます。「日銀当座預金見通し」を注視しつつ当局介入の動向をにらんで相場を追う流れが続くでしょう。
17日発表の「日銀当座預金増減要因と金融調節(7月18日<木>分)」の予想、いわゆる「日銀当座預金見通し」によると、日本が休日だった15日にもし為替介入が行われていた場合に数値が反映される「財政等要因」は+9000億円でした。短資会社3社による事前推計、東短リサーチ+9000億円とは一致し、セントラル短資+1兆円/上田八木短資+1兆1000億円との開きは、大きくても2000億円にとどまりました。
もし誤差が大きかった場合は為替介入に資金が使われたことの示唆となります。15日、日本の休日中に為替介入が行われた場合に反映される休日明け16日の2営業日後で決済日にあたる18日の数字は、兆円単位で行われてきたこのところのような為替介入はなかったことを示す結果といえるでしょう。
正式には月末の財務省発表による介入実績「外国為替平衡操作の実施状況」で判明する以前の「日銀当座預金見通し」からの推測によれば、15日NYタイムの158円手前から157円前半への下振れ(図表参照)は為替介入ではなかったようです。ただ、それでも同様の推測によって先週11日と12日の急落局面では円買い介入が行われたことが特定されており、今月末に退任する神田財務官の置きみやげのような円買い介入への警戒がしばらく続きそうです。
神田財務官は17日、通信社のインタビューに応じ、足もとの円安の要因として最も大きいのが投機的な動きで、過度な変動に対しては回数や頻度の制限なく介入を行う姿勢を示しました。「意思疎通を疎かにしたことでイエレン米財務長官の怒りを買ったため、本邦通貨当局は為替介入を行いにくくなった」とのマーケットの見方が否定されるような状況となっています。
テクニカル要因もドル売り・円買い当面は有利か
先週11日の米CPI発表後に急速にドル円は4円以上も急落しましたが、翌12日にも為替介入を見られる動介入に加えて、テクニカル要因でもドル売り・円買いが当面は有利に感じられる部分があります。7月3日に161.95円まで1986年12月以来、約37年半ぶりの高値を更新後、10日も161.81円までと、ともに161円後半で頭打ちとなっている点です。
チャート的には反転下落パターンの1つダブルトップを形成して下値追いへ転じたように感じられます。両高値に挟まれた8日安値160.26円を用いた第1の下落目標158.57円(8日高値161.95円から8日安値の下落幅の2層倍)を達成し、やや荒っぽい上下ながらも同目標値前後でしばらくもみ合っていましたが戻りが鈍く、再び下値をうかがい始めているようにも見えます。
11日の下振れが「介入か」との思惑は肩透かしに終わったものの、足もとでは下向きの意識を高めるチャート崩しにもつながるような為替介入への警戒が怠れません。チャートが買い方(ドル買い・円売り方向)にとって不利に傾くと、期近限月を中心した先物も活用することからテクニカル分析を駆使した短期的な勝負に走る傾向のCTA(商品顧問)などのドル売り・円買いの動きが加速しやすくなるとも考えられます。
これらの状況を踏まえると、「日銀当座預金見通し」をにらんだ当局の介入動向を注視しつつドル円の流れを追っていく展開が当面続きそうです。介入への警戒感を抱きながら、月末の日米金融政策発表までの道をたどることになるのでしょうか。
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※本記事は2024年7月20日に「いまから投資」に掲載された記事を、許可を得て転載しています。
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