GFIT為替アンバサダー 安田佐和子 がお届けするWeekly動画解説! 1週間のドル円相場の振り返りを踏まえて解説します。
テクニカル分析判断
サマリー:
●ダブルトップ的な当面のピークアウトを確認も上昇圧力の強靭さも継続 (日足)
●上値抵抗/下値支持の強靭さを再確認。当面は強弱拮抗の展開が継続か(週足)
●中長期では上昇中の20ヶ月MA⇒60ヶ月MAに向け漸進的な下落が継続 (月足)
先週は「寄付134.79:133.74~135.75:終値135.72(前週比+0.90円の円安)」の推移
となり、週足は再び陽線に転換。また「反発(上昇)圧力がしぶとく残存している証」
としてきた「前週比での下値/上値の切り上がり」は前週に6週連続まで延びていた
上値の切り上がりはさすがに潰えたものの、下値の切り上がりは先週も継続し3月
下旬からの「緩やかな上昇」が継続していることを再確認。なお、前週4.26円と
再拡大の加速を示した週間レンジは先週1.98円と一転して急縮小に転じた。
結果的には、前週確認した『中期的に強力な上値抵抗帯』に続き先週は『下値での
反発圧力の強靭さ』を改めて強く確認する展開となっている。ただし、現時点では
下値の強靭さを再認識してもなお3週前に修正した以下の見通しは維持している。
➊短期的な時間軸では当初想定を上回る上昇が継続する可能性があるものの、一段の
上値トライは『過熱状態を醸成』し『中期的に強力な上値抵抗帯』への接近を意味。
➋一方、中長期的な下落圧力が俄かに減退したとの兆候もまた観測されていないため
今後も「更なる上昇を阻み・押下げる力が次第に強まってゆく」との想定を継続。
以下では『短期・中期・長期の方向性』について各時間軸チャートによるテクニカルな
視点を中心にご案内。(今号の分析は2023/05/12のNY市場終値をベースに実施)
<以下の用語補足:「MA」=移動平均線、「RSI」=(上下への過熱を示す)相対力指数>
➊日足チャート:「21MA±4.32%のバンド」、「52MA & 200MA」、RSIを付記
短期(1週間~1か月程度)の方向性:当面のピークアウトを確認も反発圧力は継続
●チャートの黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン。前週、鉄壁と想定した
[200MA]付近の領域(青い□の部分)に突入直後に急落に転換。この上値抵抗帯では
3月上旬にもピークアウトを観測しており『ダブルトップ形成』の可能性が浮上。
●ただ、ここ5週はかつて強力な上値抵抗線だった[21MA]と[52MA]を終値ベースで
(同時に)下抜け出来ておらず、上昇圧力もまた強力に継続していることを示唆。
先週も[52MA]にタッチ後急上昇に転じており上値トライ先行の展開が見込まれる。
●前週急低下したRSIは再びやや上昇(65.1⇒53.4⇒57.3)。上昇の過熱を示す
70超の水準(紫の細い水平線)は相当堅固なるも、上下ともに変動余地は残存。
>>>想定レンジ=今週:133.80~137.40 、今後1ヶ月:131.25~137.85 =
➋週足チャート:「21MA±4.32%/±7.41%/±9.87%のバンド」&「52MA」、RSIを付記
中期(1か月超~半年程度)の方向性:上値抵抗帯の強さ再確認も底堅さがしぶとく継続
●チャートの黒い〇は下落、エンジの〇は上昇のサイン。前週は「突破には相当の
上昇エネルギーが必須」とした上値抵抗帯(青い□の部分)の直前で下落に転換。この
抵抗帯では3月もピークアウトを観測しており『ダブルトップ形成』の可能性あり。
●ただ、依然としてかつては強力な上値抵抗線だった[21MA]を下抜け出来ておらず、
下値での反発圧力もまたしぶとく継続していることが強く示唆されている。
●3週前まで続伸していたRSIは前回ピークアウトした2月第3週や昨年急落した
11月第2週の水準 (紫の細い水平線) に面合わせ後に軟化も先週若干持ち直し。
>>> 今後6か月間の想定レンジ = 127.20~138.30 ⇒ 127.80~138.00 =
➌月足チャート:「20MA±18.0%のバンド」「60MA±30.0%のバンド」、RSIを付記
長期(半年超~年単位)の方向性:横這う可能性あるも2015~16年に近い推移を想定
●昨年10月は20MA+18%と60MA+30%を同時に上回る未曽有の異常過熱状態だった
●一時85超まで過熱のRSIは現在中立領域に位置(58.6)も低下余地は依然大きく残存
●異常状態からの反落だけに「少なくとも20MA⇒60MA」に向け次第に下落する展開へ
<現在129.65円の水準にある[20MA]は来月には130.80円超に上昇する見込み
>>>> 今後1年間の想定レンジ = 121.20~138.30 ⇒ 122.10~138.00 =
ファンダメンタルズ分析判断:簡略版
●先週注目されていた米5月の消費者物価指数は市場予想比やや弱めの内容
>>6月FOMCでの『利上げ停止(見送り)の可能性』が増幅
