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  • 【経常収支とは?】世界の「いま」を知るための重要統計!その内容と読み取り方をわかりやすく解説!
    浦島 伸一郎
    この記事の著者
    トレーダム co-CEO&CTO

    プロフィール:外資系証券会社で、オンライン証券取引システム、証券決済システム、米国国債・欧州国債・日本国債などの国債取引所の開発および運営を担当、その後国内証券会社、FX業者などを経て2016年より現職。フィンテックベンチャー企業の経営と、為替リスクヘッジシステム、システム売買ロジックの開発を行う。

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    (画像の出典:フリー画像サイトPexels  https://www.pexels.com/ja-jp/photo/3207536/)

     原油をはじめとした資源価格の高騰と円安で日本は貧しい国に向かっているといわれることがありますが、果たして本当でしょうか。確かに2022年度、日本は過去最大の貿易赤字に直面しましたが、日本の経常収支は統計が公表されている1996年度以降、継続して黒字となっています。本記事では、経常収支統計の基礎情報及びその簡単な読解方法を解説します。

    1 経常収支とは

    経常収支とは、国際通貨基金(IMF)が定めた「国際収支」の一部を構成する統計です。即ち、国や地域のある一定期間における対外経済取引をまとめたものであり、企業会計でいうところのキャッシュフロー計算書に相当するものです。

     経常収支は、IMFによると貿易収支・サービス収支・第一次所得収支・第二次所得収支の4種類で構成されています。

    構成要素内容具体例
    貿易収支モノの輸出入によって生じる収支自動車の輸出、原油の輸入
    サービス収支サービスの取引によって生じる収支訪日外国人客の宿泊費、海外のクラウドサービス利用料
    第一次所得収支対外金融債権・債務から生じる利子や配当金等によって生じる収支米国債の利金の受取、海外親会社に対する国内子会社からの配当金支払
    第二次所得収支外国に対する無償での資産の提供に係る収支JICAの無償資金協力

    このうち、第二次所得収支は全体に占める金額が少ないため、日本の経常収支は主にこれを除いた3種類によって構成されています。

    日本では、経常収支統計を含む国際収支統計を財務省及び日本銀行が作成しており、翌々月上旬に速報が公表されています。

    (参考URL:財務省国際局為替市場課 国際収支統計に関する報道発表資料

    https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm)

    2 経常収支の動向

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    (出典:経済産業省・通商白書2023https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i2210000.html)

    冒頭に、日本の経常収支は1996年度以降継続して黒字であると述べましたが、具体的な推移は上のグラフのとおりです。

     2007年度まで、日本の経常収支は主に貿易収支によって支えられてきましたが、2008年のリーマンショック以降、日本の経常収支は主に第一次所得収支によって支えられてきています。

     つまり、経常収支の動向から、日本の経済は国内の製造業で生産したモノを輸出して稼ぐ構造から、海外拠点の売上や外国への投資によって得られた利益によって稼ぐ構造に変化していることが分かります。

     直近の2022年度は第一次所得収支が過去最高を記録したものの、貿易収支の赤字が拡大したため、経常収支の黒字幅は2014年程度に留まりました。

    3 貿易収支の動向

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    (図の出典:経済産業省・通商白書2023 https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i2210000.html)

    続いて貿易収支の推移を見ていきます。貿易収支をマイナスに押し下げる最も大きな要因は鉱物性燃料、つまり石油・石炭・ガスです。そのほか、小麦などの食料品や原材料も継続してマイナスとなっています。

     一方で、安定的に貿易収支をプラスに押し上げている要因は輸送用機器、即ち自動車です。次いで一般機械が黒字幅の拡大に寄与しています。

    4 サービス収支の動向

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    (図の出典:経済産業省・通商白書2023 https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i2210000.html)

    サービス収支については、一貫して赤字で推移しているものの、2014年度以降、旅行による収支が黒字に傾いています。これは、外国人旅行者によるインバウンド効果を表しています。そのほか、特許料などの知的財産権使用料も黒字傾向にあります。

    一方、近年は、その他サービス、その他業務サービス、通信・コンピュータ・情報サービスの収支の赤字寄与が拡大傾向にあります。これらは、ウェブサイトの広告スペースを売買する取引、クラウドサービスの利用料などが分類されており、一般的に日本経済が弱いとされている分野になります。

    5 第一次所得収支の動向

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    (図の出典:経済産業省・通商白書2023 https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i2210000.html)

    最後に、第一次所得収支を見ていきましょう。

     日本の第一次所得収支は1996年以降一貫して黒字を計上しています。その中でも、債券の利金や株式の配当金といった証券投資収益は安定的に黒字を産み出しています。また、2010年代以降は、直接投資収益による寄与が拡大しています。つまり、日本企業の製造・販売拠点のグローバル化が進展し、海外子会社からの収益が国内の親会社に還元される構図が見て取れます。なお、現在の日本の直接投資収益はアジア、米国、中国が主体となっています。

    6 まとめ

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    (画像の出典:フリー画像サイトPexels  https://www.pexels.com/ja-jp/photo/753331/)

     本記事では経常収支を構成する要因及びその動向をご紹介しました。日本の経常収支はリーマンショック前後で大きくその構成を変化させており、現状は第一次所得収支により黒字を確保している状況です。今後はサプライチェーン強化による製造業の国内回帰やインバウンド効果、そして新NISAによる個人による海外投資の拡大が、どのように影響を及ぼすのか注目されます。

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