●米ミシガン大学発表の5月の消費者信頼感指数(速報値)は57.7と、昨年11月以来
6カ月ぶりとなる低水準。市場の事前予想(63.0)もかなり下回る結果
⇔ 一方、5年先のインフレ期待は2011年以来12年ぶりの高水準へと予想外の上昇
■消費者信頼感指数自体は低下したものの、長期のインフレ期待は予想外に加速した
ことを受け「“インフレの高進”& 景気の悪化(後退)」への可能性が急速に高まり
米国経済が所謂『スタグフレーション』に陥る懸念が急拡大
<金融市場の受け止め方と反応>
「長期インフレ期待の急上昇」⇒ 6月FOMCでの追加利上げの可能性がやや浮上
⇒“据え置き”の可能性はその分後退 ⇒ 年内利下げ転換の可能性は大きく後退
(更に、議会承認が遅れ期限切れが目前に迫る“債務上限問題”が重しとなり)
>>短期を中心に市場金利は上昇(利回り曲線の短期ゾーンには大きな歪み発生)
>>NYダウは小幅ながらも5日続落(過去2カ月間で最長の連続安)
>>金利上昇を受けUSDは広範に上昇(指数上昇率は週間ベースでは2月以来で最大)
注)12日に予定されていたバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長ら議会指導部
との債務上限問題を巡る協議は、今週初めに延期された
<関連する要人の発言>
シカゴ連銀/グールズビー総裁:「インフレはなおも高過ぎるが、航空機を急降下で着陸
させたくはない。景気後退に陥るのを回避し、インフレを減速させられるよう試みる」 他の主要な理事の発言もタカ派寄りの姿勢に大きな変化はなかった模様。
イエレン米財務長官:(債務上限を巡る問題が投資家心理を冷やしているとの質問に)
「議会が債務上限を引き上げない場合、米国の信用格付けにとって大きな痛手となる。
米国債であれ社会保障給付であれ、一部の支払いはデフォルト(不履行)となる他ない」
(5/13のインタビューでは)「債務上限引き上げを巡る状況は“過去よりも厳しい”
が議会との協議によって債務不履行回避への道が開かれることに期待している。」
「財務省の資金が底をつく時期については、今後数週間以内に米議会に報告したい。」
◆昨年後半には急速な利上げに併せ銀行の貸し出し態度の厳格化が進んでいたが、先般の
金融システム不安の拡がりを背景にその厳格化は一段と加速する見通しとなっている。
◆また、実態経済が景気後退に陥りつつある兆候はそこかしこに現れ始めていることから、
年後半に「FRBの金融政策が引締めから緩和(利下げ)へ転換」する可能性も高まろう。
◎これまでも繰り返しご案内してきた通り、基本的なファンダメンタルズ判断は主に上記
2点をベースに構築してきた。しかしながら、その景気鈍化(マイルドな後退)の主因が
引き続きインフレの高進にあり仮に『スタグフレーション』が顕現化するとなれば、
根本的にシナリオを見直す必要も出てくる。我々を含めて、『債務上限問題』の帰趨
と共に今後の経済指標への注目度合いは嫌が応にも高まることとなろう。
●本邦においてはインフレ対応では金融/財政の両面で有効な施策を打てなかったため、
インフレに呻吟する苦境は主要先進国の中で今後最も長引くものと推察される。
日銀は先月末の金融政策決定会合で(市場の事前予想通り)「長短金利操作のイールド
カーブコントロール(YCC)を含む現在の金融緩和策の維持」を決定したが、従前より
指摘の通りこの決定は『追加的な金融緩和を意味しておらず、更なる金融緩和余地は
ほぼ皆無に近い』ことは明白だと考えている。
したがって、植田総裁での新体制においては「現在の金融緩和スタンスを維持」を
標榜しつつも、我が国の金融政策が「正常化」に向けて漸進してゆかざるを得ない
ことだけは間違いないと考えられる。
●もちろん、実際のUSD/円相場の動向は米金利など海外情勢にも大きく依存するものの、
日銀の金融政策調整リスクはUSD/円の上昇を阻み、今後の中短期的な下振れ余地を拡大
させる要因となりえよう。
●なお、現時点においては「我々の中長期的大局観」は以下の通りで著変はないものの、
既述の通り今後のファンダメンタルズによっては修正の可能性が浮上してきている。
>『FRBの超タカ派姿勢と米ドル金利上昇』を最大の原動力にしてきた昨年10月までの
『USD高/円安局面は、大きな流れとしてすでに反転』しており、仮に今後断続的に
ドルが買い戻されたとしても『その上値は重く、140円は見た目より遥かに遠い』
お詫び:今週のファンダメンタルズ分析判断も、筆者都合により簡略版のみと致しました。
なお、米国を中心とする「世界のインフレ・景気・金融政策」の現状分析、並びに短期を
中心とした見通しについては、GFIT為替アンバサダーでもある安田佐和子氏のレポート
(Weekly Report等)に詳細かつ非常に解りやすく解説されています。
TRADOMサイト内で、是非ご参照下さい。
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